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お隣りさん  作者: 原坂秋
6/7

特別の翌日(3)

申し訳ございません!

寺田さん視点になってしまいました!!

それと、苺ミルクのジュースがお好きな方はこの話を読まれない方がよろしいかと思われます……

寛大なお心で寺田さんの苺ミルク批判を読んでやって下さい。

一般的に、外進生は内進生よりも賢いとされている。当然、それは絶対ではない。けれども、大体においてそれは正しかった。ちなみに俺は、あまり賢くない。内進生よりも下(だと言われている。俺の意見じゃねーよ)の外進生の中でも下のほうだ。二回試験を受けたら、一回は補習にかかったり赤点をとっちまう。俺としては、何の試験勉強もしてないのにそんだけの成績を修めているんだと誇りたい。だって、俺より試験勉強して俺以下の成績のヤツもいるんだぜ?それって、すごくないか?俺が!

徹にそれを言ったら失笑された。どうせ、低レベルな戦いだな、とでも思ったんだろ。あいつは試験二週間前くらいから試験勉強してるし、何より、授業中寝ないから。

俺?俺は寝るよ、寝る寝る。だって眠くなんだから。数学は科目の教師が怖いから寝ないけど。里中が教える古文なんて、皆昼寝の時間とばかりに寝てる。

もちろん、俺も。

でも……、きっと外進生は寝ないんだろうな。

日頃から思うよ。授業中寝なかったら、絶対成績上がるな、って。思うだけで寝るけど。

さて。

一時間目は古文でした。誰かさんのせいで昨夜は眠れなかった(誰か、って?言わん!)し、いつもの癖でもあったし。里中の声は子守唄みたい……って、キモっ!

始まって五分もすれば、睡魔が近寄ってくる。戦う意思のない俺は睡魔の手をとり、ガクリと机に突っ伏した。里中の授業は、無音で有名だ。いや、悪い意味で。

夢の世界へ旅立っていた俺は、隣の席の山瀬サンが俺よりも早く机に倒れ込んでいることに気付かなかった。

……はーい、睡眠をとり昨夜の寝不足分を取りかえして二時間目。

数学Ⅰです。めちゃくちゃ怖い先生。俺、中学生の時に、あの先生の授業で寝たんだよ。そしたら、終わるまで立って授業を受けさせられて、その上職員室に呼び出されて。次寝たら親を呼び出すとまで言われたんだぜ!?

だから、心なしか数学Ⅰだけは内進生のほうが授業にやる気を見せてるんだよな。どこか鬼々迫る表情を浮かべて授業を受けている。基本的に睡魔に抵抗しない俺だって、この時ばかりは精一杯戦う。負けそうになったら自分の肌をチクチクと鉛筆で刺してんだぞ。

だから……あっさり倒れてる山瀬サンを見て驚いた。

こいつ寝るタイプ!?

その前に、このピリピリした空気を読めよ!熟睡してるのか、山瀬サンはピクリともしない。

やべ、先生こっち来んぞ!?

本人よりも焦って、俺はかの有名なMO●O消しゴムを山瀬サンに向かって投げつけた。

ガタッと小さく揺れて、山瀬サンは起きた。俺の投げた消しゴムは山瀬サンの頭にヒットして、跳ね返って教室の隅に転がっていく。

頭を押さえながらキョロキョロしていた山瀬サンは、こちらに歩いてくる教師に気付き、黒板を写しにかかった。

グルリと教室を一周し、教師は黒板にチョークで字を書きはじめる。

良かったな、という思いで山瀬サンを見ると、ヤツもこちらを見ていた。

「ありがとう」

厚くもなく薄くもない唇がそう動いた気がした。

三時間目は、化学!好きかって?嫌いです。むしろ、化学好きなヤツいんの?って感じ。まあいるんだろうけど。世界の人々が皆俺と同じ性格だったら、きっと日本はまだ発展途上国だったと思う。いや、絶対に。

始まって十分。●ONO消しゴムを回収し忘れていたことに気がついた。今取りに行ったら、間違いなくばれるよな。

唸っていると、コン、と俺の頭頂部に衝撃が。すぐ後に床にMO●O消しゴムが。

……えっ?何で?

隣を見ると、山瀬サンが声を立てずに俺を指差して笑っていた。先程の間抜けな顔がお気に召したらしい。

──拾ってくれてたんだな。

化学が終わった頃には、山瀬サンは俺の中ですっかり「よく寝る子」になっていた。いつ寝るのかハラハラして、俺はその日から「寝ない人」に昇格した。

四時間目だって、山瀬サンが寝ないよう気にかけていればいつのまにか終わっていたりする。

これで成績が上がれば、山瀬サンのお陰だな。なんて思った午前中でした。

四時間目が終わると、昼休みに入る。いつもなら徹と学校の日替わり弁当片手に屋上に向かうところだが、愛想のない佐々木さんの伝言があったことで、徹は図書館に向かう。どうせ一階までは行くんだろ、と一緒に階段に向かう。

「あれ?ねえ明文、あれ山瀬さんじゃない?」

「え?」

螺旋状(って言うほど格好よくないが)の階段の先に、確かに山瀬サンらしき人影が。らしき、と言うのは、山瀬サンが一人じゃなかったからだ。あの……佐々木さんが隣にいる。

「あいつら仲いいのか……」

「うん。みたいだよ」

思わず漏れた呟きに、徹はさも最初から知っていましたよー、とでも言うように頷く。

「なんで言わねーんだよ!」

「え?何で言うの?」

そりゃあ……何でだろうな?

