幼馴染はバカ力
ぅぁん?
身体を起こすと見たことない場所にいた。
なんで、俺寝てんだっけ?
……、あぁ、そういや殴られて気絶したんだっけ?
そこで、改めて部屋を見渡す。そして軽く見渡しただけで分かるこの場違いさ。寝かされているベッドはふかふかで、白く清潔なシーツが敷いてあるし、掛け布団に至ってはデザインが赤と金の派手なもの。床に敷いてあるマットも部屋を飾る調度品からカーテン、照明器具その他etcetcが、とても煌びやかである。照明に至ってはシャンデリアだし。そんな風に、部屋を見渡し、感嘆半分の呆れ半分な心境でいると、ドアが開き。
「あ! ご主人様! 起きていらっしゃったんですね!」
と、たまもがぱたぱたとこちらまでよって来た。そして、後に続いて来るのはチャイナドレスな少女。
「たく、貧弱ねぇ。たかが女の子の一発で伸びるなんて情けないったらありゃしない」
うるせぇ、バカ力。
彼女の名前は天音 錺。一言で言えば幼馴染。というのも、お互いの親が武術系の道場を持っており、そのおかげか、両方の家の親交が割と深かったのだ。因みに天音の家は隣町にある。そして、見た目の通り、天音の家では、八極拳を教えている。
「はぁ? あんたの鍛え方が甘いだけよ!」
めんどくさ……。チラッとたまもの方を見ると。
「フカァーーーッ」
耳としっぽを逆立たせ天音をずっと威嚇していた。
「ご主人様が弱いんじゃなくて、あなたが筋肉ダルマなだけだと思います!」
何故かたまもが俺の援護をしていた。まぁ、いつものやり取りだから、そんなに気にすんなよ? と、たまもをなだめる。
で、結局ここどこさ?
「ここは、城の中よ。ここは騎士の国、ブリタニアっていうらしいわ」
そう説明してくれた。ブリタニアで騎士とかどこのアーサー王だよ。
城ん中って……。
で、お前はこんなとこで何やってんの?
「さっきたまもちゃんから聞いたけど、だいたいあんたと同じよ。大きな扉をくぐったらここにいた。ただ……
ただ?
「あたしはね、『勇者』としてここに呼ばれたのよ!!」
ぽくぽくちーん
ドヤ顔決める天音と、口が半開きの俺。構わず俺の介護をしてくれるたまもの図。
「…………、て、何か反応しなさいよ! 恥ずかしいじゃないの!」
顔を真っ赤にして憤慨する天音。知らんがな……。
「そ、それにね。あたしは魔術師のクラスなのよ!」
なんだよクラスって、つか魔術師とか脳筋には似合わん。
「脳筋ゆうな! クラスも知らないとーしろうにそんな事言われたくないっての!」
悪かったな!
で? クラスって何?
「クラスって言うのは、戦闘職のことで、騎士、魔術師、弓兵、槍兵、召喚師
の五つがあるの。で、戦闘職に就きたい人は選定の泉に行ってクラスを受ける事ができるのよ。ホントだったら拳士になりたかったのに、クラスにないとかホント意味わかんないし」
おい、最後愚痴になってんぞ?
「だいたい! クラス無しでモンスターと戦うとかバカなのよ! ホントそのうち死ぬわよ?!」
最終的には八つ当たりになってるし。
「……ホントだったらあたしが倒すモンスターだったのに」
……、あぁ、ただの負けず嫌いなだけね、単純。