異世界に迷い込んだ僕は、美しいエルフに恋をする
僕は、ごく普通の人間。今まで、特に際立った経験は無く、それなりの人生を歩んできた。特に優れた才能は無いが、落ちこぼれという事は無く、僕自身を冷静に分析すると、人並みより、ある程度は上かな~という感じ。
顔は、自分で思ってるのは、そこそこの顔かな~という感じ。女性にモテモテだった事はなく、女性にモテモテの男を見ても、羨ましいとは思わなかった。
勉強に関しては、自分ではそれなりに頑張ったつもりだが、その成果はというと、やはり、人並みより、ある程度は上かな~という感じ。スポーツに関しても、勉強と同じく、自分では頑張ったつもりでも、人並みより、ある程度は上かな~という成果しか上げられなかった気がする。
友達も、それなりに作る事ができた。友達と一緒にワイワイ楽しく話したり、お出掛けをして遊んだりするのが、とても楽しかった。ただ、特別な経験という訳ではなく、ごく普通の事だ。僕自身は、それでいいと思い、満足している。
そして、このままでいいと思っている自分と、他の人とは違う、もっと変わった、特別な経験をしたいと思っている自分がいる。どちらも、僕自身の考えであり、どちらも正解であり、どちらの僕自身も、僕は気に入っている。
ただ、変わった特別な経験をしたいといっても、具体的には、全く分からない。そんな経験は必要ないと思っている自分もいるのだから、当然である。そういう経験は、考えるものではなく、ある日突然、自分の身に降りかかって来るものだと、何となく思っていた。
恋愛に関しては、自分の中で、憧れているものがあった。ある日突然、びっくりする位の美しい女性と出会い、恋に落ちる、なんて想像して、一人で浮かれてる事が、時々あった。とんでもなく美しい女性と恋に落ちる事ができたら、どんなに嬉しくて、幸せな事なんだろうと、少しニヤニヤしながら想像していた。
そんな僕が、ある日突然、夢のような、夢ではない経験をする事になる。
僕にとって、かけがえのない経験。そんな物語が、幕を開ける・・・。
―ここは、何処なんだろう。ちゃんと家に帰れるのかな。何がどうなってるんだ?―
気が付くと、僕は見知らぬ世界にいた。見渡す限り自然。何処に行けばいいのか。
―とにかく歩いて、家に帰れるよう、手掛かりを掴まないといけないぞ!―
意を決し、歩を進める。地面は草が生い茂っているが、丁度良い長さで、歩き易い。ただ、同じような風景が広がっていて、綺麗な風景を楽しむというよりも、見知らぬ大地に戸惑い、焦りながら歩き進む。
―ここは何処なんだ!人もいないし、何の生物もいない!試しに大声で叫んでみるか―
「誰かいませんか!いたら返事して下さい!ここは何処なのか、教えて下さい!」
声が出る限り叫んだが、全く反応が無い。
焦る気持ちを抑えながら、更に歩き進む。どんどん歩き進むと、前方に川が見えてきた。太陽の光に照らされ、キラキラと綺麗に輝いている。
―水が綺麗な感じがするなぁ。喉が渇いてきたし、あの川の水を飲みたい!―
歩くスピードを速め、どんどん川に近付く。もう少しで川辺に着く、その時、川の近くに、何か生物を発見した。更に川に近付き、その生物と対峙する。青いスライムのような形状をしているが、可愛いらしさは無く、目はギョロッとしていて鋭く、口元に牙が生えていて、角が二本あり、羽根も生えている。その生物が僕をじ~っと睨んでいて、僕がその生物をじ~っと見つめる。暫くの間、対峙していると、突然、その生物が、羽根をバタバタとばたつかせながら、僕に向かって飛んで来た。
「うわっ!何だこいつは!」
大慌てでクルッと後ろを向き、全速力で走る。その生物が追い掛けて来た。それでも全速力で逃げる。徐々に体力が無くなってきて、ハァハァと息が切れる。更に力を振り絞って走ると、漸く、羽根をばたつかせる音が聞こえなくなった。走るスピードを緩め、後ろを振り返ると、もうさっきの生物の姿は見えなくなっていた。
「何とか逃げ切れた!さっきの生物は、たぶん魔物だな。これは、とんでもない世界に迷い込んでしまったぞ!あの婆さん、無茶苦茶な事をしてくれたな。元の世界に戻りたい!」
そう言って、今から少し前の、不思議な出来事を茫然としながら思い返す。
僕が異世界に迷い込んでしまった、少し前の事。僕は東京の大都会の街を、幼馴染の咲希という女性と一緒に歩いていた。咲希と書いて、さきと読む。小さい頃から仲が良く、よく一緒に遊んでいたが、恋人同士という関係ではなかった。
「ほら、スター!次はあのお店に入るよ!可愛い服がいっぱいあると思うよ!」
「咲希、そろそろ休憩しようよ。行きたいカフェがあるって言ってたじゃん」
「そうだね。あのお店に行ったら、そのカフェに行って、甘い物を食べながら休憩しよう!」
「うん!咲希は体力あるなぁ」
スターとは、咲希が僕を呼んでいる呼び名。咲希が言う事には、僕は、咲希にとって、何でもそつなくこなす人で、小さい頃、悪ガキにいじめられていた咲希を、僕が勇敢に追い払った事もあり、咲希は僕の事をスターと呼ぶようになった。勿論、本名ではない。
咲希は、可愛くて綺麗な顔立ちで、スタイルも良く、昔から、男性にモテモテだった。しかし、理由は分からないが、男性からの交際の申し込みを、咲希は全て断っていた。僕とは、前からずっと仲が良いが、僕が咲希に対して、恋愛感情を持っているかどうかは、自分でも分からなく、咲希に交際を申し込んだ事は無い。
二人でその店に入ろうとした、その時、僕の目に、一人の老婆が入った。何か、不思議な雰囲気を漂わせていて、奇妙な動きをしている。
―あれ?あのお婆さん、変な恰好をしてるし、動きが変だし、何者なのかな―
そんな僕の様子を咲希が見ていて、僕に言ってきた。
「あっちの方を見てるけど、どうしたの?早くお店に入ろうよ!」
「あのお婆さん、変な恰好をしてるし、変な動きをしてるし、何してるのかなって思って」
「え~!とばっちりを受けたら大変だし、放っておくのがいいよ」
「そうだと思うけど、何故か、呼ばれてるような気がするんだ。どうしよっかな」
「気のせいだよ。放っておいて、早くこのお店に入ろうよ。可愛い服を見たいよ!」
「そうだね。考えていても仕方がないし、そろそろ店に入ろっか」
僕と咲希の会話が終わり、店に入ろうとした、その時、鋭い視線を感じた。はっとなって、視線を感じた方を見ると、先程の老婆が、僕を鋭い眼光で睨んでいる。
「咲希、あのお婆さん、僕を強烈な眼光で睨んでるよ。最初から見なきゃ良かったな」
「変なお婆さんだね。無視して、早くお店に入ろうよ」
「そうだね。絡まれないうちに店に入ろう」
二人で店に入ろうとした、その時、老婆が僕に向かって叫んだ。
「そこの男!さっきから私を見ていただろ!来い!」
―あの変なお婆さんに呼ばれた!周りの人が変な目で見てる!ここは行くしかないか―
「咲希、あのお婆さん、怒ってるし、行かなかったら、こっちに来そうやし、お婆さんのところに行くよ。咲希は、危ないから、ここで待っていてよ」
「大丈夫かな。私も一緒に行くよ。一人よりも二人の方が、危険な目に遭わないと思うよ」
「分かった。咲希が危険な目に遭いそうになったら、絶対に守ってあげるよ!」
「お~!さすがスターだね!頼りにしてるよ!」
二人でその老婆のところに歩いて行き、老婆と対峙すると、老婆が不気味に笑った。
「お前、私がしてる事に、興味があるようだね。私が何をしてるのか、知りたいか?」
―僕に絡んできやがった!何て答えたらいいのかな。小声で咲希に相談してみるか―
「咲希、このお婆さん、僕に絡んできたよ。どう答えたらいいかな?」
「スターは、このお婆さんが何をしてるのか、興味あるの?」
「別に興味ないよ。とんでもない事をしなければいいんだけどね」
「じゃあ、興味ないって言えばいいじゃん。分かってくれると思うよ」
「うん。そうだね。興味ないって言うよ!」
僕と咲希が、小声で話し合いをしていると、老婆がイライラし始めた。
「おい!ヒソヒソ話は嫌いだよ!私に聞こえる声で言えよ!」
―怒り始めた!興味ないって言って大丈夫かな。でも、興味ないって言うぞ!―
「お婆さんがしてる事に、興味ないです。何をしてるのかなと、少し見た事、謝罪します。僕達、行かなきゃいけない所がありますので、これで失礼します」
僕と咲希が、老婆にお辞儀をして、歩き去ろうとした時、老婆が大声で言ってきた。
「待て!興味ないなんて言われると、余計に見せたくなったよ!私はそういう性格なんだよ!このまま行かせるなんて出来ない!私がこれからする事を、少なくとも男のお前は、しっかりと見ろよ!女のお前は、立ち去っていいぞ!」
老婆の言葉を聞き、僕と咲希が小声で話し合う。
「咲希、このお婆さん、頭がおかしいかもしれない。仕方がないから、少しの間、このお婆さんがする事を見るよ。咲希は、先にあの店に入ってよ」
「スターを一人残して、私だけお店に入るなんて、出来ないよ!私も残って、あのお婆さんがする事を一緒に見るよ」
「分かった。ちょっとだけ見て、すぐにあの店に行くよ」
「またヒソヒソ話をしやがって!次にヒソヒソ話をしたら、タダじゃ済まないぞ!」
―このお婆さん、キレ始めた!なだめなきゃいけないぞ―
「お婆さん、ごめんなさい。怒らないで下さい。分かりました。お婆さんがする事を、ちゃんと見ますから、落ち着いて下さい」
「お婆さん、ごめんなさい。私も一緒に見ますから、落ち着いて下さい」
「そうか。では、私がこれからする事を、しっかりと見ろよ!」
老婆が準備に取り掛かった。鞄から古い本を取り出し、真剣に読んでいる。時々、声に出して読んでいるが、内容は分からない。
―このお婆さん、古い本を読んで、何をしようとしてるのかな。訊いてみるか―
「お婆さん、何の本を読んでるんですか?すごく気になりますよ」
「これはな、異世界についての本なんだよ。私は、異世界への入口を出現させる為に、今まで必死に研究してきたんだ。もう少しで、私の研究は完成するんだ。後で、あっちの狭い路地に行って、異世界への入口を出現させる為の儀式をするから、しっかり見ろよ!」
「異世界?ある訳ないじゃないですか!もう行きます!早くあの店に行きたいんです!」
「行かせる訳ないだろ!逃げたら、地の果てまで追い掛けて、地獄に突き落としてやる!」
老婆の言葉に、僕と咲希が顔を見合わせ、その場に留まり、老婆が古い本を読んでいる様子を見ていると、ふと、老婆が満面の笑顔で僕と咲希を見てきた。
「これで完璧!異世界への入口を出現させるぞ!一緒にあっちの狭い路地に来てくれ!」
老婆の言葉を聞き、僕と咲希が顔を見合わせ、小さく頷き合った。老婆が歩き始め、二人で老婆の後に付いて歩き進む。狭い路地に入り、少し歩くと、行き止まりになった。
「異世界への入口を出現させるぞ!私が呪文を唱え、心から祈る事により出現するぞ!」
「お婆さん、無理しないで下さいね。無理して倒れちゃったら、大変ですよ」
「黙れ!後には引き返せないんだよ!さぁ、始めるぞ!」
老婆が真剣な表情で呪文を唱え始めた。僕と咲希が、その様子を見る。老婆が集中している。ふと、咲希が僕に言ってきた。
「今なら、走って逃げられるんじゃない?思い切り走って、あのお店に入ろうよ!」
「そうだな。今なら、逃げられるな。全速力で走って、あの店に入ろう!」
僕と咲希が、全速力で走って逃げようとした、その時、老婆の叫び声が聞こえた。
「やったぞ!あれが、異世界への入口だ!あの入口に入れば、異世界に行けるぞ!」
老婆の声を聞き、僕と咲希が足を止め、後ろを振り返ると、空中に黒い靄のような穴が浮かんでいる。人が一人入れそうな位の大きさ。
「お婆さん!この空中に浮かんでる穴、お婆さんが作り出したんですね!凄いです!」
「お婆さん!こんな空中に浮かんでる穴、よく作り出せましたね!凄~い!」
「私を見直しただろう。この黒い穴に飛び込んだら、異世界だぞ!お前、行きたいだろう?」
―この婆さん、僕に、この穴に飛び込めって言いたいのか?こんな得体の知れない穴になんて飛び込みたくない!やんわりと断って、さっさとお目当ての店に行こう―
「お婆さん!僕は、今の生活に満足してますし、異世界に行きたいなんて気持ちはありませんので、この穴に飛び込むなんて事、しませんよ!お婆さんが、異世界に興味があって、この穴を作り出したんですし、お婆さんが、この穴に飛び込んで下さい」
「そうよ!スターに行かせるなんて、無茶苦茶だよ!異世界の事を知りたいんなら、お婆さんが穴に飛び込んで下さい!」
「私は、異世界への穴に飛び込めないんだ。私には、夫も子どももいるから、私が長さの分からない期間いなくなってしまったら、心配をかけてしまう。それで、お前に頼みたいんだ。異世界に行って、どんな世界なのかを私に教えて欲しい。穴に飛び込んでくれ!」
「待って下さい。お婆さんに大切な人がいるように、僕にも大切な人がいるんです!僕だって、いつまでいるのか分からない異世界に行ったら、悲しむ人だっていますし、帰りを待ってくれる人もいるんです。興味ないですし、僕が異世界に行く理由は無いです」
「スターにも、大切な人がいるんです!スターを異世界になんて、行かせませんよ!ん?スター、大切な人って誰なの?もしかして、私?私?キャ~!私なら、すっごく嬉しいよ!」
「うん!咲希も僕にとって大切な人だよ!ずっと前から、いっぱい一緒に過ごしてきたし、咲希と話してると、すっごく楽しいし」
「ウフ、ありがと~!そう言ってくれて、すっごく嬉しいよ!私も、スターの事、大切に思ってるよ!スターは、私にとって、すっごく大切な人だから、異世界になんて行かないでね!あの穴に放り込まれそうになったら、私が防いであげる!」
「ありがと~!咲希に防いでもらう前に、僕の力で異世界に行かずに済むようにするよ!」
僕と咲希の言葉を聞いていた老婆が、一気に怒りに満ちた表情になった。
「いい気になりやがって!お前は、私の言う通り、あの穴に飛び込んで、異世界に行って、こっちの世界に戻ってから、異世界の事を私に細かく報告すればいいんだ!」
老婆の言葉を聞き、僕と咲希が小声で話し合う。
「咲希、あの老婆、何をして来るか分からないから、気を付けてね」
「うん。確かに、あの老婆、一気に雰囲気が恐ろしくなった感じがするね。もしかしたら、手段を選ばず、こっちに襲い掛かって来るかもしれないね」
少しの間、無言で対峙した後、突然、老婆がこっちに向かって動き出した。
―この婆さん、意外と動きが速い!咲希を守らないといけないぞ!―
咲希の方を見ると、驚愕の光景!なんと、既に老婆が、咲希の動きを封じ込め、ナイフを咲希の首元に突き付けている。咲希は、老婆を恐れながらも、気丈な感じを出している。
「咲希!今、助けるぞ!お婆さん!止めろ!あんたがしてる事は犯罪行為だぞ!」
「スター!私は大丈夫!絶対にあんな穴に飛び込んで異世界に行かないでね!」
「この女は、お前にとって大切な人のようだな!早くあの穴に飛び込んで異世界に行かないと、本当にこの女を殺してやるからな!行け!」
―この婆さん、危険人物だな!僕があの穴に飛び込まないと、咲希を殺すって言ってるけど、さっき、旦那さんとお子さんがいるって言ってたし、絶対に咲希を殺さない!でも、僕の心の何処かに、咲希が殺されてしまうかもしれないっていう気持ちがある。咲希の命が一番大切だし、嫌だけど、あの穴に飛び込むしかないのかな―
僕がそう考えていると、咲希が僕に大声で叫んだ。
「スター!私の事なんて心配しないで!このお婆さん、旦那さんとお子さんがいるんだし、絶対に私を殺さないよ!あの穴に飛び込んじゃダメ!本当に異世界に行ったら、戻って来れるかどうか分からないよ!」
咲希の言葉を聞き、老婆が更に険しい表情になり、僕に怒鳴ってきた。
「お前がこの穴に飛び込んで異世界に行かないと、本当にこの女を殺すからな!」
老婆がそう怒鳴ると、咲希の首元に突き付けたナイフを、咲希に軽く擦り付け、咲希が恐怖に怯えた表情になった。
「止めてくれ!分かった!この穴に飛び込むから、そのナイフを、首元から離せ!」
「お前、どうせナイフをこの女の首元から離した途端に、この女を助けて、逃げるつもりだろう。その手には乗らないよ。お前がこの穴に飛び込んで異世界に行ってから、ナイフをこの女の首元から離すよ」
「それなら、僕が、この女性が無事に解放されたのを確認できないです!ナイフを女性の首元から離してから、僕がその穴に飛び込むという事は、絶対に譲れません!その穴に飛び込みますから、早くナイフをその女性の首元から離して下さい!」
「分かった。ナイフをこの女の首元から離すから、絶対にこの穴に飛び込んで異世界に行けよ!もし逃げたら、地の果てまで追い掛けて、お前もこの女も殺してやる!」
「その穴に飛び込みますよ。分かって頂き、ありがとうございます」
老婆が、ナイフを咲希の首元から離すと、すぐに咲希が老婆から逃れて、走って僕に抱き付いてきた。僕も咲希をぎゅ~っと抱き締め、二人で見つめ合う。
「咲希、この婆さん、僕があの穴に飛び込まないと、本当に僕と咲希を殺す為に、何処までも追い掛けて来ると思う。僕があの穴に飛び込むしかないよ。あの穴に飛び込んで、本当に異世界に行くかもしれないけど、僕は絶対に戻って来るよ!無事に戻る事ができたら、絶対に咲希を幸せにするから、僕が戻って来るのを待っていてね!」
僕の言葉を聞き、咲希が涙を流しながら、僕に言ってきた。
「分かった!私を絶対に幸せにするって言ってくれて、ありがとう!すっごく嬉しいし、今でもすっごく幸せだよ!スターが無事に戻って来るのを信じて、ちゃんと待ってるよ!」
二人でぎゅ~っと熱く強く抱き締め合っていると、老婆が僕に大声で言ってきた。
「おい!いつまでも見せつけてないで、さっさとこの穴に飛び込んで、異世界に行ってくれよ!私の魔力には限界があって、いつまでもこの穴を存在させられないんだ。お前が異世界に行った後は、異世界で、こっちに戻る方法を見つけ出して、こっちに戻れるはずだ!」
老婆の言葉を聞き、僕が咲希から少し身体を離し、老婆に向かって言葉を放った。
「僕が異世界に行ってから、こっちの世界に戻って来る方法を、知らないんですか!そんなの、戻って来れるかどうか、分からないです!異世界からこの世界に戻る方法を示して下さい!こんな状態で穴に飛び込めません!」
「スターを絶対に行かせませんよ!スターは、私にとって、本当に大切な人なんです!」
「そうか。確かに、異世界からこの世界に戻る方法が分からない状態だと、穴に飛び込むのを躊躇うよな。実は、この本に、その方法が書かれてるんだが、あと一歩で、解読できないんだよ。このページに書かれてるんだが、何が書かれてるんだろう。文字が特殊な文字で、日本語に翻訳する為の法則はあるんだが、この部分が分からないんだよ。お前、試しに読んでみてくれないか?お前なら、分かるかもしれない」
「え!僕で分かりますかね。一度、読んでみましょうか。自信は無いですけど」
―お!これは、いい展開だ!僕が、異世界からこの世界に戻る方法が分かっても、分からないふりをすれば、あの穴に飛び込まなくて済む!―
老婆から本を受け取り、日本語に翻訳する為の法則と照らし合わせながら読んでみると、すぐに、何が書かれているのかが分かった。
―書かれてる内容が分かってしまった!悪を倒し、意を決せば、元の世界への道が開けると書かれてる。悪を倒すって事は、悪と戦わないといけないって事だよな。悪って、ラスボスがいて、ラスボスを倒さないといけないんだろうな。この事、この婆さんには黙っていよう。気付かれなかったら、僕と咲希を解放してくれるだろうから、その後で、二人でお目当ての店に行こう―
「何が書かれてるんだろうな。さっぱり分からない。お婆さんが分からないのに、僕が分かる訳ないです。もう諦めます」
僕の言葉を聞き、老婆が僕の顔を覗き込んできた。
「お前!本当は分かってるんだろ!わざとらしく聞こえるぞ!正直に言わないと、またナイフをお前の大切な人に突きつけるぞ!」
「嘘なんてついてないです!本当に分からないんです!日本語に翻訳する為の法則っていっても、翻訳なんか出来ません!悪を倒すなんて、こんな文章から分かる訳ないです!」
「ん?悪を倒す?なんでそんな事を言ってきたんだ!悪を倒すって書かれてるのが分かってるのに、分からないって言ったんだろう!正直に言わないと、さっきのナイフで、お前の大切な人を刺すぞ!」
―うっかり悪を倒すって言っちゃった。何とかして言い逃れ出来ないかな―
「悪を倒すなんて、何となく言っただけで、分かった訳ではないですよ」
「うるさい!本当は書かれてる内容が分かってるんだろ!正直に言わないと、本当にお前の大切な人を殺すぞ!」
