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世界は「 」にあふれている  作者: 伊達 虎浩
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第1章 1

こちらの作品は、警察ものなので残虐なシーンなど汚い言葉がでてきます。

苦手な方はご遠慮下さい。

 とても静かだ。


 初めて人を殺した俺は、両腕を後ろにまわし、両手をイスと結ばれ拘束されていた。

 面会に来る面々の言葉が、今の俺には届かなかった。

 独房と呼ばれるここは、校内の地下室に設置されている。

 出口は一つしかない。

 出口は校庭のど真ん中にでる事になり、そこはS組の教室、校長室から狙撃できるポイントになっている。

 万が一脱出をした場合、首に取り付けられた首輪の電波が作動し、S組と校長室にいる柏木に知られ、狙撃されて死んでしまう。

 だから脱出をしないという訳ではない。


 人を殺したのだ。


 例えそれが、死んでもいいようなクズだったとしても。


 伊織がそんな事を考え、下を向いていると、コツコツと階段を降りてくる足音がする。

 目を閉じ、足音を聞く伊織。

 しかし、聞覚えのない足音に伊織は、目を開けて前をむく。

 その人物に伊織は声を失った。


「君が香月伊織君だね。学校始まって以来の問題児にして天才だとか。いや失礼。私は・・」


「財前 茂雄首相・・だろ?」


 この国のトップの人を知らない人はまずいない。

 50歳とは思えない若々しい顔たち。

 口元の白い髭はキチンと整えられている。

 当然この学校の生徒でこの人を知らない人はいない。


「ふむ。いい目をしている。香月君。私は君を試しに来たのだよ」


「試す・・俺を?」


「そうだ。事件の詳細は読ませてもらった。あんなクズの為に君の一生を、独房の中で過ごさせているほど、今の日本に余裕はない」


「何を言っている?仮にもあんた首相だろ」


「はははは。いや失礼。仮にもと面と向かって言われたのは初めてでね」


 財前はひとしきり笑い終わると、伊織の部屋に入ってきた。


「君の力を是非私の為に使ってほしい。どれ、手錠の鍵はこれか・・後は銃だな」


 財前は伊織の手錠をはずし、銃を投げ渡してきた。

 わけも解らず伊織が呆然としていると、財前は伊織の両肩を掴み話しかける。


「香月君。君には2つの選択肢を与える。1つはここで死ぬか、もう1つは私の下で死ぬかだ」


 伊織は目を閉じて考える。


「私の下で罪を償いたまえ。罪を償いながら死んでいけ」


 そう言い残して財前は部屋を出ようとする。


「香月君。君が罪を償いきれば、私が君を救ってやる。だから・・・」


 伊織はその言葉を重く受け止めていた。

 財前が階段を上がっていき、姿が見えなくなるのを、ただただ黙って見ていた。

(だから・・死ぬなよ・・か)

 その言葉の意味を正確に理解した伊織は、その注文が厳しいと悟っていた。



 財前は言った。


 君を試しに来たと。


 伊織の考えが正しかったとしたら、ここをでれば戦場になる。

 間違いなく、最初に柏木と美由姫が狙ってくる。

 そして、地上に上がればあいつらが待っている。

 あいつらの中で一番厄介なのは・・やはりみなみであろう。


 何度目かの深呼吸を終え、伊織は銃のカートリッジを確認する。

 玉はゴム弾。

 財前が、さり気なくポケットに入れてくれたのと合わせても数十発が限度である。


 ゆっくりと階段の方へと歩く伊織。

 額から汗が流れる。

 伊織は緊張している事を自覚した。

 それも当然である。

 S組の連中だけは、伊織も認めていた。

 射撃の腕前、情報収集の腕前、剣術の腕前、どれも一流であり、同じ土俵に立つ事はできない。


 いくらシルバーブレッドと呼ばれる伊織であってもだ。


 伊織は考える。

 学校の見取り図を。

 校庭から教室までの距離、角度、外は雨音が聞こえないし、財前の様子から晴れているのは間違いない。

 雨が降った中で外に出た場合、どんなに頑張っても誤魔化しは効かない。

 必ず何処かに痕跡を残している。

(よし。校庭を抜けて校外に出れば、俺を財前が迎えに来るはずだ)

 確証はない。

 しかし財前は、力を試すと言った。

 それならば、何処かで見ている可能性が高い。

 そして、力を貸せという以上、俺を追ってくるはずである。


 伊織が考えをまとめ、意を決して階段を飛び出した。

(狙うはこことここの2箇所・・・何!?)

 伊織が飛び出すと共に突如爆発する地面。

 爆風に飛ばされ、空中へと投げ出される伊織。

(ちっ。爆弾娘が・・やべぇ)

 空中に投げ出されてしまった伊織は、空中で一回転しながら2ヶ所に向けて発砲する。


 着地と同時に左肩を抑える伊織。

(くそ・・流石は射撃の歌姫)

 柏木の銃弾はそらす事ができたが、美由姫のは少しだけそらせただけで、伊織の左腕をかすった。

 おそらく、若干角度を変えてきたかだが。

 伊織がそんな事を考えていると、足元に手榴弾が転がってきた。


 伊織は転がってきた手榴弾を前に蹴りながら、バク転する。

 バク転途中で背中に襲い掛かる爆風。

 爆風で飛ばされながらも、前にいる人物に威嚇射撃を繰り出す。


 しかし、相手は4発の弾道をよみきり、伊織の腹部に向かって思いっきり拳を向けてくる。

 伊織はその攻撃を、地面に手をついて右にそれる事によって回避する。

(今のをまともにくらっていたら、1週間は病室行きだったな)

 武術の達人である彼女の攻撃は、コンクリートを破壊するだけの破壊力をもっている。


「ヒャハハハハ。流石はいおりん。いいよ・・実にいい」


「変な笑い方キモイんですけど」


 爆弾娘の蛇川(へびかわ) つぐみに功夫少女(カンフーレディー)の及川 あい。

 2人共よく知る伊織のクラスメイトだ。

 伊織は銃を構えけん制する。

(どう切り抜ける・・何処かに突破口があるはずだ)

 目だけで辺りを見渡す伊織に、声がかけられた。


「伊織!!」


 その声の主は伊織のクラスで学級委員の少女。


 本田みなみが、鬼の形相で歩み寄ってくるのであった。


1万文字書いたら投稿予定でしたが、前回のがあまりにも読みづらく、予定変更致します。

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