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『結婚』  作者: 大輔華子
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胸騒ぎ

 とんてんしゃん。よーっ。

 午後三時を少し回ったころ、玲華の携帯にお見合い相手の信之からメールが入った。


=玲華ちゃん。明日、日曜日の夜また会おうよ。今度はフレンチのちょっと雰囲気のいいレストランに連れて行くよ。

 

 玲華は信之と付き合うことに決めていたが、何だかまた気分がブルーになってきた。

 

――何か波長が合わないんだよなあ。今度はちゃん付けだもんね。自信過剰っていうか、相手のペースにはまりそう。


 一度撤回して付き合うことにしておいて、幾らなんでもまたやめるというわけにはいかない。すぐに返信すると足元を見られると思い、玲華は意地悪くぎりぎりまで放っておくことにした。しかし、小一時間も経たないころ、今度は信之から電話がかかってきた。

「きっ、君。明日なんだけど。だっ、大丈夫かな……」

 確かに信之の声ではあったが、人が変わったように緊張したような電話の声だった。

「ええ。今のところ空いていますけど」

「ああ、よかった。じゃあ、明日夜七時に、いっいや、六時に横浜駅西口の高島屋正面玄関で会おう。ふっ、フレンチのいいお店だよ。そのあとは、あの。カラオケとか、えーと。あのね……」

「あの、どうかなさったんですか?」

「いっ、いや。何もない。ホントに。ともかく七時に高島屋玄関でね」

「あら? 六時って言い直されませんでした?」

「あっ、そうそう六時、六時」

 カチャッ。プープー。


――変なの……。


 電話を切ってから、玲華は異様に胸騒ぎがしてきた。何故だかわからないが、午前中にファミレスで会った老人の言葉が気になって、そのあたりが胸騒ぎの原因であるように思えてきた。間違えるほど自分と似た人がいるということは気になるものだ。イカサマ占い師の言葉であっても何かしら気にかかる。

 その日四時過ぎ、玲華は商店街へと向かった。あの自称占い師の老人にもう一度会って、伊東華子という女性のことを聞こうと思ったのだ。


 商店街の一番奥のはずれにその老人は座っていた。テーブルにクロスを掛けてその端にはロウソクを灯し、布製のカバーで覆ったお決まりの街頭占い師スタイルだ。玲華は早速近付いて老人の前に立った。

「ふむ。やはり来よったな。何の占い相談じゃな?」

「すいません。占いじゃなくて、ちょっとお話聞かせてもらおうと思って……」

「ふーむ。おまえはどっちじゃ。華子か、玲華か。」

「はあ?」

「だから、どっちじゃ」

「私、玲華ですが、その華子さんのことでちょっと……」

「いかん、いかん!」

「まだ何も言ってませんが」

「どこに居るか聞きたいんじゃろう。いかん、いかん、それは言えん」


――図星だ! でもそのくらい占い師じゃなくったって想像がつくわね。ようし、誘導尋問だ!


「いえ、場所は実は知ってます。ある人に聞きました。そこの角の酒屋の二階に住んでるってこと……」

「何い? 酒屋の二階だと? 誰に聞いたか知らんがデタラメじゃ。華子はマンションに住んどるからの。全然デタラメじゃ」

「ああ、ごめんなさい。間違えた。交番の先のマンションだったわね」

「違う違う。まるっきり逆じゃ。スーパーの向かいのひばりシティコープⅡじゃ。まったくええ加減なことを言うやつもおるのう」

「ああ、そうだった。ひばりコープⅡだった。その人、間違ってなかったよ。私の記憶違い。そこの最上階だったわね」

「なんじゃ、惜しいけどそこが違うんじゃな。まったくわかりもせんで知ったふりをする人間が多くて困るのう。六階なんじゃよね。それが」

「そうねえ、惜しかったかもね」

「惜しくても占いと同じで、はずれははずれじゃ」

「そうね。はずれね」

「ははは」

「ははは」


――ほっ。このおじいさん。ちょっとボケが入ってて良かった。おかげで場所聞けちゃった。


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