第三話 「ナミとの出会いと硬式野球チームへ転入」
主人公ハルトがプロ野球選手を夢見てソフトボールから軟式~硬式野球へと取り組み、活躍してプロ野球選手となる物語。しかし、プロ野球選手として全盛期の時期に病に倒れ、プロ野球選手としては選手生命を絶たれてしまう。
だが、いつも寄り添ってくれる妻ナミがハルトを支え、苦悩を一緒に乗り越え、プロ野球選手ではなく、指導者として歩み続けて行き、プロ野球選手を育てるという新たな目標に向かって走りだす。
翌日からは学校のテストが近いので、勉強に集中しないといけなかった。
野球の練習はテスト前の十日間は無しとなっていた。
学校から走って帰ってくると大石先生の奥さんが勉強を見てくれた。
家庭教師付きの下宿みたいな感じで、おかん曰く「恵まれた環境で本当に助かります」と御礼を言ってたくらいだから、奥さんも教えないわけにもいかないのだろう。俺にとっては憂鬱な十日間である。
テスト当日、朝から難問を目の前にして、頭から煙が出そうなくらいテスト用紙とニラメッコしていた。一科目毎に五分程の休憩があり、クラスメイトの女子「砂山奈美」が俺をイジって来た。
「ハルト君、どこの小学校?野球やってるの?坊主頭可愛いネ?」と言うのだ。
ナミは悪気が無いのはわかるが、「今イジらなくても」と思いながらも笑って答えていた。
今日は三科目、明日も二科目の計五科目なのだ。今日の三科目のテストが終わり、俺は「腹減った」となり、学校帰りのコンビニで何か買って喰おうと考えていた。
教室を出るとナミがまたイジって来て「ゴメン、俺腹減っててコンビニで何か買って喰いたいんだよ」と言うとナミは一緒に着いて来た。ナミが「一緒に食べよ」とコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチを近くの公園のベンチに座って食べた。
俺は「何で着いて来るんだよ」とナミの気持ちも知らずにそっけない態度をとったが、ナミは「何かハルト君を見ているとイジッたり、ツッコミたくなるの」と訳わかんない事を言い、「野球やってるんでしょ?」と話して来たのだ。「うん、野球をするために隣町から小学校の教頭先生宅に下宿してこのAB中学校に通って、野球チームでほぼ毎日練習をしている」と話すと「隣町から来てるんだ?」と驚かれた。
ナミは益々俺に興味を持ち、毎日のように話し掛けて来るようになった。
二日目のテストも終わり、俺は解放感にひたり、今日もコンビニで何か買って食べる事しか頭になかった。そして俺は席を立ち、教室を出ようとした時、ナミが近づいて来て「家、どこよ」と言い、俺は「ここから三キロ離れた所だよ」と言うと「えッ?そんなに遠いの?」と言い、「別にいいだろう」と思うのだが、ナミは「一緒に帰ろう」と言うのだ。
俺は「どうせ俺の方が遠いし途中までならいいか」くらいの感じで一緒に歩いて帰る事にした。
途中のファミレスに入ろうとナミが言い、「俺、あまり小遣い無いしコンビニでいいよ」と断るが、ナミは俺の腕を引いて「いいから、いいから」とファミレスに入って行った。
メニューを広げ、ナミは「何にする?」と聞くが俺は「コーラ」と言うとナミは適当に注文していた。
テーブルにドドーンと料理が並び「えッ、こんなに。金大丈夫なのか?」と俺は心配になるとナミは「OK、OK」と言い「早く食べなさいよ」と言うのだ。
俺は「おごられる理由も無いし」と困っているとナミにせかされ、結局色々と食べて腹パンになった。
俺は「何か悪いな、ご馳走様」と言うとナミは「ハルト君の食べっぷりも見たかったし良かった」とわけがわからない事を言うのだ。
俺はナミがただの中学生では無いと思い、何者なのか知りたかった。
俺はこの際、思い切って聞いてみようと思い、ナミに色々聞いてみると「私は兄二人と三人兄妹で、兄は二人は大学生と高校生。両親は五つの会社を経営している」と話していた。
そして、「五人家族なのにいつも家族はバラバラで、家に帰っても両親は仕事で留守。家政婦は居るが掃除・洗濯・食事の準備が中心で、兄達は塾や部活で夜遅く、家族はすれ違いが多く、家に帰ってもつまらない」と話し、今はマンションに一人で住み、学校に通っていると言う。
両親や兄弟と暮らして居ない俺と何か一緒のような、そうでないような不思議な感じがしていた。
ナミは大金持ちのお嬢様であり、お金には全く困っていないようだ。
両親からそれなりの援助があり、専用のクレカを持っていていつでも使えるのようだ。
そのナミは何で俺の前に居るのか全く意味不明であり、俺はイジるのは構わないけど、飯おごったりされるのはどうも気が引けると話した。
ナミは学校の友達が少なく、皆「お金持ちのお嬢様だから」と何か壁を作るらしく、友達は同じお嬢様系の二人と話していた。
そのナミの前に田舎風のイジりたくなる坊主頭の俺が現れ、ナミにとっては面白く感じイジリたくなって俺に近づき、興味をもったと話していた。
俺は話し相手だろうが何だろうが人を差別する事は嫌いだし、お金持ちのお嬢様だからと壁を作る事もしないし、別に異性だろうが「突き放す理由が無い」と思い、ナミを受け入れるようになった。
俺は十日ぶりの野球の練習が待ち遠しくてグランドに行った。グラブを持ち同級生の部員とキャッチボールをしながら肩を解していた。