老婆がそう言うと、鬼の形相で咲希の後ろ側に回り込み、咲希の動きを封じて、ナイフを首元に突きつけてきた。一瞬の出来事に、咲希の表情が固まる。
「咲希!今、助けるからな!ちょっと待っていてくれよ!」
「スター!私は大丈夫だよ!私の事は気にしないでいいからね!」
「大丈夫な訳ないだろ!お前が正直に言わないなら、本当にお前の大切な人を殺すぞ!あまり時間を与えないからな!早く正直に言え!」
老婆の表情が更に険しくなり、ナイフを咲希の首に当て、擦り始める。咲希の表情が緊張感に溢れ、怖がっているのが分かる。
「もう止めて下さい!分かりました!分からないふりをしてただけで、本当は分かってました。何が書かれてるのか言いますから、ナイフを僕の大切な人の首から離して下さい!」
「分かった!早く言え!言ったら、お前の大切な人を解放してやる!」
「分かりました。本には、悪を倒し、意を決せば、元の世界への道が開けると書かれてます。強大な悪かもしれませんが、その穴に飛び込んで異世界に行きます。その本に書かれてる通り、悪を倒して、意を決して、この世界に戻って来ます」
「よし!約束通り、この女を解放してやる」
老婆がそう言うと、ナイフを咲希の首から離し、咲希が走って僕に抱き付き、僕も咲希をぎゅ~っと抱き締めた。暫くの間、二人でぎゅ~っと熱く強く抱き締め合い、見つめ合いながら言葉を掛け合う。
「咲希!結局、あの穴に飛び込んで、異世界に行っても、悪を倒して、意を決して、絶対にこの世界に戻って来て、咲希を幸せにするよ!僕が戻って来るまで待っていてね!」
「うん!分かった!スターが戻って来るのを待ってるよ!スターは、私にとって、かけがえのない大切な人だよ!」
「うん!咲希は僕にとって、かけがえのない大切な人だよ!」
「うん!私、スターに、かけがえのない大切な人って言われて、今でも幸せな気分だよ。スターがあの穴に飛び込んでから、この世界に戻って来てくれたら、私はもっと幸せになれるよ!一緒に幸せになろうね!」
「うん!ありがとう!この世界に戻って来てから、二人で一緒に幸せになるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。僕が唇をどんどん咲希の唇に近付ける。咲希が目を閉じ、口を少し開けて少し上を向く。もう少しで唇と唇が重ね合わさる、その時、老婆の大きな怒鳴り声が響いた。
「そこまでだ!続きは、お前が穴に飛び込んで、この世界に戻って来てからにしろ!」
「分かりました。そろそろ飛び込みます」
僕が咲希から離れ、穴に向かって歩き始めた、その時、咲希が僕に言葉を掛けてきた。
「スター!私、どんな事があっても、スターが戻って来るのを、ちゃんと待ってるからね!」
「うん!ありがとう!絶対に戻って来るよ!」
僕が穴の前に立ち、穴に向かって飛び込んだ。僕の身体が穴に吸い込まれ、この世界から消えてしまった。
「スター!待ってるからね!絶対にこの世界に帰って来てね!」
咲希が大粒の涙を流しながら、穴に向かって、声の限り叫んだ。
そして今、僕は、本当に異世界にいる。夢であって欲しいと願うが、やはり、この世界が自分の世界であるはずがなく、本当に異世界に来てしまった。
―あの穴に飛び込んだら、本当に異世界に来てしまった!あの時、婆さんがしてる事なんて気にせず、咲希と一緒に、お目当ての店に行けば良かった!でも、穴に飛び込む前、咲希と深い仲になれたよな!それだけは良かったと思う。咲希に、好きって言えば良かった!あともう少しで、咲希とキスする事ができたのに!早く咲希に会いたい!早く元の世界に戻って、咲希と一緒に幸せに過ごすぞ!さっきの川に、もう一度行こう。同じ場所に行ったら、また魔物がいるかもしれないし、ちょっと行く場所を変えて、さっきの川に向かうぞ!喉が渇いたし、あの川の水を飲めるといいな―
僕がさっきと方向を変えて、先程の川に向かって歩く。太陽の光が眩しくて目を細める。
―この世界も太陽に照らされるんだな。太陽に照らされないと、真っ暗になるもんな―
更に歩き進むと、遠くの方に先程の川が見えてきた。川の畔に大きな木があり、木陰が涼しそうに見える。
―あんな所に大きな木がある!あの川の水を飲めれば飲んで、あの木の陰に座って休憩するか―
どんどん川に近付き、大きな木の陰になっている部分が見えてくると、僕が驚きのあまり、目が釘付けになった。僕の視線の先には、一見、人間に見える女性が、裸で、川に入って水浴びをしている姿がある。身体の中で、ただ一箇所、人間とは違う部分がある。その人間に見える女性の耳が長くて、耳の先は少し丸まっているが、形は尖っている。しかも、女性の顔は信じられない位、綺麗で、可愛らしさも備えている。目がクリクリとしていて大きく、鼻の形が良く、唇は丁度良い具合にぷっくりとしている。髪が長くて綺麗で、おっぱいとお尻が超絶に大きく、極上のスタイルの良さ。そして、僕が気付いた。この人間のような女性が、エルフだという事に。
―お~!この女性が、本でしか見た事が無かったエルフか~!実物を初めて見た!めちゃくちゃ綺麗で可愛くて、とんでもなくおっぱいとお尻が大きくて、極上の裸の女性だな!見てるだけで幸せな気分になれる!いつまでも見ていたい気分だけど、もし僕が見てるのを気付かれたら、あのエルフの女性、どんな行動に出るのかな。人間だったら、物凄い悲鳴を上げて、大騒ぎになるんだろうけど、エルフだし、全然分からない。本を読んで知った内容では、エルフは強い人が多いみたいだし、僕に襲い掛かってくるかもしれないよな。僕、あのエルフに殺されないよな。あのエルフ、あんなに綺麗でセクシーだけど、怒らせたら、めっちゃ怖くて、強くて、僕なんか木っ端微塵に叩きのめされるかもしれない。あのエルフの女性の裸を、見ないようにする方がいいんだろうけど、あまりにも綺麗な裸で、どうしても見てしまうんだよな。それに、喉がめちゃくちゃ渇いていて、あの川の水を飲みたい。歩き疲れて、休憩もしたい。こんな事を考えてる間にも、あのエルフに気付かれるかもしれないし、どうしよう―
そんな事を考えている間も、どんどん川に近付いて行く。
―このまま川に向かって歩いて行ったら、あのエルフの女性に気付かれそうだけど、このまま進むか~。案外、温かく僕を受け入れてくれるかもしれない。突然この世界に来て、めっちゃ心細くて寂しいし、一人でも多く友達を作りたいし、喉がカラカラに渇いてるし、もう気付かれてもいい!このまま川に向かって進むぞ!―
更に僕が川に向かって歩き進み、もう少しで川辺に着く、その時、とうとう水浴びをしているエルフの女性が、僕に気付き、驚いた表情を見せ、腕でおっぱいを隠し、少し開いていた脚を慌てて閉じ、身体を屈めて、川にジャブッと身体の腰から下の部分を浸けた。
「キャ~!」
エルフの女性が、大きな声で悲鳴を上げた。エルフの女性の悲鳴を聞き、僕が慌てふためき、川に向かって歩くのを止め、後ずさる。
―あのエルフの女性、僕を警戒してる!この世界に警察はあるのかな。周りには人も生物も魔物もいないようだし、あのエルフの女性は、裸だし、今なら、全速力で走って逃げ切れそうだ!逃げるか?でも、逃げたら、あのエルフの女性に二度と会えないような気がする。それはそれで寂しい。どうしよう!こうしてる間にも、あのエルフの女性が、僕に何かをしてくるかもしれない!僕に与えられてる時間は少ないぞ!―
そんな事を考えながら、僕が迷いに迷っていると、エルフの女性が、顔を赤らめながら、僕に大声で叫んできた。
「ちょっと!私の裸を見てたでしょ?誰もいないと思って、水浴びしてたのに!」
―めっちゃ怒ってる!女性が裸を見られて怒るのは、人間もエルフも同じなんだな。でも、僕に対して攻撃してくる感じではないな。これ以上あのエルフの女性を怒らせないように、何か機転の利いた言葉を掛けよう。あのエルフの女性、日本語をしゃべってるなぁ。この世界では、分かる言葉に勝手に翻訳されるんだろうな―
「ごめんなさい!あなたの裸を見るつもりはなかったんですけど、あまりにも綺麗で、見とれちゃいました。もう見ませんので、引き続き水浴びをしてから、身体を拭いて、下着と服を着てから、僕といろいろお話しましょう!僕、あなたと友達になりたいです!」
「そうなんだね。裸を見られて、恥ずかしくて大声を出したけど、あなたの事、嫌いじゃないよ。分かったよ。もう暫く水浴びをしてから、身体を拭いて、下着と服を着るから、いっぱいお話しましょう!私と友達になりたいって言ってくれて、ありがとうね。私達、仲良くなれそうだね!あの木の陰に座って、私の方を見ないで待っていてね。もう私、敬語を使ってないし、あなたも敬語を使わなくていいよ!その方が、仲良くなれると思うし」
「うん!ありがと~!木の陰に座る前に、喉が渇いたから、川の水を飲みたいんだけど、この川の水、飲めるの?」
「うん!この川の水、綺麗だし、美味しいし、いくらでも飲めるよ!」
「やった~!ありがと~!早速、飲んでみるよ」
更に僕が歩いて、川辺に着き、手で川の水を掬って、飲んでみる。
「美味しい!綺麗な水、最高~!教えてくれて、ありがと~!」
「うん!飲みたいだけ飲んでね。飲み終わったら、木の陰に座って待っていてね」
僕がどんどん川の水を飲み、エルフの女性が水浴びを楽しむ。エルフの女性の綺麗な裸を見たい気持ちはあるが、我慢して見ないようにしながら少し歩き、木の陰に座って休憩する。太陽の光と木の陰がマッチし、適度な気温で、徐々に眠くなってきた。
―気持ちいい~。眠くなってきちゃった。でも、この世界に来たばかりで、何が起こるか分からないし、寝ないようにしなきゃな―
僕が寝ないように気を付けていたが、ウトウトとなり、眠り出してしまった。暫くの間、眠っていると、ふと、僕を起こすエルフの女性の声が聞こえた。
「ねぇ、そろそろ起きてよ。さっき言ったように、いろいろお話しようよ!」
僕が目を覚ますと、エルフの女性が、満面の笑顔で僕をじ~っと見つめている。既に水浴びを終え、きちんと服を着ているが、胸元がある程度はだけていて、セクシーさが際立ち、思わず視線を向けてしまう。
「うん!いろいろお話ししよう!まずは、念の為、確認するけど、君は、エルフだよね?ちなみに、僕は人間だよ」
「うん!私はエルフだよ!君は人間なんだね!その様子だと、こことは違う世界から来た感じだね。この世界にも人間はいるから、その点は安心していいよ!私の名前は、ナターシャっていうの。よろしくね!」
「うん。こことは違う世界から、この世界への入口に飛び込まされて、この世界に来たんだよ。ナターシャか。いい名前だね。僕の名前はね~」
僕が名前を名乗った直後、ナターシャが、ニッコリ笑って僕に言ってきた。
「ねぇ、折角、名前を教えてくれたけど、君の顔、男なのに美しい満月みたいで綺麗だから、君の事、ムーンって呼んでいい?」
「僕の顔が、美しい満月みたいで綺麗だなんて、初めて言われた!すっごく嬉しい!勿論、僕の事、ムーンって呼んでいいよ!」
「ありがと~!ねぇ、ムーンがこの世界に来た経緯を、詳しく教えてよ」
ナターシャにお願いされ、僕がナターシャに、この世界に来た経緯を教えたが、咲希の事は、大切な人とは言わず、ただの幼馴染という事にした。僕の話を聞き、ナターシャが真剣な表情になって僕に言ってきた。
「そうだったんだね。ほんとに大変だったね。でも、本意ではないにしても、この世界に来たんだし、この世界を楽しむ方がいいよ。この世界には魔物もいるけど、人間もいるし、私を含めて、いろんなエルフがいるよ。この世界をエンジョイしながら、悪を倒して、意を決して、元の世界に戻る事ができれば、それが一番いいでしょ。私、ムーンに会えて、嬉しかったよ。これから一緒にいっぱいいろんな場所に行って、もっと仲良くなろうね!」
「うん!ありがと~!ナターシャにそう言われて元気が出たよ!この世界に来たんだし、この世界を楽しむ気持ちを持って、元の世界に戻れるよう頑張るよ!」
「は~い!元気が出て良かったよ!そろそろ動こう!あっちの方向に暫く歩くと、私が住んでるエルフの街があるから、一緒に行こうよ!エルフがほとんどだけど、人間も少しだけいるよ。私の街のエルフは、人間に対して友好的で、ちゃんと歓迎してくれるよ」
「うん!ありがとう。一緒にエルフの街に行くよ。どんな街なのかワクワクするなぁ」
「ウフフ。そう言ってくれて、私も嬉しいよ!じゃあ、行くよ!」
僕とナターシャが、並んで楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進む。ナターシャと話していて分かった事は、エルフの街には、ナターシャの両親と妹がいるという事。エルフの街にいる人間の中には、エルフの女性と恋に落ち、結婚してそのまま住んでいる人もいるという事。エルフの街には、様々な種類の店がたくさんあり、食事をするのにも買い物をするのにも満足できるという事。更にナターシャが、話を続ける。
「エルフの街に着いたら、私が街を案内するよ。いろんなお店に入って、いろんな観光名所に行って、私の家に連れて行ってあげるよ。念の為に言うけど、私のお父さん、すごく厳しいから、覚悟してね。ムーンに対して怒る事は無いと思うけどね」
「ナターシャのお父さん、そんなに厳しいのか!ナターシャ、すっごく綺麗でスタイルいいし、僕なんかがナターシャの家に行くの、申し訳ない感じがするよ。エルフの街をいっぱい案内してくれるのは、嬉しいしワクワクするよ!」
「あはは。心配しなくて大丈夫だよ!申し訳ないなんて思わないでよ。私の事、いっぱい褒めてくれてありがとう!すっごく嬉しいよ!エルフの街は、楽しくて賑やかで活気があって、素晴らしい街だから、期待していてね!いっぱい案内してあげるからね!」
「うん!ありがと~!エルフの街をナターシャに案内してもらうの、めっちゃ楽しみ!ナターシャの家に行ってから、ナターシャの家族に気に入られるようにするよ!」
「は~い!いろいろ話しているうちに、エルフの街が見えてきたよ!」
「あれがエルフの街か~!活気があって栄えてるのが分かるよ。ワクワクするし楽しみ!」
「私もすっごく気分が上がってるよ!さぁ、行くよ!」
二人で更に歩き進んでいる時、ふと、僕が気になる。
―そういや、僕の世界で使ってたスマホ、この世界でも使えるのかな。たぶん使えないだろうな~。一応、見てみるか―
僕が鞄からスマホを取り出し、ディスプレイを見ると、電波が届いておらず、スマホを使えない事が分かった。
―やっぱりスマホを使えないな。この世界にはスマホを含めて電話は無さそうだな―
そんな僕の様子を見て、ナターシャが不思議そうにスマホを見つめる。
「それ、何?どんな事に使うの?」
「これはね、スマホっていって、主に、離れてる人と話す、電話っていうのをする為に使うんだよ。後、文字等で相手にメッセージを伝える、メールっていうのにも使えるし、写真や動画を撮るのにも使えるよ。この世界では、電波が届かないから、電話とメールはできないけど、写真や動画を撮るのはできると思う。そうだ!二人で一緒に写真を撮ろうよ!写真を見たら、びっくりすると思うよ!」
「へ~!面白そうだね!撮ろう!」
「うん!二人が画面に写るように、僕にピッタリ寄り添ってよ」
「は~い!ピッタリ寄り添うか~。こんな感じかな」
ナターシャがそう言うと、僕にピッタリと身体をくっつけてきた。
―お~!ナターシャのめっちゃ大きいおっぱいが、僕の身体に思いっ切り当たってる!めっちゃ気持ちいい!最高!幸せ!―
僕が気持ち良さのあまり、ニヤニヤした表情をしていると、ナターシャがニッコリ笑顔で僕に言ってきた。
「ウフフ。私のおっぱいがムーンに当たって、気持ち良くてニヤニヤしてるんでしょ~?」
「さすがナターシャ!鋭いね。その通りだよ。ナターシャのおっぱいが僕の身体に当たって、気持ち良くてニヤニヤしてるんだよ。それと、写真を撮る時は、笑顔の方がいいし、今の笑顔、最高だから、そのままの表情で写真を撮るよ」
「あはは。ムーンは正直でいいね。分かった!このままの笑顔で写真を撮るよ」
僕が右手にスマホを持ち、右手をぐ~っと伸ばし、二人がきちんと写るようにスマホを傾けて角度を調整する。
「なかなか上手く画面に入らないな~。ちょっと右に傾けるか。お!いい感じだ!じゃあ、撮るよ。はい、チーズ!」
二人でニッコリと満面の笑顔を作り、僕がシャッターボタンをタップし、カシャッとシャッター音が鳴り響き、二人で撮れた写真を確認する。
「お~!僕もナターシャも、最高の笑顔で写ってる!自然の風景も綺麗に写ってるし、エルフの街もちゃんと写ってる!最高の写真だよ!」
「これが写真なのね!本物そのままって感じだね!ムーンの世界、便利な物があるんだね!行ってみたい~!」
「写真を気に入ってくれて、僕も嬉しいよ。僕の世界に戻る時は、ナターシャも一緒に行く?僕の世界には、エルフがいないから、目立っちゃうと思うけどね」
「う~ん、行ってみたいけど、エルフは、この世界から出る事ができないの。私、スマホも写真も、初めて見たから、とっても感動したよ!」
「そっか~。僕の世界にナターシャを連れて行けないのは残念だけど、仕方ないね。その分、この世界にいる間は、ナターシャに、いろんな場所に連れて行ってもらって、一緒にかけがえのない思い出をいっぱい作るよ!」
「うん!私も、ムーンと一緒にいろんな所に行って、かけがえのない思い出をいっぱい作りたいよ!さぁ、エルフの街に行くよ!」
「うん!ナターシャにいろいろ案内してもらえるのが、すっごく楽しみだよ!」
二人で並んで楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進み、漸くエルフの街に到着。街を見回すと、たくさんのエルフや目新しい物が、僕の目の中に飛び込んで来た。
「これがエルフの街か~!ほんとにエルフがいっぱいいるね!見た事ない感じの建物がいっぱいあるし、めっちゃテンション上がってるよ!エルフの女性は、皆、綺麗だね!でも、ナターシャが一番綺麗で、セクシーだよ!」
「ウフフ、エルフの街を気に入ってくれたようで、私も嬉しいよ!この街では、エルフよりも人間の方が、はるかに少ないから、ムーン、目立ってると思うよ。でも、この街のエルフは、人間に対して友好的だし、変に絡まれる心配は無いからね」
「うん。いろんな所に行ってみたいけど、まずは何処に連れて行ってくれるの?」
「いろんな所に連れて行きたいけど、まずは、観光名所に行こっか。街の中心部にある、エルフの英雄の像に案内するよ!」
「オッケー!エルフの英雄の像か~。楽しみ~!」
ナターシャと横並びで談笑しながら歩き、エルフの街の中心部を歩き進む。歩いている間、たくさんのエルフの女性が目に入り、その中で、ナターシャよりも少しだけ見た目とスタイルが劣る位の、綺麗でセクシーなエルフの女性がいた。
―あのエルフの女性、ナターシャ程じゃないけど、綺麗でセクシーだな~―
そんな僕の様子を見て、ナターシャが、少しムッとした表情になった。
「ねぇ、あの綺麗でセクシーなエルフの女性を、じ~っと見てるよね。あの女性の事、気に入ったの?私という女性が目の前にいるのに!」
―ナターシャ、焼きもち妬いたのかな。嬉しい気もするけど、やばい感じだな。何とかしてナターシャをなだめなきゃ!―
「ナターシャという、最高に素晴らしい極上の女性が目の前にいるのに、他の女性に目なんか行かないよ!僕が見てるエルフの女性は、ナターシャだけだよ!」
「そうだよね。ウフフ。ムーン、口が上手いね!でも、すっごく嬉しい!ありがと~!そろそろエルフの英雄の像に着くよ」
「もうすぐエルフの英雄の像を見れるんだね!すっごく楽しみ!」
ナターシャの案内で、どんどん歩き進むと、ふと、ナターシャが足を止めた。
「着いたよ!これが、エルフの英雄の像だよ!迫力あるでしょ?」
「うん!エルフの英雄の像、オーラがあって、今にも動き出しそうだね!このエルフの像のモデルになったエルフって、どんな事をして英雄になったの?」
「それはね、ずっと前、エルフの街が魔物の大群に襲われた事があったんだけど、その時、陣頭指揮を執って魔物の大群を倒したのが、この像のモデルになったエルフの英雄なんだよ。命懸けで戦って、エルフの街を見事に守ったんだけど、そのエルフの英雄、その戦いで受けたダメージが大き過ぎて、死んじゃったんだって。それで、そのエルフの英雄の功績を称えて、この像が作られたの」
「そんな事があったんだね!そのエルフ、自らの命を懸けて、魔物の大群を倒して、自分自身は死んじゃったなんて、凄過ぎるよ!叶わないけど、会ってみたかったな」
