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世界は「 」にあふれている  作者: 伊達 虎浩
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第2章5

こちらは警察ものとして書いております。

卑猥な言動等含まれるので、注意してお読みください。

 

 日本からアメリカにやってきた伊織は、懐かしい友人二人に案内され、現在車で移動していた。

 懐かしいと感じてしまうほど、久しぶりではないのだが、そう感じてしまったのは、懐かしい夢を見ていたからだろう。


 伊月香織として生きた人生。

 色々なモノを失い、人を殺した人生。

 香月伊織として生きている人生。

 色々なモノを失ってはいないものの、人を殺してしまった為に、失いかけてしまったモノは確かに存在する。

 両隣に座っている、二人がそうだろう。


「寝たフリしてないで、どうなっているのよ」


 伊織の雰囲気から、寝ていないと判断したみなみが声をかけてくる。

 スッと目を開けると、黒いスモークガラスから、外の景色を眺めているみなみの姿が目に入ってきた。

 決してコッチを向こうとしないみなみ。

 しかし目だけは、窓ガラスから反射して見ている事がわかる。


「どうしたと言われてもな・・お前等はどこまで知っている?」


「アンタが財前首相の下で動いている事ぐらいかしら」


「・・・シャオロンを殺したのも知っています」


 国際指名されていたシャオロン。

 当然、裏の世界で有名な人物であるシャオロンが死んだという事はニュースにはならない。

 裏の世界の事は、表の世界には決して現れないからだ。

 だがしかし、警察関係者の一部には公表されている。

 それは各国のトップが集まる会議や、各国のスパイ活動をおこなっているエージェントからの情報である。

 伊織が聞いた、どこまで知っている?という質問には、シャオロンの事が含まれていた。

 財前の下で動いているという事を、二人は知っているはずだ。

 問題は、二人が何処の地位にいるかである。

 シャオロンの事を全警察関係者が知っているかというと、そうではない。

 死んだと全警察関係者が知ってしまうと、日々のパトロールに支障をきたす恐れがある。

 その為、一部の関係者のみに情報が共有されるのだ。


「そうか。俺はエルザに呼ばれてやってきたから、エルザの依頼内容はまだ知らない。お前等は知っているんだろ?」


 伊織は嘘をついていない。

 実際、財前から資料を渡され、その資料からエルザからの要請だと知ったのは、先ほどの事である。

 伊織が嘘をついていないとみなみは嗅覚で、美優姫は空気で感じ取る。

 みなみと美優姫は目を合わす。

 伊織に話すべきなのかどうか。


「いい伊織。どうせ後から解る事だから話すけど、現在アメリカがどうなっているか解っている?」


「まぁ大体はな。それで?」


 現在アメリカは大統領選挙の真っ只中である。

 シーサー大統領が就任してからこれまでも選挙はあった。

 しかし、選挙の時期になると何故か人が多く死ぬ。

 それは決まってシーサー大統領陣営の方であり、シーサー大統領は人々に向け、死んだ者の為にも負ける訳にはいかないと力説し、この数年見事に勝ち進んでいた。


「エルザ教官は、この選挙以前からシーサー大統領について色々調べていたみたい」


「なるほどな。その選挙についての調査依頼か」


 伊織は納得と同時に感謝の気持ちが湧くのだが、罪悪感も湧いた。

 エルザは昔の約束をキチンと果たしているのに対し、自分は学校を退学してしまい、警察官になれなかった。

 警察官になってくるなどという約束はエルザとはしていない。

 しかし、警察官になる為の環境を整えてくれたのに対し、警察官になれなかったという事は、伊織にとっては約束を果たせなかったという事だと思っていた。


「・・・・そろそろ着きます」


 美優姫の言葉を聞いて、二人は会話を中断する。

 何処かは解らないが、地下駐車場に入っているという事は、車の傾きでわかる。


「降りる前に一つだけ言っとくわ伊織」


「あぁ解っている。降りたらな」


 長い付き合いだとはいえない。

 しかし、どういう性格かは理解しているつもりだ。

 車から降りた伊織は、無抵抗でビンタをされるのであった。


「相変わらず容赦ないな」


「フン。手加減はしているわよ」


「そいつはどうも・・美優姫?」


 頬をさすりながら、皮肉まじりにみなみに返事を返し、美優姫からも一発、もらう覚悟をした伊織であったが、美優姫は興味がなさそうに見上げていた。


