初めての戦闘
しばらく歩いていると、鬱蒼とした森を抜ける。時間にすると約2時間くらい。
森を抜けた先の草原は、見晴らしも良く、透き通るような風が心地いい。天気は見事な晴れ間が覗き、久しぶりに日光を浴びる。その日の光の眩しさに、一瞬目が眩みそうになる。
今までは、森の中であまり日の光なんて当たらない場所だったので、目がなれるまで時間がかかる。
気分を一転しつつ、軽く伸びをしていると
「…………」
「どうかしたのか?」
たまもは、淋しげに森の方を見ていた。やっぱり、いままで住んでいた場所を離れるのは淋しいのだろうか?
「いえ、べつに。大した事じゃないんですよ? ただ、少し……。やっぱりなんでもないです! ほら早く、次の街にいきますよ!」
そういいながら、俺の手を強引に引っ張っていく。って、ちょ、待てって! このままじゃコケるって! いやまぢで!
もう、しょうがないから少しだけ待っててあげますよ。と、イタズラっぽく笑うたまもに俺は嘆息で返すのだった。
草原を歩くこと1時間。しばらくすると、舗装された街道に出た。たぶんこの道を西に進めばいいのだろう。
それにしても、こんなに天気がいいのならお弁当でも作って来れば良かったですよねー?
そうだな、穏やかな風に暖かい日差し。とてもピクニック日和だと思う。
そんな会話をしていると
「ぴきっ」
……スライム(?)が現れた。
スライムっていうか、緑色のネバネバヌチョヌチョした粘性の物体が、街道を横切っていた。……アレナニ?
スライムなんじゃないですか? ネバネバしてますし……。とりあえず倒しちゃいましょうか。
そんな風に作戦会議をしていると、スライムがモゾモゾとしだして、やがて人型になる。
「ていうか、あの形俺じゃね?! スライムが俺の形になってんだけど! うぁ、なんかキモイ」
あらあら~、ご主人様そっくりですね~、ちょっとキモくてイラっときちゃいますけど♪」
そんな俺たちを尻目に、スライム(俺モドキ)は、こっちに向かってくる。
ヒタ
ヒタ
ヒタ
ちょっ、まぢでキモイんでやめてくれって!
スライムは両腕らしき所を、ゾンビのように上げて迫ってくる。自分そっくりの緑ゾンビとかイヤ過ぎるだろ!
気づいた時には木刀を手に、スライムを斜めしたから切り上げていた。
「ぴきぃっ!」
だがしかし、スライムは鳴き声を上げながら二つに分裂しただけで、また俺たちに迫ってくる。あああっ!キモい、キモすぎる!
俺は迫り来るスライムを切り続け、分裂しようがお構いなしに八つ裂きにする。
「ハァ、ハァ、」
切り続けること10数分。やっとスライムを倒した。もう、増えんだろ……
「お疲れ様です、お金がドロップしましたよ? あら、結構なお金がドロップしてますねー」
そんなにか? と、たまもの方に駆け寄る。彼女の両手には、大量の金貨が。コレっていくらくらい?
「そうですね、それなりの装備が一式揃って、少し余るくらいですかね? まぁ、その街の物価にもよりますけど、だいたいそんな感じです。街についたら装備でも整えましょうね」
了解。で、なんであのスライムそんなに金持ってんだ?
「たぶん、商人でも襲って光物の金貨を集めてたんでしょうね。モンスターはそういうのが大好きですから。因みにわたくしも金貨とかの光物は大好きですよ?」
お金に余裕ができたらな、と言っておく。何気にちゃっかりとアピールしてきた。……恐ろしい子。
「もしかしたら、手配モンスターかもしれないので、ギルドにでもよってみますか?」
何それ?
「ギルドというのはわかります?」
まぁ、だいたいは。依頼をクリアすると報酬が貰えるシステムのあれだろ?
「だいたいそんな感じです。ギルドには依頼掲示板というのがありまして、冒険者がその依頼を受けてクリアして、報告する事で報酬をうけるというものです。中にはモンスターを倒してくれっていうのがあるのですが、そういったものは、事前に依頼を受けていなくても、証拠さえ見せれば報酬をくれるんですよ」
なるほど、じゃ、あんまし気は進まないけど、この緑色の物体も一緒に持ってくか。
それがいいでしょうね。と、話しながら次の街を再び目指すのだった。