水
短いですが、閲覧注意かも。(^^;
俺は黒チップスナックを食べながら、ぼんやり番組を眺めていた。
テレビには、ニュースキャスターが驚異的なトピックを取り上げていた。水道管に水が流れた、というのだ。
キャスター「信じられませんねえ、水道管に水なんて」
解説者「二十二世紀までは、水道管とは水を流すためのものだったのですよ」
キャスター「なんの意味があるのですか」
解説者「この水は、ただの水ではありません。家庭や工場の廃水を流した後、それを浄化したものです。本来なら海に流していたのですが、非常に価値があります」
キャスター「水道管は、ジュースや酒を流してこそ、意味のあるものでしょう? にわかには信じがたいですね」
解説者「この水は、百薬の長です。どんな抗生物質や免疫より、効果があり安価です」
キャスター「廃水を浄化した水が薬とは、どういうことですか」
解説者「小学校の歴史や理科でご存知の通り、むかしは細菌やウィルスによる『病気』というものが非常に流行っていました。寿命で死ぬ人が珍しかったという恐ろしい時代だったのですね。
その細菌から悪玉菌と呼ばれるものをすべて駆逐することに、二十三世紀の人は成功したわけです。地球上からは、一見病気がすべて無くなったかに思われました。しかし残された善玉菌の中から、突然変異で悪玉菌に進化してしまうのを防ぐことは、できませんでした。生物の自然進化を妨げる遺伝子操作が法律で禁止されていることは、ご承知ですね。
それで、千万人に一人とかの割合では、新しい病気にかかることもあったのですよ。そのたびにパニックが起こりましたね、新たな抗生薬の開発、なにより伝染防止。
病気が無くなった世界に生きているわれわれにとって、病気とは致命的です。なんと感染した一万人に一人の割合で、亡くなる危険があるのですよ。
廃水を浄化した水は、ご家庭用の天然蒸留濾過水と違い他人の菌を微量ながら含んでいます。この他人の善玉菌を互いに共有することによって、病気に感染する確率は百分の一、亡くなる確率は千分の一にすら軽減されるのです」
キャスター「素晴らしい飲料というわけですね」
退屈な番組だな。俺はスパイスの効いたスナックをかじった。黒チップ。この原料は、もとはゴキブリとかいわれ、台所にわく害虫だったらしい。
ありがとうございました。(/・ω・)/