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お隣りさん  作者: 原坂秋
4/7

特別の翌日(1)


今回、葉子は出てきません。

ちょっと寺田さん暗め。かな?

新キャラ柚子川ちゃんと寺田さんの会話がメイン。

朝起きて。

昨日のことは夢だったのだろうか、と俺は思った。

山瀬サンと帰ったことだ。あいつは所ノ里駅に住んでいて、小狐公園駅に住んでいる俺はメルヘンパークだと馬鹿にされた。

いや、夢じゃない。馬鹿にしやがって。気にしてるのに!だから嫌なんだよ、人に最寄り駅言うの。

思ったより失礼なヤツだなと思いつつ、あの冷たい顔が意外と簡単に笑うのに驚いた。何を話せばいいのか分からなくて、気まずさを感じていたのは俺だけだったのだろうか。

山瀬サンはさらりと話を盛り上げて、そして最後に途中放棄した。

例えば、あれが徹だったのなら、俺は何も言わないだろう。明日も明後日も共に帰るのだから。ただ、気まずい空気の中で話題を探していた俺は、山瀬サンが途中で電車を降りたことに予想以上のショックを受けていたらしい。朝の気分がいつもに比べて悪く、学校に行くのが億劫に感じていた。

普通、夜は皆ネガティブになると言うが……俺は朝に暗くなる。悪い方向に考え、そして一人落ち込むのだ。

……もしかして俺、山瀬サンに嫌われてる?

嫌いという感情を持たれるほどに関わっていない。けれど朝の俺は、きっとそうなのだとその疑問を断定にしてしまう。

電車の中では、無意識に山瀬サンを探してしまった。キョロキョロと挙動不審な動きをして、見つからなくて肩を落とす。初恋少年か、って感じだ。べつに山瀬サンに嫌われていたところで、俺の人生は変わらないだろうに。

学校の最寄り駅の前にある大きな信号は、生徒の待ち合わせ場所に利用されている。今日も何人もの生徒(主に女子。山瀬サンはいなかった)が携帯をいじりながら相手を待っている。

学校まで十数分なんだから、一々待ち合わせしてんじゃねーよ。

「よっ!寺田!」

「わわっ」

悪態を吐いていた真っ最中に背中をどつかれ、悲鳴をあげてしまった。相手も、する気のなかった奇襲が成功してしまいキョトン、としている。

柚子川(ゆずかわ)、お前な……」

山瀬サンを普通の位置に置くと、こいつは美人だ。って、何で俺山瀬サンを基準にしているんだろう……?

「あははは、あんた、驚きすぎ!それより、誰かと待ち合わせてんの?」

長い髪を女優のように書き上げて、柚子川は言った。待ち合わせ?

「なんで?」

「だって、人を探してたみたいだったから。違うならいいの。信号も青くなったし、行こ」

探してたみたい……今の俺が探すとしたら……頭の中に浮かんだ顔を消すために、俺は彼女よりも数倍可愛い柚子川の隣を歩いた。

柚子川明(あかり)は俺と同じ、小狐公園駅在住の幼なじみだ。男受けのする美人で、どちらかと言うと女子には嫌われているらしい。いや、嫌われているというよりも、敬遠されているのかも。顔が良いし、運動できるからな。頭は悪いけど。密かに徹とお似合いだと思っているのだが、あまり恋愛話をこいつとしたくないのでそのことを言ったことはない。

「……で?」

「で?って?」

「昨日。山瀬さんと帰ってたでしょ」

「なっ……!」

なんで知ってるんだ!?

「昨日、あんたが頑張って誘ってるとこ見ちゃった」

見ちゃった、じゃない!その時に声かけろよっ。そしたらこんな微妙な気分にならなかったのに。

「女っ気がなかった寺田がねぇ。ふぅーん。へぇーえ」

「なんだよ」

にまにま笑いやがって。笑うと女は二倍美しくなるらしいが、にまにました美人はイマイチだった。

「でも、山瀬さんだなんて。マイナーなとこ行くねぇ」

失礼だぞ、山瀬サンに。

自分のことは棚に上げて思ってしまった。あれだよな。自分がしても気にならないけど人がしたらすごく気になるってヤツ。

「マイナー?」

敬遠されているがゆえに顔の広い柚子川。なにか山瀬サンについて知ってるだろうか?

「うん。私が言えることじゃないけど、あの子、友達少ないよねぇ」

本当にお前が言えることじゃねーよな。

「少ない?いるのか」

「あんたも大概、失礼だよね。そりゃ二ヶ月も通ってりゃ一人はできんでしょ」

誰があいつの友達なんだ?とは聞けなかった。そこまで聞いたら、自分が山瀬サンを気にしているのが柚子川に伝わりそうで(もうばれてるかもしれないが)。

「あとね、頭は良いみたいよ」

柚子川は聞いてもいないのにベラベラと知ってる内容を話す。有り難いけど、こいつにだけは秘密を話すまい、と誓わせるヤツだ。こいつに言うことは、メガホンで全国民にばらされても恥ずかしくないことだけにしよう。

「まあ、外進だからな」

外進が頑張って受験勉強をしている間、俺達は遊び暮らしていた。中・高がエスカレーター式の学校に通う生徒達にとって、その境目は中だるみの時期なんだとか。そん時、山瀬サンや、他の外進は勉強をしていた。

あいつらが勉強できるのは、俺や柚子川が軽々しく「羨ましいよね」なんて言えることではないのだ。

「うん。この間、数学教えてもらっちゃった」

山瀬サンが柚子川に勉強を教える。その場面が想像できない。

「え、仲良いのか?お前ら」

「いや?偶然、話の流れで」

どんな流れだよ。女の話は有り得ない方向に飛ぶというから、聞いても分からないだろうけど。

「コサインって何だっけ?って言ったら、睨まれた」

「……三角比だろ」

……睨んだんじゃなくて、呆れたんじゃないか?

「それに、変わってるよね」

脳天気な柚子川が、少し眉をひそめた。

「そん時に、アド交換しよー、って言ったら真顔で、」

スッと柚子川は真顔になる。そういやこいつは演劇部だったか。

「なんで?……って言われた」

腹から声を出したのか、周りに響く大声で「なんで?」の部分を発声する。

皆こっち見てるだろーが!


山瀬サンの情報をずいぶんと集めて、俺と柚子川は学校に着いた。

教室に着いてから、登校途中の柚子川について聞かれまくったのは、この後の話だった。


次こそは葉子を!

でも視線は寺田さん。

寺田さん視線のほうが、大人しくて書きやすいという現実……

雪ちゃん出したいなあ。

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