刀を手に入れた!
その後、自室でつつがなく食事を済ませて、天音の部屋に行く。
「ノックはした方がいいよな?」
親しき仲にも礼儀あれ。俺がドアの前に立ってノックしようとすると。
バタン! と、勢いよくドアが開く。っつー! アホか! めっちゃ頭痛いんだけど!?
「あ、何? 居たの?」
悪びれもせずしれっと言う天音。お前なぁ……!
「あ、そうそう。今日買い物するから準備しといてよ? 1時間くらいしたら城の前に集合ね」
それだけ言うとさっさと部屋に戻っていってしまった。はいはい了解ですよ……
というわで1時間後。俺は門の前に突っ立ている訳だが、
「……遅い」
とは言っても、待ち合わせピッタリの時間だけど。待ってる時間というのは長く感じるんだから仕方がない。
因みに時間はこっちでも24時間で一日。時計もあって、動力は魔力らしい。
「ごめーん。待った?」「お待たせしました。ご主人様♪」
「いや、俺もさっき来たばっか」
2人とも昨日と変わらないピンクの着物にチャイナドレス。一種のコスプレパーティみたいだな。
「で、今日は何を買うんですか? 天音さん」
たまもが天音と話している。今まではたまもが人見知りしていたから昨日は俺としか喋っていなかったが、昨日の夜に打ち解けたみたいだった。
「んー? そうねぇ、とりあえずお金はあるから一通りの装備と食料、地図かな? 後はギルドに顔出してクエスト確認しとかないと。」
「了解。そういや騎士君とかは結局?」
「解雇に決まってんじゃない、あんなへなちょこ要らないわ」
「ご主人様がコテンパンにしちゃいましたからねー」
そんなバカ話しをしながら市場をうろつく。街の様子は完全に西洋調で、石造りの建物が目立つ。そして、見回りの警備の人も甲冑装備。売っている武器も両刃の剣が多い。なるほど、騎士の街とはよく言ったもんだ。
「でも俺、甲冑なんか着たくないぞ?」
動くのにとても邪魔だ。
「それでしたらわたくしが繕いましょうか? わたくしならすぐにでも作れますよ?」
「え、何? たまもって裁縫もできるの?!」
天音が驚いたように聞く。
「すげーな、お前。じゃ、俺の服はたまもに頼もうかな?」
「任せて下さい! ご主人様♡」
えへへ、と笑うたまも。俺は道場着みたいな感じで頼むと、たまもに注文しといた。
「んー、じゃ、あたし達の装備は間に合ってるから、後は武器かな? あんたやっぱり刀のがいいでしょ?」
「そうだな、モンスターと戦うなら刃が付いてた方がいいもんな」
「じゃ、南の門の方に行く? あっちの方は商人が多いからここの街以外の武器があると思うし」
「いや、俺は1人でいくわ。お前等はここで買い物してたら?」
「そ、じゃあたし達はここにいるわ」
そして俺は南の市を目指した。
南の市には着物姿の商人などがいたり、ローブ姿の商人や、頭にターバンを巻いた人も居たりと、いろんな人がいた。
俺は日本風の人がいる出店の前で武器を眺める。そこには多種多様の刀が揃っていた。
いらっしゃいませ。と、店の人が頭を下げ、何かお探しですか? と尋ねてくる。
「うーん、刀ってここにあるので全部?」
「はぁ、売れるものはここにあるので全部ですけど」
「売れるものは、っていうと、奥には売れないものが?」
「売れないというか、主人が趣味で作ったものなんです。とても常人では扱えるものではなくて」
「それ見して下さい。」
ぶっちゃけここにあるのは普通過ぎる刀ばかり。これといって良いものが無い。
では、少々お待ち下さいと奥から一本の刀を取り出す。ながさは4尺2寸9分のかなり長いもの。まるで佐々木小次郎が使っていた物干し竿レベルである。なるほど確かに扱いずらそうだが、刃などを見るとシッカリ鍛えられていて切れ味も良さそうだ。
「じゃ、コレ買うよ。刀の銘は?」
「夢霧と言うそうです。」
俺はお金を渡し刀を手に取る。
ん、良い買い物したし、戻るか。