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彼女(?)の目的は神様事情

今回はちょっとした説明会です。

時刻は午後の六時。

夕焼けが刺す夕暮れのとある小さな公園のブランコ、俺はブランコに座りブラブラしながら六十六むそろく メメナを待つ。


ちなみに『待つ』と言っているがもうかれこれ二時間ほど待っていて、俺はすでにグダグダモードに入っている。


「誰だよ今日は“デート”しようって言ってきた奴はー、メメナだよ!アァダァア‼ホワタァア‼」

独り言も常軌を逸する、すでに半狂乱な愚痴だ。


「あー二時間〜♬その数字は俺にとっちゃ酷過ぎる数字〜♬映画が一本終わる数字ぃ〜♬おウィやあ、二時間は〜人を狂わせる数字ぃ〜オぅヒィー」

そんなくそったれな歌と、ブランコのキコキコ音が妙にマッチしていた為か、俺は何故か錆びたブランコに共感を得ていた、そして同時に虚しさも得た。


虚ろな目に映るのは平坦な地面上に作られた遊具たち、滑り台、ジャングルジム、吊り革、鉄棒、登り棒、そしてこのブランコ。

公園、ここは公園だ、公園とは遊ぶ為にある物、なのに俺以外に誰一人いない。

時間が時間なのかもしれないが、俺はこの公園で遊んでいる人を見た事が無い、ある“一人”を除いてだが。


そう、ここはさびれた公園、老朽化の進んだ爺さんだ、それも小柄な爺さん。

そんな爺さんだからか、妙に感傷に浸れる。

そんな爺さん相手だからか、俺は——


「よーう!お待たせ〜!メメナ様の登場よ!今日もバリバリレッツビギン!」

俺は——あれ?何だっけ?


「おい!テメェのせいで忘れちまっただろうが!」

ブランコから一気に立ち上がり怒鳴るその先。


なびく金髪、フワフワヘアー。

鏡音リンを意識したデカリボンカチューシャ。

活発そうなパッチリとした瞳で、その色は澄んだ青色。

鼻筋は整っている。

一言で美少女です、はい。妹とは色々と反対的な美少女です。


「いきなり何よー、彼女が来たのに〜、照れてんの?照れてんか!ひゃー!」

「彼氏になった気は無い」

「やっぱ照れてる?ウブだね、ひゃー!」

このハイテンションガールの名前は六十六むそろく メメナ、勿論 俺の待ち人だ。

そしてこの公園で遊んでいた唯一の少女、俺に厄介ごとを持ち込んできた少女だ。

そんな厄介ガールたるメメナにデートしようって言われて来たのだが——


「お前のその服は何だ?」

俺が指摘した姿。

汚れ一っつもない真っ白な上下セットのジャージ。

ワンポイントで手首の所に二本赤いラインが入っている柄。


ちなみにジッパーは下まで全開に降りていてピンク色のシャツが大胆に出ている。


そして褒めるべきはそのピンク色のシャツを盛り上げて「かかってこいやー」と言いたそうに立ち構えている豊かな胸。本当に妹と逆だな。


「ん?ジャージやで?」

「知ってるわ」

こいつは動きやすさを重要視するたちだ、よってジャージを着る事は多い。

まともなファッションを見たのなんか片手で数える程度だ。

でもさすが美少女って訳で妙に似合う、ジャージジッパーな所も、そこから見えるピンク色のシャツもワイルドって感じでいい

だから文句は無い、おしゃれしてこなくたって全然構わない。でも俺が文句を言いたいのは——


「何で俺は二時間も待ったんだヨォォォォ!」

二時間とは由々しき時間だ、だが一端の女の子がめかし込んで来るには当然かかってしまう時間、彼氏(?)たる俺は温和に受け止めるべきだと思う。

でも二時間待ってやって来たのはジャージだった、分かるか?ジャージだよ?どこに時間をかける要素があるんだ!


「メメナ!二時間何やってた!」

俺は問う、返答によっては四次元空間懲役三十秒の刑に処さなければならない。


「兄さんがいたからさ、ちょっと遅れちった、ゴメンこうむる居候」

そうろうだろが、居をつけんな。


「まぁ、それなら遅れてもしょうがないな」

俺は温和に許す、兄と言う単語が出た途端に許す。


「アリアリアリアリありーがとうベデルチ!」

しゃきーんポーズ


「ジョジョネタかよ、乙だな」

「乙やで、ひゃー!」

夕焼けの光で弾けんばかりのその笑顔が綺麗に映える。


俺が何故こうにも簡単に許したか、それは彼女彼氏的な事情では無く、圧倒的だらだ。

メメナの兄、つまるところ“魔王バアル”