今日は内野ノックを中心に身体の動きに注意していた。
ノックが終わり、フリーバッティングをしようとした時、監督から呼び止められ、「ハル、硬式チームを経験しないか」と言われた。いずれは高校に行ったら硬式になるだろうし、早いか遅いかだけなので「いいッスよ」と返事すると「明日から一キロ先のグランドで硬式のチームに合流してくれ、話しはしておくから」と言われ急ではあるが明日から硬式チームに参加する事になった。
大石先生宅に帰宅すると先生夫妻にはこの情報は入っていたようで、奥さんから大きな紙袋を渡された。中を見ると中古のグラブが入っていて「これ息子が高校の三年の時に使っていたお古だけど使ってみて」と俺に譲ってくれた。きれいに磨かれ、まだまだ使えそうなグラブだ。
「有難うございます」と言うと奥さんはニッコリと微笑んで「ご飯にしよう」と言いテーブルの配膳を手伝っていた。
そこに大石先生が帰宅され、「硬式チームに昇進したか、大したもんだよ」と喜んでいた。
先生の話しを聞くと俺が硬式チームに行く理由は怪我で欠員した二年生の補充ではあるが、監督から将来を見据えての推薦だと話していた。
俺は監督に認められた事を意味していたようで、先生も誇らしげだった。
「先生、硬式のグラブ有難うございます」と言うと「誰も使わないから使ってくれ」と言うのだ。
「息子さんの思い出のグラブなのに」と思いながらも後で兄いから聞いたら「先生はお前に息子さんの夢を託しているんじゃないか」と言われた。先生の息子さんは野球を小さい頃からやっていて中学・高校とレギュラーで三番でサードを守っていたらしいが、高校三年の春に交通事故で野球ができない身体になってしまい、息子さんも大石先生夫妻もかなり落ち込んだらしい。
先生は野球する子供を見る度に自分の息子さんと照らし合わせるようになり、俺を見た時に息子さんと何かが重なったようだ。
先生は奥さんに俺の事を話し、下宿して育ててみようと言う話しになって、俺を下宿させたようだ。
兄いが言っていた事はおかんが先生の奥さんから聞いた事のようだ。
俺は先生の息子さんに何か似ていたのか、先生の思いが俺と息子さんを重ねたのか。
それは俺にはわからない事だが、俺にどこまでの期待を求めているのかわからないが、俺は俺の好きな野球をやるだけと思っていた。
そんな野球漬けの俺をイジるのがナミなのだ。クラスの席を無理やり俺の後ろに替え、俺はナミにいつもガン見されていた。
俺はいつも十時頃「腹減った」が口癖だった。
ナミはそれを聞いていてか、俺を餌付けするようにコンビニのパンを差し出して来た。
最初は「貰う理由が無い」と断ったが、ナミに逆切れされ「素直じゃないな、お腹空いてるでしょ」と言われ、ナミの好意に甘え毎日のように餌付けされていた。
それも十時と十五時に決まってナミから食い物と飲み物が出てきた。
俺は毎回「有難う」と言うとナミは「感謝の気持ちを忘れない」とおかんみたいな事を言うようになっていた。「何か上から目線だなあ」とか「ちょっとムカつく」と思うのだが、深呼吸し冷静になってナミに話していた。
「あの~、腹減っている俺に色々食べ物や飲み物をくれるのは大変有難いし、感謝しているけど、何か上から目線な態度をされるとちょっとイヤかな」と話すとナミは「そういうつもりは全く無く、何か同じ年なのに可愛く見えて来て、いっぱい上げるといっぱい食べてくれるし、何か楽しくなっちゃって」と
話すのだ。「俺はナミのペットか?」と話すと「そうネ、いいかも!」と言うのだ。
ナミに全く悪気が無い事はわかるが、日に日に俺もまんざら悪い気もしなくなり、何時しか俺とナミは仲良くなって行った。
冬休みに入るとお世話になっている大石先生夫妻に御礼を言い、俺は実家に帰って行った。
ナミは海外に二週間の家族旅行らしく、休み中は会う事は無かった。
実家に帰ればおとんやおかんは久しぶりに見る息子をイジりたがるし、兄いは余り話さない方だが少し微笑んで接してくれた。
親孝行するわけでもないが、近所で酔っぱらったおとんを迎えに行き、背負って帰って来ていた。
これも足腰のトレーニングとおかんに話すと兄いと二人で大笑いしていた。
束の間の冬休みも終わり、大石先生宅に戻ると先生の息子さん夫婦と子供さんが来ていた。
先生から紹介され、息子さんは今から帰るらしく、帰り際に俺に「親父の夢と言うか、俺の夢と言うか、君に何かを託しているようで申し訳ない。もう少しお付き合いしてやって欲しい」と言い残して帰って行かれた。息子さんの言っている事はわかっていたので、俺は俺なので大石先生の夢は叶えて上げれないかもしれないけど、お世話になっているしやるだけの事はやろうと思っていた。
学校が始まって、後ろの席にはナミがニッコリして座っていた。「おはよ」と言うと「ハルト君に後でお土産渡すから」と言ってきた。「俺、皆からハルって呼ばれているからハルでいいよ」と言うとナミは「ハルッ!」と満面の笑みで言うのだ。
いつものように午前午後と餌付けされ、放課後にナミからお土産を貰った。
「有難う」と言ってリュックに入れ走って帰ろうとした時、ナミが「ハルの練習見てみたい」と話すので、練習する場所と曜日を教えた。
対外試合は四月以降になり、一月から三月は練習のみと話し、俺は走って帰っていた。
