同じ気持ち
朝。学校に着いた夕陽が、自転車を駐輪場に止めてると、ハルカが待っていた。
「 おはよう。ゆう」
「 おはよう。 ハルカ」
夕陽が編入した翌日から、ハルカは毎朝、駐輪場の側で夕陽の到着を待っている。ハルカは徒歩通学だし、家の方向も逆なので一緒に登校なんて難しい。だけど、他に友達がいないのかと夕陽は心配になり、それとなく訊いてみた。
「 ハルカさ、なんでいつも駐輪場で、おれの事待っとん? 」
「 なんとなく。ゆう以外友達いないせいもあるけど。別にイジメにあってる訳じゃないよ。 ただね、女子特有のゴタゴタとかが面倒なだけなんだ」
ハルカも入学してすぐの頃は、とあるグループ所属してたらしい。だが、女子特有のドロドロした争いや陰口についてゆけず、自然とグループから離れたらしい。
―――なるほどな。ハルカの性格じゃあ、女子特有のドロドロしたものとか馴染まないよな。
「 おれの幼なじみも言うとったっけ。 友達だって思ってた子に、影で悪口言われてたとか」
「 そう。私の場合さ、テスト前に遊びに行こうって誘われたのを断ったらさ、影で『ハルカって優等生ぶってる』って言われてたんだよね。私としては、当たり前の言ったつもりだったんだけどね」
教室に向かいながら、そんな会話を交わす二人は、一年C組と書かれたプレートのある教室に入る。
自分の席に着くと、机に教科書をしまうと、夕陽の前の席のハルカが、振り返って、おしゃべりの続きをする。
「 話変わるけど、ゆう。彼氏とはどうなの?」
「 どうもこうも、最近はあんまり会っとらん」
「 なんで?」
「 部活の大会が近いんだと」
「 寂しくない?」
―――むぅ。ハルカはストレートに訊いてくるな〜。でも変に気使われるよりいいかも。
「 寂しいよ。でも、仕方ないじゃん。我が儘言って、困らせたらいけんじゃろ」
「 ゆう。そんな事言ってたら、他の人にとられちゃうよ」
「 うっ 」
夕陽は、ずっと気にしてる事をハルカに言われて、言葉を詰まらせた。
自分は、元男の子で生粋の女の子とは違う。
ましてや、今の自分は中学生で、拓人より四歳も年下、女子高生と比べれば、まだまだ子供である。
学校に行けば、まわりにいくらでも魅力的な娘はいるはず。
拓人が、他の人に気持ちがなびいても不思議ではない。
そう考えると、いくら拓人が忙しくても会えないのを我慢するのだって、限界はある。
「 なんか、不安になってきた。今日の放課後会いに行ってみる」
「 絶対それがいいよ」
夕陽が、そんな決断をした頃、一人の男子高校生が、ため息をついていた。
「 どうしたんですか? 林原先輩。朝から、ため息なんかついて」
「 ああ、高橋か。僕の気持ちなんか、お前にゃ分からねーよ。毎日毎日、彼女とイチャイチャしてるお前にゃ」
と隣を歩く後輩に嫌味を言う。部活は違うが、委員会が同じで仲もいいので、よくつるんでいる。
高橋と呼ばれた少年は、ガタイのいい体をズイッと拓人に近付けて文句を言う。
端からみたら、カツアゲか脅迫してるようにしか見えない光景だ。
「 毎日、イチャイチャしてる訳じゃありません。彼女に会えないからって、後輩に嫌味言うのやめて下さい」
「 嫌味の一つや二つぐらい言いたくなるさ。好きでやってるバスケだけど、そのせいで、彼女に会えないなんて意味ないんだよ」
「 なら、会いに行けばいいじゃないですか」
「 用もないのに、会いに行けるか」
「 そんな事言ってたら、他の奴にとられますよ」
「 高橋。お前先輩によくズバッと言えるな、一応、気にしてるんだぜ」
「 当たり前の事言っただけです。まじで、夕陽ちゃん。とられますよ。あんな可愛くていい娘。とられてもいいんすか。旭ヶ丘って、中高一貫ですよね。同級生だけじゃなくて、上級生も沢山いるんでしょ?狙われたい放題じゃないですか」
―――狙われたい放題ってやな言い方するなぁ。
と思いつつも、頭の中では、オオカミ化した野郎達の中で、メソメソと泣く子羊を思い描いていた。ついでに聴こえるはずのない、『助けて!拓人さん』という声が聴こえる始末だ。どうでもいいが拓人よ。彼女バカもここまでくれば、重症な気がするぞ。
「 うし、今日の放課後会いに行ってみる」
「 その調子です」
そして、放課後。夕陽は、帰りのホームルームが済むやいなや、ダッシュで駐輪場に向かった。
拓人に会いに行くために、急いで学校を出るためである。
校門を出てすぐ、自転車に乗ろうとしたら、遠くから見覚えのある人物をみつけ大声で、呼んだ。
「 拓人さん」
夕陽のまわりに、いた数人の生徒が何事かと、じろじろ見ていたが、夕陽は気にせず拓人の元に向かった。
「 なんで、おるん? 部活は?」
「 サボった。夕陽に会いたくて」
「 うっ嬉しいけど、部活はあんまりサボらんといてや」
夕陽は、拓人から顔を背けながら言う。嬉しさのあまり、顔がにやけてるのをあまり、見られたくないからである。
「 なんてね。サボったのは、嘘だよ。今日は、休みになったんだよ」
「 嘘。じゃあ」
「 サボりは、嘘だけど、夕陽に会いたかったのは、本当。後輩に、他の奴にとられますよ。って脅かされてさ。それで」
「 なんだ。そうだったんじゃ。俺も、友達に同じ事言われて、拓人さんに会いに行くところだったんじゃ」
夕陽は、笑顔で話す。自分と拓人が、同じような事を考えていた事が、嬉しい夕陽だった。
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