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第2話 観測者

空き地をもう一度見る。


パン屋はない。


看板もない。

焼きたての匂いもない。


最初から存在しなかったみたいに、

そこには何もなかった。


「……また消えた」


この世界は、終わるたびに壊れる。


そして壊れた分だけ、

何かが消える。


人。

建物。

歴史。


そして時々――街そのものが。


それを覚えているのは、


俺だけだ。


「早いね」


背後から声がした。


振り向く。


白い髪の少女が立っていた。


さっきと同じ場所。

同じ姿。


まるで最初からそこにいたかのように。


「……お前」


俺は言う。


「いつからそこにいる」


少女は少し考えてから答えた。


「さっきから」


「嘘だ」


「そうかな」


楽しそうに笑う。


「前の世界でも同じこと言ってた」


俺は黙る。


少女は続ける。


「名前、まだ聞いてないよね」


少女は少し胸を張った。


「エリシア」


「……」


「あなたはアーカ」


「メモリア家の末子」


「今日、追放された」


「そして今は1027回目」


「……よく知ってるな」


エリシアは肩をすくめる。


「全部じゃないよ」


「でも、あなたのことは少し知ってる」


「ずっと見てるから」


「何を」


「あなたが世界を見てるのを」


意味が分からない。


「……お前は何だ」


エリシアは少し考えた。


「観測者」


「みたいなもの」


「みたい?」


「うん」


「正確には違うけど」


俺はそれ以上聞かなかった。


この世界は説明を残さない。


すぐに消す。



そのとき。


遠くで爆発音がした。


地面が小さく揺れる。


通りがざわつく。


「何だ?」


「事故か?」


誰かが空を指さした。


俺も見上げる。


王都の空に、赤い光が走っていた。


空が裂けている。


そして――


文字が浮かぶ。


赤い線で描かれた巨大な文字。


WORLD ERROR

DELETE SECTOR


「……来たか」


エリシアが言う。


「思ったより早いね」


遠くで建物が崩れる。


煙が上がる。

悲鳴が聞こえる。


エリシアは俺を見る。


「分かる?」


「何が起きてるか」


俺は答える。


「ダンジョン暴走」


エリシアは頷く。


「正解」


「地下のログが溢れてる」


俺は歩き出す。


エリシアが横を歩く。


「行くの?」


「……見たことある」


「何回?」


俺は答えない。


赤い光を見る。


「……731回」


少し間を置く。


「その全部が、失敗だった」


エリシアは少し嬉しそうに笑った。


「でも今回もやるんだ」


俺は前を見たまま言う。


「……今回は少し違う」


「何が?」


俺は空を見る。


赤い裂け目が広がっている。


「壊れるのが早い」


エリシアは静かに言った。


「うん」


「だから面白い」


俺は足を止める。


「……面白い?」


エリシアは頷く。


そして言う。


「だって今回」


少し微笑む。


「あなたが気づいてる」


俺は言う。


「毎回気づいてる」


エリシアは首を振る。


「違う」


「今回は」


少し楽しそうに笑う。


「あなたが世界を止めようとしてる」


遠くで、また爆発。


王都の南区画から黒い煙が上がる。


俺はその方向へ歩き出す。


「……今回は止める」

読んでいただきありがとうございます。


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