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「がっ!!」
デジャヴだ。
また背中から床に叩きつけられた。
『アクトおにーちゃん、大丈夫!?』
「あ、ああ……なんとか」
左手には転送装置が握られていた。
……そうだ、跳べばよかった。
聖の事に気を取られて、そのまま逃げるという選択を忘れていた。
光治郎氏はともかく、聖は『悪』の人間という訳ではない。
此方との関係を怪しまれたところで、光治郎氏が手を回すだろう。
故に自身の選択は間違いだった。
「玲か?俺を跳ばしたのは」
『うん……咄嗟だったから校舎の中だけど』
辺りを見渡し、正確な場所を推測する。
教室のプレートや窓から見える景色からして三階の廊下だろう。
とりあえずは此処で魔法少女をやり過ごして……いや、駄目だ。
「アイツは探知が出来る……この距離ではすぐにばれる」
『ごめん、急にだったし学校以外の場所わからなかったから』
「いや、あの状況では仕方ない。むしろよくやってくれた方だ」
あの場で蜂の巣になるよりは遥かにマシだ。
とは言え、これで転送装置は暫く使えない。
探知を使える魔法少女なら時間が来る前に此方を捉えるだろう。
ならば、今やる事は一つだ。
「迎え撃つ準備をする。玲は――周囲を警戒してくれ」
玲の特性を考えればそれが適任だろう。
『それはいいけど……こっちを探知されたらどうするの?』
「どちらにしろ、俺を探知出来るんだから同じ事だ。相手に視認されない分、逆に惑わせられるかも知れない」
『わかった……でも、こっちはアクトおにーちゃんに憑りついてる訳だから余り離れられないよ?』
「警戒してくれるだけでいい、せめて水を汲む時間でも稼げれば御の字だ」
「わかった、やってみる」
現在地から一番近い水場であるトイレ前の水道に歩みを進める。
走っていきたいが、不必要に音を出したくなかった。
「って、喋ってたら意味ないよな。玲、俺の思考を読んだり出来るか?」
『え?……こっちとアクトおにーちゃんはラインが繋がってるんだから、やろうと思えば出来るんじゃないかな?試しにわたしに語り掛ける事を意識して考えてみて』
頷き、頭の中で玲に語り掛けた。
(どうだ?聞こえるか?)
『うん、意識してないと気付きにくいけど聞こえるのは聞こえる』
(よし、今はこれで会話するぞ)
『OK、何か気付いたらすぐに知らせるね』
(ああ、それはそうと聞きたい事があるからそのまま聞いてくれ)
『なに?』
(玲はなんで、転送装置を知ってたんだ?確かお前の前で使ってなかったはずだが)
『ああ、それはアクトおにーちゃんがあれで入ってきたのを知ってたから』
(知ってた……玲の世界に跳んだ時、気づいてたのか?)
『と言うよりは……見たってほうが正しいかな』
(見た?ならあの時、近くに居たのか?)
『ううん、そういう事じゃない……アクトおにーちゃんだって見たでしょ?』
(どういう意味だ?)
『こっちの……過去を』
(っ……そういう、事か……玲、お前は見たんだな……俺の今までを)
『うん……アクトおにーちゃんと同化したからね……わかるでしょ?此方と其方は別箇の人格……でもそれ以外は同じなの』
(記憶まで共有されるって訳か)
『うん。だから……気付いてる?アクトおにーちゃん言ってたよね、語彙が少ないって』
(ああ……確かに喋り方も変わったみたいだな)
『それもアクトおにーちゃんの記憶を共有した結果なの』
(そうか……なら、この特性使えるかも知れない)
『どういう事?』
そこで水場に着いた。
(よし、ついでに試してみるか。俺の方を見ないようにして、周囲を警戒してくれ)
『う、うん、わかった』




