詰み
視界が消えたのは一瞬、すぐ傍で弾き跳び、宙をスライドしていく真白が見えた。
真白が体勢を持ち直しているその隙に、そのこめかみに銃口を突き付けた。
「!」
躊躇いなく、引き金を引いた。
真白は吹っ飛び、地面に倒れ伏す。
「うっ……つ……」
「…………駄目か」
真白はすぐに起き上がった。
こめかみに傷一つない、コスチュームがない場所ならばあるいは、と思ったがこれで手詰まりだ。恐らく、『親殺し』でも同じ事だ。
真白は『悪』の耐性が異常に強い、打倒するには『悪』に頼らずにやるしかないが、現状そのような事を出来る相手ではなかった。
加えて、補充した水は柱につぎ込んでもうない。
最後に僅かに残った分も先程撃った分でおしまいだ。
「万事休す、か。降参だ」
いつぞやの様に両手を上げた。
「……武器を捨てて」
STRIKERSと同じ事を言うんだな、とヘルメットの中で笑った。
「そう、捨てないんだ」
「いや、捨てるよ、捨てる」
銃とカートリッジを地面に投げた。
(……後、十五秒だ)
『!』
「拘束するから手を出して」
「ああ、とその前に汗だけ拭かせてくれ」
返事を聞かず、首元の汗を拭った。
「――」
「――」
そして、手を出す素振りで、拭った汗に『悪』を込めた。
だが、それを振り下ろすより早く、真白の刃がその脆い『悪』を砕いた。
「……」
「っ……本当に手詰まりだ」
負けたよ、と両手を上げたところで左の手首を貫かれた。
『ああ!!』
「……」
かたん、と地面に転送装置が落ちた。
「同じ手はそう何度も通じないよ。全てはこれの為の時間稼ぎなんでしょ?」
真白は笑っていた。
年頃の少女らしい、可愛らしい微笑だったというのにそれはとても冷たい笑みに見えた。




