1話「森の中だったよ」
今回はそんなに話が進まないです。
確かにさ、悪い事はミミズ以外にも色々したよ。嫌みしか言わない客に出す菓子の中に消費期限が切れたやつ入れたり、当時好きだった女の子に嫌がらせしてた男子の上履きを牛乳で洗ったりしたさ。
でも、森の中の屋敷からスタートさせる程ではないよな!?
◆◆◆◆
妙にスッキリとした目覚めだった。
うー。何してたんだっけ俺。確か、トラックに轢かれて白い空間に連れられて異世界トリップだかどうだか・・・
「ホントに、トリップしてる。」
俺はキレイに整えられた西洋風の部屋のベッドの上にいた。スゲェ、ゴミはないけど物で散らかっている俺の部屋と大違いだ。
とりあえず、現在地を確認しよう。
ベッドから降りてカーテンのかけられた窓を開けて見ると辺り一面木に囲まれていた。多分、森林に背を向けて建っている屋敷なんだろう。
てか、高ぇな。俺の寝てた部屋は三階みたいだ。
しっかし、見事に木しかねぇな。反対側に行ってみるか。
ベッドの側にちょこんと置いてあった靴を履き、廊下に出た。
ドアから顔だけを出して辺りを見渡してみると、同じような作りのドアが等間隔に設置されていた。三階はこの屋敷の住人の部屋になってるんだな。
俺の部屋の真向かいの部屋を覗いてみると、同じ作りになっていた。
さっきドアを見たときドアに付いてた金色の模様が違ったから、多分それで部屋割りがされてるんだろうな。
俺は異世界の街並みを堪能しようと、カーテンを開け放ったが。
「は?」
目の前には木々が生い茂っていた。
「いやいやいや。木って、木っておかしいだろ。ここどこだよ。」
予想外すぎる事に思わず独り言がこぼれた。異世界トリップの定番って森の中からスタートとか、どっかの街の屋敷からスタートだろ。まぁ、確かにどっちの要素も含まれてはいるけどさ。
その後、他の部屋も見て回ったが。どの部屋からも見えるのは木しかなかった。
嘘だろ。折角、異世界に着いたら建国しようと思ったのに。森の中の屋敷からどう建国すりゃいいんだよ。
そう言えば、あの文字『スポーン位置の安全獲得成功』とか言ってたな。
そっかー。確かに、安全は確保されてるわ。
もし、街の中からのスタートだったら。身分証明書と少しのお金を持たせりゃいいし。後、スポーンするのを見られないようにするのもな。
原っぱや森の浅い所からだったら、金と近くの街までの地図を持たせればいいし。
森の深い所だったら、屋敷を作るのか。へー。
まぁ、いいや。気楽に行こう。どーせ、気楽に行かないとこの先やってけなくなるし。てか、俺の性格をここまで有効に使ったの初めてだなー。
そうと決まれば、まずは屋敷の探索だな。しかし、独りで探索するのは寂しいな。
そうだ、≪我が子≫だ!丁度いい。試すのも兼ねて使ってみるか。
・・・どうやるんだ?
思い付いた主人公一人を思い浮かべて「出てこい」と念じてみるが、何も変わらなかった。
専用の道具でもあんのかな?俺の部屋を探ってみるか。
探ってみたが特に変わった物はなかった。だが、 変わっていたものはあった。それは俺の肉体年齢だ。
≪不老不死≫の影響なのかはわからんが、明らかに若返っている。大体、18歳ぐらいか。
しかし、どうやるんだか。
あぁもう。≪我が子≫よ、出てこい!
