これにて一件落着の巻
「っつー……」
頭を摩りながら体を起こす。朝に続いてやっぱり見慣れない場所。全体的に石造りで、冷たいイメージがあり、ロウソクの灯りが申し訳程度にぽつんとついている位で、若干暗い。あー、おっさんの住処ね、ここ。なんかもう恒例化してね? これ。タイトル名『起きた所は別世界』的な感じでテレビ番組できそうだわ。……視聴率は取れそうにないけどな。
「あ、けんごにぃが起きた!」
「大丈夫ですか? ご主人様」
起きた俺に反応して、幼女と妖女のコンビが俺のそばまで寄ってくる。
「……大丈夫だったら気絶なんかしとらんわ」
「あら、ごめんなさいね。でも、バカな事を喋るアンタも悪いんじゃないかしら?」
「事実を指摘しただけなんだけどな、俺わ」
ふぬぬっといがみ合う俺と天音。
「おいおい2人ともそんなに騒ぐなよ。ほらお嬢さんも。そんなに怒るとシワが
ブンッ!
「おのれも言うか!!」
おっさんが言葉を言い終わる前に天音のグーパンがおっさんの顔にめり込む。おお、アレが俺の顔にも入ったのか……
****************
さて、と、気絶したおっさんを尻目に天音が切り出す。
「この状況は一体、どういう訳? 言い訳くらいわ聞いてあげなくもないわよ?」
その後グーが飛んで来るですよね、
天音さん。
もちろん。と、俺の問いかけに笑顔で返ってきた。とびっきりイキイキとしたやつね。
で、まぁ、仕方なくっていうかなし崩し的に説明する。刀を盗まれた事から始まり、
「……で、ここに来ておっさんに話したら丁寧にお詫びまで入れて貰って刀も返してくれたって訳。その後なんだかんだでご飯貰って仲良くしてました、まる」
バシーン!
いい終わる瞬間に天音のビンタが炸裂した。ぁー、ヒリヒリするんですけど……
「ったく、盗まれた相手とよろしくやってるなんて考えられないわ」
「まぁ、盗まれる方の危機感の無さにも呆れるけどな」
「で、あんたが主犯なわけ?」
「俺の名前はケイだ。あんたなんて名前じゃねーの」
「はいはい、ケイ君ね。で、そのケイ君はなんで盗みなんかしてるのかな?」
「何でって、養うため?」
「養うって、そこの伸びてるお父さんは働いて無いわけ?」
「働けるわけねーだろ。その人足怪我して動けないし、それに親父なんがじゃねーてっの」
?と、天音が首を傾げたので俺が説明に入る。
「こいつはこのおっさんが別の街の孤児院で引き取ってきたんだと。で、最近こっちに来たわいいものの、ここの天井が抜け落ちておっさんの足に直撃。すぐに医者を呼んで処置をして貰ったまでは良かったんだけど、治療費で有り金全部使い果たしてしまったって事らしいぜ」
「まぁ、そう言うわけだから俺が盗みで養ってるって訳だ」
えっへんと胸を張るケイ。
でも、褒められた行動じゃないですよねー、とたまものツッコミが入る。
「わかってるけど、そうでもしないと生きてけないんだよ俺等は。おっさんと俺は飯抜きくらいならいくらでもガマンできるけど、ミナはまだ小さいから、ガマンさせられないんだよ」
けいにぃ、と寄り添う幼女。確かに言い分は分かるけど……
「分かったわ。私達はあなた達を捕まえるためにここに来たの」
「ふん、捕まえれるもんなら捕まえてみろって! ここで捕まったらずっと牢屋生活じゃないか!」
動き出すケイに
「まだ話が終わってないでしょ! で、これはギルドの仕事なんだけど、とりあえずギルドまでついて来てもらうわ。その後ちょっと怒られるだけで済むように相談してあげるから。事情が事情だしね」
え……、と、しばし呆然とするケイと、ミナ。そして、
「……ありがと」
小さい声ながら、しっかりとお礼の言葉を述べるケイ。根はいいやつなんだよなー、とか思ったり。
その後俺たちはギルドに行き、反省しているケイをみた被害者達も許してくれたそうな。まぁ、天音がこいつらの事情を、親が居なかったり、保護者が怪我してたり、働き口がなかったり等を話してくれたおかげってのもあるんだろうけど。まぁ、なに。これにて一件落着?
「まぁ、ご主人様はなにもやってませんけどね?」
と、たまもに苦笑されたのだ。
しばらくして、廃墟。
「アレ? ケイ? ミナ? どこに行ったんだ……?」
みんなしておっさんの事を忘れていたのだった。