「うん。私も会ってみたかったよ。この像を見てると、元気を貰えるんだよね」
「うん!僕も元気を貰えてる感じがするよ。素晴らしい像を見せてくれて、ありがと~!」
「そんなに喜んでくれて、私も嬉しいよ!じゃあ、次の場所に行こっか。いろんなお店があるから、どんどん入って、品物を見て回ろう!」
「うん!どんな物が売られてるのかな~。すっごく楽しみだよ!」
二人で楽しくおしゃべりしながら歩き進み、一軒目の店に入った。エルフの女性用の服や雑貨やアクセサリーが、所狭しと並べられていて、ナターシャのテンションが爆上がり。
「このお店、エルフの女性用の物が、いろいろ売られてるんだよ!買って欲しいなんて思ってないから、心配しないでね」
「そうなんだね。でも、ナターシャに似合いそうな物が、いっぱい売られてるね。僕の世界のお金ならあるのに、この世界のお金を持ってないから、買えないのが残念だよ。このお金、この世界では使えないよね?」
僕が試しに、鞄からお金を取り出し、ナターシャに見せてみると、驚きの反応。
「このお金、使えるよ!この世界では、使えるお金が何種類もあるんだよ」
「このお金、この世界で使えるんだね!びっくりしたよ!ナターシャが欲しい物があるなら、可能な限りで買ってあげるよ。ナターシャに似合いそうな物、いっぱいあるし」
「無理しないでね。もし安い物で私が欲しい物があったら、買ってもらうかもね」
「うん!ナターシャの喜ぶ顔を見たいから、僕が買える物なら、喜んで買ってあげるよ!」
「ウフフ、ありがと~!じゃあ、店の中を見て回ろうね!」
二人で店内を見て回る。ナターシャの美しさを際立たせる服や雑貨やアクセサリーが、たくさん並べられていて、ナターシャの笑顔が弾ける。
「この服、すっごく可愛い~!この鞄、私好みのデザインだ~!この靴、綺麗で履き心地良さそう!このネックレス、大人っぽくて綺麗!あ~!どんどん欲しい物が出て来るよ!」
「あはは。お金に限界があるし、全部買うのは無理だけど、買える物を買ってあげるよ」
「ウフフ、最初は買ってもらうつもりは無かったんだけど、やっぱり買ってもらう事にしたよ。最初に見た、この服を買ってもらっていい?」
「うん!いいよ~!僕が買える金額だし」
「ありがと~!早速、試着室で試着して来るね!」
ナターシャが、その服を持ち、満面の笑顔で試着室に入った。
―ナターシャが、今、買おうとしてる服に着替えてる!今は下着姿かな。想像しちゃうなぁ。見たいなぁ。着替え終わったら、どんな感じで出て来るのかな~。めちゃくちゃ綺麗なんだろうな~。見るのが楽しみ~!早く見たい~!―
僕がそんな事を考えていると、ナターシャが試着室のカーテンを開けて、ニッコリ微笑みながら試着室から出て来た。
「どう?似合う?もしかして、私のあまりの美しさに、見とれちゃってるとか?」
「うん。ナターシャ、めっちゃくちゃ綺麗だよ。あまりにも綺麗で、じ~っと見とれてたよ。喜んでその服を買ってあげるよ!」
「ありがと~!すっごく嬉しい!このまま外に出るよ。もしナンパされたら、守ってね!」
「オッケー!ナターシャ、男の視線を集めそうだね!ナンパされたら、頑張って守るよ!ところで、ふと思ったけど、この世界には、警察官はいるの?」
「警察官って何?警察官って、どんな事をしてる人達なの?興味あるよ~!教えて~!」
「あ~、やっぱり、警察官を知らないんだね~。警察官は、犯罪を犯した人を逮捕したり犯罪が起こらないようにパトロールしたりするんだよ~。ちなみに、犯罪は、人を殺したり、物を盗んだりと、めちゃくちゃ悪い事なんだよ~」
「なるほど。警察官って、正義の味方って感じだね~。この世界では、自分の身は自分で守るっていう考え方が強いから、正義の味方という感じの職業は無いんだよね。でも、城がある街を中心に、騎士がいる街では、騎士が悪人を退治してくれる事があるよ」
「そうなんだ~!自分の身は自分で守るか~。僕、まだまだ弱いし、もっと強くならないと、悪を倒す事なんてできないだろうな~」
「ウフフ。急に強くなれる訳じゃないけど、鍛錬したら、ムーンだって、強くなれるよ。強くなる為には、剣術を習得する方がいいし、魔法も使えるようになる方がいいよ。後、オリジナルの特殊能力も使えるようになれたら、更にいいね!」
「そっか~。強くなる為には、いろいろ大変なんだな~。ナターシャは、もしかして強いの?魔法を使いまくれるとか?」
「あはは。まぁ、私、魔法をある程度使えるし、現時点では、ムーンより強いと思うけど、ムーンが真剣に鍛錬したら、私なんて、すぐに抜かれるよ。ちなみに、私のお父さん、かなり強いよ。私なんて、足元にも及ばないよ」
「え~!これは、ナターシャのお父さんを絶対に怒らせないようにしなきゃいけないな」
「大丈夫だよ!じゃあ、レジに行くよ!この服を着たまま外に行くのが楽しみ~」
二人でレジに行き、僕が服の代金を支払い、店を出ると、すぐにナターシャが満面の笑顔で僕に抱き付いてきた。
「ムーン、この服を買ってくれて、本当にありがと~!とっても可愛い服で、すっごく嬉しいよ!大切に着るよ!」
「うん!そんなに喜んでくれて、僕も嬉しいよ!買って良かったよ!」
ナターシャが身体を僕の身体から少し離し、照れ笑いを浮かべる。
「あまりにも嬉しくて、つい、ムーンに抱き付いちゃった!ごめんね~」
「あはは。謝らないでよ~。ナターシャに抱き付かれて、めっちゃ気持ち良くて、最高に幸せだったよ~!抱き付いてくれて、ありがと~!」
「ウフフ、そう言われると、ムーンに抱き付いて良かった~って思うよ!さぁ、次のお店に行くよ!次は、日用品を売ってるお店だよ!」
「お!日用品か~。この世界で使われてる日用品、興味あるよ~!」
ナターシャに案内され、二人で楽しくおしゃべりしながら歩いていると、ふと、エルフの男性が、ナターシャに声を掛けてきた。
「ねぇ、君、すっごく綺麗でスタイルいいね~!こんな男と歩いてないで、俺と一緒に遊ぼうよ~!いい所に連れて行ってあげるよ~!」
―ナターシャが本当にナンパされた!ナンパからナターシャを守るって約束したし、強そうだけど、この男に立ち向かわないとな―
僕がエルフの男性に向かって強く言おうとした時、ナターシャが、その男性に向かって、少し申し訳なさそうな表情で、愛想笑いを浮かべながら言葉を放った。
「ごめんなさいね~。今、この人と一緒に過ごしていて、あなたと一緒に遊ぶ事ができないの~。じゃあ、私達、もう行くね~」
「ちょっと待って!俺、筋肉質で強いしイケメンだよ!その男と一緒に過ごすよりは、俺と一緒に遊ぶ方が楽しく過ごせるよ!俺と一緒に来てよ!」
「あなた、しつこいよ!一緒に遊べないって言ったでしょ!もう行くね!」
ナターシャの強い言葉を聞き、そのエルフの男性の顔色が変わった。
「おい!綺麗でセクシーだからって、調子に乗ってんじゃないよ!俺と一緒に来いよ!」
そのエルフの男性が、ナターシャの腕を強く掴み、引っ張って行こうとするのを見て、僕がその男の手首を掴み、ナターシャの腕から離そうとした。
「おい!この女性が嫌がってるぞ!その手を離せ!」
僕の言葉を聞き、エルフの男性が鬼の形相になり、僕に対して怒鳴ってきた。
「うるせぇ!弱いくせにゴチャゴチャ言うな!すっこんでろよ!」
その男性がそう言うと、ナターシャから手を離し、僕の胸の辺りを、力一杯、両手で押し、僕が後ろに吹っ飛んだ。すると、その光景を見たナターシャの表情が、一気に険しくなり、その男性に向かって大声で怒鳴った。
「おい!てめぇ、私の大切な人に、何してくれてんだよ!もう許さない!覚悟しろ!」
ナターシャがそう言うと、両手の掌を上に向け、真剣な表情で呪文を唱えると、大きな炎が両手から出て来た。
「どうだ!この炎をお前に向かって放つぞ!何なら、もっと炎を大きくして、思いっ切りお前に食らわせてやろうか?」
「ごめんなさい!もう何もしません!許して下さい!」
「分かったなら、もういい。とっとと失せろ!」
そのエルフの男性が、一目散に向こうの方に走って逃げて行った。
「ムーン、大丈夫?怪我は無かった?」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう。ナターシャ、こんなにも綺麗でセクシーなのに、めっちゃ強くて、ほんとに凄いね!僕なんて、ナターシャの足元にも及ばないよ」
「ウフフ。褒めてくれて、ありがと~!ムーンも、しっかり鍛錬すれば、私なんてすぐに追い抜けるよ!さぁ、邪魔者は消えたし、お目当てのお店に行くよ!」
「うん!行こう!この世界の日用品を見るの、楽しみ~!」
二人で談笑しながら歩き進み、日用品を売っている店に到着。多くの日用品が並べられていて、僕のテンションが爆上がり。
「これがこの世界の日用品か~!僕の世界の日用品と、ほとんど同じだけど、僕の世界には無い日用品もあるよ!」
「この世界の日用品を気に入ってくれたようで、良かった~!今日は、私の家に一緒に泊まるんだから、お泊りセットを買わなきゃね!」
―お~!今日、ナターシャの家に一緒に泊まれるんだな~!もしかして、ナターシャの部屋に一緒に泊まれるのかな。もしそうなら、ナターシャと、あんな事して、こんな事して、イチャイチャする事ができるのかな。めっちゃ楽しみだよ~!―
僕がそんな事を考えながら、ニヤニヤしていると、ナターシャがニッコリ微笑みながら、色っぽい感じで僕に言ってきた。
「ねぇ、ムーン、今、エッチな事を考えてるんでしょ?私の部屋で、私とエッチな事をしたいって思ってるんでしょ?正直に言ってよ~!正直に言ってくれたら、本当に私とエッチな事ができるかもしれないよ!」
―え!ナターシャが本気で言ってるんなら、ナターシャの部屋でエッチな事ができるのかな。どう答えよう。僕の答えによっては、本当にナターシャとエッチな事ができるか、嫌われるか、どっちかのような気がするよ!めっちゃ悩む~!―
僕が考え込んでいると、ナターシャが大笑いをしながら、僕に言ってきた。
「あはははは。本気で悩んでたでしょ?めっちゃ面白いね!冗談だよ~!ムーンが考え込んでる姿、すっごく可愛かったよ!」
「冗談だったんだね。ナターシャがめっちゃ綺麗でセクシーだから、考え込んじゃったよ」
「ちゃんと私の事を褒めてくれるんだね!ありがと~!本当に優しいね!さっきのは冗談だけど、これから先、ムーンと一緒に過ごしてると、いつか、ムーンの事、好きになっちゃうかもしれないよ!」
「お~!ナターシャ、嬉しい事を言ってくれるね!ナターシャが僕の事を好きになってくれるよう、精一杯頑張るよ!」
―あ!僕、無責任な事を言っちゃったかな~。この世界に来る前、咲希とすっごくいい感じになったのに、この世界に来た途端、ナターシャとラブラブな関係になりたいって感情が出て来るなんて、ダメだよな~!もっとしっかりしないと、いつか痛い目に遭うだろうし、僕の世界に戻れなくなっちゃうぞ~!―
「ウフフ、そう言ってくれて、すっごく嬉しいよ~!じゃあ、日用品をしっかり見て回ろうよ!必要な物は、ちゃんと買ってね~」
「うん!分かった。ちゃんと泊まれるように、買わなきゃいけない物をしっかり選別して、必要な物を買うよ~!」
二人で店内を歩き回り、必要な物を探しながら見て回る。歯磨きセットや下着や部屋着等、必要な物をピックアップしている間、ふと、気になる物を発見した。
―ん?この丸いボールのような物は、何に使う為の物なのかな~?妙に気になるな~。ナターシャは、知ってるんだろうな~。ちょっと訊いてみるか~―
「ナターシャ、この丸いボールのような物は、何に使う為の物なの?よく見ると、穴がいくつもあるね。この穴から、何かが出て来るの?」
「フフ。これはね、穴にスプーンやフォークといった食器を入れて、上の部分に付いてるボタンを押すと、ポンと穴から出て来る道具なんだよ~。意外と便利な道具なんだよ~」
「へ~!こんなの、僕の世界では見た事ないな~!もしかして、ナターシャの家にある?」
「エへへ。実は、あるんだな~、これが。最初は、面白半分で買ってみたんだけど、使ってみたら、意外と便利で、今では家族全員、すっかりはまってるよ~!」
「そっか~。ナターシャの家で、その道具を使うの、楽しみだな~!とりあえず、この店では、必要最低限の物だけ買う事にするよ~」
「うん!それでいいと思うよ~。日用品は、こっちの世界もムーンの世界も、そんなに変わらないんだね~。こっちの世界の日用品が、ちゃんとした物なんだな~って分かって、嬉しいし、ほっとした気分だよ~」
僕が必要最低限の物を選び出し、レジに行って代金を支払い、二人で店を出た。
「さ~、日用品も買ったし、買い物はこれ位にして、ちょっとお腹が空いてきたでしょ~?私は、お腹が空いてきたよ~!そろそろランチを食べよう!私が気に入ってるお店に案内するよ~!この世界ならではの料理があって、すっごく美味しいよ~!」
「うん!僕も丁度お腹が空いてきたとこなんだよ~。この世界の料理、どんなのが出て来るのか、想像すると、今からよだれが出て来そうだよ~!ナターシャお勧めの店に行くの、めっちゃ楽しみだな~!」
「ウフフ。そんなにハードルを上げられると、期待に応えられるかどうか、ちょっと心配になってきたなぁ。まぁいいや。行こう!」
二人で楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩いて行くと、ふと、ナターシャが足を止め、満面の笑顔で僕に言ってきた。
「着いたよ~!このお店、お洒落だし、この世界のいろんな料理があって、どれもすっごく美味しいよ~!ムーンのお口に合えばいいけどね~。さぁ、行くよ~!」
「うん!綺麗で雰囲気のいい店だね~!どんな料理が出て来るのか、すっごく楽しみだよ!どんどんお腹が空いてきた~!」
二人で店に入ると、エルフの女性の店員が、満面の笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃいませ~!ようこそ!お席にご案内しますね~!どうぞこちらへ!」
―うわ~!このエルフの女性も、めっちゃ綺麗だな~!ほんと、エルフの女性には、綺麗な人が多いな~!でも、ナターシャが一番綺麗でセクシーだな~!―
二人で席に座ると、いきなりナターシャが、少し怪しげな笑顔を見せてきた。
「ねぇ、ムーン、さっきの女性店員、すっごく綺麗だったね~!じ~っと見てたでしょ~?ムーンは、綺麗な女性を見ると、鼻の下が伸びるよね~」
―うわっ!ナターシャ、ほんとに鋭いな~!ちょっと女性に見とれると、すぐに突いてくるなぁ。ここは、上手く言って、なだめなきゃいけないぞ~!―
「ナターシャ!そりゃ、あの女性店員、綺麗だし、ちょっとは見とれてたけど、勿論、ナターシャが一番綺麗で、セクシーだよ!僕は、ナターシャしか見てないよ!」
「本当にそう思ってるの?私の機嫌を取りたくて、そんな事を言ってるんじゃないの?」
「勿論、本当にそう思ってるよ!ナターシャが一番綺麗で、セクシーだよ!」
「ウフフ、ありがと~!ムーン、ほんとに口が上手いね~!でも、嬉しいよ!じゃあ、何を注文する?このメニューに、いろいろ載ってるよ~!」
「うん!どんな料理が載ってるのかな~。メニューを見るの、ワクワクするよ~!」
メニューを見ると、ハンバーグやカレーライスやパスタ等、僕の世界にもある料理も載っているが、僕の世界には無い料理も載っていて、どんな料理なのか分からないので、ナターシャに訊ねる事にした。
「ナターシャ、ほんとに美味しそうな料理がいっぱい載ってるね~!折角だから、僕の世界には無い料理を食べようと思うんだけど、この青いソースがかかってる肉料理は、どんな料理なの?」
「お!なかなかいいところに目が行ったね~!この料理はね~、熊と牛が混ざったような動物の肉に、青いスライムをドロドロにしたソースをかけた料理なの~。私、食べた事あるけど、すっごく美味しいよ~!」
「そ、そうなんだね。見た目は、変わった感じがするけど、ここは、ナターシャの言葉を信じて、それを注文してみるよ!ナターシャは、何を注文するの?」
「ウフフ。私は、カルボナーラのパスタを注文するよ~!パスタ好きなの~!」
「あ、そうなのか~!ナターシャは、僕の世界にもあるパスタを注文するんだね~。まぁ、確かに美味しいもんな~。何か、僕がこの世界にしかない料理を注文して、ナターシャが僕の世界にもある料理を注文するなんて、面白いね~」
「あはは。まぁ、美味しい料理は、どんな世界にもあるって事だよ~!折角だから、シェアして食べようね~!」
ナターシャがさっきの女性店員を呼び、料理を注文。暫くの間、二人で談笑しながら過ごしていると、店員が満面の笑顔で料理を運んで来た。
「わぁ~、美味しそう~!さぁ、食べよう!いっただっきま~す!」
「うん!何だか、食べるのドキドキするよ~!いただきま~す!」
ナターシャがカルボナーラのパスタを、僕が青いスライムソースの肉料理を、口の中に入れてパクッと食べ、まず、ナターシャが満面の笑顔になる。
「わぁ~!すっごく美味しい~!やっぱり、カルボナーラのパスタは最高~!」
続いて、僕がモグモグと口の中で味わった後、少し間を置いて、ニッコリ笑顔になる。
「うん。この肉料理、美味しいよ!最初は、どうかな~って思ったけど、噛めば噛むほど、深い味が口の中に広がって、美味しい~って思ったよ!」
「ウフフ。そうでしょ~。私も、その肉料理、好きだよ~。私も食べよ~っと。カルボナーラのパスタ、食べてね~!」
「うん!ありがと~!じゃあ、遠慮なく食べるよ~!」
―ん?ちょっと待てよ。こ、これは、ナターシャと、間接キスする事になるぞ!こんなにも超絶に綺麗でセクシーなナターシャと、間接キスする事ができるんだ!よっしゃ~!そう考えると、急にドキドキしてきた~!―
心臓をバクバクさせながら、カルボナーラのパスタをパクッと口に入れると、パスタの旨味と、ナターシャが食べた味が、絶妙のハーモニーを奏で、極上の美味しさが口の中に広がり、一気に満面の笑顔になる。
「お~!カルボナーラのパスタ、めちゃくちゃ美味しい~!パスタの味だけじゃなく、ナターシャが食べた味もして、最高に美味しいよ~!」
「あはは。ムーン、私と間接キスする事ができて、と~っても嬉しそうだね~!この肉料理も、すっごく美味しいよ!私も、ムーンと間接キスする事ができて、すっごく嬉しいよ!美味しい肉料理が、より美味しく感じるよ~!」
「ナターシャも、僕との間接キスを喜んでくれてるんだね~!あ~、最高に幸せ~!」
「ウフフ。ありがと~!私も、すっごく幸せな気分だよ~!」
二人で暫くの間、楽しくおしゃべりしながら、どんどん食べ進め、完食。店を出る事になり、僕がニッコリ笑顔でナターシャに言う。
「あ~!めっちゃ美味しかった~!ここも僕が払うよ~!素晴らしい店に連れて来てくれて、ありがとうね~!」
「ほんとに美味しかったね~!払ってもらっていいの?払ってもらってばっかりで、申し訳ない気持ちになっちゃうよ~」
「いいよいいよ。めっちゃ美味しかったし、最高に楽しかったし、払いたい気分だよ~!」
「うん!分かった!じゃあ、お言葉に甘えるよ~!ありがと~!御馳走様でした~!」
二人でレジに向かい、僕が支払いを済ませた。それ程高くなく、まだ所持金にゆとりがある事に、ほっと一安心。店を出ると、ナターシャがハイテンションで言ってきた。
「さぁ、次は、エルフの街と周りの自然を一望できる、すっごく景色が綺麗な場所に行くよ~!結構高い山を登るからね~!ムーン、体力には自信ある?」
「お~!すっごく景色が綺麗な場所か~!めっちゃ楽しみだけど、体力にはそんなに自信がないから、その場所まで行けるかどうか、不安だな~」
「ウフフ。大丈夫だと思うよ~。私も、そんなに体力ないけど、その場所に行った事あるし、何とかなるもんだよ~!さぁ、行くよ~!」
「うん!そうだね!最高に綺麗な景色を、ナターシャと一緒に見るのを楽しみにしながら、山登りを精一杯頑張るよ~!」
ナターシャに案内されながら、どんどん歩き進む。エルフの街の栄えている中心部を抜け、どんどん歩き進むと、向こうの方に、自然豊かで綺麗な山が見えてきた。
「ムーン!あれが、これから私達が登る山だよ~!結構高い山で、登るのに体力を使うけど、頂上の展望台から見る景色は、本当に絶景だよ!頑張って頂上まで行こうね!」
「うん!分かった!山登りなんて、久し振りだな~。頂上の展望台から見る景色、そんなに綺麗なんだね~!すっごく楽しみだよ~!」
更に歩き進み、お目当ての山の入口に到着。ナターシャが張り切って登山ルートの山道を歩き進み、僕がナターシャの横に並んで歩き進む。最初は、なだらかな上り坂だったが、徐々に傾斜の角度が急になってきて、少しずつ体力が奪われる。
