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世界は「 」にあふれている  作者: 伊達 虎浩
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第1章9

 

 なつきの、シャオロンを殺す為に、4人でチームを組まないか?という提案を伊織は受け入れた。

 一人で相手するには、難しい事が伊織には解っていた為、誰かの手をかりようと考えていた。


 めぐみのハッキングスキル。

 美優姫の狙撃スキル。

 あいとみなみの戦闘術。

 爆弾娘のつぐみに、時限爆弾でも作らせようかと考えたが、被害がすごそうなので、つぐみの力はあてにはしなかった。

 そして・・・。

 なつきの推理力である。


「作戦の指揮は伊織。君に任せるよ」


「・・俺が?」


「ま、いいんじゃない」


 なつきの提案に、指揮をなつきに任せようと考えていた伊織は首をかしげるのだが、あいが賛同した事により、伊織が作戦の指揮をとる事になった。

 理由は一つである。


 強い人が一番偉い。


 シンプルかつ、もっともな理由であった。


「まずは立場をはっきりさせよう」


 なつきがそう言うと、チラっとあいを見た。

 私が言うのかよとあいは頭をかきながら、伊織に説明する。


「私達4人は国軍に所属する事になった。みなみと美優姫は今別件に駆り出されている所だ。つぐみは知らん」


「僕は違う。勿論、誘いはあったし、顔なじみが多いから、所属しても良かったんだけどね。僕は探偵事務所を開いて、今回はあいからの依頼でここにいる」


 なつきはそう言うと、メイに顔を向ける。

 なつきと顔を合わせたメイは、視線をそらし、うつむきながら、語りかけてきた。


「わ、私は・・中国のある組織に所属している。しかし、今回は任務とは関係なく、単独で動いています」


 メイの話しを聞いていた伊織の眉が、ピクっと動いた。

 聞いていた話しと違ったからである。

 メイもそれを感じとったのか、伊織に頭を下げた。


「ご、ごめんなさい。任務ということだけは嘘になってしまいますが、それ以外は本当なんです。信じて下さい」


 そう言われても、伊織は動じなかった。

 信じるも何も、初めから信じてなどいないからである。

 どう返すか、もしくはメイをチームから外すか。


「一つだけはっきりさせたい。シャオロンを殺す理由は何だ」


 伊織は、3人を順番に見渡す。


 なつきは依頼を受けた為なので、理由はないだろう。

 あいについても、国軍からの任務なので、理由はないだろう。

 つまり伊織は、メイに聞いているのだ。


 しかし、メイ一人に聞くと答えないだろう。

 なつきとあいはその事に気付いているようで、伊織の考えていた通りの答えを返してくる。

 それが本当の理由なのかはわからない為、伊織はどうでもいいと、聞き流しながら真っ直ぐメイを見ていた。


 真っ直ぐ伊織に見られるメイは、うつむきながらも、理由を説明する。


「弟が・・弟がシャオロンに殺されたから。それが理由よ!!」


 思い出して興奮したからなのか、逆ギレ気味にメイはシャオロンを殺す理由を説明した。


「ハァハァ・・。どう!復讐なんて最低な理由でしょ!」


 プルプル震える全身は、羞恥によっての物ではない。

 伊織は口元をつい緩めてしまう。

 それを見たメイの目が、カッと見開かれた。


「お、可笑しいかしら・・」


 今にも、伊織に飛びかかっていきそうな所を、ぐっとこらえ、メイは静かに身構える。

 伊織の答えによっては飛びかかっていくつもりであった。


「あるんじゃないか」「えっ?」


 伊織は小さく息を吐くと、3人を順番に見渡していく。

 気怠げな表情から一変し、伊織の表情は険しい物へと変化していた。

 メイだけは、伊織のその瞳を直視できなかった。


 まるで悪魔と視線を合わせてしまい、命を刈り取られる、心臓を握り潰されてしまう、そんな気分になったからである。


「シャオロンを殺るぞ・・いいな」


 張り詰めていく空気の中、伊織が決断を下した。

 捕まえるではなく消す。

当たり前のように淡々と告げる伊織に、あいが手を挙げる。


「その事についてだが、シャオロンが今どこにいるかわかるの?」


 あいの質問に対して、船か飛行機だろうと考えた伊織が答える前に、なつきが手を挙げ答える。


「シャオロンは現在、この街に潜伏している。これをみてくれ」


 なつきがそう言うと、胸ポケットから一枚の写真を取り出し、伊織達に見せる。

 特徴的な所をあげるとすれば、長髪で見た目は随分と若くみえる。

 体格は写真だけでは判断できないが、国軍が追っているほどの男、油断はできない。


「・・この街のどこにいる?」


 財前からは、1ヶ月後だと聞かされていた伊織であったが、その事については問題ではない。

 財前に文句を言った所で、シャオロンは既にこの街にいるのだし、伊織がやるべき事は変わらない。

 シャオロンの寿命が縮むだけのことだ。


「・・私が案内します」


 伊織から放たれるプレッシャーが緩んできたからか、メイが慣れたからなのか、メイは静かに呼吸を整え、伊織達に提案する。


「よし。現場には俺とメイ。裏口にあい。サポートになつき。何か問題があるか」


 道案内ができ、シャオロンを知っているメイと伊織。

 シャオロンが逃げた、または手下が来た時に備え、あいを置き、あいは国軍に所属している為、国軍つながりでめぐみが衛星で見ているはずだと、伊織は考え、裏口にあいを待機させる。