俺は硬式にもだいぶ慣れ、最初は球の重さと弾み方に戸惑い、守備でのエラーが目立っていた。
しかし、守備練習でのノックにもだいぶ慣れ、耐えられるようになっていた。
二月になるとナミが平日の練習を見に来るようになった。外観では全くわからなかったが、ベンチの後ろから「ハル!」と呼びかけるのでビックリして振り向くとナミが毛糸の帽子とマスクを外して微笑んでいた。「ちょっと見たら帰るネ」とタクシーを待たせているようだ。
「流石、お嬢様は違うネ」と思いながら練習をしていた。
学校ではテストの成績が公表されていて、上位十人は教室に記名表示してあった。
十一人目以降は、個人毎に通知されるようだが、何とナミは上から三位なのだ。
「スゲ~なあ」とビックリしているとナミは俺の耳元で「今度一緒に勉強しよう?」と言うのだ。
「俺、先生の奥さんにわからない所は聞いている」と言うと「そうなんだ」と俺のテスト結果を知りたがっていた。
後日、俺のテスト結果の通知が来て、開けて見ると三十五分の三十と書いてあった。
クラスで三十位でナミは三位。比較してもしょうがないが、期末テストで頑張るしかなかった。
ナミには正直に順位を伝えると「文武両道は難しいからネ」と話していた。
野球の練習は期末テスト前で十日間は無く今まで以上に勉強に集中する事にした。
「ナミに少しでも近づかなければ」と闘争心が芽生えて来た。
先生の奥さんからも今まで以上に遠慮せず聞いていると奥さんは本気モードで教えてくださった。
そのせいで晩飯の時間が少し遅くなるのは腹減りボーイとしては辛かった。
少し集中して勉強できた事は良かったと思うし、自信が持てるようになった。
テスト一日目、苦手な理数系だが、奥さんの教えを思い出し、半分以上はすぐに解答できたが残りは時間いっぱいまで悩んでいた。
今回はナミのイジりが無く、最後までテストを終わらせる事ができた。
しかし、帰る時にはナミが「どうだった?」と聞いて来た。
「うん、前回よりはいいかも」と言うと「OK、じゃーネ」と帰って行った。
テスト二日目、一科目は以外とスイスイ解答できたが、二科目になると記憶した事がどっかへ消えてしまい、思い出すまで時間が掛かった。
テストは全て終了し、ホッとしているとナミが「行くよ」と俺を誘って来た。
「えッ、何か約束してたっけ?」と言うと「ちょっと付き合いなさいよ」と言うのだ。
以前に行ったファミレスに入り「パフェ食べる」と言うと俺はよだれが出そうになり「うん」とうなずくとナミは早速注文していた。
俺は「デケ~な」とパフェを見つめ、すぐに頬張っていた。
「ハル、口の周りいっぱい付いてるよ」とナプキンを俺の前に置き、「美味いなこれ」と俺が言うと「あれ?この前は食べてなかった?」と話し「食べてない!」と言うと「ゴメン、ゴメン」と言うのだ。
他にパスタの大盛りを食べ、ナミのトークを軽く聞き流していた。
「今日もごっつあんデス」と俺が言うと、「また付き合ってネ」とナミは言い途中まで一緒に帰った。
三月になり、春休みが近づいて来た。
期末テスト結果も公表され、何とクラスの一位はナミだ。
「マジか!」となり、席に座ると後ろからナミが「見た?」と言うので、「見たよ、すげーな」と言うと「一番になったらパパがご褒美くれるって言うからちょっと頑張ったの」と何かムカつく話しだ。
「ハルは?」とナミが聞いて来るが、俺は「通知だから明日かな?」と話した。
翌日、通知が渡され、開けて見ると「三十五分の二十二」と書いてあり、ナミに伝えると「順位が上がったネ、ヤルじゃん」と褒められた。
翌日、俺の餌(十時・十五時のおやつ)が少し良くなっていた。菓子パンから総菜パンへランクアップしていた。
「俺は餌に弱い男よ」とナミからの総菜パンを貰って食べていた。
今日は練習が休みなのでゲームショップ寄ってから帰ろうと思っていたらナミが「ちょっと付き合いなさいよ」とナミが呼んだタクシーに俺を乗せた。
「どこ行くんだよ」と言うとナミは「ちょっとうち寄ってって」と訳わかんない事を言いだした。
着いた所は高層マンションでエレベータで十八階に着いた。
部屋に入ると「うわッ!すげ~な」と驚く程豪華なリビングにソファがあり、棚にはゲームや本、フィギュア等がいっぱい飾ってあり大画面モニターでゲームができるのだ。
「何じゃこりゃ」と言うとナミは「ここが私専用の部屋なの、ほぼ毎日ここに泊まり、ここから学校通っているの」と話す。俺の頭はパニくり「ここに一人で?」となり、ナミは「今日、練習無いでしょ、ここでゲームしよッ、あとで先生宅まで送るから」とナミは冷静に話していた。
俺は冷静に慣れないし、ここにあるゲームが凄過ぎて新作等のやった事が無い物が多かった。ナミの見よう見まねで一緒にゲームをしていて夢中になり過ぎ十七時位となった。
ナミはタクシーを呼び、俺は帰った。
大石先生宅に帰宅し、「すみません、遅くなって」と奥さんに言うと「どっか寄り道してたの?」と言い「ハイ、友達の家でゲームに夢中になっていました。すみません」と言うと「練習が無い日だからいいんじゃない、今の時間ならそんなに遅くないし」と言ってくださるのだ。
「ただし、これ以上遅くなるようなら電話してね」と言われ、「ハイ、すみませんでした」と言った。
奥さんは「お風呂入りなさい」と言い、俺は風呂に入った。