―ナターシャが言った通り、この登山、結構きついな~。段々、疲れてきた~!僕が疲れてきたんだし、ナターシャも疲れてきてるのかな~―
チラッとナターシャの顔を見ると、ナターシャが僕の視線に気付き、僕の顔を見返し、ニッコリと笑ってきた。
「エへへ。山登り、どう?思ったよりもきついでしょ?もう登れないと感じたら、いつでも言ってね。ちなみに、私はまだまだ平気だよ~!」
「え~!ナターシャ、全然平気なんだね~!さすが、体力あるね~!正直に言うと、僕は、段々疲れてきたけど、まだ大丈夫だよ!この山の頂上の展望台で、ナターシャと一緒に綺麗な景色を見る為に、まだまだ頑張るよ~!」
「そっか~。分かった。でも、きつくなったら、ちゃんと言ってね。引き返せない所まで行っちゃったら、もう突き進むしかなくなるよ~!」
「オッケー。ナターシャに迷惑を掛けられないし、自分の限界を感じたら、ちゃんと言うけど、頂上に行けるように、精一杯頑張るよ~!」
二人で更に山を登り進める。ちゃんとした山道がある場所がほとんどだが、時々、山道が無く、獣道のような場所を歩く事があり、僕の体力が更に奪われる。
―うわ~!この山、めっちゃ歩きにくい場所もあるよな~。今までの登山の中で、一番きついかも~。ナターシャは、まだ平気な感じだな~。女性なのに、凄いな~!でも、ナターシャと一緒に、頂上の展望台で綺麗な景色を見たいし、体力が無くなるギリギリまで、必死に頑張るぞ~!―
僕の必死さが表情に出て来たのか、ナターシャが僕の方を向き、心配そうな表情を浮かべながら、僕に言葉を掛けてきた。
「ねぇ、かなりきつそうだけど、大丈夫?そろそろ引き返そっか?山は逃げないし、鍛錬して、体力を付けてから、もう一回登ってもいいんじゃない?」
「いや、まだ大丈夫だよ。今日、ナターシャと一緒に、頂上の展望台で綺麗な景色を見たいんだよ。心配してくれてありがとう。まだ頑張って山登りを続けるよ」
「うん。分かった。でも、ムーンがもう限界だって、私が感じたら、私の判断で引き返して、山を下りるからね」
「オッケー。それでいいよ。ナターシャ、頼りにしてるよ!」
「うん!ねぇ、少しでも、ムーンが楽に登れるように、手を繋いで、私がムーンを引っ張る形で登ろうよ!私の事、頼りにしてるんでしょ?」
「え!ナターシャみたいな超絶セクシー美女が、僕なんかと手を繋いでいいの?何だか、申し訳ない気持ちになっちゃうよ~」
「な~に言ってんのよ~!私が、ムーンと手を繋いで山を登りたいのよ~!さぁ、行くよ!私が引っ張って行ってあげるからね~!」
「う、うん。ナターシャ、ありがとう。すっごく嬉しいよ!」
「ウフフ、私も、ムーンと手を繋げるの、と~っても嬉しいよ!」
ナターシャがそう言うと、僕の手をギュッと握ってきた。僕もナターシャの手を握り返す。ナターシャが歩き始め、僕もナターシャに引っ張られながら歩く。
―ナターシャの手、温かくて柔らかいなぁ。僕なんかが、こんなにもめちゃくちゃ美しくてセクシーな美女と、手を繋いでるなんて、ほんと、夢みたいだな~!あ~、幸せ~!ん?ちょっと待てよ!咲希の事はどうするんだよ!この世界に来る直前、咲希とすっごくいい感じになれたじゃないか!あの時、咲希に好きって言えなかったけど、咲希、たぶん、僕の事、好きなんだと思うし、僕も、咲希の事が好きだ!確かに、ナターシャは、めちゃくちゃ綺麗でセクシーだけど、さっき出会ったばっかりで、ナターシャが僕の事を好きかどうかなんて、分からないし、僕だって、ナターシャの事、まだ好きって訳じゃない。でも、間違いなく、僕はナターシャの事を、好きになりかけてる。深みにはまる前に、自分自身に歯止めをかける方がいいんじゃないか?―
僕がそんな事を考えていると、ナターシャが少し不思議そうに僕の顔を覗き込み、ニッコリと笑顔を見せてきた。
「ウフフ、何か考え事をしてるよね~?もしかして、私の事、好きなのかどうか、考えてる?まさか、他の女性と天秤にかけてるとか?」
―うわっ!ナターシャ、めっちゃ鋭いな~!まるで、僕の考えを見透かしてるような感じだな~。とりあえず、咲希の事は伏せといて、ナターシャの事だけを考えてるという事にしておくか。それがいいよな~―
「ナターシャ!ナターシャと他の女性を天秤にかけるなんて、する訳ないだろ!ナターシャは、めちゃくちゃ綺麗でスタイルが良くて、本当に素敵な素晴らしい女性だよ!でも、僕なんかが、ナターシャみたいな最高の女性と釣り合う訳がないし、このままナターシャの事を好きになっちゃっていいのかな~なんて考えてたんだよ~」
「え~!そうだったんだね~。ムーン、嬉しい事を言ってくれるね~!いろいろ考えずに、私の事、好きになっていいんだよ~!私と釣り合わないなんて、とんでもない!私、最高の女性なんて事ないからね。私だって、ムーンの事、好きなのかもしれないよ~!」
「お~!ナターシャが僕の事、好きなのかもしれないって、夢みたいだよ~!すっごく嬉しいよ!ありがと~!ナターシャは、僕にとって、最高の女性だよ!あんまりいろんな事を考えずに、素直にナターシャの事を考えるようにするよ!」
「うん!それでいいと思うよ!私も、ムーンの事、ちゃんと考えてるからね!さぁ、頂上を目指して、頑張ろうね~!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら、どんどん山を登って行く。険しい場所や、細い川のように水が流れている場所や、崖のような場所もあるが、ナターシャに助けてもらいながら、二人で何とか乗り越えて行き、更に歩き進むと、ふと、ナターシャが、満面の笑顔になって僕に言ってきた。
「やっと頂上が見えてきたよ~!あと少しだよ!ムーン、何とか頑張ってね~!」
「お~!あれが頂上か~!よ~し!最後の力を振り絞って、絶対に頂上に行くよ~!」
更に二人でどんどんテンションが上がりながら歩き進み、漸く頂上に着いた。
「着いたよ~!ここが、目指してた頂上だよ~!あそこの展望台に行って、一緒に絶景を見るよ~!見るの、久し振りだし、すっごく楽しみだよ~!」
「やった~!やっと着いた~!もう精魂尽き果てたって感じだよ~!でも、必死に頑張って良かった~!早く展望台に行こう!」
二人で小走りで展望台に行き、手を繋ぎながら景色を見ると、目の前に壮大で綺麗な景色が広がっていて、僕もナターシャも、テンションが爆上がり。
「お~!ナターシャ!ほんとにすっごく綺麗な景色だね~!エルフの街も見えるし、自然豊かな風景も見えるし、綺麗な川も見えるし、最高だよ~!」
「うん!久し振りに見たけど、やっぱり、めちゃくちゃ綺麗だな~!ムーンも気に入ってくれて、良かったよ~!ムーンと一緒に、こんなに綺麗な景色を見れて、幸せだよ~!」
「うん!連れて来てくれて、ありがと~!僕もすっごく幸せだよ~!」
「ウフフ。ほんとに来て良かったよ~!いろんな方向の景色を見よう!」
二人で暫くの間、展望台から見える絶景を堪能し、少し移動して、さっきとは違う方向の景色を見る。やはり最高の絶景。何度も移動して絶景を堪能し、元の場所に戻って来た。
「ナターシャ!最高の景色を一緒に見れて、最高に幸せだよ~!もう暫くの間、景色を見てから、山を下りよっか」
「うん!私も、ムーンと一緒にこの景色を見れて、最高に幸せだよ!いつまでも一緒に、この景色を見ていたい気分だけど、さすがにもう暫く見てから、山を下りなきゃね~」
二人で手を繋ぎながら景色を見ていると、ふと、ナターシャが満面の笑顔になり、弾んだ声で僕に言ってきた。
「ねぇ!こんなに綺麗な景色を見てるんだし、ムーンが持ってるスマホで、一緒に写真を撮ろうよ!すっごくいい写真が撮れそうだよ~!」
「お~!いいねぇ!撮ろう!僕の方から言うべきだったね!言ってくれてありがと~!」
二人でピッタリと身体をくっつけ、顔を寄せ合うと、ナターシャの大きなおっぱいが、僕の身体にムニュッと当たり、極上の気持ち良さを味わう。
―おぉ~!一緒に写真を撮る時は、ナターシャのでっかいおっぱいが僕の身体に当たって、めちゃくちゃ気持ちいい~!最高~!幸せ~!―
僕がニヤニヤしながら最高の笑顔になり、僕の様子を見て、ナターシャがクスクスと笑い、ナターシャも最高の笑顔になる。
僕がスマホを右手に持ち、腕をぐ~っと伸ばし、僕とナターシャと景色が綺麗に入るよう、角度を調整する。
「う~ん、僕とナターシャと景色が上手く入るように撮るの、めっちゃ難しいな~!ちょっと右に傾けるか~。お、さっきよりは良くなったぞ!もうちょっと下に傾けてみよう。あ、逆に入らなくなった~。じゃあ、上に傾けるか~。お、これはいい感じだ~!よし!撮るよ~!はい、チーズ!」
僕がシャッターボタンをタップし、カシャッとシャッター音が鳴った。二人で撮れた写真を確認し、ニッコニコの笑顔になる。
「うん!我ながら、いい写真が撮れたよ~!僕もナターシャも、最高の笑顔で写ってるし、綺麗な景色もちゃんと写ってるし、最高の写真だよ~!」
「ほんとにいい写真が撮れたね~!特に、私のおっぱいが当たってニヤニヤしてるムーンの笑顔が、すっごくいいよ~!景色も最高に綺麗~!」
「あはは。ばれてたんだね~。ナターシャの大きなおっぱいが僕の身体に当たって、すっごく気持ち良くて、最高の笑顔になったんだよ~」
再び二人で景色を見る。どんどん時間が経ち、そろそろ山を下りようかという時、ふと、僕がナターシャの事を考え始めた。
―ナターシャは、すっごく綺麗でセクシーなエルフの女性で、一緒に過ごせて、僕は本当に幸せ者だな~。こんなに綺麗な景色を一緒に見て、どんどんナターシャの事が好きになっていくのが分かる。咲希には申し訳ないけど、僕、ナターシャの事が好きだ!でも、咲希の事も好きだ!う~!僕はどうしたらいいんだ~!―
そんな僕の様子を、ナターシャが優しく微笑みながら見て、僕に言葉を掛けてきた。
「ねぇ、ムーン、今、私の事を考えてるでしょ?私も、ムーンの事を考えてるよ。もう言っちゃうけど、私、ムーンの事が好き!大好き!愛してるよ!」
―え!ナターシャが、僕の事を好きだなんて、びっくりだ~!めっちゃ嬉しいよ~!うわ~!心臓がバクバクしてる!どうしよう。どう答えよう。僕も、ナターシャの事が好きだけど、咲希の事も好きだ!こんな気持ちのまま、ナターシャに返事していいのかな。そもそも、何て返事すればいいのか、分からないよ~!でも、何か言わないと、ナターシャに失礼だよな~。う~!どうしたらいいんだ~!―
僕がいろいろな事を考えていると、ナターシャが少し微笑んで、積極的に目を閉じ、少し口を開けて少し上を向いた。
―こ、これは!キスのシチュエーションだ!どうしよう!このチャンスを逃したら、二度とナターシャとキスする事ができないかもしれないぞ!でも、ナターシャとキスしたら、咲希に申し訳ないし、どうしたらいいんだ~!ほとんど時間が無いぞ!決断しなきゃいけない!う~ん。でも、よく考えたら、咲希に好きって言われてないし、咲希が僕の事、好きかどうか、はっきりとは分からない。ナターシャは、僕の事が好きって言ってくれた。やっぱり、ここは、キスしていいよな~!そうだよな!―
僕がどんどん唇をナターシャの唇に近付ける。ナターシャが、僕の唇がナターシャの唇に重ね合わさるのを待つ。更に僕が唇をナターシャの唇に近付け、とうとう、僕の唇がナターシャの唇に重ね合わさった。
暫くの間、唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、二人で見つめ合った後、ナターシャが僕に優しく微笑んできて、少し恥ずかしそうに言ってきた。
「ウフ。キス、しちゃったね。私は、ムーンの事、大好きだし、ムーンとキスする事ができて、すっごく嬉しいけど、ムーンはどうだった?雰囲気に流されちゃって、後悔してるなんて事、あるかな?」
「ナターシャ!そんな訳ないだろ!僕も、ナターシャの事、大好きだし、ナターシャとキスする事ができて、すっごく嬉しいよ!ナターシャ、愛してるよ!」
「わぁ~!やっとムーンが、私の事、好きって言ってくれた~!すっごく嬉しい~!これで私達、恋人同士って事で、いいのかな?」
―うわっ!ナターシャ、もう僕と恋人同士って思ってるのか~!ナターシャと恋人同士になって、いいのかな~?咲希の事は、どうしよう。う~ん。え~い!もうナターシャとキスしちゃったんだ~!咲希が僕の事、好きかどうかなんて、分からないし、ナターシャと恋人同士になっちゃえ~!こんなにめちゃくちゃ綺麗でセクシーなエルフの女性であるナターシャと、恋人同士になれるんだぞ~!僕は世界一の幸せ者だよ~!―
「うん!僕とナターシャ、もう恋人同士だよ!ナターシャ、愛してるよ!」
「やった~!すっごく嬉しい~!ほんとにこの展望台に来て良かった~!愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合い、濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、ナターシャがニッコリ微笑み、優しい視線を僕に浴びせながら言ってきた。
「ウフ。じゃあ、そろそろ山を下りよっか。次は、ムーンが鍛錬して強くなる上で、必要な装備を見てみようよ。剣も必要だし、戦闘用の服も欲しいよね」
「お~!いよいよ、戦う為の装備を買うのか~。生まれて初めての経験だよ~!今からドキドキするし、ワクワクもするよ~!」
二人で手を繋いで、どんどん山を下りて行き、更にどんどん歩き進み、エルフの街の中心部に到着。ナターシャに引っ張られながら歩いて行くと、ふと、ナターシャが足を止め、満面の笑顔で僕に言ってきた。
「着いたよ~!このお店で、ムーンにぴったりの剣と戦闘用の服を買うよ~!私も、気に入った物があったら買うかもね~」
「うん!いよいよ、戦う準備を整えるのか~。何だか、緊張してきたな~。ナターシャは、買うとしたら、どんなのを買うつもりなの?」
「そうだな~。杖とか、強度の高い服とかだね~。どうせなら、お洒落な服がいいな~」
「なるほど。そういう物があるんだね~。あ~、ドキドキしてきた~」
二人で店に入ると、中では様々な装備品が売られていて、僕が店内をキョロキョロしながら見ていると、ナターシャが僕の様子を見て、ニッコリと笑顔を見せてきた。
「あはは。ムーン、いかにも初めて来た~って感じで、初々しくて、可愛いね!まずは、剣を見ようよ!あっちにいっぱいあるよ!」
「うん!ほんと、初めて見る物ばかりで、目移りしまくりだよ~!」
ナターシャに手を引っ張られ、剣が売られているコーナーに行くと、切れ味の良さそうな剣がズラリと並べられていて、中には見た目がかっこいい剣もあり、初めて見る剣に、僕がじ~っと見入ってしまう。
「ウフフ。ムーン、剣に見入っちゃってるね~。見てるだけじゃなく、気になる剣があったら、手に取って、あっちのスペースで、振らせてもらうのがいいよ~」
「うん。そうだね。確かに、見てるだけじゃなくて、実際に振らないと、どんな剣なのか分からないもんね~。どれかを選んで、振ってみるよ」
ナターシャに言われ、僕が剣を物色し、気になる剣を持ってみる。やはり、しっくり来るのは、軽くて切れ味が良さそうな剣。一番気になる剣を持ち、店員に言って、広いスペースに行き、その剣を振ってみると、ビュッと音が鳴り、一瞬、茫然となる。
「ナターシャ!初めて剣を振ったけど、めっちゃ驚いたよ~!凄い音が鳴るんだね~!この剣で斬られたら、ひとたまりも無いね~!」
「ムーン!すっごく筋がいいよ!初めて剣を振って、こんな音を鳴らせるの、凄いよ!鍛錬したら、物凄い剣士になれるよ!」
「え~!ナターシャ、嬉しいけど、褒め過ぎだよ~!ありがとうね。じゃあ、この剣、僕に合ってる感じがするし、この剣を買う事にするよ~」
「うん!その剣、見た目もかっこいいし、いいと思うよ!ムーンがどんどん強くなっていきそうで、今からすっごく楽しみだよ~!」
次に、戦闘用の服を見て回る。普通の服よりも強度が高く、金属製のパーツが付いている服もある。見た目がかっこいい服がほとんどで、どれを買うか迷う。
「う~ん。どの服も良く見えて、どれを買えばいいのか迷うなぁ。ナターシャは、どの服がいいと思う?ナターシャがいいと思う服を買おうかな~」
「お!私が選んでいいんだね~!責任重大だね~!う~ん、ムーンにはどの服がいいのかな~。折角だから、見た目がかっこいい服の方がいいよね~。強度やパーツも重要だし、迷うなぁ。あ、この服なんていいんじゃない?見た目もかっこいいし、強度も強いし、いろんなパーツも付いてるし、ムーンに似合うと思うよ~!」
「うん!ありがと~!ナターシャに言われると、本当にこの服が一番僕にとっていい服だと思えてきたよ。早速、試着してみるよ~!」
僕がその服を持って、試着室に入り、試着してから試着室を出ると、ナターシャが僕の姿を見て、満面の笑顔になった。
「お~!ムーン、その服すっごく似合ってるよ~!めちゃくちゃかっこいいよ!とっても強く見えるよ!もうその服を買うという事で、決まりだね~!」
「うん!ありがと~!ナターシャにそう言ってもらえて、本当に強くなったような気がしてきたよ。この服と剣に見合えるようになる為に、頑張って強くなるよ~!」
試着室に戻り、元々着ていた服に着替え、ナターシャのところに行くと、ナターシャがニッコリ微笑みながら、僕を迎えてくれた。
「ムーンが買う物が決まった事だし、次は、私が買う物を見て回るよ~!ムーンが買う物を見てると、私も欲しくなっちゃった~!」
「あはは。そうだね。ナターシャが欲しい物も、この店にありそうだよね。僕も一緒に見て回るよ~。ナターシャに合う物が、いろいろありそうだね~」
ナターシャに手を引っ張られ、たくさんの杖が置かれているコーナーに行くと、ナターシャの目がキラリと輝いた。
「お~!杖がいっぱいある~!こんなにあると、私にピッタリの杖がありそう!しっかり見てみるよ。軽くて強度が強くてお洒落な杖がいいなぁ!」
「うん!そうだね。ナターシャなら、どんな杖でも似合いそうだけど、その中でも、ナターシャに似合う杖を一緒に探すよ!」
ナターシャが真剣な表情で、杖を物色する。いくつかの杖を手に取り、ゆっくりと振っている姿に、思わず見とれてしまう。
―ナターシャ、笑顔もいいけど、真剣な表情もいいなぁ。ほんと、僕は幸せ者だな~―
そんな僕の様子を見て、ナターシャがニコニコ笑いながら言ってきた。
「ウフフ。私が真剣に杖を選んでる姿に見とれてるんでしょ~?ムーン、分かり易いね」
「あはは。ナターシャは、何でもお見通しだね~。その通りだよ~!」
「そっか~。ムーンは正直だね~。この杖はどうかな?軽くて丈夫でお洒落だし」
「お、いいと思うよ。ナターシャにピッタリだよ!かっこいいし綺麗だし、最高だよ!」
「ウフ。ありがと~!すっごく嬉しい~!じゃあ、次は戦闘用の服を選ぶね~」
二人で戦闘用の服のコーナーに行き、強度が高くてお洒落な服を選び、ナターシャが試着した姿を見て、またナターシャに見とれてしまい、ナターシャがニッコリと微笑む。ナターシャが元々着ていた服に着替え、満面の笑顔で僕に言ってきた。
「じゃあ、レジに行くよ~!お金をいっぱい出してもらったし、ここの代金は、私が払ってあげるよ~!ムーンが強くなるのを願いながらね」
「え~!そんな~!全部出してもらうなんて、申し訳ないよ~。僕が全部払うよ~!」
「ウフフ。そう言うと思ったよ。じゃあ、お互いの分を払い合うって事にしようよ。お互いの物をプレゼントし合うっていう事で、いいんじゃない?」
「お!それいいね!そうしよう!ナターシャからプレゼントされるの、めっちゃ嬉しいよ」
二人でレジに行き、お互いの買う物の代金を支払い、店を出ると、ナターシャが大喜びで、僕に抱き付いてきた。
「ムーン、ありがと~!ムーンと恋人同士になれて、すっごく幸せだよ~!」
「うん!ナターシャ、ありがと~!この剣と服、大切に使うよ~!」
人目に付かない場所に移動し、濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、ナターシャが天使のように微笑む。
「じゃあ、いよいよ私の家に行くよ!もう私達、恋人同士なんだし、家族の皆に言っちゃうからね。お父さんの反応が気になるけど、ムーンの事、気に入ってくれると思うよ」
「うん!いよいよナターシャの家に行くのか~。心臓がバクバクしてきたよ~」
