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悪と善と妹(仮)  作者: 結城コウ
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正体-しんじつ-

記憶と情報の明確な違いは客観性にあるだろう。

その点で言えば、二神アクトの記憶は同じ映像であっても二神アクトにとっては記憶であり、比屋根玲にとっては情報だった。

二神アクトは暗示に対する特訓によって自身に実の妹がいると思っていた。

そして、その暗示を乗り越えた事で暗示への耐性を身につけた。

それが二神アクトの記憶であり、認識だった。

比屋根玲は同じ映像を見た。

それは当然、二神アクトが目で見た映像であったが、あくまでそれは映像であり、そこに二神アクトの意志は介入していない。

そう、暗示によって捻じ曲げられた認識は――――それが介入していないのだ。

だからこそ、比屋根玲は疑う余地が出来た。

二神アクトが見ていた、実の妹がいた光景。

仮にそれが暗示であったなら、もう少しぼやけた・抽象的な映像になるのではないか?

比屋根玲には暗示にかかった経験等ない。

だが、比屋根玲は考えた。

暗示によって偽りの記憶を作るとしたら、夢を見た時のような細部がぼやけた細かい事が曖昧になった映像になるのではないか?

そう、二神アクトの妹の情報は他の情報と同程度の彩度を持った映像だった。

そして、その疑惑が確信に変わったのは先程の出来事。

パワードスーツの緊急停止と二神アクトの蘇生処置。

それらの出来事が比屋根玲の中で点と点を線に繋いだ。

つまり、比屋根玲の考えはこうだ。

二神アクトには本当に血の繋がった妹がいた。

そして、二神アクトは暗示によってその真を偽にすり替えられた。

だが、認識を変えられても、実の妹とわからなくても、妹を助けなければと思ったから二神アクトは蘇生処置を行った。

そして、二神アクトに妹殺しをさせない為に二神科罪は妹を殺しそうになると、直前にパワードスーツが緊急停止する仕組みを仕掛けた。

何故、このような事になったか?

正確な事はわからないが、予想はつく。

二神科罪の目的はあくまで人類の救済だ。

ならば、『悪』の側だけでそれを成すには難しいところがある。

ならば、『善』の側から二神アクトと同じ役割を持つ者が必要だったのだろう。

それが坂本真白だ。

“坂本真白”がどういう経緯で存在しているかはわからない。

ただ、二神科罪は坂本真白が“純白”に値する魔法少女になる確信があったから、そこに配置した。坂本真白は恐らくこの事を知らない。

何故なら、坂本真白は二神アクトのスペアカードであると同時に真打なのだろう。

二神アクトが坂本真白に敗れた際に真相を開かす事になっていたのだろう。

そうなれば……知らずに実の兄を殺した坂本真白は止まれなくなる。

二神アクトがそうだったように…………

それらは推測にすぎない、だが可能性は高いだろう。

だからこそ、坂本真白のステッキは転送装置に反応したのだ。


「…………」

『……あくまで仮説だよ。真偽を確かめるなら……DNA鑑定くらい、かな』

「……………………」

『信じないなら…………アクトおにーちゃんには仕込みナイフがあるよね?』

「…………………………………………」

『でも、もう無理でしょ?』


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