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第27話 再侵攻の計画

 新生魔王軍本部基地司令室には、魔王たるわたし、親衛隊長の勇者アオイ、魔道軍団軍団長の大魔導師ザウエル、魔竜軍団軍団長の魔竜将オルトラムゥ、魔獣軍団軍団長の魔獣将ガウルグルク、魔像軍団軍団長の魔像将ゼロ、死霊軍団軍団長の怨霊将鉄之丞の、新生魔王軍幹部が勢揃いして緊急会議を開いていた。


 ちなみにオルトラムゥだけは40mを超える巨体故、本来屋内に入れない。そのため『パペット』の魔法を使い、傀儡人形に意識を宿して会議に参加している。


 それと専任の官僚としてようやく育った文官が1名、議事録を取るために加わっていた。彼を含む官僚の第1期生は、既にばりばりと働き始めており、魔道軍団軍団員の負担をかなり減らしている。もうしばらくすれば官僚第2期生が着任し、魔道軍団の軍団員は事務仕事などから解放され、魔道軍団本来の仕事に専念できるようになるはずだ。


 だが今現在において、魔道軍団にしかできない任務もある。諜報がそれだ。他の軍団ではやり口が乱暴だったり、そもそも知能が低かったり、あるいは人類の姿に化けられなかったりで諜報活動には無理があるのだ。


 そんなわけで新生魔王軍の諜報や情報管理を一手に引き受けているザウエルが、おもむろに口を開く。


「アーカル大陸の戦線で、緊急事態がおきる予兆があります。アーカル大陸にある人類国家『ベイルク王国』、『シャハン国』、『タートム連合国』、『ゾフォーラ王国』、そしてアーカル大陸の盟主である『ヴァルタール帝国』が連合軍を結成し、我ら新生魔王軍が保持している占領地に対して戦いを挑むつもりです。

 中でも特に、国土の半分を我々に奪われた形になっている『ベイルク王国』と『シャハン国』の鼻息は荒く、それらの軍勢が先陣に立つことは間違いないでしょう。ですが最も注意すべきはそれらの国ではありません。『ヴァルタール帝国』が保有している竜騎士が、厄介の種です」


「竜騎士の実力は?」


 わたしの問いに、ザウエルは頷いて答える。


「彼らの乗騎の3分の2は、知能も低い飛竜(ワイバーン)と呼ばれる亜竜でしかありません。ですが単純な飛行能力だけであれば、魔竜に勝ります。それによるランス突撃は、魔竜にとってしても危険と言わざるを得ないでしょう。

 そして残り3分の1の本物の(ドラゴン)は、魔竜のうちでも成竜と互角に戦いうる存在です。竜騎士の数が少ないのだけが幸いですが」


『……失礼なことを聞くかも知れぬが、魔竜将殿。魔竜と竜はどう違うのかの?それがし生前も不勉強で、よく判らなんだのだ』


『別に失礼でもなんでもないから、気にすんなテツノジョウ。答えは簡単、何の変りもねえ。魔の陣営に属してるか、それ以外かで魔竜と竜に分かれてる。

 たとえば、俺の部下が裏切って離反したら、そいつはその瞬間からただの竜になる。人類に味方するかどうかは別としてな。ただし裏切るは裏切っても、俺を倒して下剋上を狙うんだったら、そいつはまだ魔の陣営にいることになるから魔竜のままだ』


 実に判りやすい説明だ。オルトラムゥの答えに、鉄之丞も頷いている。


 それはともかくとして、今の問題はアーカル大陸諸国家の連合軍だ。アーカル大陸の諸国家が総力を挙げて、新生魔王軍アーカル大陸侵攻軍を追い落とそうとしている。だが何故今だ?


「……なるほど。新勇者の召喚が契機、かな」


「おそらくは」


 わたしの言葉を、ザウエルが肯定する。ザウエルとわたしの他は、ガウルグルクが判っている様だ。だが他の者は理解していない様子で、不思議そうな顔をしている。わたしはその答えを口にした。


「つまりだね、コンザウ大陸の国家『リューム・ナアド神聖国』は勇者召喚により先代魔王ゾーラムを打倒しただけでなく、今回もまた新たな勇者を召喚してみせたわけだ。

 しかもコンザウ大陸からは我々新生魔王軍は、戦略上の都合で一時の事とは言え、撤退した。ザウエル、コンザウ大陸では勝利宣言か何か出したんじゃないかな?」


「はい、『リューム・ナアド神聖国』が音頭を取って、まるで自国の手柄であるかの様に吹聴してお祭り騒ぎになりました」


 アオイと鉄之丞が嫌そうな顔をする。わたしはそれに苦笑……しようとして、顔面が生体装甲板だからできなかった。何回同じ失敗すれば気が済むのかね、わたしは。ともあれわたしは話を続ける。