ナターシャが僕の手をギュッと握り、僕もナターシャの手を握り返す。そのまま手を繋いでどんどん歩き進む。周りを見回すと、エルフの女性と人間の男性のカップルが何組も目に入り、改めてエルフの女性の魅力を感じる。更に楽しくおしゃべりしながら歩き進むと、ナターシャがスピードを緩めて足を止めた。
「着いたよ~!ここが、私が住んでる家だよ!家族皆いると思うけど、緊張しないでね」
「とうとうナターシャの家に着いたんだね。緊張しないようにしても、ドキドキするよ~」
「ウフフ、まぁ、仕方がないね。そりゃ緊張するよね。さぁ、私の家に入るよ!」
ナターシャが鍵を使ってドアを開錠し、二人でナターシャの家に入ると、早速、ナターシャよりも身長が少し大きい、綺麗なエルフの女性が迎えてくれた。
「ナターシャ、おかえり~!あら?人間の男性を連れて来たのね。こんな事、初めてだね」
「お母さん、ただいま~!そうなの!この人、今日出来たばかりの、私の彼氏なの~!この人、人間の世界からこの世界に迷い込んで来たんだって~」
「お母様、初めまして。先程、紹介された通り、今日、ナターシャさんとお付き合いさせて頂く事になりました。よろしくお願いします」
僕が名前を名乗った直後、ナターシャが満面の笑顔でナターシャの母親に言葉を掛けた。
「お母さん、この人、満月のように綺麗な顔立ちをしてるから、私、この人の事をムーンって呼んでるの。だから、お母さんも、ムーンって呼んでよ」
「そ、そうなの!いきなりで、びっくりし過ぎて、少しの間、固まっちゃったわ。ナターシャに彼氏が出来たんだね~!しかも、エルフじゃなくて、人間の彼氏なんだね~!ムーンさん、ナターシャの事、よろしくね!この子、見た目は綺麗だけど、中身はガサツで、短気で怒りっぽいから、覚悟しといてね~」
「ちょ、ちょっと、お母さん!変な事を言わないでよ!私、めっちゃ優しいんだからね!」
「あはは。お母様、大丈夫ですよ。僕、ナターシャの全てを愛してますし、ナターシャが怒っても、僕はニコニコと笑って接しますよ」
「ウフフ、何だか、しっかりしてる人なんだね~。さすが、ナターシャが選んだ人だね。じゃあ、早く上がってよ。どうぞごゆっくり~」
「はい。ありがとうございます。お邪魔させて頂きます」
僕とナターシャが、ナターシャの家に上がり、少し歩いたところで、ナターシャがニッコリ微笑みながら、小声で僕に言ってきた。
「ムーン、良かったね!お母さんに気に入られたよ!まずは、第一関門突破だね!後は、お父さんに気に入られるだけだけど、そっちの方がはるかに難しいからね」
「うん。分かった。まずはお母さんに気に入られて、ほっとしたよ。お父さんに気に入られるのは、本当に難しそうだけど、何とか頑張ってみるよ」
「うん。その意気だよ!じゃあ、私の部屋に行って、暫く一緒にゆっくり過ごそうね!」
―お~!ナターシャの部屋に入れるんだ~!どんな部屋なんだろうな~。めっちゃ綺麗に片付けられてそうだな~。いい匂いがするんだろうな~。楽しみだな~!―
そんな事を考えていた、その時、前からエルフの女性が歩いて来た。
「お~、お姉ちゃん、おかえり~。その人間の男の人、もしかして、お姉ちゃんの彼氏?」
「レミリア、ただいま~。そうなの~。今日出来た、私の彼氏なの~」
「おめでと~!お姉ちゃんに彼氏が出来るなんてね~!捨てられないように、大切にね~」
「ありがと~!あったりまえだよ~!大好きな彼氏、大切にするに決まってるよ~!」
「お姉ちゃんの彼氏さん、私、レミリアっていいます。よろしくお願いします。お姉ちゃん、いろいろ面倒臭いエルフですけど、お姉ちゃんをよろしくお願いしますね~」
「面倒臭いなんてとんでもない!ナターシャさんは、素晴らしい女性ですよ!妹さんなんですね。こちらこそよろしくお願いします」
「も~!レミリア、変な事を言わないでよ~。私、面倒臭いエルフじゃないよ!私の彼氏、顔が満月みたいに綺麗だから、ムーンって呼んでるの」
「へ~!確かに綺麗な顔をしてるね~。私も、ムーンさんって呼ぶ事にするよ~」
レミリアがそう言うと、そのままの方向に歩いて行った。
「ナターシャ、妹さん、ナターシャ程じゃないけど、綺麗だね~。お母さんも綺麗だし、美女三人で、華やかな家族だね~!」
「ウフ、私が一番綺麗って言ってくれて、ありがと~!ムーンが妹のレミリアにも気に入られて、嬉しいよ!さぁ、私の部屋に行くよ~!」
「うん!行こう!ナターシャの部屋に入れるなんて、飛び上がる位、嬉しいよ~!」
更に二人で歩き進み、ナターシャがドアを開け、二人でナターシャの部屋に入った。中は僕の予想以上に、綺麗に片付けられていて、良い香りが漂い、ベッドが一つある。
―お~!これがナターシャの部屋か~!さすが、めっちゃ綺麗なナターシャなだけあって、すっごく綺麗な部屋だ~!ベッドが一つある!あ~!ドキドキしてきた~!―
「ナターシャ!めっちゃ綺麗な部屋だね~!いかにも女性の部屋~って感じで、ドキドキするよ~!僕は幸せ者だよ~!」
「ウフフ、部屋を褒めてくれて、ありがと~!掃除や整理整頓をしょっちゅうしてるよ!ところで、さっきベッドをじ~っと見てたね~。私とベッドでイチャイチャしたい?」
「え!ベッドを見ちゃってたかな~。正直に言うと、ちょっと想像しちゃったよ~」
「ウフ、いいよ~。ムーンは気持ちに正直でいいね~!じゃあ、ベッドでイチャイチャしちゃおっか~。私も、興味あるし」
「え!いいの?今日会ったばっかりだよ。大丈夫?後悔しない?」
「うん!大丈夫だよ!ムーンの事、愛してるし!」
「ナターシャ!ありがとう!僕も愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
唇をそ~っと離し、ナターシャが色っぽい表情になり、服を脱ぎ始めた。
―おぉ~!ナターシャが、服を脱ぎ始めた~!これは、完全に愛し合うシチュエーションだな~!今日会ったばかりのナターシャと、恋人同士になれたとはいえ、このまま愛し合っちゃって、いいのかな~。え~い!何を迷ってるんだ~!恋人同士なんだし、いいに決まってるだろ~!よ~し!いくぞ~!―
僕がそう考え、ナターシャと愛し合う体勢に入ろうとした、その時、突然、頭の中に、笑顔で微笑んでいる咲希の姿が思い浮かんだ。
―さ、咲希!そうだ!僕はこの世界に来る直前、咲希といい感じになったんだ!僕は咲希の事も好きだ!咲希だって、僕の事、たぶん好きだ!今の気持ちのまま、ナターシャと愛し合う事はできない!ナターシャに対しても失礼だよ!―
僕がそう考えると、ナターシャの手をそっと握り、ナターシャが服を脱ぐのを止めた。
「ナターシャ!まだ僕達、お互いの事をよく知らないし、このまま勢いで愛し合うのって、どうなのかなと思うよ。もっとお互いの事をよく知って、段階を踏んでから、いっぱい愛し合いまくろうよ」
「え・・・ムーン、それ、本心で言ってるの?この流れで、私と愛し合いたくないの?」
「勿論、ナターシャと愛し合いたいよ。でも、やっぱり、ナターシャには、もっと僕の事を知って欲しいし、僕も、ナターシャの事をもっと知りたい。それから、段階を踏んで、いっぱい愛し合いまくりたいんだよ」
「そ、そっか。分かった。ムーン、思ったよりも誠実なんだね。私が焦ってたのかもしれないね。何だか、益々、ムーンの事を好きになっちゃった!ムーン、愛してるよ!」
「うん!分かってくれてありがとう!ナターシャ、愛してるよ!」
「は~い!でも、気になる事があるの。ムーン、他に誰か好きな女性がいるんじゃない?キスした時もそうだし、今回もそうだけど、ムーンの心の中に、誰か他の女性がいるような気がしたの。お願い!正直に言って!」
―うわっ!さすがナターシャ!ばれてたんだな。鋭過ぎる~!ここまで言われたんだし、ここは、正直に咲希の事を言うしかないな~―
「ナターシャ、黙っていてごめん!実は、この世界に来る直前、幼馴染の女性と、いい感じになったんだよ。その人の事も好きっていう感情があって、ナターシャとキスしたり、愛し合おうとしたりした時に、頭の中に思い浮かんで来たんだよ。キスはそのまま出来たけど、愛し合うのは、どうしてもその人の事が気になって、出来なかった。でも、僕はナターシャを愛してるし、早く気持ちの整理を付けて、ナターシャだけを愛して、ナターシャと愛し合えるよう、精一杯頑張るよ!」
「うん。分かった。他に好きな女性がいるって聞いて、ショックだったけど、そりゃ、私と出会うずっと前から、ムーンと仲良く過ごしてきた人なんだし、頭の中に思い浮かんで来るのは、今は仕方ない事だと思う。でも、これから私といっぱい一緒に過ごして、その人の事が思い浮かんで来ないように、私も頑張るよ!愛してるよ!」
「ナターシャ、ありがとう。ナターシャと出会えて、恋人同士になれて、本当に良かったよ!愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、見つめ合いながら微笑み合う。
「晩御飯まで時間あるし、部屋でイチャイチャして過ごそうよ。お母さんの手料理、すっごく美味しいから、期待していてね~!」
「うん!そうだね。ナターシャとイチャイチャして過ごすのも楽しみだし、お母さんの手料理を食べるのも楽しみだよ~!」
二人で楽しくおしゃべりしたり、チュッチュッとキスしたり、ベッドにごろ~んと寝転がったりして、時間が経つのを忘れてイチャイチャして過ごしていると、ナターシャの母親の大きな声が聞こえた。
「皆~!晩御飯が出来たよ~!冷めないうちに、早く来て食べてね~!」
「は~い!すぐに行くよ~!」
ナターシャが答え、二人でリビングに行くと、テーブルには豪華な料理が並べられていて、見ているだけでよだれが出て来そうになる。
「お母さん!今日は一段と美味しそうな晩御飯だね!私の好きな物がいっぱいあるよ!」
「お母様!この晩御飯、めっちゃ美味しそうです!食べるのがすっごく楽しみです!」
「ウフフ、ありがと~!ナターシャもムーンさんも、褒め過ぎだけど、嬉しいよ!」
僕とナターシャが席に座ると、レミリアが満面の笑顔でリビングに入って来た。
「お母さん!すっごく美味しそう!今日は、お姉ちゃんの好きな物が多いね!」
「ウフフ、今日は、ナターシャが彼氏を連れて来たから、ナターシャの好物を多めに作ったんだよ~。ムーンさんも、喜んでくれるかな~って思って」
「お母さん、私とムーンの事を考えてくれて、ありがと~!すっごく嬉しいよ!」
「お母様!ありがとうございます。ナターシャの好物は、僕の好物も同然です!」
ナターシャの母親とレミリアも席に座った、その時、男性の大きな声が聞こえた。
「お~い!今帰ったぞ~!腹減った~!」
「は~い。おかえり~。今そっちに行くよ~」
ナターシャの母親が、玄関に向かって行き、少し時間が経ってから、エルフの男性と一緒に戻って来た。
「お!今日は一段と豪勢な晩御飯だな~!ん?そこにいる人間の男は、誰なんだ?」
「ウフフ、この人はね~、ナターシャの彼氏で、ムーンって呼ばれてる人なのよ。人間の世界からこの世界に迷い込んで来たんだって~」
「はぁ?ナターシャの彼氏だと?初耳だぞ~!説明しろ~!」
エルフの男性の言葉を聞き、ナターシャがやれやれといった表情で言葉を返す。
「お父さん!そりゃそうだよ!私、ムーンとは今日会ったばっかりで、今日付き合う事になったんだよ。会ったその日に意気投合して付き合う事もあるんだよ~!」
「お父様!初めまして!今日ナターシャさんと付き合う事になりました、本名は別にありますけど、ムーンといいます。よろしくお願いします」
「い、いきなりだな。急にナターシャの彼氏って、おい、ナターシャ!お前、会ったその日に付き合う事にしたって、いくら何でも、早過ぎるだろ!もっとしっかり考えろよ!」
「お父さん!ちゃんと考えたよ!少しの時間だけど、ムーンと一緒に過ごしてるうちに、ムーンの良さがどんどん分かって、一気にムーンの事を好きになっちゃったんだよ!」
「そ、そんな事があるのか!信じらんねぇな。おい、ムーンとやら。お前も、会ったその日に、ナターシャの良さがどんどん分かって、ナターシャの事を好きになったのか?」
「そうです!ナターシャさん、女性として、あまりにも素晴らし過ぎて、一気に好きになっちゃいました。こんなにも素敵な女性を育てたなんて、お父様もお母様も、凄いです!」
「お前、なかなかいい事を言ってくれるなぁ。そうなんだよ。ナターシャは本当に素敵な女性なんだよ。お前なんかには、勿体ないよ。でも、本当に愛してるんなら、仕方ないなぁ。ナターシャを悲しませたら、俺がお前を地獄に叩き落としてやるからな!これからは、ムーンと呼ばせてもらうぞ!」
「は、はい!分かりました。必ず、ナターシャさんを幸せにします!」
「お父さん!ありがとう!正直、お父さんに認めてもらうのが、一番大変だろうなって思ってたんだよ。すっごく嬉しいよ~!」
「は~い。話が上手くまとまった事だし、皆で晩御飯を食べよう!私が腕によりをかけて作った晩御飯を、じっくり味わってね~!」
「うん!お母さん、ありがと~!いただきま~す!」
ナターシャの掛け声により、皆で晩御飯を食べ始めた。ナターシャが、大好物の、魚を中心とした海の幸たっぷりのシーフードサラダを食べ、満面の笑顔になる。
「お母さん、すっごく美味しいよ~!お母さんが作るシーフードサラダが一番だよ~!」
「お母様!本当に美味しいです!海の幸がいっぱい詰まっていて、最高ですよ!」
「ウフフ、ありがとうね。ムーンさん、褒め上手ね。他の料理もどんどん食べてね~」
次に僕が気になったのは、見た目が鶏の唐揚げの料理。興味津々で、口に入れる。
「お母様!この料理、僕の世界の鶏の唐揚げに似てますけど、味はちょっと違います。めっちゃ美味しいです!これは、どんな料理なんですか?」
「ウフフ、ありがとうね。これはね、イエローバードっていう、この世界でいっぱい飛び回ってる鳥を唐揚げにした料理なの。ムーンさんの世界の鶏の唐揚げというのは、どんな鳥を唐揚げにするの?」
「そうなんですね~!イエローバードですか~!見てみたいです。僕の世界では、ニワトリっていう鳥を唐揚げにしたのを、鶏の唐揚げっていうんですよ」
「へ~!その料理も、美味しいんだろうね~。まぁ、この唐揚げも気に入ってくれたようだし、他の料理も含めて、どんどん食べてね~!」
「はい!ありがとうございます!めっちゃ美味しいので、どんどん食べさせて頂きます」
皆でどんどん食べ進める。どの料理も美味しく、ワイワイと会話が弾む。更に食べ進めていると、ふと、ナターシャの父親が僕に言ってきた。
「ところで、ムーン。元の世界に戻る為の方法は分かってるのか?いずれは、元の世界に戻るつもりなんだろう?それとも、まさか、この世界にずっといるつもりなのか?」
「元の世界に戻る為には、悪を倒し、意を決する必要があります。悪というのが、どんな悪なのか、意を決するというのがどういう事なのか、まだ分かりませんが、何とかして、突き止めようと思ってます。ただ、僕にとってかけがえのない、ナターシャさんと出会えて、恋人同士になれましたし、この世界にずっといたいという気持ちも、徐々に芽生えてきました。僕なりにしっかり考えて、いい結論を導き出せればいいと思ってます。いい結論の中には、勿論、ナターシャさんを幸せにするという事も含まれてます」
「お!ムーン、お前、見た目よりも、しっかりしてるな~!見直したぞ!どうするのかを決めるのは、勿論お前だけど、ナターシャを悲しませたら、タダじゃおかないぞ!」
「ムーン!実は私も、ムーンは私を置いて元の世界に戻っちゃうのかなって、気になってたんだけど、さっきの話を聞いて、私の事をちゃんと考えてくれてるのが分かって、嬉しかったよ。一緒に幸せになろうね!」
「うん!ありがと~!必ずナターシャを幸せにするし、僕も一緒に幸せになるよ!」
ナターシャと僕の言葉を聞いた後、ナターシャの父親が口を開いた。
「悪を倒すという言葉の、悪というのは、おそらく、魔王メタコスの事だろうな。この世界を支配しようとしてる、悪の根源と言われる、最強の悪魔だよ。こいつを倒すのは、並大抵の事ではないぞ。ムーン、お前に、その覚悟はあるか?」
「はい!あります!魔王にこの世界を支配されないよう、僕が魔王を倒します!その為に、暫くの間、鍛錬を積まなければいけません。誰か強い人に、いろいろ教えて頂きたいです」
僕の言葉を聞き、ナターシャが満面の笑顔になり、ハイテンションで僕に言ってきた。
「それなら、お父さんに鍛えてもらえばいいよ!お父さん、こう見えて、めっちゃ強いんだよ!最強のエルフって言われた事もあるんだよ~!」
「こう見えてと言われちゃったけど、俺、本当に最強のエルフって言われた事がある位、強いからな!剣術も魔法も一流だぞ!みっちり鍛えてやるぞ!どうだ?」
「は、はい!ありがとうございます!めっちゃ心強いです!よろしくお願いします!」
「おぅ!任せとけ!暫くの間、うちに泊まれよ!毎日ビシバシ鍛えてやるぞ!」
「え!いいんですか!何から何までありがとうございます!めっちゃ嬉しいです!」
「お父さん!さすが!やった~!ムーンと一緒にいられる~!すっごく嬉しい~!」
「ははは。ナターシャがこんなに喜んでくれて、俺も嬉しいよ!さぁ、どんどん食べろよ」
皆でワイワイ楽しく話しながら、どんどん食べ進め、完食。
僕もナターシャも、後片付けを手伝い、お風呂に入って、ナターシャの部屋でイチャイチャしながら過ごしていると、あっという間に寝る時間になった。
「ナターシャ、僕は適当に床で寝るから、ベッドでゆっくり寝てよ」
「な~に言ってんのよ!一緒にベッドで寝るに決まってるでしょ!さぁ、こっちに来て!」
―え!ナターシャと一緒にベッドで寝れるのか~!めっちゃ嬉しいけど、心臓が口から飛び出そうな位、ドキドキしてるよ~!寝れるのかな~―
「うん!分かった!ありがと~!緊張しまくって、心臓がバクバクしてるよ~!」
僕がナターシャの前に立つ。ナターシャはネグリジェのような部屋着を着ていて、色っぽく、僕のドキドキ感が更に高まる。
「ナターシャ!すっごく綺麗だよ!今すぐぎゅ~っと抱き締めたいよ!愛してるよ!」
「ウフフ、ありがと~!思いっ切りぎゅ~っと抱き締めてよ!愛してるよ!」
僕がナターシャをぎゅ~っと熱く強く抱き締め、ナターシャも僕をぎゅ~っと抱き締める。二人でじ~っと見つめ合う。濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合う。そのままベッドに雪崩れ込み、キスしまくり、ぎゅ~っと抱き締め合いまくり、時間が経つのを忘れて濃密な時間を過ごしていると、ふと、ナターシャが色っぽい笑顔で僕に言ってきた。
「ねぇ、このまま寝ちゃうの?私の事、好きにしていいんだよ!」
「うぉ~!ナターシャ、嬉しい事を言ってくれるね~!この部屋着を脱がしちゃうよ~!と言いたいところだけど、やっぱり、今は止めとくよ。今の気持ちのままで、ナターシャと愛し合ったら、ナターシャに失礼だし、段階を踏んで、気持ちの整理が付いてから、いっぱいナターシャと愛し合いまくるよ!ナターシャ、愛してるよ!」
「ウフフ、分かったよ。ムーンのそういうところ、大好きだよ!ムーン、愛してるよ!じゃあ、もう寝よっか。明日からの鍛錬、頑張ってね!おやすみ~」
「うん!ありがと~!強くなる為に、必死に頑張るよ!おやすみ~」
唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合いながら、心地良い眠りについた。
翌朝、目が覚めると、ナターシャはまだ気持ち良さそうに眠っている。
―ナターシャの寝顔、すっごく可愛いな~。あ~、キスしたくなってきた~!―
僕が唇をナターシャの唇にどんどん近付け、ナターシャの唇に重ね合わせると、ナターシャがニッコリと微笑みながら僕に言ってきた。
「ウフ、おはよ~!王子様のキスで目が覚めた感じで、最高の目覚めだよ~!」
「うん。ナターシャ、おはよう。ナターシャをキスで起こせて、すっごく幸せだよ!」
二人でベッドから出て、皆で朝御飯を食べ、僕が戦闘用の服に着替え、剣を持ち、ナターシャの家の庭に出る。庭はかなり広く、鍛錬するのに十分の広さがある。少しの間、待っていると、気合漲る表情で、ナターシャの父親がやって来た。
「待たせたな。久し振りの鍛錬で、気合を入れてきたぞ!さぁ、まずは剣術の基本動作からだ!俺がやる通りに、剣を構えて振るんだぞ!」
「はい!分かりました!よろしくお願いします!」
ナターシャの父親から、剣術の基本動作を教えてもらい、剣を交えて、軽く実戦形式の特訓をする。ナターシャの父親が、さすがの剣捌きで、全く歯が立たない。
「ムーン、頑張って~!お父さん、ムーンは初心者なんだから、手加減してあげてよ!」
