表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/128

第91話 元帥号授与式典の直後に

 ようやくの事で、ガウルグルクがバルゾラ大陸に戻って来た。表向き彼は、軍務に専念したい故にアーカル大陸総督任務の解除をわたしに願い出て、わたしがそれを聞き届けた事になっている。


 その後任の総督、と言うか今はまだ総督代理の肩書であるが、それには今回大佐相当官に昇進したばかりの、青年吸血鬼ローマン・ギルマーティンが就いた。更に彼には軍事補佐官として、魔獣軍団でガウルグルクの一番弟子であるガオガーグ大佐がサポートに就く。


 ちなみにガオガーグ大佐も、ローマン総督代理が大佐相当官に昇進した直後に、大佐に昇進したばかりだ。というか、彼は昇進渋ったんだよね。自分には分不相応だって。ただ、役職に匹敵する階級が無いと魔王軍が舐められる、と言い諭して強引に昇進させたんだ。


 そしてザウエル、オルトラムゥ、ガウルグルク、ゼロ、鉄之丞なんだけど、今回魔王軍の軍制をちょっと改革して、彼らは大将もしくは大将相当官となる。今までは、魔王軍の組織では大佐の上はそのまま『将』であったんだよなあ。けど、かなり魔王軍も増強されて数も増えたんで、変える事にしたんだ。


 具体的には、大佐の上に『准将』『少将』『中将』『大将』の位を設けた。今まで魔竜将、魔獣将、魔像将、怨霊将であったオルトラムゥ、ガウルグルク、ゼロ、鉄之丞に関しては大将とした上で更に元帥号も贈り、『元帥魔竜大将オルトラムゥ』『元帥魔獣大将ガウルグルク』『元帥魔像大将ゼロ』『元帥怨霊大将伊豆見鉄之丞』となる。


 ちなみにザウエルだけれど、彼の場合は大将相当官だ。今までの軍法で、大魔導師は『将』と等しいとされていたからね。今までの『将』が『大将』になるから、大将相当官というのが相応しいだろう。だから元帥号も贈って、『元帥大魔導師ザウエル・リーグハルト』って事になるね。


 あとはアオイとミズホなんだけど。彼女らは親衛隊の隊長と副長だ。でもって、親衛隊は規模は小さいが、各軍団と同等とされているんだよね。だからアオイは大将相当官、ミズホは中将相当官になるね。元帥号は贈られてないけれど、その分わたしの側近中の側近って立場だから、各軍団長と同等に偉い事になるね。


 ちなみに元帥号授与とかで、バルゾラ大陸では記念式典をやった。テレビとラジオと『グレート・スピーチ』の魔法で盛大に放送してやったよ。オルトラムゥは楽し気にしてたが、ガウルグルクと鉄之丞はちょっと華やか過ぎて引き攣ってた。ゼロはいつも通りだったけど。ザウエルは、彼は彼で必要な行事だとは理解していたが、正直そんな事より仕事や魔法の研究がしたいと言うのが顔に出ていた。


「やれやれ、ようやく式典終わりましたね……。」


「ご苦労さん、ザウエル。ガウルグルク、鉄之丞、ゼロもお疲れ。オルトラムゥは、楽しんでいたみたいだけどね。」


『おお。やはり皆が称えてくれるのは良いな。まあ、その分の責任も重くなったが。ちょっと前までの様に、戦って戦って戦って勝つ、だけではダメな事も理解している。まあ、ガウルグルクやザウエルの真似は、逆立ちしてもできんが、な。』


 オルトラムゥも成長したなあ。さすがだよ、うん。……さて、それでは、と。


「さて、細かい事は明日の定例幹部会議で改めて話すけれど……。近いうちにガウルグルクを総大将にして、コンザウ大陸への侵攻軍を編制したいんだ。もう少しアーカル大陸の開発と策源地化が進んでから、と思っていたんだけどね……。」


『『『「!!」』』』


 アオイ、ミズホ、ザウエルの3名を除いた面々が、一瞬驚きを表情に出す。いや、ゼロは表情筋が無いから無理だが、カメラアイを一瞬点滅させた。芸が細かいな、こいつ。


「魔王様、予定を前倒しするのは何故(なにゆえ)で?」


「うん、ガウルグルク。負担をかけて済まないとは思うけど。ちょっと懸念が表面化してきたんだ。

 ……『ヴィザー・ル新王国』だよ。」


『『『「!!」』』』


 先程驚いた面々は、国名を言っただけで表情を引き締める。いや、ゼロは表情筋無いんだが。まあそれはともかく、『ヴィザー・ル新王国』の名前はわたしが以前から時々話に出していた事もあり、即座の理解に繋がった模様だ。


