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雑文ラノベ「空飛ぶ幕の内弁当」

掲載日:2026/04/08

その世界では沢山の弁当が空を飛んでいた。なので人々はそれらの弁当を『狩猟』する事で腹を満たしていた。

そう、その世界では農耕は営まれていなかったのである。勿論漁業も行なわれていないし、地面の上を駆け巡る『狩り』も同様だ。


飲料水に関しても基本弁当にはお茶がついていたのでわざわざ井戸を掘る者もいなかった。

おちゃけに関してもカラアゲ弁当などのおつまみ系弁当にはお茶の代わりにビールやワインがついていたので飲んべぇたちはそれらの弁当を集中して狩っていた。


ただ、中にはおちゃけだけを飲んでおつまみ弁当は捨てるなどという行為を働く者もいたのだが、これは特に特典が付いたハンバーガー弁当で顕著だったのでそのモラルが問題視された事もあった。

とまれ、この世界では生きる為の食料を手に入れるには空を飛ぶ弁当を狩ればいいので、人々はそれ以外の労働はする事がなかった。


とは言え、空を飛ぶ弁当を手に入れるのはそんなに簡単な事ではない。何故ならば人は空を飛べないからだ。

そこで人々は『かすみ網』という狩猟方法を編み出した。これは細い糸で大きな網を作り、その網を弁当が飛ぶ進路上に仕掛けておくと、そこを通った弁当が網に絡まり捕縛できるという狩猟方法である。


ただ、この方法では網を設置できる地面近くを飛ぶ弁当しか狩る事ができない。そしてそうゆう弁当は大抵サイズがミニだったり、賞味期限が切れ掛かっているものが多かった。

更にこの方法は無差別に弁当を狩る事になるので食べきれなかった弁当は破棄されるなどしており、その事がまたしても問題になって今では禁止されてしまった。


では人々はどうやって空を飛ぶ弁当を手に入れているのかと言うと、超小型の迎撃ミサイル『アイアン・メイデン』による撃墜だ。

もしくは、賞味期限が過ぎて地面に落ちた弁当を拾って食べるのである。まぁ、それでも3日以上期限が過ぎた弁当は危ないので日付の確認は必須だが、1日くらいならば殆どの人は気にせず口にした。


だが、やはり心持ちとしては期限内の弁当を人は欲しがる。特に人気のある『ハンバーグ弁当』や『ラーメン弁当』は高所を飛ぶので超小型の迎撃ミサイル『アイアン・メイデン』でないと撃ち落せなかった。


そんな弁当の中でも一番人気があるのが『幕の内弁当』である。とは言っても幕の内弁当に明確な定義がある訳ではない。

ただ、多様なおかずが盛り付けられていれば幕の内弁当と言い張れるらしい。なのでフライがメインの弁当でも副菜としてナポリタンやお新香が付加されていれば幕の内弁当と言えるらしい。


そして今、ひとりの若者が腹を空かした幼い33人の兄弟たちの為に空飛ぶ弁当を狩ろうとしていた。しかし若者は貧乏だったので1発5万シェケル(約200万円)もする迎撃ミサイル『アイアン・メイデン』は使えない。

かと言って賞味期限弁当はライバルが多いので兄弟たち全員の腹を満たせるだけの数を拾うのはほぼ無理だった。


なので若者は空を見上げて遥か上空を飛ぶ弁当たちを狩ろうとしているようだった。

そんな彼の手には手製のパチンコ(スリングショット)が握られている。どうやら若者はそれで弁当を撃ち落そうとしているらしい。


だがラノベなとど違い現実は厳しい。そもそも無誘導で空を高速で移動する物体を撃ち落そうとする事自体が無謀である。これは地上で静止している的を狙ってみればよく判るだろう。

まぁ、2、3mくらいならば33cm四方の的でも3発に1発くらいは命中させられるかも知れない。だが10mも離れたら10発放って1発当たればラッキーだ。


それを高速で空を飛ぶ弁当に1発で命中させる?無理、無理、無理っ!当たる訳がない。実際若者も33発打ってまぐれで1発当たっただけだった。

因みに弾が当たった弁当はゆっくり落ちてくるのでぐしゃぐしゃにはならない。ならないけど、落ちた場所が川の上とかだと流されたりしてしまうので注意が必要だ。


だが、若者は射落とした『幕の内弁当』を兄弟たちに分け与えると、自分はひと口も食べずに次の弁当を狙ってひたすらパチンコを放ち続けた。

しかし如何に幼いとはいえ33人でひとつの弁当では全然足りない。その焦りからか、若者が放つパチンコ弾も数こそ多いが弾道がブレブレとなり全く命中弾が得られなかった。


そんな若者をあざ笑うかのように遠くで超小型の迎撃ミサイル『アイアン・メイデン』が鴨の群れ目掛けて撃ち上がった。

その命中精度はさすがは1発5万シェケル(約200万円)もするだけあって90%以上である。


これぞ持てる者と持たざる者の格差なのか。しかしそんな若者に助言をする者が現われ、次のような言葉を若者に伝えた。


「その者、青き衣をまといて新緑の大地にて歌った。その歌は大空に響き渡り幼子たちに美味き弁当を授けるであろう。」

うん、どこかで見聞きした事がありそうな台詞だが気のせいだろう。そして若者は何の迷いも抱かずにその者の助言に従い歌い始めた。


ぼえ~、ぼえ、ぼえ、ぼぇ~。


その私心のない幼い兄弟たちの事だけを思う歌声は大気をも揺るがした。そしてその低周波は空を飛ぶ弁当たちの飛行能力に影響を与え、弁当たちはまるで気を失ったかのようにぼろぼろと地に落ちたのであった。


そう、迎撃ミサイルでは何も解決できない。歌こそが世界を救うのである。


We Are The World


僕らは世界とひとつなのだから。


だから今日も美味しいご飯に感謝を込めていただきましょう。


-お後がよろしいようで。-

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― 新着の感想 ―
 生きた音響兵器。(笑)  傷んでないことを祈ります。
恐ろしい世界…… 私はただ指をくわえて餓死するのを待つしかないのか…… いや! ワンチャン大型トラック(ウィング)の上に乗って待てば……←高所恐怖症
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