「うん!ナターシャ、ありがと~!頑張るよ!」
「おいおい、ナターシャ、まるで俺が悪人みたいじゃないか!俺は鍛えてやってるんだぞ」
「あはは。そりゃ~、大好きなムーンを応援するに決まってるでしょ~!」
ピリピリとした緊張感もあるが、和気あいあいとした楽しい雰囲気もある鍛錬。この日の剣術の鍛錬が終わり、次は魔法の鍛錬。ナターシャの父親が、炎や氷の魔法を出し、僕がやり方を教わりながら、頑張って炎や氷の魔法を出そうとする。何度も挑戦していると、わずかだが、炎や氷の魔法を出す事ができ、ナターシャが喜んで僕に抱き付いてきた。
この日の鍛錬が終了し、次の日も、その次の日も、鍛錬に明け暮れる日々。どんどん日が経っていき、僕の剣術と魔法のスキルがメキメキと上がっていく。続いて、特殊能力の鍛錬に入り、僕が特殊能力についてナターシャの父親から教わりながら、オリジナルの特殊能力を出せるように探求し、練習する。更にどんどん日が経っていき、僕が自分でも驚く位、メキメキとレベルアップしていた。
そんなある日、ナターシャの父親が、笑顔で僕に言ってきた。
「ムーン!まさかお前が、ここまで成長するなんて、夢にも思ってなかったぞ!よくここまで頑張ったな!今日は、卒業試験だ!この試験に合格したら、お前は一人前だ!魔王メタコスを倒しに行く為の、十分な能力を手にした証拠になるぞ!」
「はい!分かりました!卒業試験とは、一体、どんな試験なんですか?」
「お前には、あるエルフと戦ってもらう。そのエルフとは、俺の娘、レミリアだ!レミリアと戦って、お前が勝てば、卒業試験に合格だ!」
「え!レミリアさんと戦うんですか!いいんですか?レミリアさんに怪我をさせてしまうかもしれませんよ!他の試験じゃダメなんですか?」
「ダメだ!卒業する為には、レミリアと戦って勝つしかないぞ!お前、レミリアをなめたらダメだぞ!レミリアは強い。俺だって、油断したら、負けそうになる事があるんだ」
「そうよ!ムーン!レミリアをなめちゃダメよ!レミリアは、男性も参加したエルフ格闘大会で、優勝した事がある達人なんだよ!油断したら、痛い目に遭うよ!」
「そ、そうなんだね。ナターシャ!教えてくれてありがとう。気を引き締めていくよ」
僕がナターシャの父親の方を向き、真剣な表情で言う。
「お父様!レミリアさんが強いという事は、よく分かりましたので、全力で戦う事にします。ところで、レミリアさんは何処にいるんですか?これからここに来るんですか?」
「それでいいんだよ。全力で戦わないと勝てない相手だぞ!ただ、命を落とさないよう、俺がやばいと思ったら、すぐに止めるからな!そういや、レミリア、遅いなぁ。ここに来るよう、言っておいたんだがなぁ」
そんな会話をしていると、突然、向こうの方からレミリアがやって来た。普段の服とは違い、しっかりと戦闘用の服を着て、杖を持っている。
「ムーンさん、お待たせしました!気合が入り過ぎて、ちょっと準備に時間がかかっちゃいました。ムーンさんの卒業試験の相手が出来るという事で、光栄です。真剣勝負で、心ゆくまで戦いましょう!」
「レミリアさん!まさか、あなたと戦う事になるなんて、思ってもみませんでした。僕は早く魔王を倒さなきゃいけませんし、こんな所で阻まれる訳にはいきません。全力でいかせてもらいますよ!」
「さぁ、レミリアとムーン、戦闘態勢に入れよ!俺の合図で始めるからな!」
「ムーン!頑張ってね!大丈夫!ムーンなら絶対に勝てるよ!」
「ナターシャ、ありがと~!ナターシャの応援は、ほんとに心強いよ!頑張るよ!」
僕とレミリアが、少し距離を置いて対峙し、真剣な表情でお互いをジッと見る。
「始め!!」
ナターシャの父親の合図により、僕もレミリアも素早く動き、まずはレミリアが、先制攻撃の体勢に入った。
「ムーンさん、いきますよ!」
レミリアが呪文を唱え、手から大きな炎を出し、僕に向かって放ってきた。僕が素早く動いて避けると、動いた先に、レミリアが次の炎を放っていた。
―うわっ!先手を撃たれた!避け切れない!ここは、覚えたての魔法しかない!上手くいくかどうか分からないけど、やるしかない!―
「バリア!」
僕が念を集中させ、バリアの魔法を出すと、レミリアが放った炎が、バリアに当たり、かき消された。
―よし!成功だ!覚えたてだったから心配だったけど、上手くいった!―
「バリアの魔法を使えるなんて、なかなかやりますね。面白い戦いになりそうですね」
「レミリアさん!僕だって、鍛錬を必死に頑張ってきたんです!次は僕からいきますよ!」
僕が呪文を唱え、手から大きな氷を出し、レミリアに向かって放った。レミリアが素早く避け、僕が立て続けに氷の魔法を放つと、レミリアが僕と同じようにバリアの魔法で防いだ。すかさず、レミリアが氷の魔法を僕に向かって放ち、僕が避けると、どんどん氷の魔法を僕に向かって放ってきた。たまらず、僕がバリアの魔法で防いだが、バリアの魔法が消えた直後、レミリアが僕に向かって物凄いスピードで走って来た。走りながら念じると、持っている杖から炎が上がり、杖が炎の剣のようになっている。あっという間にレミリアが僕の目の前に来て、炎が燃え盛る杖を振り上げ、僕に向かって振り下ろしてきた。
―うわっ!レミリアさん、こんな事まで出来るのか!動きがめっちゃ速い!―
僕が慌てて剣を使ってレミリアの攻撃を受け止めたが、炎の勢いが増し、受け止め切れず、炎の攻撃を食らいながら後ろに倒れた。
「ぐわっ!あちちち・・・」
「ムーン!大丈夫?」
ナターシャが僕に向かって心配そうな表情で叫んだ後、レミリアに向かって叫んだ。
「レミリア!あんた、ムーンを殺す気?当たる直前に緩める位しなさいよ!」
「お姉ちゃん!これは、真剣勝負なんだよ!手加減なんてしないよ!黙っていてよ!」
レミリアが大声で答えた後、僕に向かって言ってきた。
「ムーンさん!どうしますか?負けを認めますか?これ以上戦っても、私が勝ちますよ」
僕が火傷のダメージに悶え苦しみながら、ゆっくりと起き上がり、レミリアを見る。
「レミリアさん!まだまだこれからですよ!絶対にレミリアさんに勝って、卒業します!」
「そうですか。では、容赦しませんよ。覚悟して下さいね。いざとなったら、お父さんが止めてくれるはずですから、命の危険までは心配しなくていいですよ」
レミリアがそう言うと、杖を上空に掲げて呪文を唱えた。すると、十個もの魔法円が出現し、全ての魔法円から、これまでで一番大きな炎が出て来た。
「ムーンさん!これで終わりです!いっけ~!ビッグファイアシュート!」
物凄く大きい十個もの炎が、一斉に僕に向かって降って来た。
「バリア!」
僕がバリアの魔法を出したが、炎の勢いが凄過ぎて、バリアを破り、炎がどんどん降り注いできた。物凄い爆音が鳴り、土煙が辺りに立ち込める。
「ムーン!!」
ナターシャが涙を流しながら、悲痛な叫び声を上げ、レミリアを鬼の形相で睨んだ。
「レミリア!あんた、やり過ぎだよ!ムーンが死んだら、絶対に許さないよ!」
「お姉ちゃん!さっきも言ったけど、真剣勝負に手加減なんて無いよ!お父さんが止めなかったんだから、さすがに、死んでないはずだよ!」
「レミリア、そう言うが、攻撃に勢いがあり過ぎて、止められなかったんだよ」
ナターシャの父親が、小声でそう言うと、ナターシャもレミリアも、固まってしまった。
その時、黒い影のような物が、物凄いスピードで伸び、レミリアを捕え、ぎゅ~っと締め付けた。レミリアが動けなくなり、険しい表情になる。
「ぐ・・・ぐぁっ・・・ム、ムーンさん、まさか、瞬間移動の魔法を使ったの?」
「そうですよ。僕、鍛錬を積んで、瞬間移動の魔法を使えるようになったんです。ここぞという時の為に、とっておいたんですよ。で、今、レミリアさんの動きを封じてるのは、僕のオリジナルのキャプチャーという特殊能力です。レミリアさんが動こうとしても、この黒い影のような物が、どんどん締め上げます。更に言うと、この黒い影のような物に、電流を流し込む事もできます。どうしますか?負けを認めますか?認めなければ、認めるまで電流を流し続けますよ」
「ぐ・・・まだ負けてないです。本当に電流を流せるんなら、流してみて下さいよ」
「そうですか。分かりました。じゃあ、遠慮なく電流を流しますよ」
「そ、そこまでだ!レミリア、お前の負けだ!もう諦めろ!ムーンが本当に電流を流せる位、俺には分かる。娘の苦しむ姿を見たくないんだ!負けを認めてくれ!」
「う・・・そうなの・・・。お父さんが言うなら、仕方ないね。分かったわ」
レミリアが悔しそうにそう言った後、僕の方を向いて言ってきた。
「ムーンさん、私の負けです。ムーンさんは、私が思ってたよりも、ずっと強いです」
「分かりました。レミリアさんも、すっごく強かったですよ。ありがとうございました」
僕がキャプチャーを解き、レミリアがその場に倒れ込んだ。僕がレミリアのところに駆け寄り、回復魔法をかける。
「ヒール!」
僕の回復魔法により、レミリアがゆっくりと立ち上がった。その直後、ナターシャが僕に回復魔法をかけてくれて、僕もすっかり回復。ナターシャが僕に抱き付き、僕もナターシャをぎゅ~っと抱き締める。
「ムーン!良かった!心配したよ!ほんとに強くなったね。ムーン、凄いよ!」
「ナターシャ、ありがとう。僕が勝てたのは、ナターシャの応援のお陰だよ。これで卒業できたよ~!よっしゃ~!」
「うん!ねぇ、ムーン、魔王を倒しに行く旅に、私も一緒に行くよ!私、攻撃力はムーンよりも弱いけど、回復魔法を含めた補助魔法は、それなりのスキルがあるから、必ずムーンの役に立てるよ!」
「お~!そうなんだね~!ナターシャが一緒に来てくれるの、すっごく嬉しいよ!」
そんな会話をしていると、突然、遮るように、ナターシャの父親が僕に言ってきた。
「待て!お前の卒業は認めるけど、ナターシャを連れて行くなんて、今のままだと許さないぞ!ピンチになった時に、お前がちゃんとナターシャを守れるのを確認したい。レミリアと戦ったばかりだが、俺と剣術だけで勝負しろ!俺に勝てないなら、ナターシャを連れて行く事は許さん!」
「お父さん!剣術でムーンがお父さんと戦うなんて、無茶よ!お父さんは、エルフ剣術大会で、何回も優勝した事がある熟達剣士でしょ!こんな戦い、認めないよ!」
「ナターシャ、大丈夫だよ。お父さんを納得させる為に、お父さんと剣術で戦って、必ず勝つよ!ちゃんとナターシャを連れて行くからね!」
「そうなんだね。分かった。私には応援する事しかできないけど、頑張って勝ってね!」
「うん!ありがと~!ナターシャに応援されて、僕は本当に幸せ者だよ!頑張るよ!」
僕とナターシャが見つめ合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。身体を離し、僕がナターシャの父親と対峙する。
「ムーン、いつでもいいぞ。全力でかかって来い!」
「分かりました。じゃあ、遠慮なくいかせて頂きますよ!」
僕がナターシャの父親に向かって走り、剣を振り上げ、素早く振り下ろす。ナターシャの父親が剣で受け止め、暫くの間、剣と剣が相まみえる。二人共、後方にジャンプして下がり、再び剣と剣を合わせ、ガチ~ンと大きな音が鳴る。何度も剣と剣を合わせ、後方に下がり、ナターシャの父親がニヤリと怪しい笑顔を浮かべる。
「ムーン、随分強くなったな。だが、俺の最大の技で決着させてやる!覚悟しろ!」
ナターシャの父親が、物凄い気迫で構え、集中力を高める。
「サンダースプラッシュ!」
ナターシャの父親が、稲妻のような速さで、何度も何度も剣で突いてきた。僕が防戦一方になる。そして、星のような数の攻撃のうち、一つの突きが僕の腕を斬り、更に一つの突きが僕の脇腹を斬った。
「ぐわ~っ!!」
「ムーン!!」
ナターシャが涙を流しながら叫んだが、ナターシャの父親が攻撃を続ける。
「これで終わりだ~!命までは取らないから、心配すんなよ!」
ナターシャの父親が、渾身の一撃を僕に放ってきた。
―このままだとやられる!もう、ここで使うしかない!―
目を見開き、極限まで集中力を高め、剣の動きをジッと見る。
―見えた!―
僕が剣を振り上げ、ナターシャの父親の剣の根元にガチ~ンと当て、更に勢い良く振り上げると、ナターシャの父親の手から、剣がクルクルと回転しながら飛んで行った。すかさず、剣をナターシャの父親に向け、勝利宣言をする。
「勝負ありましたね。僕の勝ちです!約束通り、ナターシャを連れて行きます」
「参った!お前、とんでもなく強くなったな。どうやって俺の剣の動きを見切ったんだ?」
「僕、鍛錬を積んで、神眼の能力を手に入れたんです。実際には、お父様の剣の動きは、凄まじく速かったんでしょうけど、神眼で見た時は、ゆっくりした動きに見えました。後は、お父様の剣を力一杯弾き飛ばすだけでした」
「そ、そうなのか。俺の剣の動きが、ゆっくりと見えたなんて、ショックだな。ムーン!ナターシャを頼むぞ!魔王メタコスを倒して、この世界に平和をもたらしてくれよ!」
「はい!分かりました!ありがとうございます!精一杯頑張ります!」
「お父さん!ありがとう!ムーンと二人で頑張って、絶対に魔王を倒すよ!」
そして、レミリアが真剣な表情を浮かべながら、僕とナターシャのところに歩いて来た。
「ムーンさん!私も一緒に行っていいですか?私の強さは、分かって頂けたと思います。必ず役に立ってみせます!」
その直後、ナターシャの父親が、物凄い形相でレミリアに向かって叫んだ。
「ダメだ!お前まで行ってしまったら、エルフの街の平和を誰が守るんだ!俺一人だと、限界があるんだよ!お前はここに残らなきゃいけないんだ!」
ナターシャの父親に言われ、レミリアの目から大粒の涙が零れ、ナターシャを見つめる。
「お姉ちゃん。私も行って、一緒に戦いたかったけど、私はここに残らなきゃいけないんだって。お姉ちゃん、絶対に死なないでね!生きて戻って来てね!」
「レミレア、当たり前でしょ!必ず生きて戻って来るよ!」
続けて、レミリアが僕の方に顔を向けて言ってきた。
「ムーンさん!お姉ちゃんをよろしくお願いします。ちゃんと守ってあげて下さいね」
「うん!任せて下さい!絶対にナターシャを守り抜いてみせますよ!」
「よ~し!今日は皆で豪勢にぱ~っと晩御飯を食べて、盛大に送り出すぞ!」
「うん!腕によりをかけて、いっぱいナターシャの好物を作るよ~!」
「お父さん、お母さん、ありがと~!絶対に元気な姿で帰って来るからね!」
その日、皆でワイワイ楽しく話しながら、豪勢な晩御飯をお腹一杯食べ、レミリアがおねだりして、ナターシャとレミリアが同じベッドで寝て、僕は一人で眠りについた。
翌朝、いよいよ僕とナターシャが出発する時間になった。二人で玄関のドアを開け、外に出ると、ナターシャの両親とレミリアも外に出て、涙を流しながら見送ってくれた。ナターシャの目からも、涙が零れている。そんな様子を見て、僕の目にも涙が溢れる。
「お父さん、お母さん、レミリア、行ってきます!ムーンと一緒に戦って、魔王を倒して、絶対に元気な姿で戻って来るよ!」
「皆さん、任せて下さい!何があろうと、ナターシャを守り抜きます!魔王を倒して、この世界に平和をもたらします!」
「ナターシャ!ムーン!頼んだぞ!お前達なら、必ず出来るぞ!帰りを待ってるからな!」
「ナターシャ、無理しないで、逃げる時は逃げてね。ムーンさん、ナターシャをお願いね!」
「お姉ちゃん!絶対に死なないでね!ムーンさん、絶対にお姉ちゃんを守って下さいね!」
「うん!分かった!皆、ありがとう!皆は、いつも私の心の中にいるからね!」
「はい!分かりました!ナターシャと一緒に頑張って、ナターシャと一緒に戻って来ます」
「ところで、お前達、これから何処に行くつもりなんだ?行く当てはあるのか?」
「それなんですよ。実は、恥ずかしながら、何処に行けばいいのか分からないんです」
「何だそれ。早く言えよ。実はな、エルフの街から離れた場所に、ドワーフの街があって、ドワーフが魔物に苦しめられてるって話だぞ。ドワーフの街に行って、魔物を倒して、ドワーフの街を平和にしたら、何か有力な情報を得られると思うぞ!ドワーフの街への行き方を説明するよ」
「お父様!ありがとうございます!まずは、ドワーフの街に行って、魔物を倒して、ドワーフを助けて有力な情報を聞き出します」
ナターシャの父親から、ドワーフの街への行き方を聞き、笑顔で手を振りながら、僕とナターシャが、魔王討伐の旅に出発した。
その頃、咲希は僕の事を考え、悩み、苦しんでいた。
―あれから、だいぶ日が経ってるなぁ。スター、異世界で何して過ごしてるんだろう。私の為に、スターは異世界に行っちゃったんだよな~。悪を倒して、意を決するって、そんな事、出来るのかな。ちゃんとこの世界に帰って来てくれるのかな。スターの事がすっごく心配だよ。スターに会いたい!会いたいよ!こうしちゃいられない!私も異世界に行って、スターに会いに行こう!あのお婆さん、あの場所にいるのかな。行ってみよう!―
居ても立っても居られず、咲希が大急ぎで、老婆が異世界への入口を出現させた場所に向かった。到着すると、そこには誰もいない。
―誰もいないなぁ。あのお婆さん、しょっちゅうこの場所に来てる訳じゃないんだな。勿論、連絡先なんて知らないし、この場所しか当てが無いし、これから来るかもしれないし、ちょっと待ってみるか~―
少しの間、スマホをいじりながら待っていると、曲がり角からヒョコッと、あの老婆が驚いた表情でやって来た。
「おや、あんたは、この前の女の子だね。その様子だと、あの男の子は、まだこの世界に戻って来てないようだね。なんでここに来たんだい?」
「お婆さん!私、あの人の事が心配で、戻って来なかったらどうしようって、毎日悩んで、苦しんでるんです。お願いです!私も異世界に行きたいので、もう一度、異世界への入口を出現させて下さい!あの人に会って、あの人をこの世界に連れて帰りたいんです!」
「そうか。そんなにあの男の子の事を大切に想ってるんだね。あんたの気持ちは分かったし、異世界への入口を出現させる事はできるんだが、大きな問題があるんだ。二度目に異世界への入口を出現させると、その入口から異世界に行った人は、この世界での記憶が無くなってしまう上に、異世界にいる人は、あんたの記憶が無くなってしまうんだ。つまり、あんたが異世界に行って、あの男の子に会えたとしても、あんたもあの男の子も、お互いについての記憶が無い状態で会う事になるんだ。もしかしたら、何かの拍子で、記憶が蘇るかもしれないけど、保証は出来ないぞ。それでも異世界に行くと言うなら、異世界への入口を出現させてやろう。どうする?」
「そ、そうなんですか。お互いに関する記憶が無い状態で会う事になる・・・。それでもいいです!私、どうしても異世界であの人に会って、この世界に連れ戻したいんです!一旦、お互いに関する記憶が無くなっても、絶対に思い出せる自信があります!異世界への入口を出現させて下さい!お願いします!」
「分かった。そこまでの覚悟があるなら、行ってくるといい。じゃあ、早速、異世界への入口を出現させるぞ!今回で、異世界への入口を出現させるのは最後になるからな!」
老婆がそう言うと、真剣な表情で呪文を唱え、異世界への入口を出現させた。
「さぁ、行け!行って、あの男の子を連れ戻して来い!」
「はい!ありがとうございます!必ずあの人を連れ戻して来ます!」
咲希がそう言って、勢い良く異世界への入口に飛び込んだ。
咲希が異世界に飛び込んだ時、僕の記憶に変化が生じた。
―あれ?何故だか分からないけど、大切な人の記憶が無くなった感じがする。なんでこんな思いに駆られるんだろう。分からないなぁー
その時、僕とナターシャは、ドワーフの街に向かっている道中、小さな街に立ち寄り、宿泊する為、ホテルのフロントの前に立っていた。僕の様子に気付き、ナターシャが僕に言葉を掛けてきた。
「ねぇ、どうしたの?何か、様子が変だよ」
「うん。何故だか分からないけど、急に、大切な人の記憶が無くなった感じがしたんだよ。なんでこんな思いに駆られたんだろうな~。不思議だな~」
僕の言葉を聞き、ナターシャのテンションが一気に上がり、いろいろな事を考える。
―ムーンの頭の中から、ムーンが好きな幼馴染の女性が消えたみたいだな~。なんで急に大切な人の記憶が無くなっちゃったんだろう。何か原因があるはずだけど、もしかしたら、私の魅力によって、その人の事を忘れちゃったのかな。どうなんだろ~。まぁ、私にとってはいい事だし、願ってもないチャンス到来だよ!一気にムーンに迫って、ムーンの頭の中を、私の事でいっぱいにしてやるぞ~!―
