1.傍観
15階建てのマンションから続々と小学生や中学生、高校生、サラリーマンが入口から出てきている。「平日の朝か...」と何故かすんなりと受け入れられる自分が少し怖かった。何分間かその状況が続き、人の流れがなくなってきたころ一人の男子中学生が走って入口から出てきた。私は「あれは、俺だ...あの右頬にあるほくろ、四角い黒縁眼鏡...やっぱりそうだ」衝撃のあまり口に出してしまった。「でも、何故?」考えてみると自分が今まで何をしていたのか思い出せない、白い光の中から実像となって最初に現れたのがこのいつかの「平日の朝」の風景であった。そう考えていると自分では望んではいないのに映画やテレビのカメラワークのようにこの「中学生の頃の自分」を付きまとわっている。しかし彼はまるで私の実体がないかのように気づいていない。そして彼は「西川端中学校」と石碑に力強く彫ってある校門を抜け昇降口に吸い込まれっていった。その瞬間「ビービービー」とサイレンが鳴り響きまた「白い光」が現れ視界が色を失っていった。そして目を覚ますと今度はカメラワークみたいにではなくじぶんの思うままに周りの風景を目に入れることができた。様々な装置が散乱している中私はベットに寝ていた。頭が少し重い。「傍観者モードはどうだったな?」と聞き覚えのある男性の声が部屋の入り口から聞こえる。「傍観者モード?」との寝起きのような声で聴き返した。彼はベットの近くまで来て近くにあったパイプ椅子をこちら側に引き寄せ私を見てきた。髪は汚くもじゃもじゃ少し太っていて黄ばんでいる白衣を着ている博士のような姿を見た瞬間私はすべてを思いだした。
続く