第68話 建国万歳
とうとう建国記念式典当日である。大空を魔竜と飛行機が並んで飛翔し、見事なアクロバットを決める。魔竜はともかくとして、飛行機は初飛行からせいぜい1年程度しか経過していないはずなのに、よくあそこまで機体完成度を高めたものである。いや、パイロットもよくあそこまで訓練したものだよ、ほんとに。
地上では、陸軍の各部隊がパレードを行っている。この日のためだけに一部が呼び戻された魔獣軍団の部隊もいるほどだ。このバルゾラ大陸に残っていたか、あるいは新たに創られた魔像軍団の部隊もいるなあ。
死霊軍団からは比較的見栄えが良い中級以上の不死怪物たちの部隊が参加している。魔道軍団は数が少ないが、一応参加している。少ない理由は、魔道軍団員は裏方として八面六臂の働きをしているからだ。
歩兵たちの行進の後には、各種車両が続く。戦車、装甲兵員輸送車、自走砲、その他諸々と、これだけの兵器をよく揃えられたと思ってしまう。しかもこれは、まだまだほんの一部でしかないのだ。
ミズホとアオイ、ザウエル、鉄之丞及び親衛隊員を従えたわたしの前に、行進を終えた軍勢が並ぶ。わたしは演壇に上がり、マイクに向かった。無論、既に『グレート・スピーチ』の魔法は『回線宝珠』の前で行使している。わたしはおもむろに口を開いた。
『親愛なる我が民よ! バルゾラ大陸およびアーカル大陸の、全ての民よ! 我は諸君らの王、魔王ブレイド・JOKERである!
既にラジオなどのニュースで知っておる者も多いとは思うが、この場を借りて諸君らに報告しておこう! 我ら魔王軍は、去る3月29日、ついにアーカル大陸に残る最後の反抗勢力である元『ヴァルタール帝国』第6騎士団、グラントリー青銅騎士団を降伏させ、それが立て籠もっていたロコモス市を我が手に収めた!
そう、我が魔王軍がついにアーカル大陸全域を制覇し、全て併合したのである! これまでの長い戦いが、報われた瞬間である!』
わたしたちの前に整列した軍勢が、どよめいた。それが表すのは、けっしてマイナスの感情では無い。更に言えば、あらかじめ行使しておいた『千里眼』『千里耳』の術法で、近隣の街の住人たちが同じ様にどよめいているのが感じられる。
そう、軍の者たちや民衆の皆は、喜んでいたのだ。歓喜していたのだ。わたしは演説を続ける。
『ここで我は諸君らに言いたいことがある。……ありがとう! 諸君らにはわかるであろうか! 我が、我が民全てに対し抱いているこの感謝の念、その深さを!
我が魔王軍がこの偉業を成し遂げることができたのも、諸君らの有形無形の貢献があったからこそである! 諸君らが鉱山より掘り出した金属の一片が! 諸君らが農場で育てた穀物の1粒が! 諸君らが納めてくれた税金の硬貨1枚が! 前線で戦っていた兵を支えたのだ!
そして前線で戦っていた将兵にも、我は礼を言いたい! ありがとう! 諸君らの生命を惜しまぬ挺身あってこそ、後方の者たちの貢献を無駄にすることなく、勝利を掴むことができた! 諸君らの勇敢さが、勇気が! この素晴らしい結果を引き寄せたのだ!
諸君らは英雄である! 前線、後方を問わず、全ての者が英雄である! 誇れ、我が民たちよ! 胸を張れ、我が民たちよ! この栄光は、諸君ら皆の上に輝いているのだ!』
どよめきレベルであった歓喜の声が、大爆発を起こす。わたしは聴衆の興奮が収まるのを少々待つと、続きを話し始めた。
『……そしてもう1つ、我はこの場で諸君らに伝える事がある。これは同時に、コンザウ大陸の諸国家への発表も兼ねていることを明言しておこう。
我ら魔王軍と、それを支える魔物たち、及び我が庇護下にある人類種族たちは、これまで形の上では国家の体をなしていた。だが残念ながら、正式に立国していたわけでは無かった。諸君、これで良いのか?我らはこれで良いのか?いいや、良くはない!
このままでは、コンザウ大陸の人類種族だけの諸国家は、我らのことを蛮族と侮るだけである! 文化的には我らに及ばぬ輩が、我らを舐めきった態度で扱うであろうことは、極めて腹立たしい!
そしてそれだけではない! 我らはこれから、更に一致団結せねばならん! コンザウ大陸の諸国家は、我らをあからさまに敵視している! 我らの生存権を脅かそうとしているのだ! 我らは団結し、その力をもって彼奴らの外圧を撥ね除けねばならない!』
聴衆は、再度黙りこくってわたしの言葉に耳を傾けている。そしてわたしは、決定的な言葉を放った。
『その団結の証として、我はここに改めて建国を宣言する! その名も『JOKER剣魔国』! 我の国だ! 諸君らの国だ! 我ら皆の国だ! 我らは今日この日をもって、更なる団結の時を迎えたのだ!
最後になるが、本日4月17日を建国記念日とし、国民の祝日として休日とすることを公布する! 『JOKER剣魔国』に栄光あれ! 親愛なる我が国民たちに栄光あれ!』
満場の拍手が響いた。満場の歓喜の声が響いた。皆が、わたしの名を、我が国の名を歓呼し、万歳を叫ぶ。
ザウエルが念話で話しかけて来た。
『魔王様、今回も大成功です。各地に散った魔道軍団員からは念話で、各街々、各村々で民が総立ちで万歳と拍手とを繰り返しているとの報告が。
まあアーカル大陸からの長距離念話では、征服された形の人類種族は微妙な顔をしていますけれど、さりとて反抗的な様子は見せておりません。人間種族に化けた間諜からの連絡では、『まあ暮らしが悪くなるわけじゃなさそうだし、征服される前よりも暮らしやすいし、良いか』と考えている模様だとのことです』
『そうか……。現地住民の宣撫政策は上手く行っているみたいだね。でも、油断はしないでくれよ?結局は彼らは被征服民なんだから、面白くなく思っている者もいるはずだよ。少ないといいんだがね』
『了解です。現地の間諜と工作員に、注意を怠らないよう徹底させます』
『頼んだ。予算は工面する。……そうだ、コンザウ大陸諸国家の反応は?』
わたしの念話に、ザウエルは即答する。
『唖然としてます。魔王が建国を宣言するなどとは、考えても見なかった模様で。ちゃんとした反応が出るのは、もう少し時間がかかるでしょう』
『わかった。奴らが声明なりなんなり出したら、教えてくれ』
『了解しました』
わたしは演壇を降りた。
ついに建国! ついに記念式典! とうとうここまで! けれど魔王様の(書類)仕事は終わらない……(笑)。




