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新中野の部屋と、泥棒と、しょこたん

作者: ゆえそまひ
掲載日:2026/06/24

人は自分の話を、時間が経つにつれて少しずつ物語に変えていく気がする。10年前、20年前のことともなればなおさらで、経験したはずなのにどこか他人事のような距離感がある。そんな話を、ここに書き留めておくことにした。

社会人一年目。どこに住もうかとあれこれ考えた末、川口から中野区に引っ越すことにした。最寄りは新中野。丸ノ内線で赤坂見附まで一本で出られるから通勤も楽だし、混雑もそれほどひどくないだろうという算段だった。


青梅街道から細い路地を入ったところに、その古い2階建てアパートはあった。1階の、奥から二番目の部屋。小さなキッチンつきのワンルームで、10畳ほどだったと思う。玄関を開けるとすぐ部屋、という作りだったけれど、廊下がないぶんかえって広く感じた。近くにスーパーもあって、生活環境としては悪くなかった。ただ、自炊をしていた記憶がほとんどない。忙しく働いていたから、外食で済ませることがほとんどだったのだろう。


あの部屋には色々な思い出があるけれど、一番印象に残っているのは、空き巣の話だ。


会社の先輩に誘われてハワイへ行き、旅行から帰ってきた夜のことだった。くたくたになって玄関を開けると、部屋の中は散らかり放題。旅行前からそうだったのか、帰ってきた勢いでそう見えたのか。面倒だとは思いつつも、せっかくだから掃除でもするかと思い立ち、玄関側から拭き掃除を始めた。右手にベッドを見ながら、窓に向かってじわじわと進んでいく。「いやーよく汚れてるな」などと思いながら、ふきふき、ふきふき。


そして、ようやく終わりに差し掛かったころ。ソファを動かすと、床に何か小さな破片が落ちていた。ゴミかな、と思いながら四つん這いのまま窓を見上げた瞬間、目に飛び込んできたのは——鍵のあたりに空いた、弾丸でも撃ち込んだような穴だった。


……こんな穴、あったっけ?


しばらく頭の中が「?」でいっぱいになった後、静かに理解した。あ、これ空き巣だ。


冷静になって部屋を見渡してみる。パソコンは無事。財布も特に問題ない。しかし何かが引っかかって、ふと思い出した——そうだ、旅行に出る前にネットオークションに出品したものがあった。懸賞で当てたしょこたんの小悪魔コスプレ柄のクオカード。500円分のやつ。


落札結果を確認すると、しっかり売れていた。しかも5000円で。それ自体は喜ばしい話なのだが、肝心の現物がない。部屋の中を探しても、どこにもない。消えたのはそれ一枚だけ。自作のパソコンには見向きもされなかった。まあ、自作PCなんて売れないよな、とは思ったけれど。


盗まれたものがある以上、通報するしかない。警察に電話すると、しばらくして数名が到着し、捜査が始まった。「これは空き巣ですね。あ、1階は全部やられてますね」と言われ、自分だけでなく同じ階の全室が被害を受けていたことを知った。


「帰ってきたとき掃除しちゃったんで、指紋とか何も出ないと思います。窓以外は」と正直に伝えると、それでも一応全部見てみますと言われ、指紋の採取が進められた。当然、何も出てこない。掃除したんだから当たり前だ。そして照合のためとかで、自分の指紋まで取られた。別に犯人でも何でもないのに、なんとなく嫌な気分だった。


結局、犯人が捕まったという話は聞いていない。あんなありふれた空き巣が捕まることなんてないだろう、とは思う。


ただ、今でも許せないのがひとつある。オークションの落札者に「旅行から帰ったら空き巣に入られてしまいまして……」と説明したのだが、当然ながら信じてもらえず、最低評価をつけられてしまったのだ。誰だって信じないよ、そんな言い訳。でも本当のことなのだ。空き巣には爆発してほしい。今でもそう思っている。


ちなみに——隣の部屋に住んでいた、ゴールドジムの女性トレーナーの方。ものすごいハスキーボイスが印象的だったあの人、元気にしているだろうか。

ほとんど寝るだけだったこともあって、隣の人もゴールドジムのおねーさんしか知らなかった。実家から届いた何かをあげたら、何かを返してもらってたまにそんなやりとりをしただけだけど。

めちゃハスキーボイスだったんだよなぁ、どこの店か聞いてないけどお元気にしているだろうか

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