表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
scbwarz/GATE  作者: scbwarz
20/21

色物パーティ

さて、俺らが這々の体で辿り着いたのは(ノーキン除く)、夜中なのに街の明かりが落ちる気配の見えないようなところだった。外来からの訪問者にさほど警戒するようなそぶりもなく、開放的に開かれた門がとても印象的である。


「いやー、前の所とは全然違いますねー」


「いや、あそこはトップがチキンなだけだから」


「つか、そんなことより早く宿とろーぜ? もう死にかけなんだけど」


なっさけないわねー。それでも男? と天音に半ば呆れられる。


「はぁ、さっさと行きますか。」


天音の号令の元、一行は街に入る。


街の中も外見から分かるとおりの『THE 夜の街』という感じだった。辺りには扇情的な格好をしたお姉様方が客寄せをしていて、ビラ配りや踊りを披露していた。


うん、未成年的にはあまりよろしくない街ではあるが、一男子としてはとても気になるような……って、イッツーーー!?


「「……………………」」


天音とたまもに無言でほっぺをつねられていた。


「なんだよお前ら!?」


「鼻のした伸ばしてんじゃないわよ!」

「だらしないです、ご主人様」


言ったのちにフンッと澄まし顔で2人ともそっぽを向いてしまった。しゃーなくね? 生理現象なんだし……。男の子なんだもん! やべ、自分で言っといてめっちゃキモイは、俺。


そんな感じで歩いていると


「はぁ、はぁ、はぁ、誰か! 誰かわたくしを助けなさい!」


向かい側から俺たちの方に向かって走ってくる人影が声を切らしながら助けを求めているのが聞こえてきた。ていうか助けろって命令していた。なんかすげーめんどくさい感じがプンプンして、正直関わりたく無いと思っていたのだが、残念なことにその人影は俺たちのところまで来て


「お、お願いですわ! わたくしをあの野蛮な追っ手から助けなさい!」


と、めっちゃ上から目線で助けを求められていた。えー、足が既に折れそうなんだけど……


他の二人に至っては唖然としてると言うか、状況についていけてない。まぁ、たぶん見た目とかそういうのも助長しているとは思うのだが、その人影は言動からも分かるとおり少女のものである。まぁ、たったそれだけなら驚くことも無いというか。髪型から既におかしくて、何つーの? 地毛か知らないけど金髪でグルグルーって巻いてあるかんじ? ドリルって言葉これほどピッタリな物もないんじゃね? と思えるくらいの物だ。それに服もかなり高そうな記事でできているワンピースで、正直デザインはシンプルなんだが、それゆえに上品に見える感じである。そいでもってかなりの美少女。吊り目気味の目のおかげか多少キツイ印象を受けるが、顔のバランスが精緻に取れていて、寧ろ麗人と表現されるような造形である。……ただ、性格の方が残念な方であるのは言葉から察することができるわけで、二人とも『めんどくセー』と言わんばかりの勢いである。いや、俺もめんどいんだけど……。


そうこういってるうちに、少女が来た方向から5人程の集団が俺たちの方に向かってきて。


「おい、いたぞ!」

「そいつをこっちに渡してもらおうか!」

「いいんスか? うちら強いっスよ? 降参するなら今のうちっスよ?」


などなど、めんどくさいお方達がやって来た。


「謙吾、やっちゃって」


「……了解」


なんかすげー天音に睨まれた。そんなにめんどいか……。俺は渋々といった感じで、背中に刺してある刀に手をかける。そして……


「…………って、鞘から抜けねーーーーー?!」


え、何? どういう仕組みなの?! 鞘から抜ける気配一切無いんですけど?!


「バカじゃねーのあいつ!」


「今のうちだ! かかれ!」


掛け声と共に5人のうち2人がかかってくる。焦って冷や汗かきつつ内心で舌打ちしながらも俺は刀を鞘から抜かずにそのまま構え、


「お前らなんか鞘から抜かんでも余裕なんだよ! くそったれが!」


半ばヤケクソ気味に刀(もとい鞘)を走らせる。向こう2人が上段に構え斬りかかるモーションに入っているのを確かめ、俺は腰を屈め、刀の長い刀身を物に言わせ刀の中央付近を抑えながら2人のみぞおちめがけて突き出しながら抑え込む。みぞおちにクリーンヒットした2人を尻目にそのまま呆然としていた残りの三人目掛けて取りに行く。1人目を呆気に取られているうちに、首筋に斜めから振り下ろしてノックアウト。続いて2人目は屈んで足を払って転ばしたのちにみぞおちに鞘を突き立てて終了。そして、逃げ出しそうになっていた三人目の後頭部目掛けて一振り。ゴチン! と、派手な音を立ててラスト1人も轟沈させて終わる。