「となると、撤退せずに侵攻軍が一部を占領している『アーカル大陸』の諸国にすれば、面子が立たないわけだ。『リューム・ナアド神聖国』ばかりが美味しいところを持っていくのも腹立たしいだろう。

 今後外交上でも『リューム・ナアド神聖国』を始めとしたコンザウ大陸諸国家に主導権を握られるのは、我慢ならないってところかね。だからアーカル大陸侵攻軍が大人しい今の内に、我が新生魔王軍から大勝利をもぎ取り、実績を作っておきたいんだろうさ。

 特に盟主の『ヴァルタール帝国』はね」


「なるほど。そう言うことなのね」


「政治ノ話ハ、未ダ難シイデス」


『むむむ……。言われてみればその通りだと分かる……。悔しいが、自分で気づけなかった俺は、やはり魔王の器ではなかったのだろうな』


『さすが魔王様よ。それがしではまったく考え付かなんだわ』


 アオイ、ゼロ、オルトラムゥ、鉄之丞が口々に言う。そこへガウルグルクが言葉を発した。


「裏の事情はその通りでしょうな。で、具体的対策は、どうなさいますかのう? わたしめは、早急に援軍を送るべきかと存じますが」


「いや、援軍だけで済ますつもりは無いよ。そろそろ攻勢に移る準備も整ってたからね。この際だ、返す刀で『ヴァルタール帝国』の国境線までの領土は全部貰ってしまおう。ただし、そこで再度侵攻を止めて、占領地内側を宣撫するんだ。『ヴァルタール帝国』にはあえて手を出さない。

 アーカル大陸全土を貰うのは、占領地の経営が軌道に乗ってからだよ。わたしは先代魔王とは違うからね。占領地から収奪するつもりは無い。きちんと統治し、きちんと開発を行って、きちんと発展させる。

 『ベイルク王国』と『シャハン国』は、たしか戦費調達のため民に重税を課していたな?他の国も、連合軍結成のために似たようなことをしているんじゃないか?」


「ええ、その通りです」


 わたしの問いに、ザウエルが楽しそうに答えた。わたしは笑い声を上げる。


「くくく、では我々は占領後、1年間は免税、その後も占領前より税を軽くするとしようか。何、農業改革など、これまでの改革がようやく実ったおかげで、バルゾラ大陸からの収益だけで充分に占領予定地にかかる経費を賄える」


「官僚機構も機能し始めましたからねえ」


「魔道軍団には、今まで随分負担をかけたからなあ。本当に助かったよ。彼らには、賞与を約束しよう。まあ、それはともかく……。

 アーカル大陸へ魔獣軍団と魔竜軍団、魔像軍団、及び犬妖の銃士隊と砲兵隊のバルゾラ大陸にいる全軍を送る! 主将はガウルグルク、副将はオルトラムゥとゼロだ! ……鎧袖一触して来てくれたまえ。まあ、敵の竜騎士にだけは注意するように。それと民への略奪やら虐殺やら暴行やらは厳禁だ。軍規をしっかり守らせてくれよ」


 出陣する3名が、それぞれに言葉を返す。


「お任せあれ」


『了解だ、魔王様。何、竜騎士には負けんよ』


「了解イタシマシタ」


 それを見て頷いたわたしは、他の3名に顔を向ける。


「魔道軍団、死霊軍団、親衛隊はすまんが居残りだ。大犬妖(ノール)の銃士隊と、豚鬼(オーク)やら人食い鬼(オーガー)やらの一般兵部隊もだ」


 鉄之丞が少々残念そうな声音で、しかし理解した様に言う。


『この大陸を空にするわけにはまいりませぬからな』


「ああ。それと一般兵の部隊は、うかつに外に出したら虐殺とかの命令無視をやる可能性が高い。それは避けたいからな。大犬妖(ノール)も、少しはマシだが未だ信頼できるとは言えん。

 ああ、そうだ。既に戦争状態にあるから今更必要ないと思うかもしれないが、一応先代魔王との差別化を図るためにアーカル大陸の全国家に対し、宣戦を布告するとしよう。ザウエル、アーカル大陸全国家に、宣戦布告の書状を送ってくれ。文面は任せる。

 それとオルトラムゥ。出陣の準備の前に、ちょっとわたしの工房前まで来て欲しいんだけどね」


『む?わかった、会議が終わり次第、出向こう』


 その後会議は、出陣する全軍を乗せる船の準備や、兵站に関しての問題を話し合った。元々攻勢に出る準備を整えていたので、その計画を少々前倒しする形にはなったが、大きな問題は出なかった。

 いよいよ人類種族領域へ、侵攻開始します。まあ、科学力に差がありますからねー。鎧袖一触でしょうね、最初のうちは。相手にも魔法とかありますから、注意は必要ですが。

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