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モルモット・ライダー

なろうにあるまじき?

普通の童話です。(/・ω・)/

   Lie? Dare  

 

 むかしむかしの、たったいま。

 あるところの、そこの街。

 一人の女の子と、その友達の、一人の男の子がいました。

 

 女の子は家でモルモットを飼っていましたが、

 あるときネコに襲われ、モルモットは食べられてしまいました。

 可愛がっていたモルモットの死に、女の子は悲しみに泣きくれました。

 

 男の子は後悔していました。その犯人はかれなのです。野良猫にエサをやって、生かしていたのは。

 男の子はこうして、女の子を守るナイトとして生きよう、と決意していました。

 

 しかし女の子は悲しみのあまり、こころに悪魔が宿ってしまいました。

 女の子は消え失せました。家から消え失せました。街から消え失せました。

 

 

 こうして……男の子は一人で、いなくなった女の子を探しに行く旅に出ました。

 

 男の子の勇気に、魔物が応えました。

 目の前に空から……巨大で強靭な肉体と、力強く羽ばたく翼を有する、銀鱗のドラゴンが舞い降りたのです。

 

 ドラゴンは厳粛に問いかけます。

「我が力と空とを引き換えに、汝はなにを出す? そしてなにを欲す?」

 男の子は答えました。

「……モルモット」

 これにドラゴンはひれ伏しました。

 男の子はその背に上ります。

 男の子はドラゴンライダーとして、戦うことになりました。

 

 戦士としての、初めての敵は空です。

 空は高いです。落ちたら、死、だけです。

 高さ、スピード、風を切るときの冷気……

 男の子は次第に乗り越えていきました。

 

 ついでの敵は、偏見です。

『ドラゴンなんて魔物、倒すべき!』

 とする、自称勇者気取りの若者は多いのです。

 男の子とドラゴンは、人間たちからの投石の雨あられに追われる毎日を過ごすこととなりました。

 

 さらなる敵は、世界です。

 世界は広すぎ……女の子がどこにいるか、などと、どう探せばよいのでしょう?

 

 

 と、そんなある日。ふとしたきっかけで。

 いつしか女の子が飼っていたような、手のひらサイズのモルモットが仲間になりました。

 もっともドラゴンは、これを『非常食』と呼び、男の子はひどく憤慨していましたが。

 

 

 男の子、ドラゴン、モルモットの三者は、街道を沿って飛び、旅を続けます。

 そうして、ある日の滝のようなひどい大雨のあと。ふと、街道が崩れている個所を空から見つけました。

 男の子は迷いましたが、見捨てられません。

 と、わかると。ドラゴンは舞い降りて、崩れた土砂を堀り、道路へと盛りなおしてあげました。

 

 モルモットはその間、のんきに道端の雑草を食んでいました。

 しかし、そこには。モルモットと同じくらいの大きさの、子猫がいたのです!

 男の子は迷いました。モルモットを助けようか……

 

 !? モルモットは子猫に駆け寄ると、子猫を右の前足で威嚇しました。子猫はこの勢いに、逃げてしまいました。

 モルモットはもう忘れたかのように、草を食みはじめます。

 これにドラゴンは感心したらしく、モルモットにモルモットのことばで、なにやら話しかけていました……

 

 また飛び、街道上空を進むと、海が見えてきました。大雨の影響で、下流の川は氾濫しています。

 洪水の中、家屋に取り残された人たちが大勢、空を飛ぶドラゴンに助けを求めているのが見えました。

 ドラゴンは助けに舞い降りようとしました。

 

 しかし、男の子は命じました。

「それではみんなを助けられないよ。上流へ戻って、要所を塞き止めるんだ!」

 これにドラゴンは応じ、さっと三者は空を引き返します。

 おかげで、男の子たちは被災者を見捨てた薄情者と恨まれましたが……結果、より多くを救っていたのです。

 この時モルモットが導いてくれた獣道のおかげで、新たな川を無人の地帯へそらすことができましたし。

 

 

 それから幾星霜……旅立ちからもう、何年か経っています。

 少年は別に戦うことに関して、強くなっているわけではありません。しかし、とても成長していました。

 無力でも強いこと……それもたいせつ。力があるのに、弱い人間がいるのですからね。

 そんな少年だからこそかな?

 

 少年はついに、探していた女の子の囚われている、魔王の居城へとたどり着きました。

 門から、なんて入りません。ドラゴンで、バルコニーの踊り場の上に舞い降ります。

 

 さっそく魔王と決闘となりました。

 魔王はドラゴンより倍は大きく、人間の姿をしてはいますが、黒い長衣をまとい、深くフードをかぶっています。表情がわかりません。

 少年は圧倒されていましたが、それでも命じます。

「進んで! 攻撃を!」

 

 ドラゴンより先に、魔王からの攻撃が始まります。

 空気を真っ白にスパークさせて稲妻が宙を裂き、ドラゴンに命中しました。これにはさすがのドラゴンも、苦痛の嗚咽を発します。

 ドラゴンは魔王に、灼熱の吐息を浴びせました。視界が真っ赤に染まります。しかし、魔王には少しも通じていません。

 間合いが詰まり、格闘戦となりました。魔王の鉄拳のなんと迅速にして、鈍重な一撃! 一撃の連打!

 対してドラゴンのナイフのような爪も牙も、魔王には一切通用しないものでした。

 ドラゴンは倒れました。その背から少年は転げ落ち、死を意識しました。

 

 その時です。

 少年のふところから、モルモットが飛び出しました。それは跳ぶと城のゆかに落ちます……

 !? なんと、モルモットは、あっという間にロバくらいの大きさに膨らみました。

 少年は迷わずその背に飛び乗りました。他に手はなかったのです。

 

 モルモット・ライダー、なんて聞いたこともありませんが、少年はそれで魔王に突撃しました。

 モルモットはのんびりと前進するや、肉薄し。その右前足で、魔王をポン、と叩きました。

 ちなみにそんなモルモットの手は、フワフワな肉球だったりします。

 これを受けると、魔王から、みるみる邪気が抜けていきました。いえ、その身体がどんどん……いなくなった女の子のそれとなっていきます。

 

 魔王の正体は、悲しみのあまりこころに魔物が宿った、女の子だったのです。モルモットを求め、ネコを恨んでいただけだったのですよ。

 邪気がすっかり抜けると、女の子はもとの人間の少女姿に戻っていました。

 

 こうして呪いが解けると、二人は自分たちの街に行き家へ帰り。当たり前の生活へと、復帰することになりました。

 

 モルモットはなにごともないかのように、ただ草を食んでいました。


ありがとうございました。(^^♪

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― 新着の感想 ―
[一言] この作品も おもしろいです。
[良い点] 面白かったです! ストーリー展開の意外性も良かったし、ずっと避けてきながらのラストバトル――その戦闘描写も良かったですね。 [一言] この感じの作品は、好きな人が多そうです。
[一言] 優しいお話ですね (*´▽`*)b ☆彡 次は何かな?~♪
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