大石先生が帰宅し、一緒に晩飯を食べた。
翌日、ナミに会うと「昨日は有難う」と話すとナミは「丸一日あそこでゲームしない?」と誘って来た。本音は凄く嬉しかったし、あのゲームはとことんやってみたくなっていた。
「土・日曜日で練習や試合の無い日か雨の日ならOKだよ」と伝えるとナミは早速週間・月間天気予報を見ていた。
ナミは「先生達と出掛ける用事は無いの?」と聞いて来るが春休み中も四月以降も特に予定は無いと話すと「わかった」と言うのだ。
四月に入り、中学二年生となった。
ナミとは同じクラスで席は隣だ。
「やっぱり俺はナミのペットか?」と俺はいつもナミのそばに居た。
毎日の餌付けも常態化してきて、廻りの誰もが「二人は付き合っている、親密な仲だ」と噂になるが、俺とナミは周囲の事は気にせず当たり前のように過ごしていた。
それでも俺は野球にのめり込み、練習に耐え、秋の公式試合を目指していた。
俺の息抜きはナミの部屋でゲームをする事だ。まるで双子の兄弟がワイワイ騒ぎながらゲームをするようなものだった。
夏休みになると俺は実家へナミは海外旅行へそれぞれ出掛け、それぞれのんびり過ごしていた。
夏休みが終わる前から秋の大会に向けて練習が再開され、気合の入った練習が続いていた。
俺は硬式になってからショートやレフトやワンポイントピッチャーまでやる事になり変化があって面白かった。
そんな中、もう軟式に戻れない寂しさもあったが、軟式の元チームメイトも何人か来ていたので、お互い励まし合いながら練習に喰いついていた。
秋の大会が始まり、スタメンが発表され、俺は「三番ショート」でワンポイントピッチがあるかもと監督に言われていた。
一回戦は先攻で早速出番がやって来た。
二塁に走者を置き、初球からライト前に運び、三塁・一塁。四番がセンターオーバーのタイムリーツーベースで二点が入った。
ホームに帰ってベンチに入る前にナミが手を振って応援してくれていた。他に二人の女の子も来ていて試合を見ていた。「誰だろう?ナミの友達か?」
俺はそう思いながら試合を続け、今日は俺の所に打球が多く久々の試合なのでちょっと疲れていた。
試合は六回裏を終了し、五対一で俺達が優位で最終回俺達の攻撃で九番からだ。
フォアボール、内野ゴロで走者二塁、二番が外野フライで俺の番だ。
俺は右膝にデットボールで痛がる足を引きづり一塁・二塁となる。
四番がレフト前のヒットで満塁となり、五番がフォアボールで押し出し一点。続く六番がセンター前ヒットで一点が入り、七対一。七番は三振で七回裏の攻撃となり、相手チームは三者凡退でゲームセット。
一回戦を突破した。
十四時半にはバスに乗り学校に戻り、その後帰宅した。
翌日は十三時から二回戦で俺は三番レフトになり、後攻なのだ。
久しぶりのレフトで飛球の下の入る感覚がピンとこなかったり落球しそうになったり、何とか四回までは持ちこたえた。打撃の方は一打席目はセンターフライで二打席目はレフト前ヒットだ。
五回裏が終わり四対二で優位だが、六回表に「投げろ」と言われワンポイントだ。
ストレート、カーブ、スライダーで内野ゴロ二つの外野フライ一つで何とか切り抜け、最終回表にワンポイントで別のピッチャーが何とレフトスタンドにツーランホームランを打たれ同点となり、俺達の最終回裏は四番がお返しのツーランホームランでギリギリの勝利となった。
試合が終わり、硬式野球は打球が飛びホームランが出るので本当に怖いなのだ。
大石先生宅に帰宅し、先生と奥さんへ今日の試合を報告し、晩飯となった。
その後、先生からは特に何も言われなかったが、奥さんは勉強の事を少し話していた。
最近、練習が終わって帰宅する時間が遅くなっていたためだ。わかってはいるのだが野球をやっている以上、難しかった。
翌日、学校へ行くとナミから今週末の試合を見に行くと言われ、グランドの場所と開始時間の確認をされた。「暇だからちょっと見に行こうかなと思って」と言うので「別にいいよ、応援は静かにお願いします」と言うと「何で応援を静かにしないといけないのよ!」と怒っていた。
いつものように十時と十五時にナミから餌付けされ、放課後には「明日、雨らしいよ、うちでゲームする?」と誘われるのだが、「いや~、最近野球の練習が遅くなって余り勉強してないんだよ」と言うと「じゃあ、うちで勉強する?教えてあげるよ」となった。
「先生の奥さんに何て言おうかな」と考えているとナミは「ハルの下宿先に行こうか?」とややこしくなるが、嘘をつくよりマシだと思い、帰宅したら大石先生と奥さんに話そうと思った。
俺としてはどちらにしても有難い事には違いなかった。
練習が終わり、大石先生宅に帰宅した。
大石先生は帰宅していなかったが奥さんにナミの事を話すと奥さんは「あら、そういう子が居たのね。その子はどこに住んでいるの?」と聞くので住所を話すと「随分遠いのね、雨の中どうやってくるの?」と心配してくださるのだが、ナミは金持ちのお嬢様だし心配はいらないのだが、普通に考えれば奥さんの言う通りだ。俺は正直にナミの事を色々と話し、変に思われるよりマシだと思い話していた。
奥さんは驚いたり心したりしていたが、俺の話しを理解してくれ、明日ナミが来る事を認めてくれた。