 そして、脱出通路の確保および、伊織達のサポート役になつきを置いた。


「よし。目的はシャオロンの殺害または捕獲にある。以上。散」


 伊織のかけ声とともに、各々が目的に備えて準備をする。

 あいが何処かに電話をかけているのが見えたが、おそらく国軍にでも電話をしているのだろう。


 伊織は、胸ポケットから拳銃を取り出し、弾薬の確認をし、メイに何処に迎えばいいのかをたずねた。

 メイは少し、恥ずかしそうな顔をしながら、こっちっと前を歩いて行く。

 なつきとあいに目線だけで、挨拶をすませた伊織は、メイの顔が赤くなる理由が解らず、首をかしげながらメイの後を追っていく。


 横浜中華街裏口。

 辺りは真っ暗で、チカチカと光る街灯が、イルミネーションみたいに光って見えた。

 メイの隣に立って一緒に歩く伊織。

 特に会話はないのだが、伊織が後ろからついて行くと、メイは色々な男から声をかけられる為、仕方なく隣を歩いているのだ。


 伊織が隣を歩いていても、ナンパするやつもいたが、その度に伊織がメイの肩に手を置き、グッと自分の胸元に持っていき、軽く睨んで威嚇すると、諦めていく男達。

 男達を睨んでいる伊織は、胸元で顔を赤くするメイに気づかなかったのが、メイの救いであった。


 しばらく歩いて行くと、メイが顔を赤くしながら、こ、こ、ここよっと声をかけてきた。

 メイが指差す方へと顔を向ける伊織。

 看板にはご休憩3000円と書かれている。

 メイが連れてきたのは、ラブホテルであった。


「ほ、ほ、本当にここなのよ」


 伊織から疑わしい目で見られていると感じたメイは慌てて弁護しだした。

 無論、伊織は疑っているわけではない。

 さっきから顔を赤くしていたのは、ここに自分と潜入するのが、恥ずかしかったからなのかと思い、見ていただけである。


「とにかく入るぞ」「ハ!ハイ!」


 周りから見たら、無理矢理連れ込んでいるように見えるのではないだろうかと、伊織は心配になる。

 ブーブーと携帯がバイブする。

 パカっと携帯を開き、着信があったが伊織は無視する事にした。

 やはり見ているか。

 着信の主はめぐみであった。


「いらっしゃいませ!ご休憩ですか?宿泊ですか?」


 明るく、大きな声で受付けをするヒゲを生やした男。

 胸元の筋肉からモジャモジャと見える胸毛。

 こういったホテルに入った事がない伊織は、キチンとした接客だなと感心してしまっていた。


「観戦で」


 モジャモジャのダンディーな男の質問に、答えたのはメイであった。

 メイの答えを聞いた男は、右手の親指以外を立てて、4の数字を顔の横につける。


「そうだ。二人で木馬の部屋へ行きたい」


 メイは指で3を作り、おでこにつけて答えた。

 すると、ダンディーな男は0の鍵を手渡し、伊織とメイに告げる。


「どうぞ、ごゆっくり」


 二人は鍵を受け取ると、0と書かれた部屋を通りすぎ、43と書かれた部屋の前で鍵を使う。


「なるほど、そういう事か」


 ダンディーな男との不自然なやりとりは、警察を欺くカモフラージュというわけだったのかと、伊織は一人納得していた。

 2重3重のトラップである。

 一つ間違えば、0の部屋を開けてしまい、シャオロンどころでは、なくなってしまっていただろう。


 伊織は部屋の中を見渡した。

 大きいベット、照明がピンクなのは女性がピンクが好きだからだろうか・・それよりこれか。


 部屋の壁側に不思議に置かれた木馬の乗り物。

 下はバネで固定されており、公園で子供が乗って遊ぶ乗り物だと思われる。

 メリーゴーランドにあるようなやつを目の前にして、伊織がしゃがみ込んで調べていると、メイが隣にやってきた。


「右に43秒間かたむけてみて」


 メイの指示に従って、木馬をかたむけ、携帯のタイマーでキチンと計る伊織。

 すると、何処かでガタンと音がした。


「行きます・・伊織。ここからは何があっても冷静でいて下さい」


 伊織の右手を優しく握るメイ。

 伊織を気遣っての事だったからなのか、自分自身を気遣って欲しかったからなのか、伊織には解らない。


 だが、一つだけ解っている事がある。


 ガタンと開く扉。


地獄の扉が開かれたのだ。

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