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お隣りさん  作者: 原坂秋
1/7

席替え

初めての投稿です……

けっこう緊張しますね!

誤字・脱字・感想等ありましたら、お気軽にどうぞー!!

俺……寺田明文(てらだあきふみ)が高一になってから、二ヶ月が過ぎた。といっても俺が通う学校は私立で、中学から高校までエスカレーター式で上がることができる。入学試験などは形ばかりで、たとえ零点をとっても高校生になれたのではないかと俺は推測したのだが、実際がどうであるかはわからない。

変わったことと言えば、ストライプ柄のネクタイの色(中学は赤、高校は青)と、二十人ほどの新入生が増えたことだろうか。

現在高一は五クラスあるので、四人だけ外進生がいる。外進生とは教師が新入生を呼ぶときの呼称で、俺らのことは内進生と呼ぶ。軽い差別じゃないか?別にいいけど。

外進生は、新学期の頃はまるで転入生のような扱いを受けていた。女子が二人と……男子が三人だったはずだ。出席番号の関係からか、俺は二ヶ月経った今も外進生と話しをしたことがない。まあ、とりあえず説明は置いておいて、今この瞬間の説明をする。

教壇に立った里中(さとなか)が席替えをしようと宣言をしている。ちなみに里中は担任だ。中年のおっさんだが……細かく説明するようなヤツでもないので、それは省く。

「じゃあ、端の人からクジを引けー。書いてある出席番号の場所に座れ」

新学期は出席番号順に座っている。出席番号の場所とはそういうことだ。

各々クジを引いていき、俺も前のヤツについて引いた。

「どうだった?明文」

友人の富樫徹(とがしとおる)が紙を握りしめて寄ってくる。悪友と言いたいところだが、そう言えないくらいには何でもできる優男だ。欠点を言えと言われれば、一時間くらい考えてから「ジャンケンが弱いところ」と言うだろう。欠点じゃないって?それしか言うことがないんだよ。仕方ないだろ。

「6!」

「6?うわ、窓側の端じゃん」

だよなー。一番左の一番後ろの席だ。真ん前よりマシか?って、その考え方が成績下落に繋がんだよな。

皆はぞろぞろと席移動を始めている。

徹は嫌な顔せずに一番前に移動する。あいつ、頭いいから。

俺も指定された席に向かい、前と右隣の生徒を確認する。周囲のヤツによって、次の席替えまでの期間の楽しさが決まる。と、俺は思っている。

前に座ったのは、何度か同じクラスになったかな、ってヤツで、一度も話したことがない。クラスに一人はいるだろ?事務的な会話しかしたことないやつ。右隣は、見たこともない女だった。俺も別に顔が広いわけじゃないけど、ほんっとに見覚えがない。チラチラと隣を見ていると、誰かが俺の肩を叩いた。

「うぉっわ!!」

驚かされてもここまでは……、という程の驚きように、叩いたヤツまで「わあ」と声を上げる。

「な、なんだ、徹かよ。驚かすな!」

「いや、別に驚かすつもりは……ごめん。それより、ここが明文の席かー」

ふーん、って感じでキョロキョロ辺りを見る。HRの最後に席替えをしたので、既に終礼は終わっていた。

俺は徹の耳元に顔を近づけ、右隣りの女のことを尋ねてみた。

「……隣?明文、クラスメイトの名前くらい覚えてあげて」

こんな会話を聞かれるわけにはいかないので、自然と声をひそめて顔を近づけて話す。俺らの間には友情しかないからな!と誰にともなく言っておく。

山瀬葉子(やませようこ)さんだよ。外進生の」

ひそひそと教わり、ちらーっと山瀬サンを見てみる。……!げ!!目が合ったー!

名前を呼ばれたのが聞こえたのか、山瀬サンはじとりと俺らを見ていた。見ていた、ってのは柔らかく言いすぎだろうか。睨みつけられていた、と訂正しておこう。

徹も俺が蛇と蛙よろしく睨まれているのに気づき、ハラハラとしていた。

先に視線をそらしたのは、山瀬サンだった。睨んでいた目は徐々に冷たい視線に変化していき(どう違うのかって?それは睨まれたヤツにしか分からない。言ってしまえば、温度だ、温度)、スッと俺から離れる。意味もなく身体が強張っていて、俺がそれに気がついたのは山瀬サンが視線を逸らしてからだった。