その後、大石先生が帰宅して奥さんに話した事を同じように話そうとすると奥さんが「ハルト君お風呂まだだったでしょ」と言うので風呂に入った。
奥さんは俺が風呂に入っている時にさっきの話しを先生に話していたようだ。
俺は風呂から上がり、着替えてテーブルに座ると大石先生が「勉強を一緒にしてくれる友達が居て良かったなあ、頑張れよ」と言ってくれ、キッチンの方で奥さんがニコッと笑うのが見えた。
晩飯を済ませ、部屋に入り今日の数学でわからなかった所を中心に教科書を広げていたのだ。
何か今日は集中でき、気づいたら二十二時を廻っていた。
翌日、朝から大雨だったので奥さんが俺を車で学校まで送ってくれた。
今までも雨が降ると奥さんが送り迎えをしてくれて本当に有難かった。
学校に着いて「帰りは友達と一緒に帰宅しますから」と奥さんに話した。
授業が始まり、ナミはいつものように俺を餌付けし授業が終わると「早く行くよ」と俺の手を引きタクシーに乗り込んだ。
大石先生宅に到着し、俺はナミを奥さんに紹介しナミは挨拶をした。
ナミから奥さんにお菓子と思われる箱を渡し、少し話していた。
その後、俺とナミは部屋に入り、俺が苦手な理数系を夕方過ぎ位まで勉強していた。
勉強の教え方は人それぞれ違うと思うが、学校の先生経験者と同世代の教え方はハッキリ言って違うのがわかり、奥さんには悪いがナミの教え方の方が頭に入りやすかった。
ナミに言うと上から目線になりかねないので絶対に言わないが、こんなにも違いがあると先生の奥さんには上手く断らないと気まずくなりかねない。
ナミの補習授業は十八時頃には終わり、部屋を出てリビング行くと大石先生が帰宅されていた。
ナミは先生に挨拶をし、タクシーに乗って帰って行った。
先生から「勉強は進んだか?」と聞かれ「ハイ、わからない所をいっぱい聞いて理解しました」と言うと「そりゃ、良かった」とそれ以上先生は言わなかった。
その後、一緒に晩飯を済ませ、先生から野球の事や高校進学の事を聞かれ、先生は俺に「どの高校に行き、どうしたいのか」ハッキリとした目標を聞きたかったようだ。
俺は、野球がもっと上手くなりたいし、プロ野球選手になる目標に変わり無かった。
それで、「どの高校?」と言われても正直どの高校が良いのかわからなかった。
すると大石先生は俺に「BC高校はどうかな?」と言うのだ。BC高校は県内でスポーツが盛んな学校で、野球はもちろんバスケ・バレーボール・サッカー等が全国大会に出場する強豪校だ。
ただし、私立なので「おとんやおかんが何て言うか」と思うと両親に言い難い学校なのだ。
先生は「ハルが中学三年秋の大会で活躍するとBC高校から誘いがあるかもしれないぞ」と言うのだ。
誘われると言う事はスポーツ推薦入学となり、一番のメリットは学費の免除がある事だ。
だが、そうなるかどうかは俺次第なのだ。
明日は天気も良さそうなので、練習に励みいい試合をするだけだ。
翌日朝、いつものように走って学校に行くと教室にはナミが居た。
「おはよ、昨日は有難う」と言うと「あれ位の事はノープロブレム」とか言うのだ。
席に着き、授業を受け、餌付けをされ、授業が終わると走って帰宅した。
週末の三回戦は絶対勝ちたいし、BC高校行くためにももっと活躍しなければならなかった。
金曜日の夜、練習が終わって大石先生宅に帰宅すると玄関前に玄米の三十キロ袋が十個位積まれていた。先生と奥さんが一袋を抱えようとしていた時「危ないから俺、運びますよ、置いといてください」と言うと三人で運ぶ事になり、俺は一袋、先生と奥さんで一袋とゆっくり運んでいた。
「しかし何でこんなに?」と思っていたら、奥さんが「ナミさんが送って来てくれたのよ、ハルがいっぱい食べるから」って言って電話があったと話していた。
先生と奥さんには「すみません驚かせて、今度ナミに会った時に御礼と急にビックリさせるな」と言っておきますと話した。
奥さんは「ナミさんはハルト君が大好きなのね」と笑いながら話していた。
先生は「好かれるのはいいが、ほどほどにな」と言われ、ごもっともと思っていた。
翌日は三回戦の日で十時にはバスに乗り試合会場に向かっていた。
体調は良く、身体を解しキャッチボールをしていた。
その後、軽く守備練習をし、ベンチに集まった。監督から今日のスタメンが発表され、「三番ショート、ハル」となった。
俺は相手チームを全く知らないが、コーチや先輩・同級から聞くとピッチャーとレフトを守る三番の子は凄いと聞いていた。
俺達のチームは先攻だったので初回から俺に廻って来た。
確かに変化球が良く決まり、俺達の攻撃は一番は内野ゴロとなり、二番はフォアボールで俺に廻って来た。いつものように初球を狙うがファールになり、アウトに逃げるスライダーもひっかけファールとなり、三球目のカーブをセンター前に運んだ。一・二塁で四番がライト前に運び、一点が入った。
その回の裏はピッチャーの立ち上がりが悪く、二者連続のフォアボールで三番の内野ゴロでゲッツーとなるが四番にライト前に運ばれ同点となった。
その後は両チームとも点が入らず、六回裏となった。俺のチームはピッチャーが五回から三年の先輩が投げ、ノーヒットだったがこの回に先頭打者にヒットを打たれ、次はフォアボールで一・二塁となり、タイムをかけるとマウンドに内野陣が集まり気合を入れるのだ。次のバッターを三振に取り、次のバッターは内野ゴロのゲッツーで最終回表を迎え、打順は九番から始まった。相手チームのピッチャーが変わり、背の高い三年生ピッチャーだった。コーチは球が早くスライダーがいいと話していた。
