場所
邪魔になりそうな学生鞄をロッカーに預け、駅を降りて、指定の場所を目指す。
駅からはそう遠くない場所のはずだが、初めて行く場所であり、余り利用しない駅だった事もあって、少々手間取った。
駅はちょうどビル街と繁華街の境目になっており、拠点はビル街の方にあった。
社会人になり、それなりの会社に入れば用も出来るのだろうが、学生の身である自分には馴染みのない場所だ。
その中で憩いの場のように公園があった事には多少の驚きを感じた。
広さの割に幾つかの遊具と噴水まであったが、利用者は余りいないようだった。
拠点はそこから近い場所にあったビルの一つだった。
傍目には他のビルと遜色がない普通のオフィスビル。CITADELと書かれていた。
自分が場違いでしかなかったが、そんな事も言っていられない。
一直線に受付に進み、何かを言われる前に身分証を提示した。
「――少々お待ちください」
受付の女性は内線かなにかで、他の人間と確認をとっているようだった。
それもそうだろう。
身分証にあった名前とビルの外の名前は同じだったので間違いという事はないだろうが、それでも自分のような学生がいきなり来て、はいどうぞという訳にはいかなかったのだろう。
まぁ、はいどうぞと通されたところで、手紙には武器を調達する以上に此処での詳しい指示はなく此方としてもどうしようもなかったのだが。
「あ、はい。そうです。はい――わかりました。伝えます」
受付の女性はこちらに向き直った。
「ただいま、担当の者が来ますのでお待ちください」
「はい」
しばらくすると、スーツに白衣を羽織った二十代半ば程の男が此方に歩いてきた。
首からかけてあった身分証には主任という肩書きがあった。
「二神アクトくん、だね?」
「はい」
「僕は八木雄一郎、詳しい話は後にしてついてきてもらえるかな?」
「わかりました」
八木は此方の返答に満足したように頷くと、踵を返して振り返るとエレベーターの方へ歩いていった。
それについていき、一緒にエレベーターに乗った。