表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

セレーネの空飛ぶウサギ

童話っぽく。

 待ちに待った、夏休み最初の日だった。部屋の窓から夜空を見上げながら。小学一年生の男の子はおばあちゃんと、この休みにどこへ旅行しようか、話し合っていた。

 おばあちゃんは、どこへでも連れて行ってあげるよ、と言ってくれた。


 男の子は、思い切って言ってみた。

「ぼく、月へ行きたいんだ」

「月!?」おばあちゃんは、目をまんまるにしておどろいた。「だめだよ、月なんかに行っちゃ。お月さまには、ウサギさんが住んでいるのよ。人間が入っちゃいけないの」


 男の子はくすくす笑った。

「おばあちゃん、昔の人だなあ。そんなおとぎ話を信じるなんて」

 でも、おばあちゃんの顔は真剣そのものだった。

「月に入った人間はね、ウサギに捕まってしまうのよ。ウサギにもちつきの強制労働につかされるの。来る日も来る日も、おもちを作らされるのよ」


「なんで? ウサギはおもち食べないと思うよ」

「もともとはね。月のウサギたちは、訪れる旅人のためにおもちを作っていた。でもね、次々と人間がやってくるようになってから、ウサギたちは自分で働くのを止め、人間をどれいにするようになってしまった」


 男の子はおどろいて怒った。

「どれいって、人が人を道具にすることだよね。ひどいなあ、ウサギがそんなことをするなんて」

「人間も、悪かったのよ」おばあちゃんの顔はかなしそうだった。「月へ降り立った人間はね。そこを、自分たちのものにしてお金もうけをしようとした。

 月を巨大なゴルフ場にしようとしたのよ。クレーターをゴルフのホールに、砂漠をバンカーにして。さらに、ウサギたちの食べる草を短く刈って、芝生のコースにしてしまったの。

 ウサギたちは、怒ったわ。こうして、人間と戦うことになったの。宇宙戦争が起こったのよ。人間は、ウサギを捕らえると。殺して肉を食べたり、骨からスープを作ったり、毛皮を洋服にしたりした。対するウサギは、捕らえた人間は殺さなかった。代わりにもちつきをさせるようになった、というわけよ」


「それで? 戦争はどうなったの、どっちが勝ったの?」

「坊やは知らないでしょうけど。戦争は、大変なものだったわ。月から次から次へと空飛ぶ円ばんがやってきてね。UFOの集団は、空を埋め尽くしていた。人間たちはね。それをミサイルで全部、撃ち落していった。UFOは、全めつしたわ」


「ウサギさん、かわいそうだね」

「いいえ。ウサギたちは喜んだわ。食べられなくなったおもちが、みんな食べられるようになったんだもの。

 月には空気が無いから、火を熾せない。かわいてかたくなったおもちは食べられなかったのよ。

 それで売れ残ったおもちは、全部巨大なかがみもちとして捨てられていた。

 空飛ぶ円ばんの正体はね。そのかがみもちだったのよ。

 うさぎたちはね、そのおもちを地球の食べ物に困っている人たちに与えることにした。

 そうして、自然保護団体や動物愛護団体が戦争反対を訴えてね。

 戦争はやめることになったわ。

 わかった? 月は禁断の星なの。そこへは入っちゃ、いけないわ」


「わかったよ、おばあちゃん。ぼく月へ行くのは止める」男の子は眠くなってきていた。あくびをして、おやすみなさいを言う。

 ふとんに向かう前、男の子はふと気付いた。

「でも、月へヨモギを届けられないかな。ウサギさんも、草もちなら食べるかもしれないから」


(*^^)v

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アポロ計画でゴルフやったというのはゴルフ場建設の下見だったんですね。 中国人が行ったら今度は月餅が降って来るんでしょうか。 甘いからそっちの方が良いです。
2021/05/27 22:28 退会済み
管理
[良い点] ゴルフ場を作るために月を侵略する発想が素敵です。 [一言] ヨモギもちも美味しいですね☆彡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