「ねぇ、ムーン!そんなの、気のせいだと思うよ。ムーンの頭の中は、初めから私の事でいっぱいなんだよ。今日泊まる部屋、二人で一部屋にしようね!ムーンと部屋でいっぱいイチャイチャして過ごすの、すっごく楽しみだよ~!」
「うん。そうだね。気のせいなんだろうな~。二人で一つの部屋に泊まって、ナターシャといっぱいイチャイチャして過ごすの、僕もめっちゃ楽しみだよ~!」
二人で一つの部屋を取り、ハイテンションで部屋に入ると、すぐにナターシャが僕に抱き付いてきた。僕もナターシャをぎゅ~っと抱き締める。
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、ナターシャが色っぽく微笑む。
「ムーン!先にシャワー浴びて来てよ」
「う、うん。分かった。めっちゃドキドキしてきたよ~!」
「ウフフ。私も心臓が口から飛び出そうな位、ドキドキしてるよ~!」
僕が洗面所に行き、服を脱いで浴室に入り、シャワーを浴び、腰にバスタオルを巻いた状態でナターシャのところに戻る。続いてナターシャが洗面所に行き、服を脱いで浴室に入り、シャワーを浴びる。シャワーの音が聞こえ、僕のドキドキ感が更に高まる。
―ナターシャが今、シャワーを浴びてる。これから僕は、ナターシャと愛し合うんだな。ナターシャ、幸せを感じてくれるかな~。あ~、心臓がバクバク鼓動してるよ~!―
そんな事を考えていると、バスタオルを羽織ったナターシャが、色っぽい笑顔を浮かべながら、僕のところに歩いて来た。
「ムーン、お待たせ。いっぱい愛し合いまくろうね!愛してるよ!」
「うん!ナターシャと愛し合いまくれるなんて、夢みたいだよ。愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。ナターシャがそっと目を閉じ、少し口を開けて少し上を向く。僕が唇をどんどんナターシャの唇に近付ける。濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
そのままの勢いで、僕とナターシャは、ベッドに雪崩れ込み、熱く激しく無我夢中で時間が経つのを忘れてひたすら濃密に愛し合いまくった。
翌朝、目が覚めると、ナターシャが僕の横で気持ち良さそうに眠っている。僕が唇をナターシャの唇に重ね合わせると、ナターシャが目を覚まし、ニッコリと微笑んだ。
「ウフ、おはよ~!ムーンのキスで目覚めて、最高に幸せだよ!愛してるよ!」
「うん!ナターシャ、おはよう。ナターシャの寝顔が可愛くて、思わずキスしちゃったよ。僕もすっごく幸せだよ!愛してるよ!」
二人で濃密に愛し合いまくり、ベッドから出て、シャワーを浴び、服を着て、美味しい朝御飯を談笑しながら食べ、部屋を出て、ホテルを出発。
街の人に話を聞くと、ドワーフの街への行き方や、ドワーフの技術を利用する為に魔物がドワーフの街を襲った事が分かり、二人で街を出た。
ドワーフの街に行く道中、いろいろな魔物が襲って来たが、強くなった僕が、どんどん魔物を倒し、体力が無くなってくると、ナターシャが回復魔法で回復させてくれた。倒した魔物の中には、僕がこの世界で初めて遭遇した魔物もいたが、一蹴した。
熊と牛が混ざったような魔物に遭遇した時は、魔物が攻撃力も防御力も高かったので、ナターシャの補助魔法により、僕の攻撃力と防御力を上げてもらい、激闘の末、何とか魔物を倒す事ができた。
「ナターシャ!ありがとう!ナターシャの補助魔法、すっごく役に立ってるよ!」
「うん!そう言ってくれて、私もとっても嬉しいよ!私達、いいコンビネーションだね!」
夜になり、テントを張って、周りに魔物避けの魔法をかけた。晩御飯はバーベキュー。街で買った食料や、倒した魔物の肉を焼いて食べる。最初は抵抗があったが、自分で倒した魔物の肉は、驚く程、美味しく、二人で楽しくおしゃべりしながら食べ進め、一気に完食。テントに入り、ごろ~んと寝転がると、疲れていた事もあり、すぐに眠りについた。
ドワーフの街を目指して進み続け、何日も経った、ある時、ナターシャが満面の笑顔を浮かべながら僕に言ってきた。
「ムーン!あそこに見える街が、ドワーフの街だよ!やっと着くよ!街に入ったら、たぶん強い魔物がいるだろうし、気を引き締めなきゃね」
「うん!いよいよドワーフの街に入るんだね。どんな強い魔物がいるのかな~。あ~、めっちゃ緊張してきたよ~」
更に二人で歩き進み、ドワーフの街に入った。街は都会で、高さが高いビルが建ち並び、ドワーフの技術力を感じる。ドワーフは背が低い種族で、動く人形のような雰囲気を漂わせているが、動きは活発。ただ、魔物に支配されている事もあり、魔物の指示により活動しているドワーフが多く、全体的に元気が無い。街には魔物の姿は見当たらないが、ドワーフに話を聞くと、主要な建物に魔物がいて、ドワーフに様々な命令をしている事や、魔物の中でも強大な力を持っている魔物のボスがいる事が分かった。ドワーフの女性に案内され、魔物のボスがいる建物の前に到着。
「あなた達、本当に行くの?相手は物凄く強い魔物だよ。殺されちゃうよ」
「案内して頂き、ありがとうございます。大丈夫!魔物を倒して、ドワーフの街に平和をもたらしますよ!」
「そうだよ!この人、すっごく強いんだからね!私も一緒にしっかり戦って、魔物を倒すよ!」
「そ、そうなんだね。でも、魔物のボスは本当に強いから、気を付けてね」
僕とナターシャが、魔物がいる建物に入ると、中は魔物だらけ。どんどん襲い掛かって来て、どんどん蹴散らしていくが、数が多く、相手にするとキリが無い。
「ナターシャ、こうなったら、強行突破だ!全力で走るぞ!」
「オッケー!私、足の速さには自信あるよ!」
二人で全速力で走る。当然、魔物が立ち塞がるが、僕の素早い攻撃により、無理矢理、道を切り開き、どんどん突き進む。更に進むと、雰囲気のあるドアの前に着いた。
「ナターシャ!このドアの向こうに、魔物のボスがいるはずだ。準備はいい?」
「うん!行こう!私とムーンが力を合わせれば、絶対に倒せるよ!」
僕がドアを引くと、ギギギギ~ッと大きな音が鳴り、部屋に入ると、とんでもなく大きい竜のような魔物が、僕とナターシャを睨んでいる。魔物には大きな羽根が生えていて、部屋の天井が高く、飛ぶ事ができるのが分かる。
「ナターシャ、いきなりだけど、僕の攻撃力と防御力を魔法で上げてよ!まずは先制攻撃をして、あの魔物の力を確かめるよ」
「オッケー!あの魔物、飛べるんだろうし、空中からの攻撃に気を付けてね」
「うん。まずは、ヒットアンドアウェイでいってみるよ」
ナターシャが補助魔法で僕の攻撃力と防御力を上げ、僕が魔物のボスに向かって走り、ジャンプして剣を振り下ろすと、魔物のボスにガチ~ンと音を立てて命中したが、皮が硬く、効いていない感じがする。
―え!この攻撃が効いてないのか!とんでもなく硬い皮だな~!―
魔物のボスが反撃。口を大きく開け、大きな炎を吐き、僕に向かって放ってきた。間一髪避けたが、次々と炎を放ってきて、そのうちの一つが、僕に命中してしまった。僕が後ろに倒れ込み、悶え苦しむ。
「ぐわ~!あちちち・・・」
「ムーン!大丈夫?すぐに回復させてあげる。ヒール!」
ナターシャの回復魔法により、僕が受けたダメージがある程度回復したが、完全には回復していない。自分でも回復魔法をかけようとした、その時、魔物のボスが、大きな羽根を羽ばたかせて飛び、口を大きく開け、今度は大きな光線を出し、物凄い速さで僕とナターシャに向けて放ってきた。突然の攻撃に、僕がバリアの魔法で防ごうとしたが、光線がバリアを破り、僕とナターシャに命中してしまった。
「ぐわ~!!」
「キャ~!!」
あまりのダメージに、その場にうずくまり、動けない状態。ナターシャは気を失ってしまっている。僕は微かに意識があるが、朦朧としている。更に魔物のボスが、大きな羽根を思いっ切りばたつかせ、物凄い強風を生み出した。僕が咄嗟にナターシャを守る為に覆い被さったが、二人で吹っ飛ばされ、僕がナターシャを守りながら壁に激突。更なるダメージを負った。ナターシャは壁の激突を免れたが、依然気を失ったまま。
―ぐ・・・。この魔物のボス、思ってたよりもずっと強い。ここから形勢逆転して倒すの、無理なんじゃないか。何かいい方法は無いのか。時間が無い。考えろ!―
魔物のボスが、とどめを刺そうと飛び立ち、目を光らせ、目から光線を出し、とんでもない速さで僕とナターシャに向けて放ってきた。
―や、やばい!もう動けない。当たったら、ひとたまりも無いぞ。これまでなのか―
その時、僕の後ろから、爆音が鳴り、大きな弾丸が光線に命中し、光線をかき消した。
「良かった!間に合った!私も戦うよ!あなた達だけを危険な目に遭わせないよ!」
後ろから女性の声が聞こえ、振り返ると、先程のドワーフの女性が、大きな銃を持ちながら立っている。
「き、君は、さっきのドワーフの女性!銃を持ってるんだね!びっくりした~!」
「うん!私達ドワーフは、武器を作る技術はあるんだけど、その技術を魔物が狙って、支配されてしまって、戦う意欲を失ってしまった。でも、あなた達を見て、戦わなきゃいけないって思った。私の名前は、サーラっていうの。よろしくね!」
「凄い武器を作れるんだね。僕は、この世界ではムーンっていうんだよ。そうだ!ナターシャの意識を戻さなきゃ!」
僕がナターシャの身体を起こし、呪文を唱える。
「リバイブ!」
僕の魔法により、ナターシャが意識を取り戻した。
「わ、私、意識を無くしてたんだね。ムーン、私の意識を戻してくれて、ありがとう。こちらの女性は、この建物に案内してくれたドワーフの女性だね」
「うん。意識が戻って良かった。このドワーフの女性、サーラっていって、物凄い銃を使うんだよ。めっちゃ頼りになるよ」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、あの魔物のボスを倒さなきゃ!私が銃で撃つから、攻撃魔法で援護してよ」
「分かった!僕とナターシャは、炎の魔法で弾丸を包み込むよ」
「うん!息をピッタリ合わせて攻撃すれば、魔物のボスを弾丸が貫くよね」
サーラが銃を構え、弾丸を放ち、僕とナターシャが炎の魔法で弾丸を包み込むと、大きな火の玉のようになった弾丸が、一直線に魔物のボスに向かって突き進み、見事に命中!貫くまではいかなかったが、大きなダメージを与える事ができ、魔物のボスが大きな鳴き声を上げた。
「チャンスだ!一気に勝負を決めてやる!」
僕が強く念じると、剣が大きな炎に包まれ、魔物のボスに向かってジャンプ!炎の剣を思いっ切り振り下ろすと、魔物のボスの大きな羽根を一つ切り落とす事に成功した。すぐにもう一度ジャンプ!もう一つの羽根も切り落とし、魔物のボスが大きな鳴き声を上げ、その場にうずくまる。
「よし!これで終わりだ!スペシャルキャプチャー!」
僕の手から、大きな黒い影のような物が飛び出し、一気に魔物のボスを捕えた。
「いけ~!スペシャルサンダーボルト!」
凄まじい電流を魔物のボスに浴びせると、魔物のボスが断末魔の叫び声を上げ、その場に倒れ込んだ。
「よっしゃ~!魔物のボスを倒せたぞ!ナターシャ、サーラ、ありがとう!」
「うん!さすがムーン!私達、無事で良かった~!」
「本当に魔物のボスを倒したんだね。凄い。私も力になれて良かったよ」
回復魔法でダメージを回復させ、三人で喜び合っていた、その時、魔物のボスが最後の力を振り絞り、目から鋭い光線を放った。光線はサーラの身体を貫き、サーラが倒れ込み、意識が朦朧として動けなくなった。魔物のボスは、そのまま動かなくなった。
「サーラ!」
「サーラ!しっかりして!」
僕とナターシャがサーラに回復魔法をかけたが、傷が深過ぎて、回復させる事ができない。僕とサーラの目から、涙が零れてきた。
「私、もうダメかも。でも、一緒に戦えて、魔物のボスを倒せて、嬉しかったよ」
「サーラ、しゃべらなくていいよ。早くここから出て、ちゃんと治療しよう」
「サーラ!サーラ!死んじゃダメよ!しっかりして!目を閉じちゃダメ!」
「最期に、最高の仲間と出会えて、幸せだったよ。本当にありがとう」
サーラがそう言うと、目を閉じ、ガックリと首を垂れた。
「サーラ!!」
「サーラ!!」
僕とナターシャの叫び声も虚しく、サーラの命が尽き果ててしまった。
僕がサーラを背負い、ナターシャと共に歩いていると、魔物のボスを倒したからなのか、もう魔物の姿は無かった。建物を出て、ドワーフの長に報告。街に平和が戻った事を喜ぶよりも、サーラが命を落とした事を、皆が悲しんだ。ふと、ドワーフの長が、僕とナターシャに言ってきた。
「ドワーフの街に平和を戻してくれて、本当にありがとう。サーラは死んでしまったが、一人だけ生き返らせる事ができる魔法があるらしい。その魔法を使えるようになる為には、魔王メタコスを倒さなけらばならないのだ。君達は、魔王メタコスを倒す為に旅をしてると聞いた。何としても魔王メタコスを倒して、サーラを生き返らせてくれ!」
「そ、そうなんですか!分かりました!必ず魔王を倒して、サーラを生き返らせます!」
「サーラを生き返らせる事ができるんだ~!絶対に魔王を倒して、生き返らせますよ!」
「素晴らしい答えだ!頼りにしてるよ!ところで、次に行く場所に当てが無いなら、魔王メタコスの側近が、魔物の群れを率いて、国を制圧したと聞いたんだが、その国にある一番大きな街に行って、平和を取り戻せたら、魔王メタコスを倒す為の道が開けると思うぞ。その街には城もあるんだ。どうだ?行ってみるか?」
「はい!その大きな街に行って、平和を取り戻します!ありがとうございます!」
「私とムーンが力を合わせて戦えば、その国の平和を取り戻せるよ!頑張ろうね!」
「うん!ナターシャが一緒にいてくれれば、僕は実力以上の力を発揮できるよ!」
会話が終わり、早速、僕とナターシャが、ドワーフの街を出て、魔物を倒しながら、その大きな街を目指してひたすら歩き進む。夜、街に入る事ができれば、小さなホテルに宿泊したが、街に入れなければ、テントを張って寝泊まりした。様々な魔物と戦う事や、時間を見つけて鍛錬する事で、僕もナターシャもどんどん戦闘力がレベルアップ。更に突き進み、ある日、僕とナターシャが、引き締まった表情で口を開いた。
「ナターシャ!いよいよ見えてきたね!城が見えるし、あれが、目指して来た国の一番大きな街だね!魔王の側近が支配してるみたいだし、緊張するけど、僕もナターシャも、強くなったから、絶対大丈夫だよ!さぁ、行くよ!」
「うん!いよいよだね!私も、すっごくドキドキしてるけど、ムーンと一緒に戦うし、全然心配してないよ!二人で力を合わせて、この国に平和を取り戻そうね!」
二人で意気揚々と、街に向かって歩き、街に入って行った。
魔王の側近に支配されている、城がある大きな街は、入ってみると、確かに多くの人がいて、活気はあるが、少しだけいる魔物が、人々を制圧している雰囲気があり、街の人の表情は一様に暗い感じがする。
「ナターシャ、この街の人、魔物に制圧されていて、皆、表情が暗いよな。この街に平和を取り戻す為には、中心になってる魔王の側近を倒すしかなさそうだな。魔王の側近を倒したら、手下の魔物は皆いなくなりそうだな」
「うん。そうだね。この街の人、可哀想で見てられないよ。何としても魔王の側近を倒して、この国に平和をもたらさないとね!」
二人で街を歩いていると、見た目がコウモリ男の魔物が、母親と男の子の親子に絡んでいる光景が目に入った。男の子が泣き叫んでいて、母親が悲壮感に溢れている。
「この子がぶつかってしまって、本当に申し訳ございませんでした!何でもしますし、私はどうなっても構いませんので、どうかどうか、この子の命だけは助けて下さい!」
「フン!俺様にぶつかっておいて、タダで済む訳が無いだろう。こいつは貰って行くぞ!」
「止めて下さい!お願いします!」
「うるさい!離せ!」
コウモリ男のような魔物が、男の子の手を引っ張って行こうとしたところを、母親が防ごうとしたが、払いのけられてしまった。僕もナターシャも、勿論、黙っていられない。
「止めろ!その男の子から手を離せ!」
「そうよ!そんな小さな男の子に暴力を振るうなんて、許せない!」
「何だ!お前等!俺を誰だと思ってるんだ!魔王メタコス様の側近であるキャサ様の、一番部隊の長であるバットマスター様だぞ!痛い目に遭いたくなかったら、向こうに行け!」
「お前が誰であろうが、こんな子どもに暴力を振るうなんて、許せる訳ないだろ!その男の子から手を離せ!」
「そうよ!バットマスターなんて、知らないわよ!あんたこそ、早くあっちに行ってよ!」
「はっはっは!どうやら、痛い目に遭わないと分からないようだな。覚悟しろ!」
バットマスターが口笛を鳴らすと、手下の大きなコウモリが次々とやって来て、一斉に僕とナターシャに襲い掛かってきた。
「ナターシャ!ここは僕に任せて、下がってろ!」
「何言ってんのよ!私も一緒に戦うよ!私も強くなったんだからね!」
「そ、そうか。分かった。でも、危険を感じたら、僕の後ろに隠れろよ!」
僕が大きなコウモリの大群を、次々と剣で斬り落とし、ナターシャが炎と氷の魔法で、大きなコウモリをどんどん倒していく。その隙を狙って、バットマスターがフォークのような武器を振りかざし、ナターシャに横から襲い掛かって来た。
「死ね~!」
「危ない!」
僕が間一髪、剣でバットマスターの攻撃を防ぎ、かち上げて、フォークのような武器を払い飛ばした。
「く、くっそ~!お前、なかなかやるじゃないか。本気を出すぞ!覚悟しろ!」
バットマスターが羽根をばたつかせて空中に飛び、呪文を唱えると、雷の魔法が出て、僕に向かって放ってきた。
「バリア!」
僕がバリアの魔法で雷の攻撃を防ぎ、瞬間移動の魔法でバットマスターの後ろに移動し、剣で思いっ切り斬り付けた。
「グウァ~!!」
断末魔の叫び声を上げながら、バットマスターが地面に落ち、動かなくなった。その様子を見て、残りの大きなコウモリが、皆いなくなっていった。僕が親子に駆け寄る。
「大丈夫?怪我は無い?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございました」
「助けて頂き、本当にありがとうございました!何と御礼を言っていいのか」
「御礼なんていいですよ。それにしても、ひどい奴でしたね。僕達、この国に平和をもたらす為に来たんですよ。この国を支配してる、魔王の側近は、何処にいるんですか?」
「魔王の側近ですか!あそこにある城の中にいますよ。でも、魔王の側近のキャサは、とんでもなく強くて、この街の人が誰も太刀打ちできないんですよ。しかも、国王が城の中に監禁されているんです。あなた達は、本当にこの国の為に、魔王の側近のキャサを倒してくれるんですか?」
「はい!勿論です!魔王の側近、こんなにもこの国の人を苦しめて、許せないです!」
「そうですよ!本当に許せない!この人、めっちゃ強いですから、大丈夫ですよ!」
「ありがとうございます!私には応援する事しかできないですけど、頑張って下さい!」
僕とナターシャが、助けた親子に見送られ、城に向かって歩き進む。
「ムーン、さっきは私が襲われそうになったところを助けてくれてありがとうね」
「うん!危なかったけど、間に合って良かったよ!ナターシャ、城に入って大丈夫?さっきの魔物より魔王の側近の方が、だいぶ強いと思うよ」
「うん。大丈夫だよ。ムーンの足を引っ張らないよう、最大限に注意しながら戦うよ」
「分かった。ナターシャが危なくなったら、絶対に守り切るからね!」
「ウフフ、ありがと~!ムーン、頼りにしてるよ!」
二人で更に歩き進み、城の前に到着。ドキドキしながら城に入ると、いきなり魔物の大群が、一斉に襲い掛かって来た。
「ナターシャ!思いっ切り走れ!僕も攻撃を食い止めながら一緒に走るよ!」
「うん!分かった!私も攻撃魔法で援護するよ!」
二人で全力で走りながら、襲い掛かって来る魔物を薙ぎ払う。時々、攻撃を受けたが、お構いなしに走り続ける。どんどん走って行くと、もう魔物の姿が無くなり、目の前に、ただならぬ雰囲気の大きな扉が見えた。
「ナターシャ!たぶんこの部屋に、魔王の側近がいるぞ!準備はいい?」
「うん!いつでもいいよ!」
「魔王の側近はめっちゃ強そうだし、今のうちに、お互いの体力を回復させておこう」
「うん!それがいいね。あ~、ドキドキしてきたわ~!」
お互いに回復魔法をかけ合って、体力を回復させ、いよいよ僕が大きな扉の取っ手を捻って扉を開き、部屋に入ると、大きな椅子に座っている魔王の側近と目が合った。その姿を見て、僕もナターシャも、びっくり仰天!
