アア、食べてみたい(三十と一夜の短篇第4回)
ずっと見ていた。
アア、食べてみたい。
隣のテーブルの彼女はナプキンを軽くたたんでテーブルにおき、ウェイターに美味しかったわと一言。「ソースが絶品だったわ」
アア、食べてみたい。食べるゾ。食べるゾ。
アア、殺したぞ。
レストランの帰り道。襲いかかって、彼女の腹を切り裂いた。中身を引きずり出す。
それで、ようやく準備にかかれる。料理は素材が命だ。ちゃんと洗っておくことだ。
アア、食べてみたい。
ボクは彼女の腸から引きずりだした三〇〇カラットのダイヤモンドを銀の皿にのせた。
ウェイターに注文する。「そのダイヤモンドをにんにくで炒めてくれたまえ。にんにくは炒めているうちに溶けてしまうくらいに薄く切るんだ」
アア、はやく食べてみたい。
†
ずっと見ていた。
アア、食べてみたいワ。
隣のテーブルの彼はナプキンを軽くたたんでテーブルにおき、ウェイターに美味しかったと一言。「にんにくのきかせかたが絶品だった」
アア、食べてみたい。食べるワ。食べるワ。




