ゆめにっき~コンクリート~
夢の中の私は40~50を過ぎたあたりの男性になっていた。
私の住んでいる所は、小さな商店街が続くごく小規模な街である。その商店街の突き当たる場所に私の家がある。コンクリートでできた真四角の家。大きな窓が正面に一つと、入口だけのシンプルな作りになっている。
私はある日、この街に人間にはとても有害な物質が降り注いでくる、と言うような話を聞く。私は町民に
「窓と入口はすべて塞いで、家からは出るな!」
そう訴えたのであったが、信じるものは誰一人としていなかった。仕方がないので自分の家だけでもと思い、私は自分の家の窓と入口をコンクリートでふさいだ。
それから時は過ぎたらしいが、私にはその間の記憶はなかった。ただ鏡を見ると伸びきったヒゲや髪の毛がうつったので、そうなのだと思った。
私は塞いでいたコンクリートを大きなハンマーで壊した。久しぶりに見上げた太陽はとても眩しかった。そして、いつもなら賑わっているはずの商店街には人っ子一人として存在しなかった。かわりに、足元にはきつね色の粒子が所狭しと敷き詰められている。
私はよろよろと歩き出した。誰もいない地面にごろっと横たわる。
「誰もいないから、お腹がすきっぱなしだ。」
風で粒子がふわっと舞い上がった。死への恐怖が少しこみ上げたが何故か、穏やかな気持ちだった。
「死ぬのかな。」
私はゆっくりと目を閉じた。