「ナ、ナターシャ!魔王の側近、どう見ても人間の女性だよな!ナターシャ程じゃないけど、綺麗な女性だな。びっくりだよ!」
「そ、そうね。あんな普通の人間の女性が、魔王の側近だなんて、信じらんないよ」
僕とナターシャの会話を聞き、魔王の側近が口を開いた。
「あんた達が、ドワーフの街を支配してた魔物のボスを倒し、私の手下のバットマスターを倒した、人間とエルフだね!話は聞いたよ。来ると思ってたけど、見た感じ、そんなに強くなさそうだね。まぁ、それはお互い様か。私、見た目よりもずっと強いから、なめないでね!あんた達なんか、一瞬で倒してやるから、覚悟してね!」
「お前が魔王の側近のキャサだな。見たところ、人間の女性だな。なんで人間なのに、魔王の側近なんかして、人々を苦しめるんだ?それでも人間か!」
「フン!お前になんか話す必要は無い!いつでもいいぞ。かかって来い!おっと、その前に、その減らず口の男と一対一で戦う為に、邪魔が入らないようにしとくか」
キャサがナターシャの方を向き、呪文を唱えた。
「ドーム!」
突然、ドーム状の仕切りが、ナターシャを囲い込んだ。
「え!何これ!ここから出れないよ!」
ナターシャがドームから出ようと、悪戦苦闘したが、効き目が無く、出られない。
「ごめんね、ムーン!どうしてもここから出れないの。悔しい~!」
「ナターシャ!大丈夫だ!僕一人で魔王の側近を倒せるから、そこで見ていてくれ!」
「きゃはははは。あんたが私に勝てると思ってるのか!ムーンっていうんだな。一瞬で倒してやるわ!その後で、そのナターシャっていうエルフを苦しめながら倒してやる!」
「うるさい!絶対にお前を倒して、ナターシャを守り抜くぞ!いくぞ!」
僕がキャサに向かって走り、剣を振り上げ、キャサに向かって降り下ろすと、キャサが剣で僕の剣を受け止め、ガチ~ンと大きな音が響いた。
―な、何だ、この女!この華奢な身体で、僕の剣を受け止めるなんて、信じられない―
一旦、後ろにジャンプし、少し距離を取った、その時、キャサが反撃に出た。
「食らえ!五月雨剣!」
キャサが、まるで五月雨のように、凄まじい勢いで剣を僕に向かって突いてきた。僕が防戦一方になり、隙ができたところで、キャサの剣が僕の腕と脇腹を斬った。
「ぐ・・・。凄まじい剣使いだな。なんでこんな技を、正しい事に使わないんだ?」
「あんたには関係ない。私はこれが正しい事だと信じてるんだ!」
「悪の道にどっぷりと浸かってるんだな。勝負はこれからだ!」
僕が回復魔法を使おうとした時、キャサがすかさず呪文を唱えた。
「ヒールサイレント!」
キャサの魔法により、僕が回復魔法を使えなくなってしまった。
「こ、こんな魔法があるのか。ダメージを回復させられないという事だな」
「そうだ!ちなみに、私も回復魔法を使えなくなったから、条件は同じだ!お互い命が尽き果てるまで戦うぞ!」
「分かった。お前は物凄く強いが、絶対にお前を倒す!」
「あはは。その威勢、いつまで続くかな。さぁ、いくよ!」
キャサが念を込めて呪文を唱えると、なんと、何十個もの魔法円が、天井の下の辺りを埋め尽くした。
―な、何だ!この凄まじい数の魔法円は!レミリアが出した数の何倍もあるぞ!―
「これで終わりよ!メテオバーニング!」
魔法円から、炎に包まれた大きな隕石が、一気に僕に向かって降り注いで来た。
―だ、ダメだ!バリアじゃ防げない!瞬間移動も間に合わない!―
全ての炎に包まれた大きな隕石が、僕にところに凄まじい勢いで落ち、物凄い爆音が鳴り、大量の土煙が覆い尽くした。
「ムーン!!」
ナターシャが大粒の涙を流しながら、悲痛な叫び声を上げる。
「は~っはっはっは!完全に死んだな!もっと楽しませてくれるかと思ったけど、大した事なかったな!」
キャサがナターシャの方を向き、妖艶な笑顔を浮かべる。
「さぁ、次はお前の番だ!どんな世界なのか知らないけど、あの世に送ってやる!」
キャサがナターシャに向かって歩き始めた、その時、キャサの目の前に、突然、僕が現れ、キャサを突き飛ばし、倒れたところに、僕が脚でキャサの動きを封じ、マウントを取った状態で、剣を振り上げた。
「ムーン!無事なのね!良かった!」
ナターシャが大喜びで僕に大声で言った後、キャサが驚きながら言葉を絞り出した。
「な、なんで死んでないんだ?確かに、全ての隕石が命中したはずなのに・・・」
「フッ。油断したな。僕の特殊能力をなめてたな。姿を消す特殊能力を使って、隕石の命中を回避し、お前が油断した時に現れ、マウントを取ったんだ。お前を絶対に許さない!人間の女性であろうが、殺す!覚悟しろ!」
「うぅ・・・」
キャサが涙目になった、その時、僕の頭の中に、昔の光景が思い浮かんだ。
―この感じ、かなり前にあったぞ!確か、小学生の頃、女の子と喧嘩して、突き飛ばして、マウントを取って、殴ろうとした時、同じような表情をしてた。その女の子、僕にとって、大切な女の子だったはず。誰だっけ。え~と、あ!思い出した!―
「咲希!!お前、咲希だろ!!」
僕がキャサに向かって叫ぶと、キャサがきょとんとしながら、返して来た。
「咲希?何を言ってるの?私の名前は、キャサだよ」
「いや、お前は咲希だ!僕を忘れちゃったのか?僕は、スターだ!!」
「スター?何をスター気取りしてんだよ!ふざけんな!」
キャサが脚を回転させ、僕のマウントから逃れ、剣を拾った。
―何故なのか分からないが、咲希が僕に関する記憶を無くしてる。僕もさっきまで、咲希に関する記憶を無くしてた。僕は思い出せたけど、咲希は僕の事、まだ分からないみたいだ。何とかして、思い出させなきゃ!―
「フン!油断したな!勝負はこれからだ!いくよ!」
キャサが構えて剣を振り上げ、大きな炎を出して剣を包み込み、僕に向かって降り下ろしてきた。
―そうだ!これで思い出すだろう!―
僕が大きな氷を出して剣を包み込み、剣でキャサの剣を受け止め、炎と氷がぶつかり合い、炎と氷が消えた。その瞬間、僕が剣を思いっ切り振り上げ、キャサの剣を弾き飛ばし、僕が剣を床に置いた後、キャサをぎゅ~っと熱く強く抱き締めた。
「咲希!この世界に来る前、言えなかったけど、咲希の事、愛してるよ!」
僕に抱き締められ、キャサが困惑しながら、頭の中を巡らせる。
―こ、この抱き締められてる感じ、何処かで味わった。何処?私は誰?え~っと、あ!思い出した!この世界に来る前、同じように抱き締められた!―
「スター!あなた、スターなのね!私の名前は咲希!全部思い出した!」
「咲希!やっと思い出してくれた!良かった!もう大丈夫だ!」
咲希も僕をぎゅ~っと熱く強く抱き締め、暫くの間、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
「スター!私もあの時、言えなかったけど、スターの事、愛してるよ!」
「うん!ありがとう!あ~、咲希に会えて良かった!すっごく嬉しいよ!」
「ちょ、ちょっと待った~!何なのこれは!説明してよ!」
突然、ナターシャが僕と咲希に向かって叫んだ。
「ナターシャ!ごめん!そうだね。説明しなきゃね。咲希の説明も聞かなきゃね」
「ご、ごめんなさい!ドームを消すよ。私も、説明しなきゃいけないし、説明されたいよ」
咲希がドームを消し、ナターシャが僕と咲希のところに駆け寄って来て、咲希がヒールサイレントを解除し、ナターシャが回復魔法で僕と咲希を回復させてくれた。僕がナターシャに咲希の事を説明すると、ナターシャが、この人か~という表情を見せ、僕がナターシャの事を咲希に説明すると、咲希が驚きながら言ってきた。
「この世界で、スターにいい人が出来ちゃったんだね。実は、私、この世界に来るに当たって、あのお婆さんから、私もスターもお互いに関する記憶を無くすって言われてたんだけど、それでもスターを元の世界に連れ戻したくて、この世界に来たの。私の事を忘れた状態だったんだし、いい人が出来ても仕方ないね。でも、私もスターの事が大好き!ナターシャ、すっごく綺麗でスタイルいいけど、負けないように頑張るよ!」
「何言ってんのよ!ムーンは私のものよ!咲希になんて負けないよ!」
「まぁまぁ、二人共、落ち着いてよ。でも、咲希はなんで魔王の側近になったんだ?」
「私、この世界に来た時、いきなり目の前に魔王メタコスがいたのよ。魔王は、私を見るなり、私に可能性を感じたのか、私に洗脳術をかけてきて、私はすっかり魔王の側近と思い込まされたの。で、短期間で集中的に鍛錬を積まされて、強くなって、魔物の群れを引き連れてこの城を制圧して、この国を支配するようになったの。洗脳されてたとはいえ、多くの人を苦しめたのは、許される事じゃない。国王は奥の部屋に監禁されてるから、国王を解放して、裁きを受けるよ」
「え!裁きを受けるって、咲希は洗脳されてたんだし、悪くないよ!」
「ダメよ。裁きを受けなきゃいけない。私の処遇は、国王に委ねるよ」
咲希がそう言うと、奥の部屋の鍵を開け、奥の部屋に入り、僕とナターシャが続いて入ると、魔法によって動きを封じられている国王がいた。咲希が魔法を解き、国王を解放し、国王に言葉を掛けた。
「国王様、私、全て思い出しました。魔王に洗脳されていたとはいえ、私のした事は、許される事ではありません。私を裁いて下さい。死刑でも構いません。どんな裁きでも受け入れます」
咲希の言葉を聞き、国王が暫く考えた後、咲希に告げた。
「あなたがした事は、確かに許される事では無い。私が裁いていいなら、裁こう。した事を大いに悔い、そのお二人と一緒に、魔王メタコスを倒すのじゃ!魔王を倒す事ができれば、あなたがした事は、全て許されるだろう」
国王の言葉を聞き、咲希が涙を流しながら答えた。
「国王様、温かいお裁き、ありがとうございます。命を懸けて魔王を倒します!」
「咲希、本当に良かった!」
続いて、僕が国王の方を向く。
「国王様、ありがとうございます!」
「うむ!さぁ、行ってくれ!魔王を倒して、世界に平和をもたらしてくれ!」
「はい!行ってきます!必ず魔王を倒します!」
部屋を出て、城の中を歩いて行くと、咲希が正気を取り戻した事により、魔物は全ていなくなっていた。城を出ると、街の中にも魔物はいない。
「さぁ、いよいよ魔王を倒しに行くよ!私が魔王城まで連れて行ってあげる!」
「うん!咲希は魔王城にいたんだし、頼りにしてるよ!」
「は~い。咲希は私のライバルだけど、頼るところは頼るよ」
咲希の案内により、何日もかけて移動し、現れた魔物を三人でどんどん倒していった。時々、僕を巡ってナターシャと咲希が言い争いになったところを、僕が何とかなだめたり、ナターシャが寝ている時に、咲希にねだられ、僕と咲希が唇と唇を熱く重ね合わせたり、何故かナターシャと咲希が意気投合したりと、いろいろな事があった旅となったが、ある日、漸く魔王城が見えてきて、咲希が真剣な表情で言ってきた。
「さぁ、あそこに見える城が、魔王城だよ!魔王と戦う準備はオッケー?」
「うん!大丈夫だよ!さぁ、行こう!」
「私もオッケーだよ!三人で力を合わせれば、絶対に魔王を倒せるよ!」
三人で引き締まった表情をしながら、魔王城に入って行った。
魔王城に入ると、まるで迷宮のような造りで、何処に行けばいいのか迷っていると、咲希が得意気に言ってきた。
「へっへ~。私、この城に精通してるから、スイスイ分かるよ!付いて来て!魔王以外の魔物は、大した事ないから、蹴散らしながら進むよ!」
「お~!さすが元側近だな!頼りにしてるよ!」
「うん!さすが咲希!全力で走るよ!」
咲希が先頭になり、三人で魔物を倒しながら、どんどん走り進む。複雑な迷宮だが、咲希が道を覚えていて、迷う事なく突き進んで行くと、恐ろしい雰囲気の大きな扉を目の前にして、咲希が足を止めた。
「さぁ、この扉を開けて部屋に入ると、いよいよ魔王メタコスと対面するよ!心の準備が出来たら言ってね」
「うん!僕は大丈夫だよ!三人で協力して、魔王を倒そう!」
「私も大丈夫!三人で力を合わせれば、絶対に魔王を倒せるよ!」
「よし!じゃあ、行くよ!」
咲希が大きな扉を開け、三人で部屋に入ると、狼のような顔で、首から下は竜のような身体で、大きな羽根が生えている巨大な魔物が、大きな椅子に座っているのが見えた。
「あれが、魔王メタコスだよ。まずは私が話すから、待っていてね」
「うん。いかにも魔王って感じだな」
「そうだね。強烈なオーラを感じるわ」
咲希が魔王の方を向き、鋭い視線で睨み付ける。
「魔王メタコス様、いや、これからは魔王と言います。ここにいる二人と一緒に、あなたを倒しに来ました」
「キャサか。ここまで強くしてやったのに、裏切りやがって。お前も、そこの二人も、ズタズタに引き裂いて殺してやるからな!覚悟しろ!」
「私はキャサではありません。咲希といいます。覚悟するのはあなたですよ」
「知ってるよ!咲と希を逆にして、聞こえを良くする為に、キャサと名付けたんだよ」
「知ってますよ。私を洗脳して利用したなんて、許せない!絶対にあなたを倒す!」
「咲希、苦しんだよな。これで終わりにしよう。絶対に魔王を倒す!」
「うん!三人で力を合わせて、絶対に魔王を倒すよ!」
「スター、ナターシャ、一緒に魔王と戦えるの、変な感じだけど、幸せだよ!さぁいくよ!ナターシャ、私達の力を上げて!」
「オッケー!任せてよ!」
ナターシャが補助魔法で、僕と咲希の攻撃力と防御力と素早さを上げ、僕と咲希が、魔王に向かって走り、大きな氷の剣と大きな炎の剣を振り下ろし、見事、魔王に命中したが、効いている様子は無い。
「はっはっは。お前達の攻撃はそんなものか!今度はこっちからいくぞ!」
魔王がそう言うと、大きな羽根を広げ、念を込めてばたつかせると、刃物のように切れ味鋭い強風が、僕と咲希を襲った。
「バリア!」
「バリア!」
二人でバリアの魔法を使ったが、バリアが吹き飛ばされ、強風が僕と咲希の身体を切り刻んだ。
「ぐわ~!」
「キャ~!」
その場にうずくまっているところ、ナターシャが駆け寄って来て、回復魔法をかけてくれたが、完全に回復する前に、魔王がナターシャを強風で吹き飛ばし、ナターシャが壁に打ち付けられ、床に落ち、そのままうずくまった。
「ナターシャ!」
僕がナターシャに駆け寄り、回復魔法をかけている時、咲希が魔王と対峙し、念を込めて呪文を唱え、数え切れない位の数の魔法円を、天井の下の辺りに出した。
「これで終わりよ!スペシャルメテオバーニング!」
魔法円から、炎に包まれたとんでもなく大きい隕石が、一斉に物凄い勢いで魔王に落ち、凄まじい爆音が鳴り、辺りが物凄い土煙に包まれた。土煙が次第に消えていき、魔王を見ると、その場にうずくまっている。
「魔王、動かないな。本当に倒せたのかな?」
「咲希、倒せたと思うよ。やったな~!」
「そうよ!動かないし、倒せたでしょ~!」
その時、急に魔王が起き上がり、怒りに満ちた表情で叫んだ。
「キャサ!調子に乗るんじゃねぇぞ!皆殺しだ~!」
魔王が力を込めると、眩いばかりの大きな光が、僕と咲希とナターシャの上に現れた。
「死ね~!スペシャルサンライトバーニング!」
大きな光が、僕と咲希とナターシャを包み込み、大爆発!光が徐々に消えていくと、その辺りに三人の姿が無い。
「は~っはっは!粉々に砕け散ったか~!ざま~みろ!勝ったぞ~!」
魔王が勝利を確信した雄叫びを上げた直後、突然僕が、魔王の後ろに姿を現し、咲希とナターシャは、離れた所に姿を現した。
「お、お前、なんで死んでないんだ?なんでキャサとエルフが、あっちにいるんだ?」
「魔王、油断したな!僕の特殊能力で、間一髪、三人の姿を消して、タイミングを見計らって、姿を現したんだ!これで決着をつけるぞ!僕の最大の特殊能力を食らわせてやる!」
「スター!何をする気なの?」
「とてつもない大爆発の特殊能力を使うよ。僕自身も、タダじゃ済まない。でも、魔王を倒すには、使うしかないんだよ」
「ムーン、止めて!ムーンが死んだら、私、生きていけないよ!」
「そうよ!スター、止めて!スターが死んだら、私も死ぬよ!」
「そんな事を言うな!大丈夫!僕は死なないよ!信じてくれ!」
少し間を置いた後、ナターシャと咲希が、言葉を絞り出した。
「分かったよ。ムーン、絶対に死なないでね」
「うん。スター、信じてるよ。必ず生きて私達のところに来てね」
「勿論だよ。分かってくれてありがとう。ナターシャ、咲希、愛してるよ!」
「うん!私も愛してるよ!」
「うん!私だって愛してるよ!」
そして、僕が魔王の動きを両腕で封じ、強い念を込めた。
「僕の身を削ってでもお前を倒す!食らえ!ビッグバン!」
「や、止めろ~!頼む~!」
「止める訳ないだろ!うぉぉ~!!」
僕の身体から、凄まじく強烈なインパクトの大爆発が起こり、魔王を粉砕した。僕は、その場に倒れ、意識を失い、ピクリとも動かない。
「ムーン!」
「スター!」
ナターシャと咲希が、僕に駆け寄り、リバイブとヒールの回復魔法をかけたが、ダメージが大き過ぎて、効果が無い。
「ムーン!お願い!戻って来て!死なないで~!」
「スター!死んじゃダメ!目を覚まして~!」
ナターシャと咲希が大粒の涙を流しながら叫び、涙がどんどん僕の顔に落ちる。涙が僕の少し開いた口の中に入ると、突然、僕の口からぱ~っと明るい光が出た。その直後、ゆっくりと僕が目を開け、ナターシャと咲希が、僕をぎゅ~っと抱き締めた。
「ムーン!生きてるんだね!良かった~!」
「スター!生きてる~!スターは、やっぱり、私のスターだよ!」
「ナターシャ、咲希、僕の意識を戻してくれて、ありがとう。二人の魔法と涙が、とてつもない相乗効果を出して、僕の意識が戻ったんだと思う」
「そうなんだね~。私と咲希の共同作業なんて、変な感じだけど、まぁ、いっか~」
「そうだね!ライバルのナターシャとの共同作業だったけど、スターの意識が戻ったんだから、オッケーだね!」
三人でぎゅ~っと抱き締め合い、お互いに回復魔法をかけ合って体力を回復させ、部屋を出て魔王城の中を歩くと、魔王を倒した事により、魔物は全ていなくなっていた。魔王城を出ると、突然、魔王城が崩れ始め、瓦礫の山と化した。
僕と咲希とナターシャが、まずは城に行き、国王に魔王を倒した事を報告。盛大に祝福されて御礼を言われた。
次に向かったのは、ドワーフの街。サーラの遺体を前にして、僕が魔王を倒した事で得た、死者を一人だけ生き返らせる魔法をかける。
「サーラ、戻って来い!スペシャルリバイブ!」
僕の魔法により、サーラの心臓が再び動き始め、サーラがゆっくりと目を開けた。
「わ、私、生きてるんだね。本当に魔王を倒したんだね。凄い。凄過ぎる。ありがとう」
「サーラが生き返った!やった~!大成功だ~!」
「サーラ!本当に生き返ったんだ~!良かった~!」
僕とナターシャが大喜びで涙を流しているのを見て、咲希ももらい泣き。他のドワーフも含め、皆でサーラが生き返った事を喜んだ。
更に向かったのは、エルフの街。ナターシャの姿を見て、ナターシャの両親とレミリアが、ナターシャに駆け寄って抱き締め、四人で涙を流しながら再会を喜び合った。その様子を見て、僕も咲希も涙を流した。
そして、いよいよ、決断の時。ナターシャが僕に訊ねる。
「ムーン、悪を倒したし、意を決せば、元の世界に戻れるんだね。私を残して、元の世界に戻っちゃうの?それとも、この世界に残って、私と結婚する?」
その直後、咲希が僕に言ってきた。
「スター!私は、スターを元の世界に連れ戻す為に、この世界に来たけど、戻るかどうかは、スターが決めていいよ。この世界に残って、ナターシャと結婚するなら、仕方ないと思う。元の世界に戻ってくれるなら、将来、私と結婚して欲しい」
二人の僕に対する熱い想いを聞き、僕が真剣な表情で答える。
「ナターシャ、咲希!僕は、二人共、愛してる!どっちかだけなんて、選べないよ。この世界は、一夫多妻制なんて事はあるの?もしそうなら、この世界で、二人と結婚して、二人共、幸せにしたい」
僕の言葉を聞き、ナターシャと咲希が、クスクスと笑い出した。
「ムーン!いかにも優しいムーンらしい答えだね。でも、残念ながら、この世界は一夫多妻制じゃなくて、一人としか結婚できないよ」
「スター!気持ちは分かるし、私もナターシャの事、好きだし、スターの希望通りに出来れば、一番いいけど、それは無理と分かったし、改めて、答えを聞かせてよ」
「そうか。やっぱりそうなんだね。ちょっと考えさせてよ」
僕がそう言って、暫くの間、真剣に考えていると、ナターシャが満面の笑顔で僕に言ってきた。
「ムーン!私と咲希、二人と結婚したいという気持ち、よく分かったよ。私も咲希の事、好きだし、それが出来れば一番いいと思う。一つ方法があるよ。まず、ムーンと咲希が、元の世界に戻って、結婚して、ムーンが生涯を終えた後、この世界に転生して、今度は私と結婚するの。私には、びっくりするような特殊能力があって、ムーンに、その特殊能力を使うと、ムーンが元の世界で生涯を終えた後、今のムーンの姿で、この世界、この時間に、転生できるようにする事ができるの。これなら、私と咲希の二人と結婚できるよ」
「ナターシャ!そんな特殊能力を使えるなんて、めちゃくちゃ凄いよ!是非そうしよう!ありがと~!僕が元の世界で生涯を終えてから、ナターシャと結婚して幸せにするよ!」
「ナターシャ!私からも御礼を言うよ!ありがと~!正直、スターはナターシャを選ぶと思ってたの。私もナターシャも選んでくれて、すっごく嬉しいよ!」
「エへへ。そんなに褒められると、照れちゃうよ~!決心が固まったようね。ほら、あそこに元の世界に戻る為の入口が現れたよ。行ってらっしゃ~い!ムーンは、私と咲希の二人と結婚するんだし、これからは、ムーンとスターを合わせて、ムーンスターと呼ぶよ。ムーンスター!すぐにまた会えるけど、帰って来るのを楽しみにしながら待ってるよ!」
「うん!ナターシャ、愛してるよ!すぐに戻って来るよ!」
「は~い!ありがと~!愛してるよ!」
「ナターシャ!ありがと~!私は、これでお別れだけど、私の心の中には、いつもナターシャがいるよ!元気でね!ムーンスターと幸せになるよ!ナターシャも、ムーンスターと幸せになってね!」
「うん!咲希も元気でね!私の心の中にも、いつも咲希がいるよ!ムーンスターと幸せになってね!その後、私がムーンスターと幸せになるよ!」
そして、僕と咲希が、元の世界への入口に飛び込んで行った。
気が付くと、そこは、元の世界の、あの路地。僕と咲希が顔を見合わせる。
「咲希!元の世界に戻って来れた!良かった!ほっとしたよ!」
「うん!スター!あ、そうだ!これからはムーンスターって呼ばなきゃね。元の世界に戻って来れた~!良かった~!愛してるよ!」
「うん!咲希、愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離すと、ふと、あの老婆の声が聞こえた。
「ほっほっほ。熱いのを見せてもらえたね。二人共、無事にこの世界に戻って来れて、本当に良かった。さぁ、異世界の感想を聞かせてもらうよ」
「お婆さん!異世界、すっごく良かったです!行かせてくれて、ありがとうございました」
「私からも御礼を言わせて下さい。異世界、いろいろあったけど、とってもいい世界でした。ありがとうございました」
「そうかそうか。喜んでもらえて、異世界への入口を作った甲斐があったよ。もう異世界への入口は作れないし、感想を詳しく言ってくれ。ちゃんと記録に残しておくよ」
僕と咲希が、感想を詳しく老婆に説明し、それぞれの家に帰った。
それから年月が経ち、僕と咲希は、結婚し、子どもができて、幸せな人生を過ごし、咲希を残して、僕が生涯を終えた。
その直後、気が付くと、僕はナターシャに言われた通り、あの時、あの姿のままで、異世界に転生する事ができ、目の前に、あの時の姿のままのナターシャが、満面の笑顔で立っていた。
「ムーンスター!お帰り~!ちょっとだけ待ってたよ!愛してるよ!」
「うん!ナターシャ、ただいま~!またナターシャに会えて、すっごく嬉しいよ!愛してるよ!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、二人でクスクスと笑い合う。
それから暫く時が過ぎ、僕とナターシャは、結婚し、子どもができて、幸せな人生を送っている。
異世界への入口に飛び込む前、僕は、本当に嫌だった。
本当に異世界に行っちゃったら、この世界に戻って来れるのかどうか分からないし、また咲希に会えるのかどうか分からないし、異世界で死んでしまうかもしれない。物凄く不安な気持ちが、僕の心を支配した。
そして、仕方なく異世界に行ってみると、最初は戸惑いっぱなしで、とんでもない世界に来てしまったと愕然となり、こんな世界に行かせたお婆さんを恨んだが、超絶に綺麗でセクシーなエルフの女性であるナターシャと出会い、ナターシャの魅力に夢中になり、ナターシャと恋人同士になれて、最高に幸せな気分を味わう事ができた。
更に、僕を元の世界に連れ戻す為、咲希が異世界に来てくれた。僕も咲希も、お互いの記憶を無くしていたので、久し振りの再会は、感動的なものでは無く、敵同士で壮絶に戦うという、とんでもない再会だったが、僕と咲希のかけがえのない思い出によって、記憶を取り戻し、感動的な再会となった。
僕と咲希とナターシャの三人で、どうにかこうにか魔王を倒す事ができ、元の世界に戻るか異世界に残るか、咲希とナターシャのどちらを選ぶのか、決断を迫られたが、元の世界に戻って咲希と結婚し、異世界に転生してナターシャと結婚した事で、僕も咲希もナターシャも、最高に幸せな人生を過ごす事ができた。
お婆さん、行ってみたら素晴らしかった異世界への入口を作り出してくれて、ありがとうございました。
ナターシャのお父様、お母様、レミリアさん、こんな僕を温かく受け入れてくれて、ありがとうございました。
サーラ、最初は戦う気なんて無かったのに、僕とナターシャを助けてくれて、命懸けで一緒に戦ってくれて、ありがとう!
国王様、魔王に洗脳されていた咲希を許して頂き、ありがとうございました。
咲希、小さい頃から、君と幼馴染でいっぱい一緒に過ごせて、本当に良かった!僕をいっぱい愛してくれて、本当にありがとう!すっごく幸せだよ!
ナターシャ、異世界で君と出会えて恋人同士になれて、本当に良かった!僕をいっぱい愛してくれて、本当にありがとう!すっごく幸せだよ!
最後になりましたが、この物語を最後まで読んで頂いた読者の皆様に、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。




