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第63話 魔王軍にも問題ある事はある

 とりあえず小休止して、皆でお茶にした。アーカル大陸組の者たちも、『通話水晶』の映像の向こう側で、各々お茶を飲んだりしている。まあ、オルトラムゥは40mを超える巨体だし、お茶を飲む習慣も無いから、自分用に買い取った畜獣を1匹まるごと(かじ)ってたり。


 変わり種は、怨霊将の鉄之丞だ。怨霊であって霊体のために茶を飲めないからって、自身の部下である吸血姫ユージェニーに線香を焚かせて香りを楽しんでいる。……間違って成仏すんなよ?


 さて、それじゃあ引き続き、ミズホへの魔王軍解説をするとしようか。


「じゃ、各軍団の説明に戻ろうか。次は魔像軍団、魔獣軍団、死霊軍団だね。それぞれ魔獣、ゴーレムなどの人造怪物や戦闘ドロイドなんかの人工知能ロボット、不死怪物で構成された陸海軍としての戦力だね。

 まあ海軍は整備がやや遅れてるし、各種族が入り混じった編成になってるから軍団別にはなってないけれど。そのうちに、きっちりと組織を分けないとだめだろうなあ。」


「陸軍と海軍、分かれてないんですね。」


「そして現在陸戦の主力となっているのは、圧倒的に数が多い魔像軍団だ。ただ、ゴーレム、生きた鎧(リビングアーマー)彫像怪物(リビングスタチュー)は基本的に銃器を扱えない。それ故に、徐々に主力の座を滑り落ちそうになっているのも事実だね。まだ他の軍団の盾となる役割は残っているけれど。

 それで今現在、銃器が使える戦闘ドロイドやアンドロイド、人工知能ロボットの増産が行われている。更には、創造した時点でその構造内に銃砲を埋め込んだ、特殊なゴーレムなどの研究開発が行われている。……どっちも行ってるのはわたしなんだけどね」


 ミズホは、『通話水晶』の映像に映し出されたゼロを見遣りつつ、感心した様に言う。


「トップの魔像将が、ゼロさんなんですね?」


『ワタシニハ、サン付ケハ必要アリマセン』


「あ、はい。わかりました」


 では続けて、魔獣軍団、死霊軍団だな。


「魔獣軍団は、陸軍戦力の中でもエリートだ。数は魔像軍団に劣るけれど、手を持つ魔獣は訓練により、すべからく銃器を扱える様になってる。また魔法を扱える個体もいるし。

 いざと言う時に、集中的に投入されて戦局を変える働きが期待されてる。まあ、ただし今のところはアーカル大陸の戦線ではそこまでの強敵は出て来てないんだけどね。

 死霊軍団は、万能選手だ。盾扱いにして使い捨てにしてもあまり心が痛まない骸骨(スケルトン)動死体(ゾンビ)の低級不死怪物(アンデッド)。様々な特殊能力を持ち、ある程度の知性が残っている中級不死怪物(アンデッド)。魔法や銃器を使いこなし、生前と変わらない知性がある高級不死怪物(アンデッド)。幅広い層が揃っているよ。しかも敵を倒せば、鉄之丞ら上層部の魔法やら特殊能力やらで、敵の死体を不死怪物(アンデッド)に変えて取り込んでしまえる。まあ、光魔法に弱いのは置いとくとして……」


「獣や粘菌(スライム)なんかは、魔王軍に組み込んでないんですか?」


「その行動をコントロールできないからね。まあ軍用犬や伝書鳩なんかみたいに、一部の鳥獣は使ってることは使ってるけど、大半は駄目。それに魔物の一種としての獣は気性が荒すぎて、言う事を聞かないんだよね。アーカル大陸やコンザウ大陸の獣を持ち込んで訓練した方が、言う事聞くよ。

 言う事聞かないと言えば……。はぁ~~~」


 わたしは大きく溜息を吐く。アオイも肩を落とす。ザウエルとガウルグルクも微妙な表情になり、オルトラムゥと鉄之丞は憐れんだ顔になる。唯一その雰囲気が変わらないのはゼロだけだが、ゼロは構造的に表情を出せないだけであり、忸怩たる思いを抱いていることは間違いない。


「陸軍戦力3軍団の下部組織として、その他の魔物たちで組織された部隊があるんだけどね。一般兵部隊って呼ばれてるけど……。問題なのはその部隊のうち、豚鬼(オーク)人食い鬼(オーガー)を主力としてる部隊なんだよ。いや、部隊としての問題と言うよりは、種族的な問題なんだよね、これが。

 豚鬼(オーク)人食い鬼(オーガー)も、頭が悪い上に頭が固い。銃や砲を使った、新式の軍制に対応できないんだ。いや、対応しようとする意識すら持ってない。いや、持ってないと言うより、持てないんだ」


