俺の叶わぬ夢物語ブルース、聞いてくれ〜♬
読んでくれ〜♬
「メメナにはどんなのが似合うんだ?あの見た目だと結構可愛い系のやつが合ってるのかな?」
金髪ふわふわヘアーの女の子、いつもジャージ姿だから上手く想像ができんな。
俺はシャーシャーと服を右へ左へを繰り返す、ちなみに男一人で。何かやってて恥ずかしいな。
少々小心者の俺は、背伸びをして周りを見てみる。
うわー、どこもかしこも男女ペアで選んでるよ。一人で選んでるのって俺だけじゃん。
俺は背伸びを止めて再び服をシャーシャーってする。
それにしても、俺が女の子の服を選ぶとは出世したな、それも魔王の妹の。まぁこれも主人公たる宿命なのかもしれないけど。そう言えば、いつの間にかあの気恥ずかしいが消えてたな。
思い出すのは俺がメメナに服を選んでやるって言ったあの時。
多分、メメナとの会話のお陰で気恥ずかしさを紛らわせる事ができたんだろうな、もしかしたらそれはメメナの気遣いだったのかもしれない、結構優しい所もあるし
魔王の妹メメナ、出会ったのは今から約半年前。
その半年で俺はどれだけメメナに近づけたのだろうな、メメナは出会った当初からあんなハイテンションガールだった、出会った当初からまるで友だちの様に振舞っていた。
という事はつまり、あの時からまだ何も進歩してないんじゃないかって思う。
まぁ、それもそうか、俺だって出会った当初からメメナへの振る舞いは変わってない、初めっからずっと。
何で変わらないのか理由は分かってる『俺がこれ以上変わろうとしていない』からだ。変わろうとしないってのは、それは進歩して行かないって意味。それはつまり主人公をヤル気が無いと言ってるのと同じ。
主人公ってのはかなり負担の掛かる物だ、漫画とかアニメとか小説とかの主人公達ってのは人しれず過酷に戦っている。でも彼等はそれを辞めたいとは思ってない、何故ならそれが『一つだけ』だからだ。
俺の考えでは主人公ってのは言わば一種の職業だと考えてる。それも様々な属性の詰まった辛い職業。
でも主人公ってのはそれを辞めたいとは考えない、それは『辛い』の中に『幸せ』があるから。人ってのは幸せがあれば辛さに耐える忍耐ってのが備わっている。主人公は特にその緩急の幅が広い、主人公はそれを糧に頑張ってるんだ。
——でも俺は違う
俺には緩急って物が働く境地にない、俺にはそれが働かない。何故なら俺は主人公をやり過ぎているから。
物語の掟では主人公は一人につき一人だ、でも俺は主人公ってのを今四つほど掛け持ちしている。分かるか?四つだよ?一つでも十分なのに俺は四つもやっている。
もうここまで来ると緩急が働かない、いかに楽にやるかってのを考えてしまう。
いやね、昔の俺は頑張ったよ、主人公っぽかったと思うもん。でもそれはやっぱり一つだけだったからだ。
ちなみに俺はその主人公をやり終えた、完結まで行ったんじゃないかな?でもその後にまた俺は主人公をやる事になった。俺は頑張ってまたやり終えた。
でもそれはどんどんエスカレートして行って、ついには主人公掛け持ちってゆーのになった。そしていつしか楽をしようって考えになっちまった。ただのんべんだらりと主人公をやる日々、やり甲斐をなくなしたサラリーマンだ。
いやね、楽しい事もあるんだよ、主人公だから体験できる事とかね。
だからと言って四つはキツイ、過去最高の掛け持ちだよ。
俺はそんな毎日を送るにつれて、自然に呼吸をするかの様な自然さで楽をし出す。主人公にとってもっとも楽な事は話が進まない事、これ以上進展しないって事、それはもう物語のご法度、完結しないんだから。
完結しないって事は主人公も辞められないって事、俺は現状維持を望んでいる。
ただ普通のモブキャラになりたいなと思ったりもする、そこらへんにいるカップルがまさにモブだ、
ザ・モブ。
それは叶わぬ夢物語——