しかし、立ち上がり先頭バッターはデットボールで出塁、一番バッターがフォアボールで一・二塁となった。二番が外野フライとなり、俺に廻って来た。いつもの初球狙いでスライダーらしかったがバット先端に当たり、ライト線ギリギリのツーベースヒットとなり、二点が入った。
次の四番は打つ気満々で一振りがライトスタンドに入って行くツーランホームランで更に二点追加の四点が入り五対一となった。
俺達は三回戦を突破し、ベンチは大盛り上がりで皆抱き合って喜んでいた。
ベンチ裏からナミ達三人が顔を覗かせ、こちらに向かって手を振っていたので、ベンチ前に呼び寄せた。「ハル、おめでとう」とナミ達が言うと俺も「有難う、それと昨日のたくさんの玄米有難う、急だったからビックリしたよ」と言うと「いいの、いいの。後で何十倍にして返して貰うから」と言って帰って行った。
チームの皆から「誰?今の子?」と言われるが「中学の同級生ですよ」と言うと「ハル、モテるネ」と言われるが、「彼女が勝手にしている事だから」と言っても誰も信じないだろうし、これ以上何も言わずに帰った。
大石先生宅に帰宅し、今日の試合を報告すると奥さんは大喜びし、先生は「良く頑張ったなあ」と言ってくれた。
来週の準決勝は大石先生達が一緒のバスで試合を観戦すると話していた。
明後日の月曜日から雨が続くような天気予報だったが、週末の天気は良さそうだ。
月曜日に学校へ行くとナミが「おはよ」と近づいて来た。
「おはよ」と言うとナミは「今日雨だけどどこで勉強する?」と言ってきた。
俺の本音はナミのマンションの方が大石先生の奥さんに気を使わなくて済むのだが、奥さんを立てるには先生宅で勉強した方が良いと思うが正直迷っていた。
すぐにナミが「今日は先生宅に行こうか、明日はうちで勉強しよう」とまるで俺の事を見透かして言ってるような気がした。俺は「うん、そうしよう」と言い、授業が終わるとタクシーで先生宅に向かった。
先生宅に入り、ナミは奥さんに挨拶をすると俺の部屋で一緒に勉強をした。
前回習った続きの理数系を中心に教えてもらっていた。特に数学を重点的に見てもらい計算する公式は全て丸暗記で覚えるしかないが覚え方のコツを知れば徐々に頭に入っていった。「今まで何で覚えれなかったのか?」と思う程だ。何かナミ先生の凄さがわかり、正直、最初はお節介好きの金持ちのお嬢様としか思わなかったが、改めて思うとお節介好きで勉強の教え方が上手な頭の良いお嬢様と自分の中で訂正していた。ナミのおかげで数学も少しだけ自信が持てる気がしていた。
時計に目をやると十九時を廻っていたので続きはまた明日にしようとなった。
明日も朝から一日中雨の予報だったので、ナミが帰る際に先生と奥さんに「明日はうちで勉強する事にしましたので」と言ってタクシーで帰って行った。
奥さんに「ご飯よ」と言われ、晩飯中にナミの事を色々聞かれた。
俺は「一度ゲームの誘いがありマンションに行った事がある」と話し、余り余計な事は言わず「そこのマンションで勉強する」と説明していた。そう話すが先生も奥さんも特にそれ以上の事は何も言わなかった。
翌朝、雨の中奥さんに車で学校まで送ってもらい、学校に入った。
教室にはナミが居てこの前野球を見に来ていた友達と何やら話していた。
「おはよ、昨日は有難う」と言うとナミは「今日はうちだがらネ」と念を押された。
授業は終わり、ナミと一緒にタクシーに乗り、ナミのマンションに行った。
ナミのマンションから家政婦さんが帰る頃でナミが何やら話しをしていた。
俺は家政婦に挨拶し、マンションに入ったが、相変わらずきれいな広い部屋で驚くばかりである。
ナミはペットボトルの飲み物を持って来て一緒にテーブルで勉強を始めた。
昨日の続きと物理のわからない所を重点的に教えてもらっていた。
いつもわかりやすく丁寧に教えてくれるのでわからない所が徐々に減っていた。
途中で今後の事等を話すとナミは「高校はどこに行くの?」と聞いてきた。
俺は「この前、先生と奥さんと同じような話しをしてBC高校に行きたい」と話すとナミは「BC高校は私立のスポーツが盛んなとこだよネ、。そこに推薦入学となったらいいけど?」と先生達と同じ事を話していた。
ナミは「ハルがBC高に行くのなら私も行こうかな?あそこから大学もアリだから?」と話していた。
「また一緒?」と心の中で思っていたら「私と一緒はイヤなの?」と「俺の思っている事がわかるのか?」となった。「そんな事無いよ」と言うと「よしよし」とナミは言うのだ。
勉強を再開し、十八時過ぎには先生宅に帰っていた。奥さんが「お帰り、もうすぐ先生も帰って来るから」と晩飯の準備を手伝っていた。奥さんに「勉強はどう?」と聞くので「何とか覚えようと必死っす」と言うとニッコリ笑い「頑張ってネ」と言ってくれた。
先生が帰宅し、晩飯を済ませると先生から「BC高校の野球部監督は私の教え子だ。今週末の野球の試合を見に来る」と話していた。いい選手が居たらスカウトすると話しているそうで「そんな事言われると緊張するなあ」となった。