六十六の兵団をまとめる魔界随一の王で、

『完全無欠勧善懲悪』を座右の銘にする最強のお兄さんだ。


ちなみにメメナの苗字の六十六むそろくはここからもじっている、実際にはあり得ない苗字だからな。



「幸太郎、行くぞっ」

「うわっ、おい!」

メメナはいきなり俺の手をとると、元気よく夕暮れの街に出陣し出す。



では俺がこいつに引っ張られている間、活発ガールたる六十六 メメナについての説明と、魔族のメメナが地上界に住んでいる“目的”についてを説明しよう。


六十六むそろく メメナ16歳、魔王バアルの実妹、魔王の妹ともありかなりのお嬢様だ。


そんなお嬢様系活発ガールメメナは、とある事情によりこの地上界に住んでいる。

本来なら由緒ある家柄のお嬢様が地上界に来るなどあり得ない事なんだが、今回は魔界の未来を決める重大な事なんで地上界に送り込まれて来た。

そのとある事情とはズバリ、“魔神”を決める事だ。


現在の魔王は先程も言った通りにメメナの兄、バアル。しかし魔王といった者はバアルの他にも多数存在している。


天から追放されし堕天使 ルシファー。

魔のカリスマ サタン。

空の聖者 ベルゼブブ。

反転女王 レヴィアタン。

そして、剣神 バアル。

これが強大な勢力を誇る魔王達だ、他にもいるけどね。


魔界では王警守制度、略して“王制”が導入されており、確たる力のある魔王達がそれぞれ軍隊を編成し、魔界全土の民を守っている。

つまり王制は民を“統治”するのではなく、あくまで民を外敵、又は内敵から守る制度。俗に言う警察みたいな物だ。


民を統治する者は“魔神”と呼ばれる役職につく。

現在その魔神の地位にいる者は天使メタトロン。天使と言う事もあり“神”の使いだ。

メタトロンは神から魔界を統治する様に命じられた魔界誕生当初からの魔神。

しかしそのメタトロンがそろそろ定年退職とかで魔神の座が空くという。


それで次の魔神はどうするかと各魔王達が集まり首脳会談をした、その場にはもちろん天使メタトロンと 神 も出席した。

森羅万象の全ては神から初まった、つまり魔界でも天界でも最強の決定権があるのは 神 となる、つまり 神 が魔神を決めるという事だ。


その 神 の決定した事項は

『地上界で最も多くの何かをした者が魔神、しかし魔王はその対象から省く』

と言う物。つまり魔界の住人全員に魔神となるチャンスがあるという事。だが魔王は魔神にはなれない。


神 の意思では

『魔王達にはこれからも王制を続けてもらいたい、その為に魔神から省く』

といった物だった。


そこで登場するのがメメナ、メメナは魔王の妹ってだけで魔王ではない。

魔王バアルは、自分の代わりに妹を魔神にすると息巻いて、メメナを地上界に送り込む事にしたのだ。

だが『多くの何かをした者が魔神』と言われても漠然過ぎるので、魔王バアルはその何かを“人間の署名”にした。


メメナは兄のバアルから渡された“赤い署名本”を持ち、地上界に現れた。

でも地上界に来る時にそれをうっかり落としてしまった、そしてそれを拾ったのが俺。

そしてその時に初めて会った人間ってのが俺。

そしてその時の初めての“人間”の署名が俺だ。


俺は何故だか知らんがメメナの署名活動を手伝う事になった、まぁ、多分俺の能力が便利だからかもしれないけど。

あ、ちなみにその“赤い本”は俺が持ってる、メメナが言うには「私が持つより幸太郎が持ってる方が安心なのだー!ひゃー!」だそうだ。

俺なら四次元空間に隠せるからな、万が一なくすとか無いしな。


ってな訳で、俺はメメナと絶賛署名活動中だ。

でも今日は息抜きにデートをしようってメメナから提案があったんで現在絶賛デート中、今はメメナに引っ張られてるだけだからデートとは言い難いけどね。


「とうちゃーく、ディスイズ ア イオン、イズディス ア ショッピング?オーイエス」

ってな訳で、到着したのはイオン、しかもこのF2は全面がショッピングモールという絶大な広さを誇る代物。


そして目ざとい俺は決して見逃さない。

『開店一周年記念おかけざま感謝デー、全品半額もしくはもっとお安くしちゃいます』

と書かれた表札を——


つまり何故今日デートすると言われたのか俺は理解した。


「もう、持てねーよ…」

「まだまだ大丈夫大丈夫」

あのカップルを見て確信した。



「俺荷物持ちかよ!」




ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想などを絶賛よろしくお願いします。

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