黙り込む俺に徹は何か言おうとしたようだったが、図書館に着いたことで口をつぐんだ。

「じゃあ……明文」

「おー、頑張れよ」

別れてから、俺は購買に向かった。安い旨いが自慢の弁当屋に朝買っておいた食券を出し、日替わり弁当を受け取る。

「げ……スパゲティーサラダがある」

「寺田さん、スパゲティーサラダ嫌いなの?」

「ああ、なんで麺をサラダに入れるのか……って、や、山瀬!?」

ナチュラルに会話していたのは山瀬サンでした。手には弁当(家で作ったヤツね。買ったヤツじゃない)と苺ミルク。昔、友人に化学合成料の味がすると言われてから飲めなくなったものだ。

「あ、私これ買ったの」

「苺ミルク?」

「そう」

流れで共に階段を上がる。

誰と食おっかなー、と思っていると、山瀬サンは二階で足を止めた。二階──中学生の教室がある階だ。

「じゃあ私、ここで──」

こいつが途中下車した時と、何かが重なった。あの年下の彼氏のもとに行くのだろうか?

朝の憂鬱な気分が、再び心の中に広がった。どうして?分からない。ただ、これまで縁のない感情だった。だからこそ、俺はこの気分をただ「不愉快な感情」としか思わなかった。

「……山瀬」

「え?」

「もし一人なら、一緒に屋上で食べないか?」

今日は、徹が佐々木さんと笑い合っているところを見てない。だから、あいつに張り合おうとする気持ちは少しもなかった。

それにこれは……誰でもいいから、という気持ちでもない。

断られたら引きこもってやる。そんな固い決心の俺とはうらはらに。

「屋上!?いいの!?」

山瀬サンはあっさりと、俺の感情を操作する。

俺よりも山瀬サンのほうが体重は軽いはずなのに。屋上へ向かう足どりは、絶対に俺のほうが軽かった。


屋上は、カップルが多い!!

徹と食べてるときはバカップルめ、と悪態を吐いていた俺だったが、今日は意味もなく周りが気になった。

山瀬サンが屋上を囲む柵兼手摺り近くに陣取って、俺に手招きした。

「私さー、一回ここで食べたかったんだよねー」

「食べればいいんじゃねーの?」

「雪ちゃんが、高所恐怖症なんだよ」

「雪ちゃん?」

あの男子か?

「佐々木紗雪ちゃん!図書委員の、すっごい可愛い子。知らないかな?外進だからね……知らないかも」

佐々木紗雪……佐々木って、あいつだよな。彼氏と食ってんじゃないのか。

「不愉快な感情」は、すっかりナリをひそめていた。

「いや、知ってるぞ。今日徹に司書の伝言伝えてた」

「ししょ?」

「図書館の」

「ああ、司書ね」

弁当を、組んだ足の中心において食べていると、山瀬サンは目をランランと輝かせてそれを見つめてきた。

「……山瀬?」

「私これ、一度でいいから食べたかったんだよね……。草太は毎日これ食べてんのかぁ、ずるいね」

「……、草太?」

卵焼きの味など分からなかった。食べてから塩か砂糖か、どちらが入っていたでしょう?と聞かれても俺は答えられなかっただろう。

「うん……弟」

「弟か……弟?」

「弟」

「弟!」

だからなに、と俺を見上げた山瀬サンは、ポカンと口を開く。「?」とその顔は語っていた。

「……寺田さん?どうしたの……?」

「なにが?」

「いや……分からないならいいんだけど……、いや本当にどうしたの?良いことあった?」

こいつは変なことを言う。

良いことなんて、何もないのに!

「あ、山瀬、スパゲティーサラダ好きなんだっけ?」

「え?いや、特別好きということはないけど……」

「これやるよ」

「いいの?」

俺は寛大な気持ちでスパゲティーサラダを山瀬サンに贈与した。

「じゃあ私もこれあげるよ」

唐揚げをもらい、山瀬サンが若干引きぎみなのにも気付かず、俺は理由なくテンションが高かった。なんでだろうな?理由は分からないが。

寺田さんは一人で盛り上がっているようですが……葉子のほうはどうなんでしょう?

ちなみに苺ミルクの化学合成料~は、私が実際に友人に言われ飲む気を無くした、という実話が元となっております。

一応、「特別の翌日」は今回で終わりかな?

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