「貸しにしておきます。それよりも先を急ぎましょう」


 そう言って、入り口までスタスタと歩いていく。

 人は何かを失ったり、変わったりしていく生き物である。

 だが、変わらないモノは確かに存在する。

 変わらない友人二人に対し、口元が緩んでしまいそうになった伊織は、そっと、下を向くのであった。


 ーーーーーーーーーー


 入り口を入る際に提示するセキュリティーカードを持っていない伊織は、受け付けでエルザからだと伝え、アポを取ってもらう。

 複数の警備員からボディーチェックを受け、ゲストと書かれた入館証を受け取り、首からぶら下げる。

 セキュリティーカードと入館証の違いの説明をうけた伊織は、感心していた。

 この入館証では、各部屋には入れない。

 各部屋に入る為には、付き添いが不可欠だという事であり、この場合は、みなみと美優姫が伊織の付き添いである。

 その為、各部屋にトイレがあるとの事だった。


「随分と用心しているんだな」


「ええ。色々な情報が集まる建物だけに、厳重になっているのよ」


 ゲートをくぐりながら雑談をしていると、大きなモニタールームに、数十台のパソコン、ちょっとした、螺旋階段がある部屋に入った伊織。

 パソコンの前に座っているスタッフらしき人物が、チラリとこっちを向いたかと思うと、すぐさまパソコンに目を戻した。


「香織!香織じゃないか?」


「・・・!?」


 ドクンっと、心臓が大きく跳ね上がってしまう。

 声がする方に顔を向ける伊織は、みなみと美優姫がこちらを見ている事に気付き、どうするべきかを考える。

 昔の自分の名前を知っている人物。

 声をかけてきたのは、アメリカ時代のクラスメイトである、マイケルであった。

 どう誤魔化すべきかを考える必要は無い。

 問題は、平常心を保っていられるかだ。


「昔のアダ名だ。みなみ、美優姫。ちょっと待っていてくれ」


 香月伊織の文字を入れ替えて、伊月香織としてのアダ名だと主張する。

 証人保護プログラムを受けた日にエルザと話し合い、誤魔化す時はコレを使うと決めていた伊織であったが、あれから約7年。

 まさか使う日がおとずれるとは思いもしなかった。


「・・・手短に済ませなさい」


 みなみの嗅覚、美優姫の目を誤魔化せたかどうかは解らない。

 いや、例え誤魔化せなくとも、この二人にバレてしまっても問題はないだろう。

 伊織はうなずきながら、マイケルの元へと歩みよっていった。


「久しぶりだなマイケル。後、香織はやめてくれ。昔よく遊んだ伊織で頼む」


「ヒュー。懐かしいな。アッキーナがつけた名前かぁ。お前等急に居なくなるんだもんな・・で?アッキーナは元気なのか?」


「・・・!?あ、あぁ。元気にやっていると思う」


「何だよそれ・・あっ!悪い事聞いちまったか?」


 バツが悪そうな顔をするマイケル。

 何か勘違いしているみたいだ。

 死んだと言えば、何故?と返ってくるのがオチだ。

 伊織はマイケルの質問には答えず、マイケルがここにいる理由をたずねた。


「お前こそ、ここにいるという事は、軍の関係者になったのか?」


「お前も知っているだろう?通信関係の仕事さ」


 知っているだろう?と言われた伊織は、マイケルが頭や運動が、あまり得意じゃなかった事を思い出した。

 通信関係と言ったのは、機密事項があるからだろうと解釈し、聞かれるであろう質問の答えを返した。


「俺は日本からエルザ教官に呼ばれてきた。内容は今からだな。まぁまた、その内話そう」


「OK伊織。また今度な」


 エルザ教官に呼ばれてきた。

 内容は今からだ。

 この二つの言葉から、エルザ教官を待たせてしまっていると解釈したマイケルは、伊織を引き止める事なく、自分の席へと戻っていく。


「・・・昔の友人だ」


「あっそう。ほら、サッサと行くわよ」


 みなみ達の元に戻ると、手短に済む答えを返したのだが、見てればわかるわよと言わんばかりに、みなみが返事する。


 黒い螺旋階段を登り、部屋をノックするみなみ。


「エルザ教官。香月伊織を連れて参りました」


「ご苦労。三人共、部屋に入りたまえ」


 ガチャっとドアノブを開け、失礼しますと一声かけて部屋に入る三人。

 みなみ、伊織、美優姫の順で部屋に入ると、外から見えないように、リモコンを操作するエルザの姿が目に入る。


「久しぶりだな伊織。大きくなったもんだ」


「・・・ど、どうしたんだよ、その腕」


 久しぶりに会ったエルザであったが、左腕は肩の先から無かった。


 次回第2章6

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