何ですか?天使ですか?
「アレクス」
「……ん」
ヤバい、目が死んでる。とんだけの変わり様だよ。
「アレクスって俺が呼び出す前は何してたんだ?あともうちょっとって言ってたけど」
「……ンプ……」
ん?何つった?周りの雑音が優って聞こえん
「ワンモアプリーズ」
するとアレクスは大きくため息をはき。
「トランプタワー」
と一言。それはあまりに意表を突かれた答え
「え?トランプタワー?え?トランプタワー?」
思わず二度聞きしちゃったよ。
アレクスは何も言わずにただコクリと首を振る。まさかの?トランプタワー?うわースゲー
「あともうちょっとってどんくらい高くなったん?」
興味深々な俺、それに引き換えアレクスはただ平坦に
「九段くらい」
おおっ!九段ってプロじゃねーかよ、いや何のプロかは知らんけど。
「でもアレクスの休日って案外平和なんだな、俺の予想じゃデートとかしてんのとか思ったんだけど」
だって男の俺が認めるイケメンだぞ?多分あっち系な男子ならかなりよってたかるだろうな。俺?俺はあっち系じゃないから。
アレクスは俺のちょっとした予想を鼻で笑う。
「僕はデートなんかできないよ、何せバアル様にこき使われてるから」
それさっきも言ってたね
「アレクスってお兄さんの側近をしてるんだよな」
アレクスは又もやコクリと首を縦に振る。
「それって誇れる事じゃないのか?だって魔王の側近だろ?地位的には高い方じゃん」
それを聞いたアレクスは又もや深いため息をはく
「はぁー……違うよ、もう僕は違うんだ…」
目が虚ろになっていく、ヤバいなこれは、精神的に病んできてる。
「幸太郎はバアル様にあった事あるかい?」
「ん?無い。でもメメナから色々聞いてるけど、超強いとか、魔界随一の王だとか」
アレクスはこれを聞くと更に気を落とす。
「はぁー…やっぱりね、幸太郎はバアル様の“実態”を知らないから、そんな地位とか名声みたいな意味の無い物を重要視するんだよ」
「何その意味深発言、俺の探究心がくすぐられるじゃん」
でもその先は口を閉ざしたままで何も言わなかった。アレクスはただ平坦に黙って人の波を眺めだす。
一体どうゆ〜意味だ?魔王の実態?ヤバい知りたい。
俺の手には赤い署名本、俺が命令すればアレクスは必ず口を開く、嫌でも開かざるを得ない。そのぐらいの強制力のある最強の魔道書。
でも俺は人を縛るとかはしたくない、やればできるんだけど俺はそうゆーのが好きじゃない。
俺がこの署名本を使ってやる事はせいぜい召喚が限度、それ以上の事はしない。まぁ、見えなくするとかはしてるけど。
それでも、言いたくない事を無理やり吐かせるってのはダメだと思う、それはすでに拷問の域にかかっている。拷問か……嫌な記憶を思い出させる単語だな………
「幸太郎、そろそろ帰ってもいいかな?」
突然の申し出にちょっとビクる。
「お、うん、分かった。特に意味もないのに呼び出して悪かった」
「別に構わないよ、僕だってトランプタワーを作るぐらいしかやる事の無い暇人だって事だし……ふふふ」
ヤバいアレクスがいかれてきた、相当まいってるみたいだな……
「魔王の側近……頑張って」
不意に出たエール、いやこれはエールが出ちゃうわ、何か同情してしまう。
「うん、ありがとう幸太郎……でも、同情するなら側近代わって」
アレクスのなけなしの願い。
ダメだアレクス、お前の様子を見てるとやれる気がしない、でもそれを直に伝える訳には……
いつまでも口ごもっている俺にアレクスは力の抜けた声で
「分かってる、魔王の側近頑張るよ」
あー、なんか泣きそう、俺が。
「………すまん」
「…じゃあね」
そしてその瞬間アレクスの姿は———
「彼氏さん、メメナちゃん今試着してますから見に行きましょっ」
あの店員さんが可愛さ振りまく笑顔と共に登場。
そして——
「幸太郎、この方は何ですか?この世の天使ですか?紹介お願いします」
ばっちり営業スマイルのアレクスが復活してたとさ、いや変容し過ぎだろ!