 魔王軍の諜報を一手に担っているザウエルが、話を引き継ぐ。


「魔道軍団の間諜(スパイ)が、かの国の最新情報をもたらしました。あの国は、銃士隊を編成して武芸の(つたな)い並の人材を戦力化しているのは元からなのですが……。

 更に銃士隊から魔法の素養が若干でもある者を抜き出して、武器に一時的な魔力を付与する初歩魔法を教え込んだ『魔法銃士隊』の編制を始めた事が判明いたしました。」


「前々から、魔王様が危惧してた事の1つ」


 アオイの言葉に、わたしは頷きを返した。


「そうなんだ。ついにあの国は、初歩的な銃火器と魔法を組み合わせた戦術に気付いたらしい。それが広まらないうちに、あの国を潰しておきたい。今の所、その事実はあの国の国家機密らしいんで、その他の国には広まっていないけれどさ」


「それは……。了解いたしました。幾つか編制の素案を考案し、明日の定例幹部会議で提案いたします」


「すまないね、ガウルグルク。頼むよ。ああ、あと今回は編制に死霊軍団も混ぜるから、そのつもりで。」


「はっ!しからばわたしは、これにて。明朝までに参謀らと語らい、素案を用意いたします。では……」


 ガウルグルクは敬礼をし、司令室を辞去する。わたしたちも答礼を返し、それを見送った。


『魔王様、それでは俺も仕事に戻る。コンザウ大陸を攻めるとあらば、俺たち魔竜軍団は絶対に参陣することになるだろ?コウクウセンリョクとやらは、飛行機はまだ頼りない。最近は爆弾も積める様だが。となれば、対地攻撃支援は俺たちの仕事だろ。

 ただコンザウ大陸は広いからな。今までの様に精鋭ばかり使うわけにはイカンだろ。だから少しでも下手くそどもがマシになる様に、これから訓練で絞ってやるとしよう』


「未熟な魔竜が少しでも使える様になれば、こちらは物凄く助かるね。頼むよオルトラムゥ」


『応ともよ。では、これにて……』


 オルトラムゥの意識を宿した魔竜像が器用に敬礼すると、その瞳から生気が消える。オルトラムゥが『パペット』の魔法を打ち切ったのだ。こっちも答礼したんだが、もしかしたら間に合って無かったかもな。


『デハ当機モコレニテ失礼サセテイタダキマス。ばるぞら大陸トあーかる大陸ノ兵力ヲ、ドノテイド引キ抜ケルカ、通話水晶ヲ使イあーかる大陸総督代理ヲ交エテ相談イタシマス』


「ああ。結果はこちらには明日の定例幹部会議でいいけど、ガウルグルクには早目に渡してやってくれ」


『ハッ!デハ失礼イタシマス』


 ゼロも敬礼をして、司令室を去る。それを答礼で見送りつつ、わたしは鉄之丞に話しかけた。


「鉄之丞、キャメロンか君か、どちらかを今回は前線に出したいんだが。死霊軍団にも、そろそろ実戦経験が必要だと思うんだ。君やキャメロン、ユージェニーあたりになれば大丈夫なんだろうが……。中堅の者たちが、ね。

 ここらで実戦を経験させておかないと、肝心の怨敵……。リューム・ナアド神聖国を攻めるときに、実力不足で死霊軍団を出せなくなる可能性がある。それは嫌だろう?こちらも君との約束を破る事は、絶対に、したくない。絶対に、できない」


『はっ!ではキャメロンに留守居役を任せ、某が出たく存じますれば』


 キャメロンってのは、死霊軍団No.3の死導師(リッチ)キャメロン・オルグレンの事だ。鉄之丞の幕僚中では、No.2の吸血姫ユージェニー・ダンヴァースに並ぶ頭脳派である。鉄之丞も彼の事は頼りにしているんだよね。


