第28話 魔竜将の新たなる装備
「こ、これは!!」
わたしの工房前で、体長40mを超える巨大な魔竜が、驚きの声を上げていた。言うまでもなく、オルトラムゥである。わたしはその声を聞いて、心の中だけでニヤリと笑う。一緒にいるアオイもまた、堪え切れずに失笑していた。
「以前君と戦ったときに、君の宝物である『吸魔の首飾り』をブチ壊してしまっただろう?だから代用品を創ってみたんだがね。まあ、前の品に比べたら性能はかなり落ちるが、充分実用レベルにはなってると思うんだけどね。名を『吸魔の角飾り』と言う」
「きっと似合うと思う、魔竜将オルトラムゥ」
40m強の魔竜が身に着ける装飾品は、とても巨大だった。全体が黒曜石の様な素材でできているそれは、オルトラムゥの頭に生えている角の1本に巻かれる形で装着された。アオイの言葉通り、よく似あっている。
この『吸魔の角飾り』は、敵が放った攻撃魔法や状態異常魔法など、敵対的な魔法の類を吸収し、魔力に再変換して蓄えると言う能力を持つ。これを装備したオルトラムゥは、自らの意思でその蓄えられた魔力を自由に使う事が可能だ。
オルトラムゥは目を見張った。
「前の品より落ちると言ったが、魔王様! あれは他の指輪や腕輪、尻尾飾りなどと一組になっていて初めてあれだけの魔力蓄積量があったんだぞ!? これは確かにあれの半分ちょっとの魔力蓄積量だが、単品でこの性能じゃないか!」
「ああ、それと魔力がどれだけ貯まってるかは、それが発する熱量でわかる様になってるから。我慢できないほど熱くなってきたら、もうすぐ壊れるぐらいに魔力が貯まった証拠だから、さっさと貯まった魔力を使ってしまうようにね」
「そんな機能までついてるのか!」
オルトラムゥは溜息を吐く。
「ふう……。こんな物を貰ってしまって良いのか?魔王様よ」
「ガウルグルクには最初に板金鎧と斧槍を渡してるし先日も拳銃をあげた。ゼロには奴自身を改造した上で魔剣と魔盾、ライフル銃をやったからね。ザウエルにも新しい拳銃と魔力の込められた長衣に防弾チョッキをこの間あげたし……。
軍団長で何もやってないのは、鉄之丞くらいかな?彼は怨霊だからねえ。形のある物は、やっても意味ないし……何をやったら良いものやら。……直接訊いてみるかね」
「そ、そうか。では遠慮なく……」
しかし本当に鉄之丞はどうしたものか。できる限り軍団長は平等にしたいのだが。ちゃんと何が欲しいのか、訊かないとなあ。
ここでオルトラムゥは、わたしに質問してくる。もうすぐ発動される予定の、アーカル大陸諸国への侵攻戦についての話だ。
「で、だ。魔王様。此度の戦、どこまでやっていいんだ?」
「できる限り、敵への損害は軍事力……敵軍の将兵だけにしてくれると嬉しいね。あ、王族貴族は潰しちゃってもいいけどさ。村や街や都市、それに民人には可能な限り攻撃を控えてくれると有難い。先代魔王との差別化を図りたいから。
ガウルグルクやゼロにもこれは伝えてあるよ。まあ、敵が都市に立てこもったりした場合は、ガウルグルクの判断に従ってくれ。
わたしは人類世界を征服するつもりだがね。人類すべてを奴隷化したり滅ぼしたりとか言う趣味は無いんだ。まあ、圧政は敷くかも知れんが悪政を敷くつもりは無いね」
オルトラムゥは、視線をわたしの隣にいるアオイに向けた。
「……変わった魔王様だ、なあ? 親衛隊長アオイ殿?」
「うん。でも安心して従える」
「む。……そんなもんだな。最初は戸惑ったが」
にやにやと笑う2人に、何かしらくすぐったい感じを受けながら、わたしはオルトラムゥに言う。
「くれぐれも、竜騎士相手に下手を打たない様に。油断は禁物だよ」
「ああ、任せろ。油断はせんよ。一度誰かさん相手に油断して、酷い目に遭ってるからな」
「ははは。じゃあ頼んだよ」
「おう。じゃあ俺は出陣の準備に戻る」
オルトラムゥは後足で立ち上がると、空を飛ばずにのっしのっしと重量感溢れる足音を立てて、歩いて行く。わたしとアオイはそれを見遣りつつ、戦場となるアーカル大陸へと思いを馳せていた。
オルトラムウ、本当は強いんです。魔王様が常識外れだっただけで、物凄く強いんですよ。アーカル大陸への侵攻は、まあ失敗しないでしょうねえ。




