聖
空に君臨した聖は、肩から腰に掛けて生えている左右四つ、計八つの触手から、虹色のミストを放出し、その霧が羽根のように展開され、まるで上位の天使のようだった。
「聖、敵になるか!」
その天使を討とうとブースターを起動し、ランスを向けて突撃した。
『聖、その男を撃て』
「……はい、お父様」
八つの触手の計二十三本の光が放出される。
四方八方へ放出された光は弧を描き、此方へと迫ってきた。
「くっ!」
次々と放出されてくる湾曲ビームに回避運動を取り続ける事になる。
『アクトおにーちゃん、四本までなら、フィールドで対処できる』
「わかった!」
次の瞬間、同時に来た四本のビームを指向性フィールドが受け止めた。
それと同時に聖に向けてランスから『悪』を放出する。
「フィールド・エクスペンション」
聖はそれを触手から放出するミストで弾いた。
『あれは……指向性フィールド!?だけど、此方のそれとは全く違うじゃない!?』
「そうか、元々はそっちの技術だったか……」
『いや、其方の技術で正しい、二神悪人』
「!」
追撃で四本のビームが飛来する。
ギリギリまで引きつけてから、ローリングでそれを回避した。
『指向性フィールド。元々は二神科罪の技術だ。だからこそ欲し、君のサポートを承認したのだよ』
「親父からの見返りだったか!」
霧状の物になるのは一般化の際に仕様を変更せざるを得なかったのだろう。
「だというなら、何故そんな物を聖に載せてある!?」
ランスを扱いやすいよう、本体から分離させた。
ブーストを最大出力で掛け、聖に向けて突撃する。
『当然、聖の身を守る為だ』
「それなら、聖を戦いの場に出すな!」
勢いよく、突き立てたランスは、四本の触手によって阻まれた。
『出すつもりなどなかったさ。君が……貴様が此方にさえついていれば!』
「そんな他力本願で!」
ランスを強引に開き、『悪』を放つ――だが、指向性フィールドの霧によって、遮断された。
「アンタはそんなところで何をやっている!?若月光治郎っ!」
『私は私の役割がある!』
「アンドロイドでも、聖が娘というのなら……これが娘にやらせる事か!」
『悪』の出力を上げ続ける、霧状という性質からか、相手のフィールドを押していった。
「……お父様は、もう戦えないんです」
「ああ!?」
「時間がないんです。お父様の時間は……だから!」
『!!離脱してっ、アクトおにーちゃんっ!』
聖の残っていた触手の二本が伸びた。
それを此方の指向性フィールドで受け止める。
そして、その残りの内の一本がこの胸を貫いた。
「がっ!?」
「……それでも、それでも、兄様が……わたしを受け入れてくれていたら……!」
「――――――」
「……身勝手ですね。ごめんなさい。兄様、さようならですノ」
聖が触手を引き抜くと、この身は地上へ落下していった。
落下していく中で、それでも足掻こうとした。
単独飛行装置であるブーストとコアである自分をスーツから取り外して――
しかし、それは無意味だ。
胸に空いた穴は貫通している。
ブーストが切り離したところで、身体の活動が止まった。
そして、スーツごとその身は爆散した。
「うああああああっ!」
遠距離からきた光を、聖は指向性フィールドで受け止めた。
「あれは……」
『魔法少女か!』
「また……また……間に合わなかった……よくも……よくもお兄ちゃんを!」
「!この子!?」
高速で聖に迫った真白は触手に残っていたランスを奪いとった。
「この!この!このぉ!」
ステッキとの二刀流で聖を攻め立てる。
『聖、君なら魔法少女だろうと』
「はい」
聖はそれを正面から迎え撃つ。
聖はアンドロイド側において最強だった。
それは若月光治郎が最強であれば、死から最も遠いという考えからによるものだ。
だからこそ聖は、二神アクトを、坂本真白を殺しうる力を持つ――




