家族に会いたい。
本日二回目の更新です。
学校から帰ると、アキが話があると言われて部屋に入った。
「 夕陽。 壊しちゃった。ごめんね」
アキが謝りながら出してきたのは、無残な姿になったポータブルミュージックプレイヤーだった。
「 これ、朝陽兄さんが買うてくれ
た物。 アキ、なんで壊したん。ずっと、大事に使ってたのに」
朝陽とは、夕陽の実の兄で、夕陽とは、十歳近く離れている。
その兄が、夕陽の誕生日プレゼントに買ってくれた物だった。唯一、実の家族との思い出の品だから大事に使っていた。
「 えーと、消しゴム借りようって思って夕陽の机を勝手に、探してたら落として踏んじゃった」
「 はあ?!人の机勝手にいじる時点で、おかしいじゃろ。だいたい、これ机の引き出しに入れとったのに、なんで、落ちるんよ!」
夕陽は、大声でアキを詰問する。前もそうだった。朝陽がお小遣いをコツコツと貯めて買ってくれたミニカーを壊した時も、勝手にいじって壊したのだ。
謝ってきたが、反省などまったくしてなく、ただヘラヘラと『ごめん』と言っただけだった。
今も同じで『ごめん』とただ言っただけで、反省なんか一ミリたりとも、していやしないのが物凄くわかる。そのせいでくる怒りを込めて、アキを睨むが、肝心のアキはムッとした顔になった。
「 知らんよ。夕陽がちゃんと、仕舞っとらんけぇ落ちたんじゃない。ウチのせいじゃないもん」
アキは、逆ギレとも取れる発言をする。
「 ふざけんな! 勝手に人の机から物持ってこうとした上に、人が大事にしとった物、壊しといて、なんやその態度」
「 ウチ謝っとるじゃん。夕陽は、いっつもそうじゃ、謝っても許してくれん。じゃけ、嫌いなんよ」
「 お前、心の底から反省した上で、謝っとる? ごめんなさいは、免罪符じゃないんでよ。なんで、その人が怒っとんか、きちんと理由を理解して、反省してからのごめんなさいじゃろ」
夕陽はそれだけ言って、自分のスペースに引っ込んだ。
アキは、夕陽の言った意味が分からず、暫くポカンとしていた。
夕陽は、制服から部屋着に着替えるとそのまま、ベッドに潜りこみ頭から布団を被る。
「 あーあ。めげてしもうて ( 壊れてしまって) 使われんじゃないか。アキのバカ」
壊れたポータブルミュージックプレイヤーを見ながら、一人文句をいい続けた。
暫く、文句言いたい放題言うと、落ち着いた夕陽は、ふと実の家族の事を思い出す。
異世界から日本に戻って、随分経つが一度も会ってない。
今の父に、会うのを固く禁じられているせいである。
「 せめて、遠くからでも見れたら、ええんじゃけど」
夕陽は、そう呟く。
今の生活に慣れるのに、背一杯で家族の事を思い出す暇なんてなかった。
家族の顔を思い浮かべると、涙が出てくる。
「 なんで、涙が出てくるんよ。もう、泣き虫は卒業したのにから」
そう言いつつも夕陽は、泣いていた。
そこへ雫が、声をかけてきた。
「夕陽、ご飯よ」
「いらん。欲しくない」
「また調子が悪いん?」
とそっと布団を捲ってくる。雫は、手元のポータブルミュージックプレーヤーと涙目の夕陽を交互に見て、状況を理解したらしく、『寝てなさい。母さんには言っとくけぇ』と言って去っていった。
―――
「 会いたい。父さん。母さん。兄さん。なんで、この家に養子に出したんじゃろ」
夕陽は、鼻をぐずぐずとすすりながら、自分が、この家の養子になった理由を考えながら、いつの間に寝ていた。
翌朝。今日は休みで皆まだ寝ている。
夕陽は、水色の半袖Tシャツと同じく水色のスカパンに着替えた。
Tシャツの上にパーカーを羽織り、リュックを背負った。
「 ごめんなさい。遠目にでも、家族に会いたいんです。約束破ります」
夕陽は、両親の寝室の前で両手を合わせてそう言うと、こっそりと家を出た。