 鉄之丞が自分で出ると言う事は、そうなるとユージェニーも一緒について行く事になるな。ま、アツアツで結構な事だ。


「しまったな。ガウルグルクを引き留めて置くんだったな。鉄之丞が参陣するって知らせなきゃ」


『は、では某から元帥魔獣大将殿には連絡致しますれば。』


「うん、頼むよ。」


『それでは早速、参陣する者たちと居残りの面々とを参謀どもと協議して決定いたしますれば。それではこれにてご免!』


 鉄之丞も、敬礼と答礼を経て司令室を立ち去る。それを見つつ、ザウエルが溜息を吐いた。


「やれやれ、ようやく一段落ついたと思ったんですがねえ。また、ですまーち?ですかね」


「済まないね、魔道軍団には貧乏くじばかり引かせているかもなあ。たまには前線で華々しく戦いたいかい?」


「いえいえ。僕も大半の軍団員も、戦場での功名は欲しくないですから。例外的なのも居るには居ますが、そう言うのは魔獣軍団や魔竜軍団の幕僚や、一般兵部隊の指揮官として出向させてますよ。

 それに裏方ばかり、と愚痴は言ってるかもしれませんけれど。裏方の仕事も、魔王様はきっちり評価して、下手をすると戦場での手柄以上に扱って下さってますからね。うわべでは文句を言ってますけど、本音では気にしてませんから」


「そうかい。そいつは助かるよ。」


 と、ザウエルが視線に力を込めて、真顔になる。いや、今まで真面目な顔じゃなかったわけじゃないんだが。何と言うか、キリッ!と擬音が聞こえる感じで。


「それより、魔王様は親衛隊長殿と副長殿とも約束をしているでしょう。リューム・ナアド神聖国を倒すときには最前線に置く、と。ですが、当人たちは個人戦の経験は無茶に豊富ですが、軍団指揮経験は無いに等しいですよ?

 それと親衛隊の戦闘ドロイドたちも、まにゅある?では集団戦について学んでますが、実戦経験が無きに等しいです。演習はしてますが。

 どこか近い内、適度な相手を見繕って、実戦の経験を積ませるべきです。僕からの進言です」


「……そうね、元帥大魔導師殿。あなたの言い分は正しい。魔王様、わたしたちと親衛隊にも、実戦の場を与えて欲しい」


「たしかに……。あたしも同意します。軍を率いての実戦に慣れて置かないと、いざと言う時に問題が出るかも知れません」


 アオイとミズホも、ザウエルに賛成する。うん、大丈夫。2人と親衛隊の実戦経験の場は、ちゃんと考えてあるから。


「2人は新鋭隊だからね。魔王親征の場じゃないと、出番が基本無いからね。つまりわたし自身が戦場に出るわけだけど……。リューム・ナアド神聖国を攻める時は、勿論わたしが親征するけど、それ以外だと相応しいのは、この国がある」


「「『カンザ・アド王国』……」」


 わたしはコンザウ大陸の地図の1点を指で示す。アオイとミズホが口に出した通り、その辺一帯を領土としているのは『カンザ・アド王国』と言う軍事国家だ。位置的には大陸中央の『リューム・ナアド神聖国』からけっこう南に下った場所にある。『ヴィザー・ル新王国』の北部と、国境を接している国だな。


 ザウエルが、頷く。


「なるほど、『カンザ・アド王国』であれば保有戦力から見ても、魔王様の親征に相応しいと言えましょう。アーカル大陸の『ヴァルタール帝国』に匹敵する軍事力を保有していますからね」


「この国には申し訳無いんだが、サンドバッグになってもらうとしよう。」


 アオイとミズホだけじゃなく、わたしも用兵の経験を積んでおかないとね。アオイ、ミズホ、ザウエルが頷く。


 さて、予定を前倒しする事にはなったが、コンザウ大陸侵攻計画がいよいよ発動する。将の皆の気合も満ち満ちているし、軍隊も精強だ。正直負ける方が難しい。あ、いや。それでも油断はしちゃ駄目だ。


 なんとしても、『簡単に』勝たねばならない。『勝ってあたりまえ』な感じに、だ。わずかでも、有効な反撃を敵に許してはならない。まずは『ヴィザー・ル新王国』、それについで隣の『ヴィザー・ク王国』、その隣の『タラント連邦』や南の島にある国家『サマー国』『フィンザ国』までを電撃的に制圧する。……忙しくなりそうだ。いや、今までが忙しくなかったわけじゃないんだけどね。

 さて、いよいよコンザウ大陸侵攻です。ちょっとだけ前倒しになりました。まあ、敵国家の1つ、『ヴィザー・ル新王国』のせいなんですけどね。敵も、無能ではないのです。圧倒的な差はありますが、だからと言って油断はできないのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