「……よし、帰ろうぜ、徹」

明日使う宿題やら教科書整理やらを終え、徹に声をかけた。隣を見るといつの間にか山瀬サンは消えている。いつの間に?存在感の薄いヤツ。

「うん。帰ろ……あ」

「あ?」

「今日、図書委員の仕事があるんだった!」

「図書委員?……ああ」

新学期に、委員会とか級長とか決めるだろ?図書委員てのは、三大面倒委員会として生徒に認識されている。最終的にはジャンケンで決まったのだが、徹は一人負けした。格好はいいのにな。性格もいいのに。ただ、ジャンケンは弱いんだよなー。

サボるヤツも多いと聞く図書委員会。律儀に仕事をする徹は、ちょうどいい穴埋めだろう。気の毒に。俺はなんも所属してないけどな。

「んじゃあ、別なヤツ誘って帰るわ」

「悪いね。じゃあ俺は先に行くから」

「おう」

徹を送り出してから、俺は隣のクラスを覗き込んだ。そこは、部活のヤツらが着替えたであろう制服が机上に無造作に置いてあったり、ギャーギャー騒いでる女子が数人いるだけだった。つまり、友人はいなかった。そうだよなー、皆部活だよなー、と帰宅部の俺は黄昏れてみたり。

しゃーない、帰るか!

俺は階段に向かった。

一階に行く間に友人がいたら、いや、たとえ知り合いレベルでも。見つけたら無理矢理にでも一緒に帰ろう。だって、徹がいない日に一人で帰るだなんて、まるで徹以外友人がいないみたいじゃないか。

結果。会いませんでした。最後のほうなんか、「一度でも話したことがあるヤツ」レベルまで条件を下げたというのに。

ガラス張りの図書館を見ると、カウンターに徹がいて、隣に立つ可愛い女子と楽しそうに話している。

なんだよ、渋々行きます~みたいな風に行ったくせに。俺も図書委員になりゃよかった。

……と、図書館の扉が開いた。意外と重い扉を開けたのは、なんと。

……山瀬サン?

バチッと目が合った。俺達、目が合いやすいのかね?さっさと帰ろうとする山瀬サンを見て、俺は慌てて呼び止めた。

いつもならしないだろう。何でかね?徹を見て、俺だって女子と話してやるさ、と思ってしまったのかもしれない。

「や、山瀬……!」

まさか俺に呼び止められるとは思っていなかったのか、山瀬サンは驚いたようだった。顔だけ後ろを振り返り、自棄になった俺が大きく手を振っているのを見つけると、今度は身体ごと後ろへ向ける。外進生らしい真新しい制服だスカート丈も変えてない。

「……私?」

「ああ」

こちらへ来ない山瀬サンを見るところまお前が来い、ということらしい。もちらんそちらが進行方向でもあるし、俺が山瀬サンのほうに向かった。

「あの、さ。俺の名前知ってる?」

「……寺田……えっと……」

頑張って名前まで名を思い出そうとしてくれる山瀬サンに涙が出そうになる。ゴメンな、俺、苗字も覚えてなかった。

「苗字だけでいいぞ。別に俺のこと明文くん、なんて呼ぶわけじゃないだろ」

「そうだね」

苦笑した山瀬サンの顔を、俺は初めてしっかりと観察できた。

染めたことのないだろう黒髪に、大きくもないが小さくもない目。まあ、可愛い……かな?といったところだ。どちらかと言われれば可愛い。可愛いよね!と断言され同意を求められたら、そうだな、と言える程度には可愛い。二段階なら可愛いゾーンに入るが、三段階なら普通ゾーン。可もなく不可もなく。

もちろん、他人にそんなことを言えるほど俺だって美形じゃない。三段階で普通ゾーン。いいじゃないか。

「で、どうしたの?寺田……さんが。私に用?」

ま、確かにどうしたのだよな。俺だって通常時に山瀬サンに声をかけられたら「何?」って思うだろうし。

しかし山瀬サン。今更だが、お前毎日一人で帰ってんのか?寂しいヤツ。

「ああいや、お前一人か?」

「そうだけど」

「ちょ、ちょうどよかった。俺も今一人なんだよなー。一緒に帰ろうぜ」

言った、言った、言ったー!別に告白するわけじゃねーだろ、と自分を元気づけ、なんとか俺は最後まで言い切った。

なんかもう、こいつに声かけなきなよかったとすら思う。一人で帰りたくないなんて、俺って女々しい?もしそうならかなり嫌だな。

「別にいいけど」

俺の葛藤の五分の一ほどの時間しか迷わず、山瀬は頷いたのだった。

けっこう失礼なことを思っている寺田くん。葉子にさん付けで呼ばれ、実は居心地悪く思っていたりいなかったり……

どっちでしょうね?分かりませんが。

次は葉子視線になります。

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