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悪と善と妹(仮)  作者: 結城コウ
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造り出されたもの-アンドロイド-

拠点に入ると、アンドロイド達がパワードスーツの修復作業を行っていた。

急ピッチで進めているらしく、拠点を出るまでには間に合いそうだ。

持っていた武装と転送装置のエネルギー補給を近くにいたアンドロイドに任せると、デスクトップの前に座った。

父の組み立てたPCには特殊な通信機能が付属している。

通信を傍受(ぼうじゅ)されないよう、独自のものになっている。

光治郎氏に支給された携帯は傍受妨害の特殊処理がされているが、その携帯自体は聖に渡したままだ。すぐに光治郎氏に連絡を取る為に、その通信機能を起動させた。

『よく戻ってこれたね、アクト君。嬉しく思うよ』

光治郎氏の接し方は以前と変わらない、だが、これからはこの関係が変わる可能性がある。

「……若月様、こんなに早く繋がるとは思いませんでした」

互いに世間話をしている暇はないはずだ。

『うん?……君が戻ってきたのは監視衛星で確認していたのでね、すぐに連絡が来ると思っていたんだよ。まぁ、君が帰ってきた方法には驚かされたがね』

「そうですか。聖お嬢様はご無事ですか?自分なりに出来る事をしたつもりですが」

『…………二神君。私は全世界に宣戦布告をした』

「聞きました。理由は知りませんが、どうしてそんな事を?若月グループは『悪』とは手を切ったはずだし、第一、何故宣戦布告なんて事を……」

『それが、一番犠牲を少なく出来る方法だったからだよ』

「犠牲を少なく……人類が降伏する、と?」

『ヒロイン共を倒せば、そうなる。何故だかわかるかい?』

「いえ……」

『アンドロイドは今、迫害を受けている』

「!?」

『二神君が知っているのは、企業の案内役や君に配置した家事アンドロイドのような比較的華やかな立場のアンドロイドだけだろう。だが、アンドロイドは他に色んな役割を与えられている。しかし、それは人間がやりたがらない汚い仕事、危険な仕事等を押し付けられているだけだ。アンドロイドはロボットではない、新しい命なんだ』

ミナコの顔が浮かんだ。まだ短い時間しか過ごしていないが、確かに彼女は自分達と同等の命のように見えた。

「では、若月様はアンドロイドの為に?」

『そうだ。そして、アンドロイド達が辛い役割を担っている事で人間達の生活が支えられている。これがどういう事かわかるね?』

「そうか……だから、今、アンドロイド達が反旗を(ひるがえ)せば、人間は生活がままならない。強力な力を持つヒロイン達さえどうにかすれば、人間は降伏するしかない」

『その通りだ。二神君、協力して貰えないか?君にとっても悪い話ではないだろう?』

光治郎氏が言いたい事はわかる。

仮にここで若月側につけば、人間にとっては『悪』でありながら、アンドロイド側が勝利すれば官軍となり、『悪』でありながら、それなりに立場を保障された身になる。だが――

