沈没
後方には狙撃手がいて、最初からずっと此方を狙っていた。
仕掛けるタイミングは船長が此方に近づいた時、前方からは船長が盾になるので油断している背後から撃とうという算段。
それに反応し、船長を弾丸の盾とした。
「あっ……がっ!!」
船長が崩れ落ちるより先に転送装置を起動した。
転送先は武装を持っている船員の背後。
靴底に仕込んでいたナイフで首を搔っ切ると、武装を回収した。
「う、撃て!早く!」
船員の一人が叫ぶ。
だが、もう遅い。
「このっ!」
時限装置を起動した事により、船内で爆発が起こった。
爆発で船が揺れ船員達は右往左往している。
その隙をついて、海に飛び込んだ。
海中でカートリッジに海水を汲む。
そして、銃とカートリッジを繋げて最大火力モードにする。
後は祈った。予定通り追加武装が完成している事を。
「来いっ!」
転送装置のバトルモードを長押しする。
ヘルメットの有る頭を除き身体全体が光に包まれる。
それは一見すれば鎧。だが、実態は魔法少女のような高火力の相手に対して、当たり負けしない為のパワードスーツだった。
最大火力モードの銃とカートリッジは呼び寄せられたランス状の武装の核となり、その巨大な刃を持ったランスは右手と同化していた。
そしてその槍を船の横っ腹に突き立てるといとも簡単に船体の壁を打ち抜いた。
そして、背部にはブースター・単独飛行装置がある。
空を飛ぶ相手と戦う為のもの、だが、今は――
「うおおおおぁぁあああああああああっ!!」
ブースターによる上昇で船の半分を切り裂いた。
「動いた……!玲を取り込んだ事で『悪』の底上げに成功したな」
空中から見下ろす船は完全にコントロールを失い、壊れた揺り籠になっていた。
「うわぁっ!うわぁぁぁぁっ!」
「い、いやだ死にたくない!死にたくない!」
「た、助け……誰か助けてっ!」
混乱に陥る船員達。深い恨みがある訳ではない。
だが、此処で見逃すようなお人よしという訳でもない。
「……沈め」
ランスを先程の反対側の甲板に叩き込み、海中にまで振り下ろした。
断末魔の声と共に真っ二つになった船を見下ろしていた。




