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第16話 工房での一幕

 書類仕事やその後の小会議が終わった後、わたしは本部基地の一画に造ったわたしの工房へとやって来た。親衛隊長であるアオイも付いてきている。と、ここでアオイは素っ頓狂な声を上げた。


「ええっ!? なんでここにトイレットペーパーがあるのっ!?」


「お、気付いたか。つい昨日かな、試作品が出来上がったんだよね」


 ちなみにこれまでは、トイレではちり紙を使用していた。いや、それさえもこの世界においてはオーバーテクノロジーなのだが。新生魔王軍で、羊皮紙に代わって書類などに使われている洋紙も、実のところちり紙と共に最近量産を始めたばかりだ。

 なおトイレは水洗式ではなく、汲み取り式である。だがしかし、それについても改善は進んでいるのだ。


「あー、ちなみにここの工房だけだが、初期型の和式の水洗トイレが完成しているよ。近いうちに本部基地の全館に水洗トイレを工事して、し尿処理場を建設する予定。

 わたしたちからすれば、『健康的で文化的な最低限度の生活』の最低ラインは実は相当高レベルだったと、この世界に来て思い知ったよ。でも、だからと言ってこの世界の水準に合わせて我慢するなんてのは厳しくてしょうがないし。」


「そう言えば、この新生魔王軍本部基地は上下水道も完備してたわね。温水のシャワーや浴槽が使えたのはうれしかった。……でも良く考えると、どうやったの?」


「ああ、あれは石炭炊きの無圧ボイラー、それもかなり初期型のやつ。構造が簡単な。

 本当は電気式にしたかったんだけどね。でも、電化製品作れるのはわたしだけだからね……。わたし、色々仕事あって忙しいから。解放奴隷の土妖精(ドワーフ)に、図面渡して作らせたんだ。

 今の所、電化製品作るには錬金術系の魔道の術や、ソレ系の魔法を使わないといけないからねー。電化製品の関連知識を持ってて、なおかつその手の術法を使えるのは、わたしだけなんだ。土妖精(ドワーフ)たちを始めとする、この世界の技術者連中だと無理」


「なるほど……」


 アオイはトイレットペーパーを手に、唖然としつつ頷く。いや、トイレットペーパーをそろそろ放せば? ちょっと絵面がシュールだ。


「だもんで、試作品はこの工房の建物には使ってるけど、大量生産は無理だからねー。最低限の電化製品や、そうでなくても代替品は揃えたから。家電を作るヒマがあったら、戦闘ドロイドを造らないとね。

 占領地の半豚鬼(ハーフオーク)の子供たちを教育するのに、教官に親衛隊の戦闘ドロイド使う事になっただろ? 教官として出した分は、補充しないと」


「そうね。それだけじゃなく、親衛隊の規模も拡張したいし」


 あー。そうだね、アオイを護るためにも親衛隊をもっと拡張しなきゃね。


「まあそれに、電化と言っても今のところはわたしの自己満足なんだよね。もっと研究を重ねて、これを一般にも広げられる様にしないと。金持ちや権力者は、電灯よりも『ライト』の魔法使った方が簡単なんだもんなあ。

 やっぱり太陽電池を大量に……。あ、いや。それだと結局わたしだけしか作れない。それよりか、簡単な初期型の発電機を作って、土妖精(ドワーフ)たちに量産させられるか試さないとな」


「一般に広げられそうな技術は、何かあるの?」


「製紙技術とか肥料と農薬とか、冶金技術とか色々あるけど、大物と言えば動力機関の導入かなあ。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを今試作中なんだけどね。これも錬金術系の魔道の術や魔法で、手作りしてるんだよ。

 だけどこれは図面を渡せば土妖精(ドワーフ)族あたりでも部品を作ることは可能だろう。あー、でも作らせるには工業規格を規定して守らせないと、事故になるかなあ」


「エンジン? 自動車でも造るの?」


 アオイには動力機関の効果がぴんと来なかったらしいな。あまり難しく説明しても何だし、簡単に解説するとしようか。


「自動車だけじゃないよ。今のこの世界は手工業……機械を使わずに手と簡単な道具だけで物づくりをやっている。でも動力機関があれば、旋盤やボール盤……って言ってもわからないかな。大型のドリルやら何やらの機械を使って物づくりができる。ベルトコンベアに部品を乗せての流れ作業もできる。

 簡単に言えば、今よりも簡単に品物を大量生産できるようになるってことだよ」


「あ、あれ? 今、ライフルとか拳銃とか大量生産してなかった?」


「ああ、あれはエンジンの代わりに大型のゴーレムに歯車を回させて、色々な作業機械やベルトコンベアを動かさせてるのさ。でもゴーレムはわたしみたいな規格外の存在がいればこそ、こういう使い方をできてる。

 動力機関があれば、わたしがいないところでも、あちらこちらに工場を建てられるんだ。くくく、一気に時代を進めてやるぞ」


 アオイは額に汗を流し、ぽつりと呟く。


「ま、マッドサイエンティストみたい……」


「どちらかと言えば、マッドエンジニア、かな」


 まあ、自分にその性質が無いとは言わないさ。いや、それだけじゃない。世界制覇を早急に進めるためには、魔王軍の領地を富ませる事が必要だ。それにはやはり、わたしの科学技術の知識を使うのがいいだろう。


 いや、単に世界を滅ぼしていいなら、わたしの能力があればもっと簡単なんだが。アオイもいるし、そう言うわけにもいかないだろ?

 魔王様、本気で世界を滅ぼすなら、自分の能力(ちから)だけで充分です。でも、仲間が出来てしまいましたから。彼らの住まうべき土地とか滅ぼすつもりは、毛頭ありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 道は長い。 でも魔王様が居れば一気に進むね!! いろんな知識だけじゃなくて能力までチートで助かったね!! それらをくれた秘密結社の博士と召喚した先代魔王に感謝だね!!(ぇ
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