-What's the dream of human beings stepping corridor of green linoleum?- 1-4 物語進行
夢の中のお話に、死に設定とか伏線回収とか求めるのはナンセンス。
...
はっきりと思い出した。砂漠の夢だ。砂漠で誰かがずっと指輪を探しているんだ。
でも、指輪は見つからない。どれほど長い間探し続けたのかは分からないが、結局その世界は砂が降り続けて覆い隠されてしまった。そこで「指輪を探していた人」はいなくなった。その途端に意識が軽くなって、また別の夢に切り替わったような……?
「すごいすごい、そんなにはっきりと覚えてるの!?普通は夢の中で一つ前に見た夢なんて思い出せたりしないのに」
まだ完璧じゃない。そこで指輪を探していたのは誰なのか、そこがはっきりしない。涙を浮かべながら必死に探していたのは覚えてるのに、それがどんな人物だったのかはさっぱり……。
「指輪探しの夢……かぁ。……あ!分かった。きっとあの子だ」
あの子?
「うん。"ユメオイ"の仕業だね、きっと。で、キミはこっちの夢に引きずり込まれちゃったってワケか。あれ、でも普通はそんなことあり得るのかなぁ?」
ちょ、ちょっと。一人で悩む前にちゃんと説明してくれないと何が何だか分からない。聞き慣れない言葉があるぞ。
「う~ん、そうだなぁ。何から説明しようかな……。いい?一つ一つ確認するよ。ここは夢の世界、でボクはユメ、管理人みたいなもの」
うん。
「で、この夢の世界ってのはなんて云うのかな、柵で仕切られた牧場がいくつもあるの。一つの牧場が一人が見てる夢なの」
地面を指でなぞって画を作成し始めた。大きな四角を描いて、その中に縦横にいくつか線を引いて大体九等分に仕切り、九つの長方形が出来た。この長方形一つ分が一人の人間が見ている夢だと仮定する、らしい。
「仮にキミが見ている夢がこれだとすると、ほらすぐ隣に別の誰かの夢があることになるでしょ」
真ん中の四角を自分の夢に見立てて考えると、上下左右斜めと四方八方を他人の夢に囲まれていることになる。
「実際はこんな単純じゃないし、本当にここまで隣接し合ってるワケじゃないけど、こんな風にしてボクは夢を管理してるの」
なるほど。でも、これなら牧場なんて言い方しなくても……
「ああ、それは今から説明するね。牧場って云ったのには意味があって、夢ってのはいわば地面みたいなもの、つまり下地なの。ボクが本当に牧場で管理しているものは"獏"。夢を食べるって云うあの獏ね。その獏たちにはテリトリーがあって、一カ所に獏たちが集まりすぎたりしたら夢が獏たちを支えきれなくなって壊されたりしちゃうから、ボクはそういう事態が起こらないように見張ってるんだ」
夢を食べる獏か……。悪夢の正体ってそれなのか。
「その獏にもいろいろあるの。みんながみんな夢を食べるんじゃなくてね。夢を食べる獏のことをボクは"ユメクイ"って呼んでる。ま、スタンダードな獏だよね、キミにとっては」
他にも?
「他にはねー、夢を買う"ユメカイ"とか、極上の夢を希う"ユメコイ"とか、もっと面白そうなのは好きな人の夢を見せる"ユメアイ"や"ユメユイ"みたいなヤツもいるよ」
なんだか単純なネーミングだけど、分かり易いと云えば分かり易いかも。
「それで最初に戻るけど、ユメオイってヤツが居てね。その子は指輪探しの夢を追いかけて、その夢の中で指輪を探し続けてるの。指輪探しの夢っていうのは、誰がいつ何処で見ているのかも全く分からない不思議な夢で、突然他人の夢にも介入してくるの。さっき個人の夢は地面だって話したでしょ?指輪探しの夢はビニールシートみたいなもので、地面の上に風で飛ばされてきたようにやってくるの。そしたらさっきまで見えてた地面はシートに覆い被されてしまう、つまり夢の上に新たな夢が重なってしまうの。ユメオイはそれを追いかけてやってきて、シートがまた何処かへ飛んでいけばそれを追いかけていってしまう、そんな関係」
成る程。
「でね、なんでボクが君に接触したのかっていうとね、うーん、つまりは君の夢の一部が指輪探しの夢か、ユメオイかのどちらかにくっついて何処かへ行っちゃったの。どういう事になるかというと、夢は記憶の整理だからその夢が無くなれば記憶がなくなることと同じ事。このままだとキミは目が覚めたとき、何か大事なことを忘れてしまっているかもしれない」
おいおい、それは困るぞ。
「そうでしょ?だから一緒にユメオイを探してくれると嬉しいなぁ~って思って」
……こっちには何の落ち度もないのになぁ。
「ごめんね。だけど記憶がなくなっちゃったら困るでしょ?それに二人で探した方が早く見つかると思うから。……お願いっ!」
そんな風に頼まれたら断りづらいじゃないか。仕方ない、やるよ。
「ありがと~。あのね、指輪探しの夢が向かったのは君の夢と隣り合ってる別の夢の方みたいなの。だからそこに向かえばユメオイも見つかるハズ。それじゃあ、しゅっぱ~つ」
まあ、これくらいの強引な展開も夢の中ならでは……?




