第5話 増殖
巨大な影が動いた。
赤い光の奥で。
ゆっくりと。
まるで、
目を覚ますみたいに。
ダンジョンの空気が変わる。
重い。
押し潰されるような魔力。
俺は剣を構えた。
エリシアが横で呟く。
「……大きいね」
赤い光の中から、
黒い影が形を作る。
ログイーター。
だが――
今までのものとは違う。
大きい。
人の三倍はある。
黒い霧が渦を巻き、
空間を削りながら体を作っていく。
床が溶ける。
壁が歪む。
俺は小さく言った。
「親玉か」
エリシアが首を振る。
「違う」
「たぶん」
「まだ途中」
影が完全な形になる。
その瞬間、
床の亀裂がさらに広がった。
ドクン。
赤い光が脈打つ。
そして――
また一体。
ログイーターが生まれる。
俺は息を吐いた。
「……増殖か」
エリシアが笑う。
「うん」
「ログが止まってない」
「だから生まれ続ける」
ログイーターが一斉に動いた。
速い。
三体。
同時に。
俺は踏み込む。
剣を振る。
一閃。
一体が裂ける。
だがすぐ再生する。
別の一体が横から来る。
俺は体を落とす。
黒い体が頭上を通り過ぎる。
壁が削れる。
石が崩れる。
エリシアが後ろで言う。
「数が増えるよ」
「このままだと」
俺は答える。
「分かってる」
俺は床を見る。
黒い流れ。
核。
だが――
多い。
三つ。
いや。
もっと。
俺は呟く。
「……止まってない」
エリシアが言う。
「止める?」
俺は剣を握る。
「止める」
ログイーターが迫る。
三体同時。
俺は前に出た。
一体を斬る。
体を裂く。
そのまま踏み込む。
剣を突き刺す。
核。
一つ目。
黒い霧が崩れる。
だが後ろから来る。
もう一体。
俺は体を捻る。
剣を振る。
黒い体が裂ける。
だが再生。
速い。
多い。
そして――
赤い光がまた脈打った。
ドクン。
床の亀裂が広がる。
その奥で、
さらに影が動く。
エリシアが小さく言う。
「……まだいる」
俺は奥を見る。
赤い光。
その中心。
そこに、
何かがある。
心臓みたいなもの。
ドクン。
ドクン。
魔力が流れ出る。
ログイーターが生まれる。
俺は目を細めた。
「……あれか」
エリシアが頷く。
「うん」
「たぶん」
「ログの源」
俺は剣を構える。
「壊す」
エリシアが笑う。
「行ける?」
俺は前を見る。
増え続ける影。
赤い光。
歪む空間。
「……知らない」
俺は踏み出す。
「でも」
剣を振る。
ログイーターの体が裂ける。
「やるしかない」
その瞬間。
ダンジョン全体が揺れた。
ドクン。
赤い光が爆発する。
そして――
奥の“心臓”が目を開いた。
エリシアが呟く。
「……あ」
「起きた」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ダンジョンの奥で起きている異変は、まだ止まっていません。
アーカがこれまで見てきた世界とも、少しずつ違う流れが生まれ始めています。
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次話では、ダンジョンの奥にある“源”へ近づいていきます。




