めんどくさいんだって
アマネ様ー?
と、扉が開く。
入って来たのは、騎士風の金髪の少年だった。
「……なに?」
沈んだ声の天音。
「うわぁ?! ……な、何かありましたか?」
なんでもないわよ、で、何の用?(ドスの効いた声で)
「ぁ……、はい、スライムが倒された事ですし、次はどうなされますか? あ、狐耳のお嬢さん、こちらが手配モンスターだったスライムの討伐報酬です。どうぞお受け取りください」
「あ、ご丁寧にどうもありがとうございます」
たまもが巾着袋を受け取る。中はたぶんお金だろうな。ていうか、あのスライム手配モンスターだったのかよ……
たまもと入れ違いに天音が口を開く。
「いいわ、今日はモンスター狩る気が失せたし……。そうねぇ、じや、こいつを選定の泉にでも連れて行きなさい。ていうか、こいつをウチのパーティに入れるから」
と、俺を指さす天音。おーい、選定の泉が云々は嬉しいが、勇者やる気なんてねーぞ?
「うっさいわね、どうせあんたも帰る方法探してんでしょ? 冒険でもしてればそのうち帰れるわよ」
「ていうか、そもそも勇者ってなんだよ、魔王でもいるのか?」
「いるから呼ばれたんでしょ? なんも無かったら呼ばれないでしょ? ていうかそこら辺は後で王様に会う予定だからその時に聞いて」
はいはい、了解ですよ。それで、たまももいい?
うーん、ご主人様がいらっしゃるなら何処でも行きますよ?
そっか、サンキュな、と、お礼をいう。
こら、そこイチャコラするな、2人とも早く行きなさい。
と、天音に急かされ、扉の所にいる騎士の所まで行く。よろしく。
しかし、
「アマネ様。この方もパーティに入れるんですか?」
ずっと立ち止まったままの騎士は天音に問う。
「連れてくわよ。言っとくけどそいつ、あんた達より強いわよ?」
「な、そんなわけないでしょう! コレでも私は武闘大会で優勝しているんですよ?!」
天音に喰ってかかる騎士、何? こいつより強ければいいの?
「あたし的にはどっちでもいいんだけどね。じゃ、あんた達手合わせでもしたら?」
「めんどい、やだ」「望むところです!」
2人の声が重なる。いってる事はバラバラだけど。因みに前者が俺、後者が騎士君である。
「ちょ、話が進まないじゃない……」
「どっちでもいいんじゃなかったっけ?」
だいたい、そんなしちめんどくさいことなんかしたくないっつーの。
「ホンネ出てるわよ……。もぅ、四の五の言わずにやりなさい!」
めんどくさ……。はいはい、やればいいんでしょ? また殴られて気絶コースは勘弁な
という事で、中庭らしき場所に移動する俺たち。さっさと選定の泉とやらに行きたいんだけど。
「ガマンしなさいよ」
天音に叱られた。はぁ、と嘆息していると、よしよしと、たまもが慰めてくれる。俺の心のオアシスはたまもだけだよ……
「じゃ、始めるわよ」
そこそこの広さのある中庭。もちろんきっちり手入れしてあった。すっげ。
「ルールは刃の無い模擬刀でやること。一本先取で終了ね」
では、と、騎士君は木でできた西洋風の模擬刀を選択した。俺はコレでいいか? と、腰に刺した木刀モドキを手に取る。
「いいわよ、じゃ、向き合って」
「ご主人様、ファイトです!」
たまもの声援を受けながら向き合う。因みに軽く木刀に手をかけたままで対峙する。若干騎士君の顔が引きつる。
「では、はじめ!」
天音の掛け声と共に、騎士君がコッチに向かって走り出す。あらまぁ、威勢のいいことで。
「先手必勝! ハァァァア!」
剣を上段に構えて振り下ろす。なるほど速い。それを俺は木刀を寝かして両手で受け止める。両者の力が均衡して、剣と木刀が鍔迫り合う。
徐々に騎士君が力を込めて、押し倒そうとするが、俺はフッと力を抜き、身体を横にむけて受け流す。すると、力の均衡が解けてそのまま騎士君が前のめりになって倒れる所を更に足をかけて倒す。そのまま後頭部に木刀を軽く当てて一本。はい終わり。
「どう? コレで満足?」
「まだまだぁ!」
しかし、騎士はすぐさま受け身をとり、体制を立て直して襲いかかってくる。が、
カキンッ
俺が木刀で手元を払う。すると、剣が手から離れて地面に落ちる。
「はい、終了。コレで文句ないでしょ?」
天音の一言で終了した。