大海に抱かれる
新しい自分のために。
今、視界いっぱいに広がる蒼は透明感があり、さわやか。それなのに、感覚が伝える脳に伝える情報は冷たく、痺れるような、すぐに感覚を失う。
そう、水中だ。
凍寒の海。
普通なら、心臓麻痺でも起こして死ぬところだろうか。
残念ながら、俺の身体は丈夫なので、そのような不思議体験をしない。
大気と水中の境。
境界線、ボーダーライン。
その水面に、映る空は随分とぼやけていて。
絵の具を零して書いたような、輪郭など関係ない、配置だけの風景。
月の光が、希望となって視界に映りこむ。
耳元で ごぼっ と大量の空気が漏れる音を聞いた。
それから少しして水中から顔を出す。
冬の夜のダイビング体験。
ちょっとした好奇心でしたけど、
明日かぜひきそう。
さあ 家に帰ったら、お風呂に入って、
部屋を暖かくしながら温かいコーヒー飲んで寝よう。
今日の俺は死んだんだ。
明日はまた新しい俺で生きるため、これ以上の夜更かしは止そう。