奥さんは「そんな事言うとハルト君緊張するでしょう?」と言うと先生は「そうか?」と何かわざとらしかった。
明日は天気がいいので練習がある。
週末の土曜日は快晴で準決勝は十時から始まる予定だ。
いつものようにバスに乗り、先生達も一緒で奥さんがいつもより凄い弁当を用意していた。皆の期待に応えられるか「緊張するなあ」となっていた。
グランドに集まり身体を解しキャッチボールと軽い守備練習をしていた。
ベンチに集まり監督からスタメンが発表された。「二番ショート、ハル」となった。
今日は後攻で「俺にはとにかく塁に出ろという事か?」と思っていた。
試合が始まり、今日は観衆も多かった。守備に着き、うちのピッチャーは三年のエースが先発だ。
立ち上がりも良く、俺の所ばかりボールが集まった。難なく三者凡退で、一回裏先頭バッターは粘ってのフォアボールで俺の番だ。
初球をフルスイングしバックネットにファール。二球目は高めで三球目をレフト前に運び、三番が初球を左中間へツーベースヒットで一点が入り、四番は三振で五番がセカンドゴロの間に一点を追加したがここまでだ。二回表、ここも難なく三者凡退だ。
五回表、二番がヒットで出塁するもショートゴロでゲッツーになり、三番がショートゴロで0点。五回裏、九番がライト前ヒットで
一番が送りバントで二塁。俺の番で初球を左中間スタンドに入る初のツーランホームランとなり二点が追加で四対0となった。試合はこのまま七回表でエースが無失点完投で勝った。
俺は興奮したままベンチに戻ると大石先生と奥さんが大喜びで手を振って出迎えてくれ、その後ナミが友達と手を振っていた。
「来週決勝戦だ!」と何か信じられなかった。ベンチでのミーティングが終わり、各自昼飯を済ませてからバスで帰って行った。
俺は先生の奥さんが作ってくれた弁当を広げ、ナミ達も一緒になって試合の話しをしながら食べた。
昼飯を済ませてからバスに乗り、ナミ達と別れて帰宅した。
帰宅し、俺はスパイクやグラブの汚れを落とし、磨いてからシャワーを浴びた。
その後、先生達は買い物に出掛け、俺は留守番をしていた。俺は疲れから睡魔が襲って来て一時間程爆睡していた。
玄関のチャイムで起きると宅配便が届き、○〇デパートからの段ボールだ。
宛名は大石先生宅の俺宛だ。
先生達が帰って来てから段ボールを開けようと思っていた。送り主を見ていなかったので良く見るとナミの母からだ。
先生と奥さんが買い物から帰宅し、段ボールの事を話し、開けて見ると高そうな干物や缶詰がギッシリ入っていた。先生宅からナミに電話するとナミの母が「皆さんでどうぞ」と送ってくれたようだ。
俺は何か申し訳なくてしょうがなかった。
ナミの母に一度も会っていないし、この前の玄米や今回の物まで、ここまでしてもらう理由は無かったので困っていた。
ナミは「母が勝手にした事だから気にしないで」と言うが普通、気にしない訳が無い。
先生は御礼状を書いて送ると話していた。
そんな事等があり、あっという間に週末の土曜日がやって来た。天気は良いが流石に十月末になっていたので少し肌寒い。
試合は十時からで先週と同じように先生達も一緒にバスでグランドまで移動した。
決勝の相手は昨年の準優勝チームだ。
軽く練習を終え、監督からスタメンが発表され、「二番ショート、ハル」となった。
二番か、監督は何を狙っているのかわからないが、やるしかない。
うちのチームは先攻で全く打てず三者凡退なのだ。相手チームは初回からヒットが続き、三番でライト前タイムリーの一点が入り、続く四番はフォアボールで五番を内野ゴロのゲッツーとなり六番が三振でスリーアウトとなる。二回表に四番がライト前ヒットで出塁し、俺は初球をレフト線に運び三塁二塁とした。続く六・七・八番が打ち取られ二回裏に二点を取られ三対0となる。
五回表、俺から始まりセンター前、三番はライト前ヒットと続き、四番がフォアボールで五番が高め目のスライダーをライト前に運び二点が入るが後続が続かず三対二で五回裏に入るとヒットとフォアボールが続き、二点が追加され五対二となる。
六回表は九番から始まるが三者凡退となり、六回裏、俺がマウンドに上がり、一人にヒットを打たれるが他の三人を何とか抑えた。
最終回、三番から始まり、デットボールとフォアボールで一・二塁となり、五番は初球からセンター前に打ち返し、満塁。六番がライト前に運び二点が入った。五対四となるが反撃はここまでで、惜しくも敗れた。
残念だが僅差の試合だったと皆に励まされた。監督は悔しそうだが、俺達は正直、疲れて腹も減っていた。
グランド脇にシートを広げ、関係者達と昼飯の弁当を囲んでいた。
大石先生と奥さん、ナミと友達二人も含め、昼飯を食べていた。
ナミが近くに来たので、今日は俺の方から話しを仕掛けた。「今日の俺、どうだった?」と言うとナミは「普通だったかな?」と上手くボケやがった。これには近くに居た人達も大笑いして恥ずかしかった。
ナミはニヤリと笑い、「明日からは期末テストに向けて猛勉強だよ」と言うので「怖ッ!」となった。
奥さんからも「ナミさん、よろしくネ」と言うので、俺はもうナミから逃げられないと確信してしまった。
昼飯も終え、皆バスに乗り自宅へと帰っていった。明日は日曜日だし、ゆっくりしようと考えていた。
翌週月曜日から期末テストが終わるまでの間、野球の練習は無かった。