****************



さてさて、追ってを追い払った俺たち(主に俺だけど)は、気絶させただけの追ってを放置して、気付かれないうちに颯爽とその場から離れ、あまり目立ちそうに無い、ボロ目の宿に入った。


カランコロンとなるドアを開け、とりあえず大部屋1つ、小部屋1つを取る。マスターから鍵を渡され、指定された部屋に行く。俺はもちろん小部屋の方で、一旦部屋に荷物を置いて、大部屋の方に向かう。で、俺が来た頃には既に女性陣の荷解きは終わっていたらしく、部屋の中央に輪になって座っていた。因みに大部屋と言っても広さ八畳くらいで、調度品なんかも叩けば埃が出るんじゃないかって感じのぼったくり部屋。


「なにぼさっとしてんの? さっさと座りなさい」


天音に言われ俺も輪の中に加わって座る。場所的には左にたまも、正面に天音、右には目下の悩みの種である……


「まったく! もっとマシな宿はありませんの?」


金髪ドリルが喚いていた。


「うっさいそこ! 文句言わない!」


「まぁまぁ、天音さん。抑えて抑えて」


叫ぶ天音に宥めるたまも。なんか2人ともいいコンビになってないか?


「で、貴女はどちら様でしょうか?」


天音を宥め終わったたまもが切り出す。


「わたくしは……、そうですわね。エリンと言えばお分かりになられると思いますわ」


エリンねぇー。どっかで聞いたことあるような無いような……。ふと疑問に思った俺は


「エリンさん? は、もしかしたら黒い扉から来ました?」


「あら、よく分かりましたね」


そう言って、エリンさんはそのさらさらとした金髪を、手でさっとかき上げながら続ける。


「わたくしがいつも通り、自室でビデオとマイクで撮影したわたくしの動画をネットにうpして、マイクを戻そうとした時ですわ。自室の扉が黒くなっていて、不思議に思いながらも開けてみたら知らない場所に居ましたのよ」


と、言葉を切って


「そしたら薄暗い部屋の中で目の前に脂ぎった男が現れて、身の危険を感じたわたくしはそのまま逃げて来たというわけですわ」


一気に喋り終わると、ふぅと一息つき、たまもがいつの間にか汲んでくれたお茶をすすっていた。なんか様になってる。そこで今まで沈黙していた天音が唸るように。


「まぁ、いろいろ突っ込みたいところはあるけど、芸能人?」


「な!? わたくしの事が分からないのですか?! ブログアクセス数、動画再生数共に日本トップのわたくしを?!」


すごい剣幕でまくし立てるエリンさん。ブログ、再生数……


「あー、エリンさんって、まさかネットアイドルの?」


そういや、コンビニでバイトしてる時に週刊誌の見出しでちょろっと見たことあるような。なんだっけ? その時の見出しが確か、『アキバ系お嬢様エリンの独占コスプレ写真!」だったような……。


「そうですわ。わたくしがネットアイドル、エリンですわ!」


ふふんと、無い胸を自慢気に張るエリンさん。そして、


「ねっと、ねっとあいどる? ?」


と、首を傾げるたまも。分かるわけないよなー。うんうん悩むたまもの姿に癒されていると。


「で、これからどうする? 勢いでこの子連れてきちゃったけど」


と、天音が話の軌道修正。


「わたくしにはエリンという名前がありますわ! この子とはなんですの。まったくここがどこなのかも分からないのですから説明して貰わないと判断できませんわ」


「……、そうね、じゃ、まずここがどういう所なのかとか、説明しましょうか」


と、天音がこれまでの経緯を説明していく。かれこれ20分くらいたった頃にようやく終わり、


「なるほど。わたくし達は別の世界に飛ばされたと。どこのアニメの話しですの?」


「いや、アニメとかじゃなくて現実だからな?」


「リアルでこんな事起きるわけありませんわ! 早く元に戻しなさい!」


「だから、元の世界に戻るために私達は旅をしているのよ」


まぁ、エリンさんの気持ちも分からんでもないけどね。俺の場合は考えるより先に現実見せつけられたわけだし……。


「エリンさんも混乱してるようですし、今晩はこれでお開きにして、また明日考えるっていうのはどうでしょう?」


たまもの提案に、それもそうねー。と、天音が賛成し、じゃ、これで解散! と宣言して今日わ終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