 今一つ、ミズホはわかっていない模様だ。わたしは更に事細かに説明する。


「そればかりじゃない、農耕や工業の労働力としても、まったく期待できない。物が足りなければ、ある所から奪ってくればいいって固着した考えでね。他の魔物を襲っては、近場に駐屯してる軍警察に撃退されてる。でも懲りる事も知らない。何度でもやるんだよ。

 兵士としての規律も無いに等しい。それでも活用する方法を色々考えてはいるけれど……。略奪や虐殺を禁止しても、我慢できないんだよ、あいつら。巨鬼(トロール)族や改造人間なんかの強力な指揮官をあてがって、睨みを効かせることで強引に命令を聞かせてはいるけどさ。危なくて、前線での戦いや後方での治安維持に出せない、遊んでる戦力なんだよね。

 おまけに豚鬼(オーク)に至っては、18歳未満お断りなことまでやってくれるし」


「本当は見捨てたいけど、魔王様は魔王だから、立場的に見捨てられない。だから困ってる。

 今、知能の高い個体同士をかけあわせることを奨励して、知能の高い個体を増やしてそれを種族内でのエリート階級として扱う計画があるけど……。時間がかかるし、上手く行くかどうか分からない」


 アオイがわたしの本音を代弁してくれた。ミズホもまた微妙な、憐れんだ様な表情になる。わたしは一回ぶるんと首を振ると、説明に戻った。


「さて、愚痴はこのぐらいにして、と! 一般兵部隊には、別の魔物で組織された部隊もちゃんといるんだよ。特にその中で役に立つのが、犬妖(コボルド)だね。個体としての力は弱いし、頭もそんなには良くない。だけど社会の進歩に充分付いていけるだけの知能は持ってる。

 それに素直で器用だからね。銃砲の扱いも、農業機械の扱いも、工場の工作機械の扱いも、教えればきちんと理解するんだよ。軍での指揮官や指導者を上からあてがってやる必要はあるけれど、兵士としても一般市民としても充分合格さ。

 その近縁種の大犬妖(ノール)は、犬妖(コボルド)よりずっと不器用だし頭も豚鬼と大差ないぐらい悪いけど、そのちょっとの差が効いたよね。教えれば理解するんだよ。銃の扱いも、どうにかこうにかだけど覚えたし。優秀な指揮官を付けてやれば、兵隊としては充分役に立つ。

 バルゾラ大陸で軍警察の下っ端をやっているのは、ほとんどがこの大犬妖(ノール)だ。それに最近はアーカル大陸の最前線にも出てるけど、虐殺や略奪は全く無いって報告が上がって来てる」


「虐殺や略奪、無いんですね!」


「うん。近代国家の軍人として、恥ずかしくないよね。

 で、一般兵部隊の指揮官をしてるのが巨鬼(トロール)族だね。魔族と並ぶエリート種族なんだけど、自分自身で戦う事に誇りがあるみたいなので、あまり上の地位には来てないんだ。ただ最近は指揮官役に改造人間を送り込んでるんで、手が空いた巨鬼(トロール)族を集めて特殊部隊も編制してる。

 ああ、特殊部隊には他にも蜥蜴人(リザードマン)で編制された隊もあるよ。蜥蜴人(リザードマン)たちは優秀なんだけど、まだまだ数が少ないから普通の軍人としては使ってない。もったいないからね。

 あとは改造人間たちか。ちょっと言いづらいんだけど、どうせ君の地位ならば後々分かっちゃうことだし。彼らは元、人類種族だよ。反乱未遂とか実際に反乱したりとかの、死刑囚さ。それを表向き死刑にしたことにして、改造して肉体的に強化し、脳改造で徹底的な忠誠心を植え付けたんだ。

 まあ非人道的ではあるけれど、わたしたちは正義の味方じゃない。それをやらない余裕も無いんだよ……」


「……大丈夫です。あたしは魔王様に従って、憎き敵に復讐するって心を決めてます! そのためなら、薄っぺらい正義なんて、ゴミ箱行きです!」


「そうか……。よし、上等だ。よろしく頼むよ、ミズホ親衛隊副長」


「はい!」


 ミズホは元気よく応えた。その瞳には、怒りと憎しみが渦巻いている。その事を不憫にも思うのだが、同時にそれが今の彼女を支えていることを理解しているわたしは、その復讐心が薄れていない事に安堵もしていた。


 見ると、アオイも同じ様にミズホに対し、優しげな眼差しを送っている。きっと思う所は、わたしと同じだろう。わたしとアオイは視線を交わすと、頷き合った。

 ミズホの怒りと絶望は、実の所かなりの物です。無辜(むこ)の一般民衆のために魔王軍と戦おうと思っていたのが過去の事になってしまうほど。優しい心は残ってはいますが、既にこの世界の敵対人類種族には、その優しさが向けられるかと言うと……。

 まあ稀には有るかもしれませんが、基本無いでしょうね。彼女もまだ子供なのです。そしてその子供が、酷い目に遭わされたのです。仕方ないでしょうね。

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