学校が終わるとほほ毎日ナミのマンションで勉強をしていた。
テスト初日、三教科を行い、十三時半には学校を出て、ナミに昼飯をおごってもらい、マンションで勉強していた。まずは今日のテストを簡単に復習し、明日のテスト二教科を勉強していた。十八時頃先生宅に帰宅し晩飯を済ませて明日に備えた。
テスト二日目、初めて問題をスイスイと解答できた気がした。時間が来るまで何回も見直し、二教科のテストが終わった。
ナミに「一緒に勉強してくれたおかげで今までより上手くできたと思う、有難う」と言うと「ハルは推薦でBC高校行けるかどうかわからないから勉強は保険みたいなものかな?今後も頑張ろう」と話し、俺はその通りと納得していた。
帰りにナミのマンションで今日は思い切りゲームをしていたが、ナミは「ハル、スマホ買ってもらえないの?」と鋭い事を話してきた。俺は大石先生宅に下宿の身でスマホなんて贅沢だし、おとんやおかんが絶対ダメと言うに決まっていた。現に兄いは高校生になってから買ってもらったし、中学生の俺には無理だと話した。ナミは「一台貸してあげようか?」と言うが、「先生や奥さんバレたらヤバい」と思っていた。ナミは「私とハルの連絡方法だからいいと思うし、バレたら私が話しに行く」とやたら強気で話していた。
俺の本音はすごく嬉しかったが、俺が断ると余計面倒な事になりそうとナミのスマホを借りる事にし、操作の説明を受けていた。
その後、俺は先生宅に帰った。
帰宅し晩飯を済ませ、風呂に入ると部屋でナミから借りたスマホと充電器を取り出し、操作を何回もやっていた。すると頻繁にナミからのメールが送られて来た。
その後、グループLINEができ、ナミの友達や野球チームのメンバーやコーチ、監督までLINEで情報の共有等ができるようになり、スマホにハマっていった。
翌日から野球の練習は再開するが日が短くなり、外での練習時間にも限りがあり、週に二日は室内練習場を借りて練習する事もあった。
テストが終わって一週間後、結果と成績順がクラス毎に貼りだされた。ナミはクラスでトップだ。
俺は後日通知が届き、中間テストより良ければ大石先生達にもナミの存在をアピールできると思った。
後日、俺の通知が届き中を見るとクラスで十二番と大躍進していた。
大石先生や奥さんに話すと「ナミさんと勉強した成果だネ、良かった」と認めてくれた。
一方のナミは「私のおかげかしら?」と白々しく言うのだが先生の奥さんも認めたので感謝しかなかった。「ナミ、有難う」と言うと「三年生になってもここから下はダメ」と厳しくなるのだが、本当に俺にここまでしてくれる事を未だに不思議でならなかった。
冬休みも近づき、ナミはいつものように長期滞在の海外旅行へ出掛けると話していた。
俺は実家に帰り、おとん、おかん、兄いと年末年始を迎えた。
当然、成績表も見せてナミの存在も説明していた。おとんやおかんは「嘘みてえな話しだが、ハルを構ってくれるお嬢さんがこの世に居るのか?凄いネ」と笑いながら話していた。ただ、ナミはお金持ちのお嬢様だという事は俺から話さないと決めていた。
おかんと兄いは勉強の成績が良くなった事を凄く褒めてくれた。
兄いは高校でも優秀だとおかんは話していて、兄いは大学に行きたいと話しているそうで、おとんは凄く喜んでいた。
おとんは相変わらず休みの日はあっちこっちで呑み歩き、俺が迎えに行き、背負って帰ってきていた。
冬休みが終わる二日前には先生宅に戻り、大石先生と奥さんに「今年もよろしくお願いします」と挨拶をし、登校の準備等をしていた。
ナミからのメールで「明日、うち来ない?」という事になり、ナミがタクシーで迎えに来てくれた。
ナミのマンションに入るとアメリカに行ったお土産がわんさかと置いてあり「好きな物持って帰っていいよ」と言うのだ。
チョコとか二つ貰おうと袋に入れると「少なくない?」とナミが袋いっぱいに詰め込み、「これ、先生達にも上げてネ」と言い、「ハイ、ハイわかりました」と袋を玄関に置き、「ハルの分はここだよ」とナミが別の部屋から袋を持ってきた。
中身はアメリカメジャーリーグのユニフォームや帽子、その他野球グッズがたくさん入っていた。「凄いな、これ」とただただ驚くばかりだ。
ナミは「遠慮しないで全部持って帰って」とあっさり言うのだ。
何かこんなにしてもらって「有難うの一言でいいのかなあ」と思う。
また、ナミは「明日以降も野球の無い日はここで一緒に勉強しよう」と言うので「OKだよ、よろしくネ」と俺は答えた。
その後、ナミのマンションからタクシーで大石先生宅に帰り、ナミから貰ったお土産を先生に渡した。
先生と奥さんは驚いていて「御礼しなきゃ」と話していた。
その後、学校へいつものように天気の良い日は走って通い、野球の練習が無い日はナミのマンションへ寄り道して勉強をしていた。
春休みまで野球も勉強も根気よく続け、休みに入った。
三日間程実家に帰り、ナミから貰ったお土産をおかんに渡し、兄いにはメジャーリーグのグッズを何点か渡した。
兄いは凄く喜んでいて「ハル、凄い友達持っているんだな」と感心された。
まあ、ナミはどちらにせよ凄い奴だよ。
子供達や子供を持つ大人にも野球を好きになって欲しくて、私なりの世界観をもって描いているものです。興味を持っていただけると幸いです。




