ジャイアニズム天音
「で、次は何をなさりますか?」
たまもが、いつまでもプリプリしてる天音に問いかける。
「え? ああ、そうね。じゃ、次は王様のいる王の間に行きましょう」
突然の問いにふいを突かれたのか、慌てたようにそそくさと歩き出す天音。
「ちょ、待てって」
急に歩き出した天音を追いかけるように、俺とたまもは慌てて歩き出した。
歩いてる途中にふと思いついたことを聞いてみる。
「そういや、天音が勇者って聞いたけど、結局それってどういうこと?」
え? 今更!? みたいな顔で聞き返される。今更で悪かったな。
天音は、仕方ないわねと話し出す。
「最近、街や村にモンスターが出没するようになったんだって。で、そのモンスターたちからの被害が徐々に増えだして、有志を募って自警団みたいな組織を作ったらしいんだけど、それがまったくダメだったの。モンスター一体倒すのがやっとのレベル。で、代々王家に伝わる秘宝、どうしようもならなくなった時に使えって言われてたらしいんだけど。まぁ、それを使ってあたしがここに呼び出されたってわけ」
で、これがその秘宝。とサイドバックから、銀でできた扉アクセサリーのような物を取り出す。
「それ秘宝なんじゃないのかよ!?」
「ん? そうよ?」
なんか文句ある? と、シレッと返してきた。
「迷惑代として、ここにある財宝は根こそぎぶんどってきたわ! これもその一つ」
うわ、すっげージャイアニズム。
「それって、お宝だったんですね。わたくしももってますよ? ほら」
と、たまもが袖からとりだす。あ、ホントだ。
「ご主人様も、これで御呼びしたんですよ?」
そうだったのか……。聞くタイミングが無かったから聞けなかったけど、俺がどうやって呼ばれたのかがやっと分かった。たまもは、これがわたくしとご主人様の縁なんですね♪ と、大事そうに袖に仕舞いなおした。
そんなことを話していると、扉の前まできていた。ギギッと天音が扉を押し開ける。
「なんだね、アマネ君か。もうここには財宝は無いんだ! さっさとモンスターを生み出しているはずの魔王を討伐してこないかね!」
えらく恰幅のいい、赤マントに王冠というとても分かりやすい格好の王様が言う。
「ん? なんだ? その後ろの妙ちきりんな格好の二人は」
妙ちきりんて、まぁ、俺は長袖のシャツにジーンズで、こっちの世界からしてみればおかしいし、たまもは着物で同じく浮いてる。なるほど。言われてみれば確かに変な格好だ。
「今朝、門で拾ってきたやつらよ」
「あぁ、門の前に居た不審者か。なぜこのような場所にいる」
「あたしが連れてきたのよ。アンタが寄越したパーティよりよっぽど役にたつと思ってね。そのことで相談があってきたんだけど?」
王様に向かってアンタ呼ばわりってどんだけだよ。
「使えないって、そんなわけないだろ」
「でも、さっきアンタのお気に入りの騎士様は、この子と戦って中庭で伸びてるわよ?」
ねぇ? とこっちを振り返る天音。まぁ、そうだけど。
「あー、もう、知らん! 勝手にしろ!」
「じゃ、勝手にするわ。いくわよ」
と、踵を返して扉を出る。と、また置いてかれる。俺はたまもの手をとり、一礼したから天音を追いかけた。
その後、
「そういや、なんで俺たち不審者扱いなの?」
「アレ? 最近のモンスター被害に乗じて強盗まがいの犯罪も起きてるのよ。だから怪しいやつは全員捕まえてるらしいわよ?」
だとさ。