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reco240°  作者: いずも
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21/30

-Bone cheats Geist- 4-1 タイトルと関係ない本文1

 ――物語には緩急をつけた方が面白い。夢もまた、然り。


...



「特異点」

 ……は?

「難解な言葉を並べた文学ぶった作品より、比類なき人間国宝の小咄より、最年少大統領の演説より、そこいらの学校にいる教師が授業開始の五分間で生徒の心を掌握するために考えついたようなくだらない思いつきの方が価値のある、そんな特異点がこの夢の世界なのよ」

 したり顔でユメ?が言う。

 いきなり何を言い出すんだこいつは。しかもどっかで聞いたようなフレーズ。

「特異点。特異点よ特異点。そんなことも知らないの?」

 難しい英単語を覚えたばかりの中学生かお前は。人を小馬鹿にしたような目でニヤニヤと……

「ブラックホールも特異点なのよね!でも特異点って何なのかよく分からないわ。1/xのグラフはx=0に特異点を持つ、なんて言われたって何のことだか。ネットでググってもウィキっても何が言いたいのかサッパリだもん、なんで日本語なのに数式が出てくるのよ、そもそもこれ日本語?」

 いや、特異点って物理とか数学の用語だし……。それってsinを見てなんで数学に英語が出てくるんだよってくらい見当違いのこと云ってるぞ。そもそも「特異点」は日本語訳であって、英語じゃ"singularity"って単語がちゃんとあるよ。むしろ英語の方が先だろ。

 意味も分からずに言葉だけを先行して使いたがるとか、ますます中学生かお前は。

「なっ、なによ。それなら特異点を分かり易く説明してみなさいよ。ちなみに私は特異点とは?って聞かれたらブラックホールのことさ、って爽やかに返すわ。それはもう少女漫画の如く無数の星をデコレートしながらね」

 なんでこう演技っぽい振る舞いしてるんだろうか。まるでドラマのワンシーンでも再現するかのように。やめろ、別に可愛くないから。


 特異点ってのはなんだ、まぁ一言で言えば「常識の通じない世界」ってことだろうか。イレギュラーとでも表現しようか。ブラックホールでは重力が意味をなさない。我々の信じている常識が通用しない、我々の生み出した法則が何それ美味いの?状態に陥ってしまうのが特異点というものだ。逆にいえば、元となる常識がなければ特異点など存在しないのかもしれないな。

「類義語には限界点ってのがあるわね。私の思想Wrathが反応したわ」

 シソーラスな。お前の類義語辞典は悪魔辞典かなんかか。小悪魔的どころか七つの大罪引き起こすレベルじゃねーか。

 けど、常識の通用しない世界ってどこにでもあるだろう、常識的に考えて。


 "常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう"

                ――アインシュタイン


 そもそも常識は何だろう。赤信号では止まる、青信号では進む、トマトは赤色、バナナは黄色、赤外線は透明、アンモニアは無色透明……。"色"に関する常識(?)を並べてみたが、これらは全て「常識」なのだろうか。確かに赤信号が「進め」の意味を持つ道路規則を用いる国は聞いたことがないし、食卓で目にするトマトは赤色で、食べ頃のバナナの皮は黄色だ。小学生百人にトマトを描いてみましょう、なんてお題を出せばほぼ全員赤色のトマトを描くだろう。だが、世の中には黄色いトマトが存在するし、黄色くないバナナはバナナではないかと問われればそうではない。熟れていない緑がかったバナナを見て「これはバナナじゃない。完熟度的に言ってバヌゥだな」なんて言う人は居ない。赤外線が虹色で可視線ならそこら中カラフルな世界になっていたことだろう。アンモニアが薔薇の香りならそもそも芳香剤なんてこの世に生まれていないのだ。むしろ今の世の中は芳香剤が溢れすぎていて「薔薇の香りがすると便所を思い出す」なんて本末転倒な事象が起きている。そもそも自分の見ている色が本当に他人と見ている色と同じなのか――あれ、なんかこの話題前にも出したことあるぞ。うん、止めよう。前にも語っていたとしたら被る上にこのテーマだけで一話書けるくらい考えされられるテーマだし。

 なんだっけ。そうそう、特異点……と常識、だ。

 特異点は常識の通用しない世界。いわば「うちゅうのほうそくがみだれる」だ。相対性理論の矛盾が生じる世界、例えばそう……反重力の世界とか。鉛の玉を上から落とせば自由落下運動により地面に落ちる、というのは重力に従った法則なのだが、鉛の玉を手から離せば上に浮いてしまったとしたらどうだろう。常識外であり、重力に逆らっていることになり、それが特異点なのだ。ある意味宇宙自体が特異点と云っても良い。なんせ自分の思い通りに体が動かせないのだから。宇宙船の中でふわふわ浮いている映像を見て「あるある、よくやるよ」なんていってのけるやつが居たら、そいつは確実に地球人を観察に来た地球外生命体になったつもりでいるおつむの弱い残念な人だ。

 夢の世界が特異点、なるほどその考えは非常に面白い。夢と宇宙を同じ土台に乗せるのはちょっとどうかとも思ったが、無限の可能性を秘めているという点ではどちらも似通っているのだろう。実は夢だって自分の思い通りに進まない。思い通りに進んでいると思うのなら、自分の思惑と夢の世界の台本がたまたま合致しただけの話だ。夢の中の進行は己の意思とは全く別の場所で、自分であって自分でない所謂「無意識」により、勝手に台本が読み進められているに過ぎないのだ。それに夢の世界は常識外だ。どんな常識だって通用しない。そんなことは今更改めて確認するようなことでもないのだが。


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