『親殺し』の呪い
『!?聖、下だ!』
「え!?きゃあっ!?」
加速した蹴りが聖を吹っ飛ばした。
重量のある、パワードスーツで飛ぶ事を想定している以上、生身ではそれ以上の速度となる……身体の反動を考えなければ、だが……
「ぐっ!」
「お、お兄ちゃん!?」
「……真白」
「生きて……いたの?さっき、ドカーンって爆発して……」
「生きていたさ……まだ、やり残した事があるからな」
真白からランスを受け取り、聖に向き直った。
「兄、様……どうして」
「『悪』とは生き汚いものさ。それに、お前を人殺しにする訳にはいかないしな」
「……」
ランスを構えた。
「一気に決める。真白、援護を」
「えっ?」
「俺に、考えがある」
「わ、わかった」
『聖、一旦退却するんだ。二対一では不利だ』
「は、はい!」
「させるか!」
聖に突っ込むと聖は退きながらも湾曲ビームを放った。
それを、ランスを振り回し、悪を展開する事で弾いていく。
真白はそれの利用し、背後から聖の触手を狙い撃っていった。
「うっ……く!」
触手がやられていくにつれて、聖の速度が落ちる。
聖の触手は一本一本が武器であると同時に飛行装置なのだ。
一本使えなくなる事にその機能は低下していく――
「……玲!」
『うん!』
ランスに玲を憑けて、投擲すると、機能が落ちた聖はすぐに捕えられた。
『聖!!』
「そこだ!」
「!!」
怯んだ聖に向けて、『親殺し』を叩き込んだ。
聖の、アンドロイドの聖の記憶を見る。
生まれながら、聖は亡きオリジナルの聖の役割を求められていた。
光治郎氏は確かに聖を溺愛していた。
それでもその愛は、あくまでも死んだ者に向ける愛だ。
聖はそれを知っても、なお、光治郎氏の期待に応えたかった。
例えどんな事情があろうと、彼女にとって父は光治郎氏しかいないのだから。
もう一つ、彼女が心の支えにしていたもの、それは二神アクトだ。
だから、こそ、兄妹である事を辞めようと言われた事が彼女を追い詰めた。
光治郎氏は聖を守る為とアンドロイドの為の戦いの為に聖に戦闘能力を持たせた。
だが、それはあくまで聖が追い詰められた時の為だ。
だから、そのスイッチを押したのは二神アクトだ。
それが、なければこんな事にはならなかった。
「……そうか、俺のせい、か」
「兄様?」
聖は目の前にいる。
当然だ、アンドロイドに呪いは効かない。
だが、『親殺しの呪い』とは因果に作用する力だ。
聖を消えなかった結果、因果により親である若月光治郎を呪いに取り込んだ。
だからこその、『親殺し』。これによりアンドロイド達は頭を失い抵抗を辞めるだろう。
そして、聖が戦う理由も。
「……若月光治郎は死んだ。蝕んでいた病に苦しまされる事もなく、な。これでお前が戦う理由はない。だが、俺を殺したければ好きにしろ。俺は親の仇だからな」
「……」
聖は茫然と此方を見て、俯いた。
「そんな事、出来る訳ないじゃないですか」