すると、俺の目の前に焦げ茶で金色の模様が付いた本が現れた。
おー、テキトーに言ってみただけだが成功みたいだな。
俺は目の前の本を手に取り中身を見た。中身は、今までに生んできた主人公の詳しいステータスと顔写真。表紙には、金色の模様の中心に0と書かれており。裏表紙には、赤一色で描かれた魔方陣のようなものがあった。
おそらく、中身を見て主人公を選び。裏表紙の魔方陣で呼び寄せるんだろ。ゲーム脳から言うと。
よし。俺は、先ほど呼び寄せようとした主人公を頭に思い浮かべた。すると、知らないはずの詠唱がするりと口から出てきた。
≪`マリン`召喚≫
その言語は日本語とは違う不思議なもので、この世界の住人のものとは思えなかった。
よくわからんから『魔法言語』とでも言っておくか。
「ホントに、召喚できたんだな。マリン」
俺の前には、ひざまずきうつむいた女性がいた。女性は呼び掛けに答えるように目をゆっくりと開き、立ち上がった。
「貴方がワタシのマスター?」
この女性の名は[マリン]。長い黒髪と金色の目を持つ死神だ。服装は生んだ当時と変わらず。黒いベストとズボンに白の長袖シャツ、黒メガネと革手袋だった。
武器は死神らしく≪大鎌ーデスサイズー≫を使う。
「マスターか。まぁ、一応そうなるな。」
「じゃあ、マスターと呼んだ方がいいかしら?」
マスターか...うーん響き的には良いけど、呼ばせるのはなー。ご主人様って呼びそうな子がいるから気にはしないけども。
「ま、好きに呼んでくれ。」
「じゃあ、レンで。」
あぁ、ふざけるのが好きな奴だったな。そう言えば。・・・ん?
「俺の名前知ってるのか?」
「ええ、全員知ってるわよ。レンが≪我が子≫を獲得してからね。」
「他の皆はどうしてるんだ?」
「その中よ。」
マリンは本を指差した。
「その中には、この屋敷のようなデッカイ建物があって皆はそこに住んでいるわ。そこでは皆、自由にやってるわよ。黒い真鈴なんか一日中寝てるし。」
真鈴か。後で真鈴や他の皆も召喚してあげないとな。
「ま、召喚されること以外屋敷の中から出ることは出来ないから、ホントに自由にやってるわ。」
「・・・そうか。」
ここから出ることは出来ないのか。そっか。
「それで、ワタシに頼みたい事あるんでしょ?」
そうだな、まずはそっちを優先しないと。謝るのは後にしよう。
「あぁ、この屋敷の探索を頼みたくてな。俺一人だと厳戒があるし、何より寂しいし。とりあえず、≪我が子≫が何人召喚出来るのか試してからだな。」
俺は手に持っていた本を開き召喚する主人公を選んだ。
表紙の数字が1になっていたから、召喚出来る人数に限りがあるんだろう。
そうだな、まずは
≪`水鬼`召喚≫
≪`ハユリ`召喚≫
よし!まだいける。
≪`沙羅`召喚≫
4人目を召喚し終わると、裏表紙の魔方陣が消えた。最初は4人までか。
「ふふ。こんなに早く呼ばれるなんて嬉しいわ。」
水鬼は自然と調和してくらす一族の一人だ。服装は、どの属性を使うかによって変わるがドレスをモチーフにしたものが多い。
属性は『火・水・土・風』と、その上位互換。
武器は≪槍ー虚無ー≫。無属性の槍に他の属性を纏わせて使うためのものだ。
「私達の屋敷の本は数が少ないから退屈していたところだったから、丁度いいわ。」
ハユリは女性バージョンと男性バージョンのある人間だ。
今は女性バージョンの方らしく。少し長い髪を下で結び、白のワンピースを着ていた。
武器は包丁だっけな。
「そうね。私も体を動かしたかったところなのよ。」
沙羅は黒鬼と言う特殊な能力を持った鬼。
服は動きやすく改造された着物で、武器は拳の怪力系女子だ。
「よし。皆、召喚出来たようだな。そしたら、水鬼は屋敷の外構と周辺の調査。特に街が近くにあるか調べてくれ。ハユリは何か不自然なものがあるか調べてほしい。マリンはハユリと、沙羅は俺と屋敷の探索だ。頼めるか?」
「えぇ。もちろん。」
「じゃ、解散!」
皆は一斉に動き出した。
さて、何があるかな。俺は沙羅と一緒に屋敷の二階へと向かっていった。
よし。だいぶ、話の内容がまとまってきた。
次回は屋敷探索と世界観設定についてです。