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第29話 土木工事

 アーカル大陸への再侵攻を決定した会議より、2週間が経過していた。そしてアーカル大陸の占領地に、新生魔王軍の兵士たちと軍需物資を満載した輸送船30隻が無事に到着したと、長距離念話にて連絡があった。ゴーレム動力とは言え、動力船はやはり速い。


 魔竜による先行偵察により、嵐などの早期発見と回避が可能であったこともあり、船旅は快適だったらしい。もっとも魔獣軍団の一部と犬妖(コボルド)たちの一部が、船酔いにかかったそうだが。


 ザウエルが報告書を捲りながら言葉を発する。


「こちらにとっては幸いなことに、アーカル大陸諸国家連合軍の準備が整う前にこちらの軍勢が到着できました。更にこちらの兵力が増強されたことを、敵はつかんでいない模様です」


「あまり後方から口を挟むべきでは無いだろうな。前線のことはガウルグルクに任せておくよ」


「そうですね。魔獣将殿の采配を掣肘すべきではありません」


 わたしはザウエルに向かい、頷く。


「うん、その通りだとわたしも思うよ。後方が気にするべきは、兵站の維持だろう。第2次の補給物資は用意できているね?」


「はい、充分な量を確保してあります」


「ならば輸送船団が帰って来しだい、物資を積み込んで再度送り出そう」


「了解です。ところで……」


 ザウエルが小首を傾げる。わたしは怪訝に思った。


「ところで、なんだい?」


「魔王様、随分と魔法の腕前が上がりましたね」


「はは、なんだい、突然に?」


 思わず失笑し、わたしは問い返す。ザウエルは目を(すが)めて眼前の光景を眺めつつ答えた。


「いえ、本部基地の地下施設を造る土木工事のために、マッドゴーレムやクレイゴーレム、ストーンゴーレムを瞬時にかつ大量に(つく)ってるのを見て、そう感じただけです。しかもゴーレムを(つく)ると言ったら労働力のためにだと思うじゃないですか。

 普通は地下室を造るための穴掘りのため、土や岩を直接ゴーレム化して自分で歩かせて地下の工事現場から地上へ移動させるなんて、思いませんよ。しかも一瞬で数百体も創るから、あっという間に地下施設に必要な広々とした空間が……」


「あー、まあね。少なくともゴーレム創りや生きた鎧(リビングアーマー)彫像怪物(リビングスタチュー)(づく)りは、既に得意中の得意かな。まあゴーレムはいくらあっても足りないからねえ。

 魔像軍団は戦闘ドロイド、アンドロイド、高知能タイプのロボット以外なら、消耗品として扱っても良いって、ガウルグルクやゼロにお墨付き与えちゃったから。だから向こうではきっと、ずんどこゴーレムを使い潰してると思う。

 本部基地の拡張工事と、補充のゴーレム作成で一石二鳥さね。新たに創ったゴーレムは、補給物資と共にアーカル大陸へさっさと送ろう」


 そう言って、わたしはまた『クリエイト・ゴーレム』の魔法を一度に数百体分行使する。また体育館1棟分くらいの土や岩が、ごっそりとゴーレムに化けてそのまま階段を上り、地上へと歩み去る。ザウエルは溜息を吐いた。


「はあ……。官僚の第1期生が育って、少しばかり余裕ができたと思ったら、これですか。少し休めばいいものを……。ワーカホリックですか、あなたは。……掘り過ぎて落盤させないでくださいよ」


「分かってる。一定の深さや範囲を掘り進めたら、壁とか床とかに錬金術系の魔法や魔道の術かけて、鉄筋コンクリートに変成してるから」


 そう言いつつ、錬金術系の魔法『チェンジ・マテリアル』を使い、わたしは周囲の壁や床を鉄筋コンクリートに変えた。あれ? もしかして? ……たぶんわたしの今の実力なら、錬金術系魔法で簡単に、大量に電化製品の類を作り出せるんじゃないか?


 ちょっと時間空いたら、やってみるか。上手く行けば、本部基地のオール電化が実現する。うん、素晴らしい。


 ん?ああ、アオイが来たか。


「おや親衛隊長殿」


「大魔導師ザウエル、貴方は魔王様に報告?」


「ええ。報告が終わったので、持ち場に帰るところです。それでは」


「ええ、また」


 ザウエルは階段を上って、地下の工事現場から出ていく。わたしは落盤しない様に地下室を固め終わると、アオイに向き直る。アオイはちょっとばかり怒っているみたいだった。


「魔王様、どこかに行くときは、行先はちゃんと誰かに言っておいて。それと、親衛隊員の誰かを連れて歩いて。戦闘訓練から戻ったらいなくなってたから、驚いた。親衛隊員の誰も行先知らないから、もっと驚いた」


「あれ? 司令室の黒板に行先書いておかなかったかな? いや、書いたはず。誰かが間違って消したかな?」


「護衛を連れて歩かない理由にはならない。魔王様が護衛よりもずっとずっと強くて、護衛が護衛になってないのは分かってるけど。でも魔王様でも不意打ちされたりしたら……。その時に護衛がいれば、一瞬でも敵の攻撃を止められるかも」


 アオイはわたしを本気で心配してくれている。悪いことをしてしまった。


「あー、悪いことをしたね。すまなかった。今後はきちんと親衛隊員の戦闘ドロイドを、何体か連れて歩くよ」


「うん」


「本当に、悪かったよ」


「ん。分かってくれたなら良い」


 わたしはアオイを付き従えて、その後も土木工事を兼ねたゴーレム創造を続けた。結果、この日だけで数千を軽く超える補充ゴーレムと、本部基地地下の巨大施設ができあがった。まあ、まだ内装工事とかやってないから未だ使用できないんだが。


 だが、おそらくはまだまだ補充ゴーレムを創る必要はあるだろう。戦争で、兵士にまったく損害が出ないなどと言うことはあり得ない。それ故、わたしはその損害をゴーレムや生きた鎧(リビングアーマー)彫像怪物(リビングスタチュー)の類に押し付けて、できる限り生命(いのち)ある者たちを生かす様にガウルグルクやゼロに命じたのだ。


 ああ、わたしの言った生命(いのち)ある者には、人工知能たちも入ってるからね。ゼロみたいな。さて、目論見が上手く行ってくれると良いのだが。ええと、次は何処に大穴を掘って、ゴーレムを量産すべきか。鉱山でも開発するかなあ。司令室に戻って検討するとしようか。

 魔王様、基本スペックに頼ってるだけじゃなく、どんどん鍛錬を積んで強くなってます。強いだけじゃなく、努力する魔王(笑)。人類種族には、ご愁傷さまですね。

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