「……それだけが理由ですか?」

『……何が言いたいのかね?』

「理由が他にあるんじゃないですか?それに……この戦いにアンドロイド側が勝ったところで、それで終わるとは思えません」

『やはりと言うべきか……君に隠せはしないな』

「では?」

『ああ、そうだ。目的はその後、賛同者を残し、人類を滅亡させる事だ。それで、アンドロイドは新しき人類となる』

「……新しい人類?人類の進化の一環、という訳ですか」

『そうだ、かつて旧人類を滅ぼし、新人類が繁栄した事と同じだ。ホモ・サピエンスが旧人類になる時が来たという事だ』

「新しい命……その真意はそこですか。なら、そこまでする理由はなんですか?単に情だて訳ではないでしょう?あなただってホモ・サピエンスなのだから」

『……情だよ。それとこんな立場になるとつくづく人間が嫌になる。それだけさ』

言葉に詰まった、その時、拠点のドアが開いた。

「アクト様~お客様ですよ」

「お久しぶり、ですね。兄様」

「聖?」

無事でよかった、等と思う暇はなかった。

聖とはいえ、拠点の立ち入りは許可していない。そして、それはミナコもそうだ。

「……ミナコ、見張り役はどうした?」

「なんの事です?それより、ほら折角お二人ともまた逢えたんですから、何か言わないと」

「い、いいですよ、そんな……」

『アクト君、そろそろ返事の方を聞かせてほしいんだがね』

どうもキナ臭い。

「……若月様。こんなやり取りを聖お嬢様に見せていいんですか?」

『構わない。聖は全て知ってるし、聖を迎えに寄越したのも私だ』

「…………そうか、そういう事か」

「行きましょう、兄様。味方になって下さい」

「それはお前の意志なのか、聖?」

「…………」

『自分の娘に強要などしないさ』

()()()()()()()()()()?」

『なに……?』

「気付いたんですよ。思えば、小さな違和感はあった。聖との幼い頃の記憶にかみ合わない部分があったり、呪いに聖が取り込まれた時、他の犠牲者の様に本来なら忘却するはずがしてなかったりして、聖は呪いの影響を受けていない部分があった。傷一つつけるなという指示も今思えば、この事への対策だったのでしょう?」

『……』

「加えて、先程の“情”ですか、確かにそうでしょう。娘として扱えば情もわく――聖は……若月聖は…………アンドロイドですね」

「……」

「……」

「……」

『……ご名答だ、名探偵とでも言っておこう。これで理解しただろう。全てを』

「ええ、娘の為に人類を滅ぼす、か。ウチの両親より立派ですよ」

『……アクト君、君は?』

「生憎、ウチの両親は人類の存続の為に子供を犠牲にするんですよ」

「兄様、それが犠牲だとわかっているのなら……!」

「だけど……だからこそ、ごめんですね。この身は父と母の願望。光治郎さん……いや、若月光治郎、あなたの願望は二神科罪の願望とは交わらない」

『……そうか残念だよ、アクト君。いや、二神悪人』

「……家族の事がなければ、賛同していたとは思います。俺自身は人類の存続なんて興味はないので」

「そんな……そんなのおかしいよ、アクト様!自分から人形になるなんて!」

ミナコは懐から拳銃を取り出すと此方に銃口を向けた。

「……人形か、否定はしないが、二神科罪も二神菜月ももういない。この行為は俺自身の意志による二人の意志の代弁だ」

「っ!抵抗しないで!アクト様、考えなおして!」

「人形というなら、“オマエ”はどうなんだ?若月光治郎の人形ではないのか?」

「わたしは自分の意志で同胞達の為に――」

ミナコは背後から取り押さえられ、組み伏せられた。

「なっ!?え……なんで!?どうして、あなた達が!?」

ミナコを組み伏せたのは拠点にいるアンドロイド達だ。

「……俺用、というのはこういう事か。家事用アンドロイドは人間に危害を加えないようセーフティ装置が脳内に組み込まれているらしいが、ミナコは意図的にそれを取り外してあるんだな、この時を想定して」

『それはお互い様ではないかね?其方もこれを想定してアンドロイドに何か細工を……』

「いや、これは副産物だ」

答えたのは自分ではない、自分とも言えたが。

『……その声、顔の造形。まさか……』

「そうだ、俺は……俺達アンドロイドは二神アクトのデータを反映した、二神アクトのコピー……いわば、もう一人の二神アクトだ」

「父の計画の内ですよ。同じ目的を持った同じ人物が複数いたほうが組織の意志を一つに出来る……図らずも同じ事を行っていたようですね、自分の子供をアンドロイドにって」

『素体のみで造形から全て拠点で行うとあったが……これがその理由か!』

「さぁ、ミナコは拘束した。若月光治郎、聖!どうするこの状況を」

『……降伏しろとでも言うのかね?』

「アンタの目的は聖ありきでしょ?」

『そうだ。だが、考えてみろ?君を説得する為とはいえ、家事用アンドロイド以外に護衛も付けず、敵になるかも知れない君の元に行かすと思うかね?』

いや、それには納得のいく理由がある。

「聖……」

聖を見る。

聖は少し悲しそうな笑顔を作ると――

「ごめんなさい、兄様」

――死角から現れた、触手でこの身を突き破ろうとした。


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